3 / 27
03.正しいのは?
しおりを挟む
先代当主が亡くなり2年間必死になって社交性を培おうとした。 けれど、出来たのは微笑みを浮かべながらただ凍り付く事だけ。
嫌悪感にヒヤリとした背筋……。
シアンがそっと私の手に扇子を手渡してきた。
パシッと開き口元を隠す。 小さく息を吸い呼吸を整え、微笑みを浮かべるまでの準備が出来た。 チラリと視線をメイスン伯に向ける。
「メイソン伯爵、これでも私は侯爵となって9年。 前侯爵を亡くし2年それなりに精進していたつもりですし……社交の場には出なくても、財務部、食料部等には顔をだしていましたのよ。 ですが……その……申し訳ありませんが、貴方の名声は聞いて事がありませんわ」
扇子を下ろし口元を見せた。
クスッ
「そ、それは!! 貴方がそういう地味な裏方にしか顔を出さないから!! あぁ、そうだ、思い出した貴方の元婚約者のカール殿は、貴方は華々しい場所を嫌う地味な性格だとおっしゃられていた。 きっと貴方は華々しい世界に目が向かない……さぞ社交の場は苦痛でしょうね。 強がらなくても良いのですぞ」
何処までも嫌味っぽい口調だが、国一番の利益を生み出す領地の主に、華美を競ってくるのは笑い話でしかない。
「貴方のような方が居なければ、それほど苦痛に感じる事も無いと思いますわ。 それより……侯爵である私に対する敬意をお忘れになる貴方に社交を語っていただきたくはありませんわ。 爵位と言うものを理解されているのかしら? ねぇ」
どう? と視線は尋ねる。
「爵位? 侯爵だからどうだって言うのですか? たかが小娘の癖に加護によって与えられた爵位に中身があると誰が考えますかなぁ~。 全ては実績、実績ですぞ! 大切なのは経験と人脈、王太子殿下と婚約者殿を蔑ろにした貴方にそれがあるとは思えませんがね」
「おかしなことをおっしゃいますね。 国王陛下の血を受け継いでいないかたが王太子に地位に就かせる事は大きな問題だと私は思いますけどね。 あのような馬鹿げた行為に走られるなんて、本人もその秘密を隠し続ける事に限界を感じていたのではありませんか? 貴方は……どう考えられます?」
「はっ!! 今の状況を見れば血筋等どうでも良い、そう思う者も多いのではありませんかな? 聖カーノ皇国生まれの王妃殿下、その子が王位に収まっていれば皇国から神官や巫女の支援を受けられる。 孫が死地へと追放され皇王はどのようなお気持ちでいらっしゃるか、貴方の罪は大きいですぞ? このまま無邪気に無垢に無知のまま罪を重ねていくつもりですかな?」
断罪後、王妃の不貞が表面化したに関わらず、王妃が離縁されなかったどころか、その事実は隠された。 私は王妃殿下の不貞と、その不貞の子を王太子とした罪を問わぬ国王陛下に当時詰め寄ろうとし、先代侯爵の息子であるモラン伯父上に止められた。 諫められた。
『陛下に恥をかかせてどうする』
黙り込んだ私をメイソン伯はここぞとばかりにおいつめてくる。
「王太子殿下と婚約者殿は他国との交渉を上手く立ち回っていたと言うではないか……それもかなり有利な立場をもって、少々仕置きは必要ではありましょうが、他国の者と交渉出来ると言う貴重な人材を追放した事の方が罪と思われますぞ。 貴重な加護の持ち主をダメにしおって……彼等が瘴気溢れる辺境ではなく、中央にいたならこの国はもっと豊かになっていたはずですぞ。 どう、責任をとるつもりですかな?」
加護は備わっていればいいと考える者は少なくはない……。 加護は使う人次第だと言うのに。
気持ちが悪い……。
不安そうにシアンとリアンが私を見ている。 怖気づいてはダメ……私がシッカリしないと……。 2人が私を守ろうと暴れだすなどもってのほかなのだから、シッカリしないと……。
「本当に能力があるなら、私を騙し追いつめて侯爵家の乗っ取りを考え、伯父上の生み出した魔術式を盗む等しなかったのではありませんか? それこそ……交渉すれば良いのですよ」
「子供相手に道理は通じないとでも思ったのではありませんかねぇ~~~。 自分が侯爵であると言うだけで偉いと勘違いしている。 そなたこそ国の未来を考えず財産を身勝手に使いたいと言う理由から王太子殿下と婚約者に過剰な罰をあたえた。 その未熟さや、愚かさが恐ろしい。 そなたには私が必要だとまだ理解できませんか?」
ぐんぐんと詰め寄って来て、背中はテントにぶつかりそれ以上逃げる事が阻まれた。
「追放を決めたのは王で、それには十分過ぎる理由と証拠が大勢の前で提示されたのを忘れましたの? 覚えていないと言うなら、当主を交代なさった方が宜しくありませんか?」
はぁ~、深い溜息をメイソン伯はついた。
「年長者に対する敬意をお忘れのようだ。 そんな貴方に対して手を差し伸べるのは私ぐらいですぞ?」
呼吸が分かる距離まで顔を寄せられ頬に手が伸ばされ、私は不快感にメイスン伯の手を叩き落とした。
