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6章 居場所
66.2人の長が追い詰められた先 05
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魔導師長と神官長には、宰相から魔法機関の長として多くの命令がなされていた。
要人警護。
盗み見、盗み聞きの術式の設置。
王都を囲む浄化結界と、王宮を囲む浄化結界の設置。
ケガレ、魔力脈、魔鉱脈の調査。
ケガレは、ケガレの流動と滞留地点の割り出し。
魔力脈は、脈の全てを割り出し、干渉研究を行う。
魔鉱脈の採掘を継続できるよう、研究を行う。
現在は、警護以外は下準備に忙しく動いている状態。 なんら仕事らしい仕事に至っていないらしい。 彼等には王宮魔導師内部、神殿内部からの宰相派を見つけ出すよう願った。
離宮に魔力増加の術式を使い、ケガレを増加させたものがいるのだから、王都、王宮に同じことをしないとは限らないからと……。
「まさか……」
「ありえないと言うなら。 ルデルス国の戦士を使ってジュリアンが内乱を起こすなんて、誰が考えたと言うの?」
「それは……」
「それに現に離宮では魔力増加の術式を使って、ケガレを増加させていたんだから。 裏切者がいる限り、王都、王宮に同じ事をしないとは限らないでしょう?」
「……そうですが……」
「ですが? なによ。 人は命あるままで魔物にはならないけど、欲望に溺れ、快楽に溺れ、人としての理性を失った姿は魔物と一緒。 ケガレに犯された時間が長ければ、ケガレを払っても廃人だよ? 面倒だからって、可能性を放棄して、責任とれるわけ?」
私の言葉に黙り込む2人に私は言葉を続けた。
「要人警護は外せないだろうけど、覗き見、覗き聞きの術式は、宰相周辺でいいし、結界は後回しでいいでしょ。 もし、結界は優先事項だと反論してくる人がいたなら、その人を重点的に調べる。 ただ、それだけの事だから」
「精霊ギルドの長への連絡は? 調査は彼等の専売特許です」
神官長が言えば、ヴェルは意地悪く鼻で笑った。
「精霊を活動不能にできるのは誰だ?」
「あり得ない!!」
2人は、ギルド長を敵として認めたがらなかった。 私も出来れば違うと思いたいけれど、それでも……彼が一番怪しいのだ。
「この国で、大勢の小精霊を一度に活動不能にできると言えば、ロノス、アリアメア……そして……」
「あいつかだって?」
私はうなずく。
「ロノスは、人間社会に変革をもたらすような命令は出せない。 私に近づくなと言うのは、私がロノスの育てた子だからと言う例外が適応されているし、それに私と言う個人だから大丈夫なのかもしれない」
「だが、魔人であれば、精霊に好かれていたアレであればどうですか!!」
名を呼ばないのは、呼びかけに反応される可能性を恐れてだけどアリアメアの事を言っているのは確かだろう。
「魔人には精霊の制限・制約とは異なるから、確かに彼女(?)の可能性は捨てきれない。 だけど彼女が黒幕なら、ギルド職員と契約している小精霊達だけに契約主に従うな。って命令をする? ルデルスの小精霊達のように破壊活動に参加させるんじゃないかな? 小精霊に命令を出したのが魔人なら、きっと私の命令が上書きされるなんて事は無かったと思うの」
「それは……」
結局、彼等は最終的に認めてくれた。
そして、ショックに黙りこむ魔導師長と神官長を残し、私達はヴェルの空間へと戻ってくる。
「なぜ、2人を頼ったの?」
ヴェルの空間に戻った私は尋ねた。
抱き着くのは独占欲、そして嫉妬。
私に良くしてくれる人の多くは、ユリア様に恩があるから、私が聖女だから……と言う理由。 父様だって、私がユリア様から生まれたからがきっかけ。 殺そうとする程に憎み、そして命を懸けて守るほどに愛してくれた。
だけど、彼は私だけを見ている。
見ていたはずなんだ。
手を添えるだけの抱擁を私がすれば、抱き上げられ、舐めるような口づけがされる。
「利益で動く者は信用できる。 それに、アレ等を主が愛する事はない」
そう真面目に言うから私はきょとんとして苦笑し、そして声に出して笑った。
「そうだね。 うん、私もそう思うよ」
私は8年の間、ヴェルのケガレを浄化してきた。 きっとこれからもそれは続く。 彼は、私だけの特別で、私を特別とする存在。
私の魂に彼の力の欠片が宿り、芽を出し、蔓を伸ばし、花を開かせ私を慰めてきた。 化け物どうし特別に思えた。 どうせ心の中では私を化け物と詰っているなんて思う必要が無かった。
人の形で触れて数日。 それでも、特別になるのには、嫉妬を覚えるには十分な関係だと思う。
もし、彼が私を主と呼ばず、私以外の誰かを主と呼んだなら……私はオルコット公爵領の領地に戻り、王都に思いを寄せる事は無く、穏やかに孤独に日々を過ごす事を望んだと思う。
だから、この嫉妬は間違いじゃない。
「ヴェル」
「どうした?」
「口づけをなさい」
そう命じれば、そっと唇が触れ、甘く歯があてられ、私は彼の唇を舐める。 出された舌に舌を絡められ、撫でられる。 抱きしめられた身体は、ベッドの上に押し倒され、彼の力で作られた服が消えた。
ヴェルの首元に腕を回し抱き着けば、身体が支えられ抱き起される。 ベッドに座った状態のヴェルは私をその膝の上に乗せ、頬を撫でた。 私はその手に身を任せ、瞳を閉ざし、大きく呼吸をし……言葉にすれば……自分で聞いてもやっぱりどこか拗ねているようで戸惑う。
