国王陛下は愛する幼馴染との距離をつめられない

迷い人

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07.水の公爵家グライオ家のネーヴェ

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 ラディーソ国は決して大国ではない。
 大国ではないが、強国であり安定した国である。

 10年前、前国王が事故で亡くなった折、幼き王子が王位についた。 それは国の危機のように思えたが、ソレを支える公爵家の1家、1家が国と同様な働きをしたことで、国としての大きさを見せつける事となった。

「あの方が、陛下ですか?」

 愛らしい容姿をした少女がユックリと優雅に口を開いた。

「どこ、どちらにいらっしゃいますの?」

 色めき立つ美しい少女達。

「ぁ……」
「素敵」
「あの方が、黄金の若獅子と呼ばれるダリオ様ですのね」

 恥らい気味に、だけど興奮し始める少女達。

 陛下の花嫁募集は、近隣諸国に伝えられ、娘を勧めてくる書状が寄せられていた。 国の主要人物たちはダリオの気持ちを知っており、近日陛下は相応しい女性と婚約を交わすと手紙が返され、それで済んだと誰もが考えて居た。

 だが、誰よりも先んじてアピールをすれば勝ちと考えた者がいたらしく、既に数名の令嬢が送り込まれており、次期宰相と噂されている国王陛下の学友の1人、水の公爵家グライオ家の次期当主ネーヴェが令嬢達の案内をしている。

 ネーヴェは小さく舌打ちをうっていた。

 顔合わせもなしに適当に帰ってもらうつもりだった。

 だが、令嬢達は国王陛下を目に留め騒ぎ立てている。

 さて、どうしたものですか……。

 そう考えて居る所、ヨミと視線があう。

『どうなさいましたの?』

 風を使った特殊な会話で話しかけてきた。 こうなれば、こっちの言葉も上手く拾ってもらえるだろうと、他国から自称お妃候補が送り付けられてきたが、どの令嬢も我が国にとって利益にあらず、既に自国内で婚約が内々定されたと帰ってもらうために、少しイチャイチャしろ。 と……伝えた。

『そんな不敬な事は、私には出来ませんわ!』

『13の頃まで、一緒に寝ていながら何を言っている』

『その……陛下には、心を寄せた女性がいらっしゃるのではありませんの? その方に表立って頂くことはできないのかしら?』

『なぜ、そうなる。 どこから出た話だ』

『侍女達が、陛下には心を寄せる方がいらっしゃると会話するのを耳にいたしましたわ』

『あ~~~、いや……それは……』

 正直悩んだ。 全く伝わっていない陛下の好意を自分が伝えて良いものなのだろうか? と。

『その、陛下が恋心を抱く相手がいると知った時……。 地位が足りないと言うなら、相応の地位ある方の元に養女として迎え、正妻は無理であっても妾として王宮入りが叶うようにしてくださいませ。 そう、長老方にお願いをしておきましたの。 流石に7年も経っていれば、礼儀作法ぐらい身についていると思うのですが……』

 そんな存在はいない!! というか……7年前と言えば、丁度ヨミが陛下との添い寝を辞退し、夕刻……日暮れ時には王宮を後にするようになったころ。

『もしや、ヨミは陛下が夜遊びをしやすいようにと王宮に近づかないのか?』

『今までお気づきではなかったのですか? ネーヴェ様とあろう方が……。 私は陛下には甘くはございますが、陛下が愛し愛される女性となると、姑根性丸出しで、嫉妬にかられる自信がございますの。 ですから……その、恋愛関係のことは意識的に伺わないようにしていたので、余り陛下の恋愛事情は知りませんの。 ですから、ソチラで色々と先んじて手配をしていただけると助かりますわ』

『……そ、そうか……とりあえず、今日の所は面倒ごとを避けるためだ、自分が陛下の恋人だと思って接してくれ。 後ほどシッカリと陛下に説明をしておくから』

『本当ですね……嫌ですよ? 陛下に……図々しく浅ましい女だと思われるのは……』

『そんな事を思われるような方ではない。 ヨミが恋人役をしてくれないなら、エルにさせるだけだ』

『それは……余りなので……いえ、もしかして……そっちの噂が正しかったと……』

『ちょ、待て!!』

 そして返事は返されなくなり、異国の令嬢達に早く国王陛下に面会させろと要求されつつも、全く別の事で顔を青ざめる次期宰相ネーヴェの姿があった。
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