「ふんっ!! 小娘の分際でわきまえろ!! 次期王を瘴気溢れる辺境送りにするとは……、いくらランドール侯爵家が豊かな領地を抱えているからからの暴挙、王にでもなるつもりかと批判を受けている事を知らないのですか?! 私を仲介役としなければ大変な事になるぞ!!」
声を大に語れば、偽りも真実になると……不貞や国賊としての事実が失われると思うな。 そう言いたかったけれど……王妃の馬鹿げた企画に好色を隠そうともせず色めきだっている者達を見れば、事実はアッサリと覆され、また私の地位を揺るがそうとする馬鹿が出るのではと不安を覚えてしまう。
静かにたしなめるようにだけれど随分とシツコク迫って来るメイソン伯爵。 余りにも馬鹿馬鹿しすぎて……もしかすると王妃殿下付きの侍女に自分は味方だとアピールしているのだろうか? そんな悪考えまでしてしまうほどだ。
「私は何かを思い通りにしよう等とは考えておりません。 貴方が勝手に潰れていくだけ……ただ、そんな未来が見えているだけですよ。 さぁ、お戻りください」
ニッコリと微笑みと共に、テントの中に入る。
震える手を隠しながら……。
嫌悪感にヒヤリとした背筋……。
シアンがそっと私の手に扇子を手渡してきた。
パシッと開き口元を隠す。 小さく息を吸い呼吸を整え、微笑みを浮かべるまでの準備が出来た。 チラリと視線をメイスン伯に向ける。
「メイソン伯爵、これでも私は侯爵となって9年。 前侯爵を亡くし2年それなりに精進していたつもりですし……社交の場には出なくても、財務部、食料部等には顔をだしていましたのよ。 ですが……その……申し訳ありませんが、貴方の名声は聞いて事がありませんわ」
扇子を下ろし口元を見せた。
クスッ
「そ、それは!! 貴方がそういう地味な裏方にしか顔を出さないから!! あぁ、そうだ、思い出した貴方の元婚約者のカール殿は、貴方は華々しい場所を嫌う地味な性格だとおっしゃられていた。 きっと貴方は華々しい世界に目が向かない……さぞ社交の場は苦痛でしょうね。 強がらなくても良いのですぞ」
何処までも嫌味っぽい口調だが、国一番の利益を生み出す領地の主に、華美を競ってくるのは笑い話でしかない。
「貴方のような方が居なければ、それほど苦痛に感じる事も無いと思いますわ。 それより……侯爵である私に対する敬意をお忘れになる貴方に社交を語っていただきたくはありませんわ。 爵位と言うものを理解されているのかしら? ねぇ」
どう? と視線は尋ねる。
「爵位? 侯爵だからどうだって言うのですか? たかが小娘の癖に加護によって与えられた爵位に中身があると誰が考えますかなぁ~。 全ては実績、実績ですぞ! 大切なのは経験と人脈、王太子殿下と婚約者殿を蔑ろにした貴方にそれがあるとは思えませんがね」
「おかしなことをおっしゃいますね。 国王陛下の血を受け継いでいないかたが王太子に地位に就かせる事は大きな問題だと私は思いますけどね。 あのような馬鹿げた行為に走られるなんて、本人もその秘密を隠し続ける事に限界を感じていたのではありませんか? 貴方は……どう考えられます?」
「はっ!! 今の状況を見れば血筋等どうでも良い、そう思う者も多いのではありませんかな? 聖カーノ皇国生まれの王妃殿下、その子が王位に収まっていれば皇国から神官や巫女の支援を受けられる。 孫が死地へと追放され皇王はどのようなお気持ちでいらっしゃるか、貴方の罪は大きいですぞ? このまま無邪気に無垢に無知のまま罪を重ねていくつもりですかな?」
断罪後、王妃の不貞が表面化したに関わらず、王妃が離縁されなかったどころか、その事実は隠された。 私は王妃殿下の不貞と、その不貞の子を王太子とした罪を問わぬ国王陛下に当時詰め寄ろうとし、先代侯爵の息子であるモラン伯父上に止められた。 諫められた。
『陛下に恥をかかせてどうする』
黙り込んだ私をメイソン伯はここぞとばかりにおいつめてくる。
「王太子殿下と婚約者殿は他国との交渉を上手く立ち回っていたと言うではないか……それもかなり有利な立場をもって、少々仕置きは必要ではありましょうが、他国の者と交渉出来ると言う貴重な人材を追放した事の方が罪と思われますぞ。 貴重な加護の持ち主をダメにしおって……彼等が瘴気溢れる辺境ではなく、中央にいたならこの国はもっと豊かになっていたはずですぞ。 どう、責任をとるつもりですかな?」
加護は備わっていればいいと考える者は少なくはない……。 加護は使う人次第だと言うのに。
気持ちが悪い……。
不安そうにシアンとリアンが私を見ている。 怖気づいてはダメ……私がシッカリしないと……。 2人が私を守ろうと暴れだすなどもってのほかなのだから、シッカリしないと……。
「本当に能力があるなら、私を騙し追いつめて侯爵家の乗っ取りを考え、伯父上の生み出した魔術式を盗む等しなかったのではありませんか? それこそ……交渉すれば良いのですよ」
「子供相手に道理は通じないとでも思ったのではありませんかねぇ~~~。 自分が侯爵であると言うだけで偉いと勘違いしている。 そなたこそ国の未来を考えず財産を身勝手に使いたいと言う理由から王太子殿下と婚約者に過剰な罰をあたえた。 その未熟さや、愚かさが恐ろしい。 そなたには私が必要だとまだ理解できませんか?」
