【R18】双子の妹を愛するナルシストな婚約者は、大切な妹の代わりに婚約者である私を悪魔公の元に嫁入りさせる

迷い人

文字の大きさ
20 / 42

20.困惑は思考を閉ざす

しおりを挟む
 ノエルは喉の渇きに目を覚ました。

「水……」

 ポソリと呟けば、生温かく柔らかな感触と共に、口内に水が流し込まれた。

 眠い……。 そして、何より身体が熱っぽくて、気怠くて、熱い吐息がこぼれ落ちる。

 髪を撫でる大きな手に、夢と現実の間を漂っていた意識が、現実へと引き寄せられ、私はユックリと瞳を開く。 目の前の男を見れば、昨日見ず知らずの相手に身体を好きなようにされ、醜態を見せたのは夢ではなかったのだと落ち込みたくなる。

「身体は大丈夫かい?」

 そう問いかけてくる男は、ベッドの上に座りながらまるで大きな獣を撫でるかのように、私の頭や体を撫で続けている。 熱を持つ身体に彼の手は冷たくて心地よかった。 昨日の出来事はあまり理解が出来なかったので横に置くが、それでも男が自分だけ国王陛下でも迎えることが出来るほどに整った格好をしているのが、少しだけ腹立たしく思えた。

 私は、男の手をすり抜けるようにしてシーツの中に潜り込もうとすれば、腹に腕を回され、胡坐をかいて座りなおした男の膝の上に納められた。

「大丈夫かと聞いているのだけど?」

 口調も声も優しいが、妙に力のある声だった。

「倦怠感はありますが、痛みはありません。 あと、お腹の中が少々おかしな感じがします」

 見上げた男の顔には、顔の4分の1を隠す仮面がつけられている。

「どれ、見せてごらん」

 男は心臓部分に触れ、ついでのように胸元に口づけチュッとキツク吸いあげてくる。 唇を放せば、男性とは思えぬ肌の白さに良く映える赤い唇の色が移ったかのような跡が残った。

 心臓とヘソの間部分に触れ、そしてヘソの下へと触れる。

「誓いの紋章は正常に働いている。 それに、もし今の君に何かあれば、俺にはソレが分かるはずなんだが。 とはいえ、誓いの契約自体は、今の時代にはそぐわないとされるいにしえの術式だ。 医師でも……」

 ボソボソと独り言のように語る男の声を聴きながらも、私は、何度も男に呼び掛けていた。

「あの、あの、」

 服を軽くツマミ引いてみれば、声は止まり私へ視線を向けた。

「お腹が……」

 下腹を撫でて見せれた。 強引に中を広げられ、押し付けられ、突き立てられ続けた。 それは甘い感触を残しながらも擦り傷のように熱っぽくジリジリとした痛みを残していた。 

 あぁ……と、男は頷いて見せる。

「すまないね。 君が乗ってきた馬車でやってくると伝えられていた人物だが、禁忌を愛し、淫乱な傍若無人、滅絶の炎と名付けられたほどの存在でね。 乱暴なくらいが丁度いいと思っていたんだ。 もし、その人物でないと知っていれば、もう少し優しくしたのだけどね」

 自分が選ばれた訳ではない事は、とっくに知っていたが、やはり少しだけショックだった。

「今はきつくても、そのうち俺を受け入れることにも慣れるだろう」

 チュッと目じりに口づけられる。

「ぇ?」

「どうか、したのかい?」

「慣れるって?」

「君は、もう俺の妻となった。 誓いの契約、古の契約、魂の誓い、共犯たる楔、様々な言い方があるが、昨日行ったのは、お互いを繋ぐ儀式。 君と俺はね、紙1枚で繋がれた気安い婚姻関係等とは比べ物にならない、もっと深い魂に関わる誓いをたてたんだよ」

「ぇ、でも」

「なんだい?」

「フレイが……本当はアナタの妻になるはずだったのでしょう? 手違いがあったとはいえ、間違っていました。 だけど、契約は終えたから仕方がない。 で、済むものなんですか?」

「どうせ一人で生きて、一人で死ぬつもりだった。 人の役に立てるなら、それも悪くないと思ったんだ。 だから、別に……俺と一緒にいて死なない相手なら誰でもいい」

「そう……ですか……」

 もともと、フランとの婚姻だって望んだものではない。 なら相手が変わったからと言って変わりはない……でも、慣れるとか言った? って、また、あんな恥ずかしいことを、あぁ、言うことを、また、するわけ?

 挙動不審になってしまう私を、宥めるように抱きしめ撫でてくる。
 
「よしよし、どうした?」

「ぇ、あ、その……いいえ……あぁ言う恥ずかしい事を、またするんですか?」

「今は、辞めておくよ。 まだ疲れているだろうからね」

 そうじゃなくて!! と、言おうとしたら、ソレを遮るように言葉が続けられた。

「誓いの契約が解除されたという例は1つしか俺は知らない。 もし、君が俺から自由になりたいと望むなら。 俺を殺しなさい。 そうすれば、君は自由になれる。 いいよ、君になら殺されてあげよう」

 男はどこまでも優しく笑って見せた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。

As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。 例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。 愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。 ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します! あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 番外編追記しました。 スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします! ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。 *元作品は都合により削除致しました。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...