国王陛下は愛する幼馴染との距離をつめられない

迷い人

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17.侍女達は女主人となるべきヨミを心から敬愛する

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 侍女達を始め使用人達からのヨミの評価は良い。

 王宮や公爵家に仕える侍女と言えば、相応に年季の入った者達が多く、ヨミは幼い頃から大人に面倒をかけるような性格ではなく、使用人達に対しても『王宮で務める大人達は、なんらかの達人』という考えを持ち、敬意をもって接してきたのだから、使用人達が悪く思うはずもないだろう。

 国政に携わるようになってからは、朗らかで無邪気な笑みは消え、年頃の娘としては可愛げが無い、不愛想、付け入るところが無い、等と言われるようになった。 だが決して使用人達に無茶を言うことはないし、金払いも良い、必要と思われれば惜しみなく休日も与える。

 使用人達にとっては、完全無敵のお嬢様。

 だが、実際はと言えば、

 知識の片寄りと言うか、抜けているところがあると言うところだが、幼い頃から知っているのだから、抜けたところを可愛らしいと思い、心配だなと案じ、放っておけないと、フォローせねばと考える使用人が大半であった。

 そんな侍女達が気にしている事がある。



 彼女達の心配事を語るには、時をさかのぼる必要がある。



 ヨミお嬢様が、陛下の部屋で初めてお休みになった日。

 陛下よりも早くに御目覚めになられたヨミお嬢様を、侍女達はお風呂に入るよう勧めた。 直接肌を見て触れる事で体調も含め、身体に傷等ないか、無理がなされているのではないか? を見分するのも彼女達の重要な仕事である。

 ヨミの身体は使用人達が心配していたようなことはなかった。 前夜、風呂に入った時と変わらぬほどのサラリとした美しい肌であり、凛とした様子を見れば体力的な消耗もない。

 過去、陛下の閨に招かれた女性と言えば、恍惚とした余韻を楽しみ、色香と言うべきか、存在そのものが情事を連想させた。 挙句、その体のアチコチには赤い内出血が無数にみられ、乳首や乳房には執拗に責められた後があり、噛み跡すら残っている事があった。

 だからこそ侍女達は疑問を覚え、年配の侍女が代表して問いかけた。

「ヨミ様、お体にご負担はございませんでしたか?」

「私は大丈夫ですわ。 慣れぬ事ゆえ、陛下にご満足いただけたか……ただ、それだけが心配ですけど」

「それは、心配無用と言うものです。 陛下はヨミ様と情を交わす事を幼い頃から待ち望んでおいでだったのですから。 むしろ手馴れないヨミ様が可愛らしいと喜ばれた事でしょう」

「……私の方がお姉さんですのに……」

「こういうことに年齢は関係ございませんよ。 どこか身体の痛いところがあったなら申し付けてくださいませ。 痛みが和らぐよう、薬師なり治療師を招きますから」

 そう告げれば、不思議そうな顔を一瞬した後、クスクス笑いだしこういったのです。

「平気ですわ。 それではまるで陛下が獣のようではございませんか。 失礼ですよ」

 と。

 話を聞けば行為は行われたようで、本命には気遣いを見せるのかと納得することにした。 いや、どちらかと言えば見て見ぬふりと言う方が正しいかもしれない。

「本命であるヨミお嬢様相手では、流石の陛下も優しくされるのでしょう」
「陛下も大人になられ、無理を強いられる事は無くなったのですね」
「初めてであるお嬢様に無茶をなされなくて本当によかったですわ」
「いえ、初めてだから配慮をされただけ、いつお嬢様の身体に無理がかけられるか分かりません。 私共も徹底したケアを忘れないよう心がけましょう」
「ヨミ様が陛下に怯えられるようになっては、陛下の御心も大層御乱れになられるでしょうからね」

 だが、何も無くて良かったね。

 そんな思いも長くは続かなかった。

 陛下がお目覚めになられ寝室の掃除がなされたのだが、行為の痕跡は見当たらなかったのだ。 翌日も、そのまた翌日も。 少しばかり遠まわしにヨミ様に伺ってみたが、ヨミ様曰く行為は行われているとのことだった。

 日々、愛情を受け愛らしくなるヨミ様。
 微笑みが増えたヨミ様。

 ヨミ様がなされていると言うなら、そうなのだろうと納得するしかないのが侍女達だった。
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