国王陛下は愛する幼馴染との距離をつめられない

迷い人

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20.一歩前進、したはずである

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 ヨミ専属侍女は、ヨミにつき王宮を出ているため呼ばれたのは年配の侍女。 陛下がいては侍女達も話しにくいだろうと、陛下には別室で待機してもらっている。

「その、こういうことを女性に尋ねるのは如何かと思うのだが、嬢ちゃんは陛下との夜に対して何か言っていただろうか?」

「自分なりになんとか務めさせてもらっていると、ただ何事も経験がないため、陛下に満足頂いているかが心配だとおっしゃっておりました」

 微妙だな……と思ったがエルオーネも、流石にどう聞いていいのか迷っていれば、無邪気さを武器にプラテリアが聞いた。

「実は、陛下と姉様の関係は、子作りにまで至っていないようなんですよ」

 言われれば、年配侍女は難しい顔をして呟いた。

「やはり……」

「やはり、とは?」

 聞いたのはエルオーネ。

「いえ、余りにもベッドに乱れがございませんでしたので、それでもお嬢様が成し遂げた的な様子をお見せになっていたので、陛下がお嬢様の身体に気遣われているとばかり思っておりました」

 そう言いながら、年配侍女は大きな溜息をついた。 陛下の学友である3人の両親よりも年上の年配侍女だ報告する先と言えば想像がつく。

 長老達だ。

「はいは~い、今回は兄様方はちょっと荷が重いようだし、僕に預けてくれないかな?」

 ニパッとプラテリアは笑えば、誰もが思った。



 嫌な予感しかしない……。



 と。



 4公爵家は王都の要であり、王宮を中心とした四方に広い敷地を与えられている。 南方の森に囲まれた小高い丘に土の公爵家テーレ家があり、敷地内にはプラテリア個人用の屋敷も存在していた。

 管理のしやすい小ぶりな屋敷に勤めるのは、年若い美女達。 王宮や公爵家本宅では務めることがないような、美しいが少しばかり色気が強すぎ、品性に欠けると呼ばれるような者達だった。

 プラテリアから招待を受けたのはヨミのみだったが、心配だからとエルオーネもネーヴェも同席していた。

 使用人達には、礼儀と言うものも欠如しており、クスクスと喉の奥で笑い、好奇の視線を遠慮なく3人に向ける。 そこに悪意がないのは3人ともが共有する感覚だが、それでも気分の良いものではない。

「プラテリアはいるか?」

「はい、ご主人様はお戻りになっておりますわ」

 甘ったるい粘着性のある声を向けられ、エルオーネは眉間を寄せる。 戸惑いも当然あるが、不快の方が大きい。

「ご案内いたします」

 そう言ってとりわけ美しい女性3人がよってきて、エルオーネとネーヴェの腕をとり絡めウフフと笑い上目遣いで見上げてくる。 もう1人の女性は背の高い女性はヨミの肩を抱くようにした。

「あの、ぇ、えっ、兄様……」

 そんな風に接する者等いた事もないヨミは涙を浮かべながら、エルオーネに救いを求め視線を向けた。

「申し訳ない。 この子は少しばかり人見知りなんで、触れないでいただけるかな?」

 自分の腕に絡められた腕はそのまま、エルオーネはヨミの肩を抱く女性の手を払いのけて、ヨミの背を守るような立ち位置に立った。

「あらあら」
「うふふ」
「まぁ」

 女性達は笑い、ヨミは……怯えた。






 エルオーネの客人らしからぬ態度に、不躾な侍女達は取り立てて態度を変える様子も、不満を向ける様子もなく微笑み続ける。

「御主人様はコチラの部屋でお待ちです」

 ノックをし来客を告げる使用人。

「どうぞ」

 そう返されれば扉が開かれ、そして、エルオーネが凄い勢いで扉をしめた。

 バタンッ!!

 大きな音が響けば、ヨミはビクッとして、使用人達はクスクスと笑う。

「ヨミ、そっちの壁際まで下がれ、ネーヴェは側に」

 支持を出して、再び扉を開いてずかずかと中に入っていき、ゴツンと拳骨の音が響いた。

「あら、まぁ」
「な、何? 何の音ですの?」

 中から女性の声が聞こえたかと思えば、エルオーネはプラテリアを肩に担いで出てきた。

「酷いなぁ~、実地が一番でしょう」

 ニヤニヤしているプラテリアを見れば、想定内なのだろう。

「……オマエ、マジで言っているのか?」

「マジです。 こういうのは、なかなか言葉では説明しにくいですからねぇ。 別に僕が姉様に手取り足取り教えて差し上げても良いのですが?」

「もう一発殴っておくか?」

「辞めてくださいよ。 マジで痛いんですから筋肉ゴリラ」

 結局、もう1度殴られたプラテリアだった。

 良く分からぬままに唖然とするヨミ。

 そして、ネーヴェもまた状況は分からず、 好奇心のままに扉を開き部屋を覗き見れば、ベッドの上で全裸になり目隠し拘束された女性。 そして、セクシーなスケスケ下着姿の女性が笑みと共に手を振って見せた。

 静かに扉を閉ざしたネーヴェは、なんとなくと言う気分でプラテリアの頬をつまむ。

「本気ですか?」

「流石に、ベッドの上の女性は兄様方をカラカウための冗談です」

 真顔でプラテリアが言えば、ネーヴェはそのまま頬を引っ張った。

「酷いなぁ~。 兄様達には絶対出来ない方法だと思いますよ」

「そりゃぁ、そうだ」

 エルオーネは肩を竦めて見せる。

 結局のところ、ヨミは、地位も権力も礼儀も関係ないと言わんばかりのセクシーな使用人のお姉さんに、男女の関係というものを教えられることとなり、知恵熱で休暇が2日ほど延長されることとなったが、一応は一歩前進した。



 はずである。
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