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08.イチャイチャしろと言われましても困ると言うものです
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ネーヴェとの会話を終えたヨミもまた、ネーヴェと同様に軽い混乱状態であった。
例えダリオに平民の愛妾がいたとしても、性的なものを学ぶ貴婦人との間に愛情があったとしても、性的対象が同性であったとしても、ヨミはソレを認めたいと考えて居た。 認めたいと思いつつも、何かと欠点をあげて邪魔する自分が想像できたため、ダリオの恋愛事情は一切耳にいれず、心を傾けないようにと日々過ごしてきた。
冷静にならなければ……。
そう考えると同時に、ネーヴェからの要求に対応することの必要性も理解できている。 公爵令嬢であり幼馴染、学友であって陛下の秘書と護衛を勤め上げた自分であれば、他国の令嬢達のアプローチを拒否するのも丁度良いのだ。
ただ、寵愛を受けているか? と言えば……外見に自信がない。 政略だと言えば認められるでしょうが、ここで恋人の振りをして何になるのでしょうか? 私の方が妻として愛情を受ける者として相応しい、図々しい年増は遠慮してください。 等と言われるのではないでしょうか?
自らの思考にズンと重い物を感じながら、それでもヨミは問うた。
「えっと、ですが、本当に(身体に触れること)お許しいただけるのですか?」
幼い頃は、筆頭侍女や乳母以上に世話をやきその身に触れていた。 今であっても、陛下の緊急とあれば抱き上げて運ぶぐらいはするが、それと肌に直接触れると言うのは大きく違ってくる。
「むしろ……」
ダリオは大きく息を吸い言葉を続ける。
「ヨミには触って欲しいと思ってる」
そう照れ臭そうに微笑みながら陛下に言われれば、その瞬間ヨミは体温が上がるような気がした。 顔が赤くなっているのが自分でもわかった。 恥ずかしくて逃げ出したいと思ったけれど、これも仕事なのだと踏みとどまる。
「では、失礼します」
既に側にいることすら忘れられているエルオーネは、初々しい様子にニヤニヤとしながら、周辺にいる侍女と訓練中の騎士達に撤退せよと、ジェスチャーで伝えた後、自らもその場から離れた。 とは言っても、油断マシマシの2人を本気で放置するわけもなく、何かあれば動く準備というか、今のあの不器用に甘ったるい状態を邪魔させぬようにと、側近を呼び寄せ警戒を言いつける。
そんな事も気にならない程に緊張していたヨミと言えば、余裕のない様子で指の先だけで、筋肉の筋にそって触れ撫でていた。
エルオーネの身体と違い、筋が浮き出ているのかと思っていた腹筋も触れれば硬く、それでいて柔軟で、運動後のためか火照った身体の熱が指先に熱く感じる。
もう自分が必死で守る必要などもうないのかと思えば寂しく感じ、その体を感慨深く触れてしまう。
「っ……」
「も、申し訳ございません」
ヨミは反射的に謝り手を引いた。
「別に謝る必要などない。 ヨミは……いつでも触ってくれて構わないのだから」
「流石にそれは……ですが、その……陛下の成長を実感できて嬉しく思いました。 もう、陛下も大人ですのね」
陛下の秘書役を引き受けてはいるけれど、必ずしも自分がしなければいけない事ではない訳で、姉として、学友として、幼馴染として、女の自分はソロソロ邪魔でしかないのだろうと実感できてしまったのが寂しかった。