「口づけって言ったでしょ」
「口づけだが?」
そう言いながら耳裏に首筋に鎖骨に唇が落とされる。
「ヴェル、お願い……父様の処まで連れて行って」
ヴェルは、強く首筋に噛みついてきた。
要人警護。
盗み見、盗み聞きの術式の設置。
王都を囲む浄化結界と、王宮を囲む浄化結界の設置。
ケガレ、魔力脈、魔鉱脈の調査。
ケガレは、ケガレの流動と滞留地点の割り出し。
魔力脈は、脈の全てを割り出し、干渉研究を行う。
魔鉱脈の採掘を継続できるよう、研究を行う。
現在は、警護以外は下準備に忙しく動いている状態。 なんら仕事らしい仕事に至っていないらしい。 彼等には王宮魔導師内部、神殿内部からの宰相派を見つけ出すよう願った。
離宮に魔力増加の術式を使い、ケガレを増加させたものがいるのだから、王都、王宮に同じことをしないとは限らないからと……。
「まさか……」
「ありえないと言うなら。 ルデルス国の戦士を使ってジュリアンが内乱を起こすなんて、誰が考えたと言うの?」
「それは……」
「それに現に離宮では魔力増加の術式を使って、ケガレを増加させていたんだから。 裏切者がいる限り、王都、王宮に同じ事をしないとは限らないでしょう?」
「……そうですが……」
「ですが? なによ。 人は命あるままで魔物にはならないけど、欲望に溺れ、快楽に溺れ、人としての理性を失った姿は魔物と一緒。 ケガレに犯された時間が長ければ、ケガレを払っても廃人だよ? 面倒だからって、可能性を放棄して、責任とれるわけ?」
私の言葉に黙り込む2人に私は言葉を続けた。
「要人警護は外せないだろうけど、覗き見、覗き聞きの術式は、宰相周辺でいいし、結界は後回しでいいでしょ。 もし、結界は優先事項だと反論してくる人がいたなら、その人を重点的に調べる。 ただ、それだけの事だから」
「精霊ギルドの長への連絡は? 調査は彼等の専売特許です」
神官長が言えば、ヴェルは意地悪く鼻で笑った。
「精霊を活動不能にできるのは誰だ?」
「あり得ない!!」
2人は、ギルド長を敵として認めたがらなかった。 私も出来れば違うと思いたいけれど、それでも……彼が一番怪しいのだ。
「この国で、大勢の小精霊を一度に活動不能にできると言えば、ロノス、アリアメア……そして……」
「あいつかだって?」
私はうなずく。
「ロノスは、人間社会に変革をもたらすような命令は出せない。 私に近づくなと言うのは、私がロノスの育てた子だからと言う例外が適応されているし、それに私と言う個人だから大丈夫なのかもしれない」
「だが、魔人であれば、精霊に好かれていたアレであればどうですか!!」
名を呼ばないのは、呼びかけに反応される可能性を恐れてだけどアリアメアの事を言っているのは確かだろう。
「魔人には精霊の制限・制約とは異なるから、確かに彼女(?)の可能性は捨てきれない。 だけど彼女が黒幕なら、ギルド職員と契約している小精霊達だけに契約主に従うな。って命令をする? ルデルスの小精霊達のように破壊活動に参加させるんじゃないかな? 小精霊に命令を出したのが魔人なら、きっと私の命令が上書きされるなんて事は無かったと思うの」
「それは……」
結局、彼等は最終的に認めてくれた。
そして、ショックに黙りこむ魔導師長と神官長を残し、私達はヴェルの空間へと戻ってくる。
「なぜ、2人を頼ったの?」
ヴェルの空間に戻った私は尋ねた。
抱き着くのは独占欲、そして嫉妬。
私に良くしてくれる人の多くは、ユリア様に恩があるから、私が聖女だから……と言う理由。 父様だって、私がユリア様から生まれたからがきっかけ。 殺そうとする程に憎み、そして命を懸けて守るほどに愛してくれた。
だけど、彼は私だけを見ている。
見ていたはずなんだ。
手を添えるだけの抱擁を私がすれば、抱き上げられ、舐めるような口づけがされる。
「利益で動く者は信用できる。 それに、アレ等を主が愛する事はない」
そう真面目に言うから私はきょとんとして苦笑し、そして声に出して笑った。
「そうだね。 うん、私もそう思うよ」
私は8年の間、ヴェルのケガレを浄化してきた。 きっとこれからもそれは続く。 彼は、私だけの特別で、私を特別とする存在。
私の魂に彼の力の欠片が宿り、芽を出し、蔓を伸ばし、花を開かせ私を慰めてきた。 化け物どうし特別に思えた。 どうせ心の中では私を化け物と詰っているなんて思う必要が無かった。
人の形で触れて数日。 それでも、特別になるのには、嫉妬を覚えるには十分な関係だと思う。
もし、彼が私を主と呼ばず、私以外の誰かを主と呼んだなら……私はオルコット公爵領の領地に戻り、王都に思いを寄せる事は無く、穏やかに孤独に日々を過ごす事を望んだと思う。
だから、この嫉妬は間違いじゃない。
「ヴェル」
「どうした?」
「口づけをなさい」
そう命じれば、そっと唇が触れ、甘く歯があてられ、私は彼の唇を舐める。 出された舌に舌を絡められ、撫でられる。 抱きしめられた身体は、ベッドの上に押し倒され、彼の力で作られた服が消えた。
ヴェルの首元に腕を回し抱き着けば、身体が支えられ抱き起される。 ベッドに座った状態のヴェルは私をその膝の上に乗せ、頬を撫でた。 私はその手に身を任せ、瞳を閉ざし、大きく呼吸をし……言葉にすれば……自分で聞いてもやっぱりどこか拗ねているようで戸惑う。
「口づけって言ったでしょ」
「口づけだが?」
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