12 / 21
12.未だ覚悟はできないままに 01
しおりを挟む
私の心の中の叫びは虚しく心の中をぐるぐる廻る。
良識人である自分が悲しい。
およそ……7年ぶりでしょうか? 王宮の陛下の寝室に訪れるのは……。 護衛と言われたはずなのに……前回の茶番(クジには私の名前しかなかったこと)の種明かしをされた挙句、キッチリと風呂で身体を磨かれ、美しくも肌触りの良い夜着とガウンを着せられ、まるで護送でもされているかのように、前後を侍女に囲まれ歩けば、不安しかない……。
無理やりは、ちょっと……急のことに覚悟が……。
陛下の扉の前。
「お嬢様、検討を祈ります」
自分付きの侍女が恭しく頭を下げれば、なんだか裏切られたかのような気分になったが、自分以外の全員が陛下の好意を知っていたのだと聞けば、責めるのはお門違いなのだと、鈍い自分の方が問題だったのだと思わずにいられない。
私は……今日、陛下との間に新しい関係の構築をしなければいけない。 まぁ、別にソレはどうでもよいのですけどね……問題は関係が行きつく先です。
既に、数度、私は私の中で陛下との関係性を変えてきた。
初めて会った時。
前国王夫婦が亡くなられた時。
彼が国王の座に就いた時。
夜の王宮に出入りしなくなった時。
陛下の中の私が、どう変化をしていたかは分からないけれど、私はその都度陛下を大切だと守り支えるべき相手なのだと、それだけを思いながら立場を変えてきたのだから。
だけど今回は、どこまでも想定外で……。
「確かに検討が必要ね」
私はうつむき、気づけば自嘲的に口元を歪ませ笑っていた。
「お嬢様、お嬢様が陛下のお部屋にお入りになった後、御用聞きに2人の侍女と護衛が扉の前に残ります。 何かあれば、その者達に申し付けください」
私は軽くうなずいてみせ、そして部屋の扉をノックした。 その瞬間に、通信用の魔法陣が扉に出現し、ソレを見た侍女達は数歩下がる。
「ヨミか?」
「はい」
「入りたまえ」
「失礼します」
部屋に入ると同時に、私の腕をつかんだ陛下は私を抱き寄せようとした。 反射的に投げ飛ばしそうになるのを耐え、私は陛下の腕の中に納まる。
「陛下、これは……」
どういうことなのかと聞こうとする前に、熱く耳元でささやかれた。
「愛しているよ」
陛下からの愛の言葉に耳から首筋まで、ゾクゾクとした感触が走る。
「やっ……陛下……」
何を言えばいいのか分からなかった。
おやめください?
何を考えておいでなのですか?
どうしてこのようなことを?
どれも違う……。 良い言葉が思い浮かばなかった。
「陛下……」
私はユックリと振り返れば、
「そんな顔をしないで」
目元に口づけられ私は硬直した。
良識人である自分が悲しい。
およそ……7年ぶりでしょうか? 王宮の陛下の寝室に訪れるのは……。 護衛と言われたはずなのに……前回の茶番(クジには私の名前しかなかったこと)の種明かしをされた挙句、キッチリと風呂で身体を磨かれ、美しくも肌触りの良い夜着とガウンを着せられ、まるで護送でもされているかのように、前後を侍女に囲まれ歩けば、不安しかない……。
無理やりは、ちょっと……急のことに覚悟が……。
陛下の扉の前。
「お嬢様、検討を祈ります」
自分付きの侍女が恭しく頭を下げれば、なんだか裏切られたかのような気分になったが、自分以外の全員が陛下の好意を知っていたのだと聞けば、責めるのはお門違いなのだと、鈍い自分の方が問題だったのだと思わずにいられない。
私は……今日、陛下との間に新しい関係の構築をしなければいけない。 まぁ、別にソレはどうでもよいのですけどね……問題は関係が行きつく先です。
既に、数度、私は私の中で陛下との関係性を変えてきた。
初めて会った時。
前国王夫婦が亡くなられた時。
彼が国王の座に就いた時。
夜の王宮に出入りしなくなった時。
陛下の中の私が、どう変化をしていたかは分からないけれど、私はその都度陛下を大切だと守り支えるべき相手なのだと、それだけを思いながら立場を変えてきたのだから。
だけど今回は、どこまでも想定外で……。
「確かに検討が必要ね」
私はうつむき、気づけば自嘲的に口元を歪ませ笑っていた。
「お嬢様、お嬢様が陛下のお部屋にお入りになった後、御用聞きに2人の侍女と護衛が扉の前に残ります。 何かあれば、その者達に申し付けください」
私は軽くうなずいてみせ、そして部屋の扉をノックした。 その瞬間に、通信用の魔法陣が扉に出現し、ソレを見た侍女達は数歩下がる。
「ヨミか?」
「はい」
「入りたまえ」
「失礼します」
部屋に入ると同時に、私の腕をつかんだ陛下は私を抱き寄せようとした。 反射的に投げ飛ばしそうになるのを耐え、私は陛下の腕の中に納まる。
「陛下、これは……」
どういうことなのかと聞こうとする前に、熱く耳元でささやかれた。
「愛しているよ」
陛下からの愛の言葉に耳から首筋まで、ゾクゾクとした感触が走る。
「やっ……陛下……」
何を言えばいいのか分からなかった。
おやめください?
何を考えておいでなのですか?
どうしてこのようなことを?
どれも違う……。 良い言葉が思い浮かばなかった。
「陛下……」
私はユックリと振り返れば、
「そんな顔をしないで」
目元に口づけられ私は硬直した。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】妻至上主義
Ringo
恋愛
歴史ある公爵家嫡男と侯爵家長女の婚約が結ばれたのは、長女が生まれたその日だった。
この物語はそんな2人が結婚するまでのお話であり、そこに行き着くまでのすったもんだのラブストーリーです。
本編11話+番外編数話
[作者よりご挨拶]
未完作品のプロットが諸事情で消滅するという事態に陥っております。
現在、自身で読み返して記憶を辿りながら再度新しくプロットを組み立て中。
お気に入り登録やしおりを挟んでくださっている方には申し訳ありませんが、必ず完結させますのでもう暫くお待ち頂ければと思います。
(╥﹏╥)
お詫びとして、短編をお楽しみいただければ幸いです。
【完結】愛する夫の務めとは
Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。
政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。
しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。
その後……
城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。
※完結予約済み
※全6話+おまけ2話
※ご都合主義の創作ファンタジー
※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます
※ヒーローは変態です
※セカンドヒーロー、途中まで空気です
【完結】婚約破棄を待つ頃
白雨 音
恋愛
深窓の令嬢の如く、大切に育てられたシュゼットも、十九歳。
婚約者であるデュトワ伯爵、ガエルに嫁ぐ日を心待ちにしていた。
だが、ある日、兄嫁の弟ラザールから、ガエルの恐ろしい計画を聞かされる。
彼には想い人がいて、シュゼットとの婚約を破棄しようと画策しているというのだ!
ラザールの手配で、全てが片付くまで、身を隠す事にしたのだが、
隠れ家でシュゼットを待っていたのは、ラザールではなく、ガエルだった___
異世界恋愛:短編(全6話) ※魔法要素ありません。 ※一部18禁(★印)《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
真面目な王子様と私の話
谷絵 ちぐり
恋愛
婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。
小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。
真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。
※Rシーンはあっさりです。
※別サイトにも掲載しています。
冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者
月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで……
誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話
離宮に隠されるお妃様
agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか?
侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。
「何故呼ばれたか・・・わかるな?」
「何故・・・理由は存じませんが」
「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」
ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。
『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』
愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる