国王陛下は愛する幼馴染との距離をつめられない

迷い人

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13.未だ覚悟はできないままに 02

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「少し、話しをしようか?」

「では、お茶をお入れします」

「いや、お互いもう大人だ。 オマエの好みを聞いておいた」

 テーブルに乗せられる琥珀色の酒が入った瓶と美しいグラス。 確かに……ソレは、滅多に酒を飲まない私の珍しい好物……。

「ずいぶんと準備が宜しいようで」

「リサーチ済だからな」

 通常、この状況であれば、私は陛下の正面のソファに腰を下ろすはず。 だけど、私はなぜか、陛下の膝の上に収まっていた。

「陛下、これはなしです。 陛下の膝の上は、勘弁してください……」

「いや、ここは今日からヨミの指定席だ。 先日の助言通り、先ほどヨミの兄君……次期ヴェント家当主と話をさせてもらい許可をもらったよ。 妹君を未来の王妃として迎えたいと、早急に婚約者としての誓いを結びたいとね」

「ずいぶんと手際がいいことですわね」

「俺は感がいいからな。 当主が不在とは言え、今が責め時なのだと本能が訴えてきた」

 にんまりと幼い様子で笑って見せ陛下は言葉を続けた。

「助言通り、全ての段取りを先に整えさせてもらった。 逃げ道は塞がせてもらった。 後は、俺の愛を受け入れてもらうだけ。 愛しているよ」

 そう言いながら、酒が注がれたグラスが手渡され、彼は自分のためにもグラスに注ぐ。

 つい数日前まで地位や権力の差はあっても姉弟のように思っていたのに、なぜか今日は知らない人のように見えて不安になる。 胸の中がモヤモヤとする。

「いや?」

 そう陛下が問いかけてきた瞬間、知っている表情が覗き見えてホッとする。

 私は、チュッと陛下の唇を微かに避けてキスをする。

「嫌な訳ではありません。 少し、気持ちがついていかないだけですわ」

 一気にグラスの中身を煽り飲んだ。 余り良い飲み方ではないのは知っている。 貴重だし高価だし? でも、酔わなければやってらんない。

「俺はもう10年以上も待っているんだけどね」

 肩を竦めて軽く言う。 それは何時もの……可愛い私の陛下だった。

 陛下は私のグラスと自分のグラスを軽く触れあわせ、ソレを仰ぎ飲む。 自分の飲み方を横に置き、そんな飲み方は身体によくないと言いそうになって辞めた。

 彼は私の助言通り、私の逃げ道を塞いだ。 そうせざる得なくした。 嫌な相手ならば、力づくにでも逃げていくのだけれど、この世で一番大切な人からの申し出なら、自分を変えていくしかないでしょう。

「それは……申し訳ありませんでした。 私の可愛い陛下」

 チュッと頬に口づける。

 幼い頃のようなじゃれ合いのように、手を繋ぎ、指先を絡める手は大きな手だった。 私は認めていなかったけれど、大人になられていたのだ。

 その手を取って頬を摺り寄せてみた。 それは彼が幼い頃によくした行動。 もっと触れあいたいんだと言う合図。

 覚えているでしょうか?

 そう思って視線だけを陛下に向ければ、抱き寄せられた。

「寝室へ行こうか?」

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