「そりゃぁ、まぁ……成人を迎えて何年経っていると思っているんだ」
「それも、そうですわね」
「それより、もう触れてはもらえないのか?」
「十分に、逞しく成長した姿を拝見させて頂きましたので」
「それは残念だ。 ヨミに触れられるのは、昔から好きだったからな」
私は小さく笑う。
「おかしなことをおっしゃいますのね。 大人だと納得したところでしたのに、子供のような事をおっしゃるなんて」
「そんなにオカシナことか? 俺はヨミが好きだからふれあいたいと思うんだが」
不意に抱き寄せられ、陛下の裸の胸に抱き寄せられた。 口づけるように堅い筋肉に触れてしまい、慌てて何事もなかったかのように顔を横に逸らす。
「何を……」
「お願いごとを聞いてくれると言ったよな?」
「は、はい……」
陛下へと視線を向けようとすれば、寄せられた身体に陛下の硬い突起したものが触れていた。
ぇ? 陛下は、もしかして欲情なさっているのでしょうか? 私に? まさか……。 ありえませんわ。 私は国のための妻としては都合の良い条件を揃えてはいますが、男性が望むだろう女性の魅力というものは全くと言い程備えておりませんから……。
そんな風に考えれば少しだけ切なくなり、仕事だからイチャイチャしておけといったネーヴェを恨めしく思った。
「なんでございましょうか?」
私は笑顔で応じた。 例え欲情していたとして、相手を選ぶぐらいの余裕ぐらいは持ち合わせていらっしゃるだろうと思ったからだ。
「その、キスを……していいだろうか?」
「ぇ? ぁ、はい」
私は背伸びをして、挨拶のキスを頬にした。 なぜ、このような事を求めるのか分からないが、遠くから眺めている他国の令嬢達には甘い戯れぐらいには見えるかもしれない。
「いや、そうじゃなくて」
「ではなくて?」
「こう、お互い好意を寄せあう男女がするキスのことで」
陛下のためだけに生きてきた人生ではあるが、私とそのようなキスを、大衆の前ですれば要らぬ噂も広がるのではないでしょうか?
地位と権力的に相応しいからこそ、男女の関係に踏み込まないと言う一線が……いえ、それぐらいどうにでもなる。 ネーヴェが上手くまとめてくれるはずです。 コレは言いわけで、本音を言えば殿下を満足させられるとは思えなかったから。
「その、経験がないもので、上手くできるとは思えません。 日を改め……んっ」
ふいに唇が塞がれ驚いているヨミには、ダリオの焦り等理解できなかっただろう。
日を改めて何処で練習しようと言うのだ!!
例えダリオに平民の愛妾がいたとしても、性的なものを学ぶ貴婦人との間に愛情があったとしても、性的対象が同性であったとしても、ヨミはソレを認めたいと考えて居た。 認めたいと思いつつも、何かと欠点をあげて邪魔する自分が想像できたため、ダリオの恋愛事情は一切耳にいれず、心を傾けないようにと日々過ごしてきた。
冷静にならなければ……。
そう考えると同時に、ネーヴェからの要求に対応することの必要性も理解できている。 公爵令嬢であり幼馴染、学友であって陛下の秘書と護衛を勤め上げた自分であれば、他国の令嬢達のアプローチを拒否するのも丁度良いのだ。
ただ、寵愛を受けているか? と言えば……外見に自信がない。 政略だと言えば認められるでしょうが、ここで恋人の振りをして何になるのでしょうか? 私の方が妻として愛情を受ける者として相応しい、図々しい年増は遠慮してください。 等と言われるのではないでしょうか?
自らの思考にズンと重い物を感じながら、それでもヨミは問うた。
「えっと、ですが、本当に(身体に触れること)お許しいただけるのですか?」
幼い頃は、筆頭侍女や乳母以上に世話をやきその身に触れていた。 今であっても、陛下の緊急とあれば抱き上げて運ぶぐらいはするが、それと肌に直接触れると言うのは大きく違ってくる。
「むしろ……」
ダリオは大きく息を吸い言葉を続ける。
「ヨミには触って欲しいと思ってる」
そう照れ臭そうに微笑みながら陛下に言われれば、その瞬間ヨミは体温が上がるような気がした。 顔が赤くなっているのが自分でもわかった。 恥ずかしくて逃げ出したいと思ったけれど、これも仕事なのだと踏みとどまる。
「では、失礼します」
既に側にいることすら忘れられているエルオーネは、初々しい様子にニヤニヤとしながら、周辺にいる侍女と訓練中の騎士達に撤退せよと、ジェスチャーで伝えた後、自らもその場から離れた。 とは言っても、油断マシマシの2人を本気で放置するわけもなく、何かあれば動く準備というか、今のあの不器用に甘ったるい状態を邪魔させぬようにと、側近を呼び寄せ警戒を言いつける。
そんな事も気にならない程に緊張していたヨミと言えば、余裕のない様子で指の先だけで、筋肉の筋にそって触れ撫でていた。
エルオーネの身体と違い、筋が浮き出ているのかと思っていた腹筋も触れれば硬く、それでいて柔軟で、運動後のためか火照った身体の熱が指先に熱く感じる。
もう自分が必死で守る必要などもうないのかと思えば寂しく感じ、その体を感慨深く触れてしまう。
「っ……」
「も、申し訳ございません」
ヨミは反射的に謝り手を引いた。
「別に謝る必要などない。 ヨミは……いつでも触ってくれて構わないのだから」
「流石にそれは……ですが、その……陛下の成長を実感できて嬉しく思いました。 もう、陛下も大人ですのね」
陛下の秘書役を引き受けてはいるけれど、必ずしも自分がしなければいけない事ではない訳で、姉として、学友として、幼馴染として、女の自分はソロソロ邪魔でしかないのだろうと実感できてしまったのが寂しかった。
「そりゃぁ、まぁ……成人を迎えて何年経っていると思っているんだ」
「それも、そうですわね」
「それより、もう触れてはもらえないのか?」
「十分に、逞しく成長した姿を拝見させて頂きましたので」
「それは残念だ。 ヨミに触れられるのは、昔から好きだったからな」
私は小さく笑う。
「おかしなことをおっしゃいますのね。 大人だと納得したところでしたのに、子供のような事をおっしゃるなんて」
「そんなにオカシナことか? 俺はヨミが好きだからふれあいたいと思うんだが」
不意に抱き寄せられ、陛下の裸の胸に抱き寄せられた。 口づけるように堅い筋肉に触れてしまい、慌てて何事もなかったかのように顔を横に逸らす。
「何を……」
「お願いごとを聞いてくれると言ったよな?」
「は、はい……」
陛下へと視線を向けようとすれば、寄せられた身体に陛下の硬い突起したものが触れていた。
ぇ? 陛下は、もしかして欲情なさっているのでしょうか? 私に? まさか……。 ありえませんわ。 私は国のための妻としては都合の良い条件を揃えてはいますが、男性が望むだろう女性の魅力というものは全くと言い程備えておりませんから……。
そんな風に考えれば少しだけ切なくなり、仕事だからイチャイチャしておけといったネーヴェを恨めしく思った。
「なんでございましょうか?」
私は笑顔で応じた。 例え欲情していたとして、相手を選ぶぐらいの余裕ぐらいは持ち合わせていらっしゃるだろうと思ったからだ。
「その、キスを……していいだろうか?」
「ぇ? ぁ、はい」
私は背伸びをして、挨拶のキスを頬にした。 なぜ、このような事を求めるのか分からないが、遠くから眺めている他国の令嬢達には甘い戯れぐらいには見えるかもしれない。
「いや、そうじゃなくて」
「ではなくて?」
「こう、お互い好意を寄せあう男女がするキスのことで」
陛下のためだけに生きてきた人生ではあるが、私とそのようなキスを、大衆の前ですれば要らぬ噂も広がるのではないでしょうか?
地位と権力的に相応しいからこそ、男女の関係に踏み込まないと言う一線が……いえ、それぐらいどうにでもなる。 ネーヴェが上手くまとめてくれるはずです。 コレは言いわけで、本音を言えば殿下を満足させられるとは思えなかったから。
「その、経験がないもので、上手くできるとは思えません。 日を改め……んっ」
ふいに唇が塞がれ驚いているヨミには、ダリオの焦り等理解できなかっただろう。
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