ぐんぐんと詰め寄って来て、背中はテントにぶつかりそれ以上逃げる事が阻まれた。
「追放を決めたのは王で、それには十分過ぎる理由と証拠が大勢の前で提示されたのを忘れましたの? 覚えていないと言うなら、当主を交代なさった方が宜しくありませんか?」
はぁ~、深い溜息をメイソン伯はついた。
「年長者に対する敬意をお忘れのようだ。 そんな貴方に対して手を差し伸べるのは私ぐらいですぞ?」
呼吸が分かる距離まで顔を寄せられ頬に手が伸ばされ、私は不快感にメイスン伯の手を叩き落とした。
「ふんっ!! 小娘の分際でわきまえろ!! 次期王を瘴気溢れる辺境送りにするとは……、いくらランドール侯爵家が豊かな領地を抱えているからからの暴挙、王にでもなるつもりかと批判を受けている事を知らないのですか?! 私を仲介役としなければ大変な事になるぞ!!」
声を大に語れば、偽りも真実になると……不貞や国賊としての事実が失われると思うな。 そう言いたかったけれど……王妃の馬鹿げた企画に好色を隠そうともせず色めきだっている者達を見れば、事実はアッサリと覆され、また私の地位を揺るがそうとする馬鹿が出るのではと不安を覚えてしまう。
静かにたしなめるようにだけれど随分とシツコク迫って来るメイソン伯爵。 余りにも馬鹿馬鹿しすぎて……もしかすると王妃殿下付きの侍女に自分は味方だとアピールしているのだろうか? そんな悪考えまでしてしまうほどだ。
「私は何かを思い通りにしよう等とは考えておりません。 貴方が勝手に潰れていくだけ……ただ、そんな未来が見えているだけですよ。 さぁ、お戻りください」
ニッコリと微笑みと共に、テントの中に入る。
震える手を隠しながら……。
119
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
売られた先は潔癖侯爵とその弟でした
しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ルビーナの元に縁談が来た。
潔癖で有名な25歳の侯爵である。
多額の援助と引き換えに嫁ぐことになった。
お飾りの嫁になる覚悟のもと、嫁いだ先でのありえない生活に流されて順応するお話です。
学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜
織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。
侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。
学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。
真面目な王子様と私の話
谷絵 ちぐり
恋愛
婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。
小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。
真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。
※Rシーンはあっさりです。
※別サイトにも掲載しています。
侍女から第2夫人、そして……
しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。
翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。
ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。
一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。
正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。
セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。
しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。
そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。
王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。
断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。
閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で……
ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる