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婚約
07.寝耳に水
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婚約話が出て3か月。
あれから、リーリヤは体調不良を理由に王宮に出向いていない。
毎度王宮医を派遣されるが、魔法薬師であるリーリヤにとって病気の偽装などお手の物。 こんな体の弱い娘は王妃にむかない。 等と言われるのを期待しつつ、ディック様の帰還、手紙の返事を待ち続けていた。
「私の事が嫌いになったのかなぁ……」
「そんな事ありえませんよ」
老執事のジャックは言う。
「嫌いになってなくても、運命の出会いをして私の事を忘れているのかも……」
「旦那様から定期的にお手紙が届いているではありませんか」
「でも……」
「戦場で女性に現を抜かすなど命取りな事はなさいませんよ」
「そうだね……なら、ケガをしたのかな? 病気? 記憶喪失で私を忘れているとか!! た、旅の準備を!!」
「落ち着いて下さい……お茶をお入れしましょう」
「……」
何時もは長くても3か月で戻ってくる遠征だが、そろそろ半年間も戻ってこない。 相手は戦だからと言われれば仕方が無いがディック様からの手紙は、明らかに婚約に関する相談が届いている様子が無く作為的なものを感じずにはいられなかった。
『相談したいことがあるのですが』
『そちらはつつがなくやっているか?』
『王妃様から王太子との婚約話を持ち掛けられ、公爵様はどのように思われますか?』
『健康でいるなら嬉しいのだが……こちらは一進一退の攻防が続けられ、なかなか戻る事ができない。 寂しい思いをしていないか? 大丈夫なら……良いと思わなければならないのだが、それはソレで俺が寂しいかな』
筆跡は確実にディック様のもの。 精神的に弱っているのだろうか? と思えば穏やかな気分になる薬草茶でも送ろうかと思うけど、手紙が届いていない事を考えれば、下手に魔法薬系のものは送れない。
「少しばかり費用はかさむけど、個人的に手紙や荷物を運んでくれる人を雇えないかな?」
「そうですねぇ……商人に依頼してみるのは如何ですか? お嬢様が保存食をお売りになっていた商人がいるでしょう。 彼が適材でしょう」
魔法薬の基礎には食べ物の持つ効果の方向性を強め、力を固定化すると言うものがある。 当然薬なのだから保存効果を高めてあるわけで、領地の収入源の一つとなっている。
「そうね」
そんな感じで、色々と動いていたのだけど、ディック様からの返事が来ないままに王宮に招かれた。 強引に、強硬に……脅し。 非暴力的ではあるがソレは拉致に近いだろう。
今日から3日ノッカラ国は豊穣祭を行う。
王都には王族・貴族が集まるため、婚約披露にはちょうど良いだろうと言う話だった。
「はぁ? 突然に豊穣祭に参加しろと言われても、準備もしておりませんし。 そもそも社交界デビューもまだなんですけど? それに私は体調が悪いの!!」
「王妃様はこのようにおっしゃっておりました。 公爵様が未だ戦場から戻られていない事は聞き及んでおります。 最も多くの収穫を得たオークランス公爵家が収穫祭に出ないと言う事はありえません。 どうせ準備もしていないのは分かっております。 すぐに身一つですぐにおいでなさい。 以上です」
「社交界に出ない程度の些細な評判、公爵様が気になさる事はありませんわ」
「貴方のそのような態度が、公爵の立場を悪くすると言う事をご理解しておいでなのですか?」
ディック様の戦闘的な教師も引き受けていたらしいジャックだが、脅し交じりに来る王家からの迎えを撃退する等出来る訳もなく、私は体調不良を演じつつ連れ去られていった。
王宮内にあるドレスルームの1つに私は連れていかれた。
着るものがないと言われるのは想定内だったらしく、部屋いっぱいに美しいドレスを始め必要なものが幾種類も取り揃えてあった。
「物語の王子様なら、ピンチには助けにくるのに」
私はボソリと言い拗ねる。
「どうなさいました? リーリヤ様。 お好きなドレスをお選び下さい」
「こんな重そうな服を着て、あるけな~い。 だって私虚弱だもの」
王宮の衣装室、私は不貞腐れてソファに抱えつけば、鞭でペシャリと背が叩かれた。
「いたっ!!」
声を上げるが、実際はそこまで痛くは無かった。 どちらかと言うと脅し的効果を狙っているのだろう。
「お行儀が悪いですよ。 王太子殿下の婚約者として、王妃様から何を学んできたのですか」
そう告げるのは、王妃様と共に礼儀作法の講師として王太子妃候補教育に参加していたマーゴット・ロッソ伯爵夫人。
「だって、体調が悪いんですもの」
迷子の犬のように媚びを売ってやるぜ!! と、気合を入れたが3か月もの間、王妃様の招きを無視し続けたのはやりすぎだったようで、同情してくれそうにない。
「いつもいつもそのように王妃様の招きを……」
夫人が手を私に向けるから、ぎゅっと目を閉ざした。
また殴られるかと思い身体を強張らせたのだけど、熱が測られただけだった。 一応、熱があがるようの薬は飲んであるから、私の額に触れたドレスルームを任されたロッソ伯爵夫人は顔を顰め、王宮医を呼ぶようにと、そしてかなり熱が高い事実を陛下に告げるようにと侍女達に伝えた。
「それに、社交界デビューもまだなのに、こんなのオカシイです」
「公爵様に無理を強いているからこその、陛下からの親代わりとしての申し出、断るなどありえません!! 変わって欲しいと言う令嬢がどれだけいることか、光栄だと思いなさい!!」
無茶苦茶であるが、そのまま長い説教へと突入した。
「公爵令嬢として~」
このまま説教で豊穣祭を終えてくれないかなぁ~と、私はお説教を促すような合いの手を時折いれながら、大人しく(?)お説教を聞き続けた。
冷ややかな侍女達の視線が、馬鹿にしたようにクスクスと笑いだす。
「リーリヤ様は今日王太子殿下との婚約が正式なものとして発表されます。 あなた方の態度は自らの首を絞めることになる事を十分理解した上での態度でしょうね?」
私への説教が侍女達に飛び火すれば、侍女達は顔色悪く震えあがる。
「王太子殿下に恥をかかせないよう、貴方達が準備をしてさしあげるのですよ! 全く理解できているのかしら……」
と、溜息をつく……夫人。
「は、い?」
寝耳に水とはこのことだ。
「はぁ?! 私そんな話知らないわよ。 誰か他の方と勘違いしているのよ。 貴方達だって納得いかないでしょう!?」
王太子妃教育が行われる中で、侍女として嫌がらせをしてきた若い貴族の娘たちに、言って見せれば顔を背けられた。
「私、もう帰る!!」
そう言った次の瞬間には、私の前に立ちはだかる侍女と、扉を塞ぐ侍女。
「お待ちください!! 陛下が……ご説明にいらっしゃいます」
あれから、リーリヤは体調不良を理由に王宮に出向いていない。
毎度王宮医を派遣されるが、魔法薬師であるリーリヤにとって病気の偽装などお手の物。 こんな体の弱い娘は王妃にむかない。 等と言われるのを期待しつつ、ディック様の帰還、手紙の返事を待ち続けていた。
「私の事が嫌いになったのかなぁ……」
「そんな事ありえませんよ」
老執事のジャックは言う。
「嫌いになってなくても、運命の出会いをして私の事を忘れているのかも……」
「旦那様から定期的にお手紙が届いているではありませんか」
「でも……」
「戦場で女性に現を抜かすなど命取りな事はなさいませんよ」
「そうだね……なら、ケガをしたのかな? 病気? 記憶喪失で私を忘れているとか!! た、旅の準備を!!」
「落ち着いて下さい……お茶をお入れしましょう」
「……」
何時もは長くても3か月で戻ってくる遠征だが、そろそろ半年間も戻ってこない。 相手は戦だからと言われれば仕方が無いがディック様からの手紙は、明らかに婚約に関する相談が届いている様子が無く作為的なものを感じずにはいられなかった。
『相談したいことがあるのですが』
『そちらはつつがなくやっているか?』
『王妃様から王太子との婚約話を持ち掛けられ、公爵様はどのように思われますか?』
『健康でいるなら嬉しいのだが……こちらは一進一退の攻防が続けられ、なかなか戻る事ができない。 寂しい思いをしていないか? 大丈夫なら……良いと思わなければならないのだが、それはソレで俺が寂しいかな』
筆跡は確実にディック様のもの。 精神的に弱っているのだろうか? と思えば穏やかな気分になる薬草茶でも送ろうかと思うけど、手紙が届いていない事を考えれば、下手に魔法薬系のものは送れない。
「少しばかり費用はかさむけど、個人的に手紙や荷物を運んでくれる人を雇えないかな?」
「そうですねぇ……商人に依頼してみるのは如何ですか? お嬢様が保存食をお売りになっていた商人がいるでしょう。 彼が適材でしょう」
魔法薬の基礎には食べ物の持つ効果の方向性を強め、力を固定化すると言うものがある。 当然薬なのだから保存効果を高めてあるわけで、領地の収入源の一つとなっている。
「そうね」
そんな感じで、色々と動いていたのだけど、ディック様からの返事が来ないままに王宮に招かれた。 強引に、強硬に……脅し。 非暴力的ではあるがソレは拉致に近いだろう。
今日から3日ノッカラ国は豊穣祭を行う。
王都には王族・貴族が集まるため、婚約披露にはちょうど良いだろうと言う話だった。
「はぁ? 突然に豊穣祭に参加しろと言われても、準備もしておりませんし。 そもそも社交界デビューもまだなんですけど? それに私は体調が悪いの!!」
「王妃様はこのようにおっしゃっておりました。 公爵様が未だ戦場から戻られていない事は聞き及んでおります。 最も多くの収穫を得たオークランス公爵家が収穫祭に出ないと言う事はありえません。 どうせ準備もしていないのは分かっております。 すぐに身一つですぐにおいでなさい。 以上です」
「社交界に出ない程度の些細な評判、公爵様が気になさる事はありませんわ」
「貴方のそのような態度が、公爵の立場を悪くすると言う事をご理解しておいでなのですか?」
ディック様の戦闘的な教師も引き受けていたらしいジャックだが、脅し交じりに来る王家からの迎えを撃退する等出来る訳もなく、私は体調不良を演じつつ連れ去られていった。
王宮内にあるドレスルームの1つに私は連れていかれた。
着るものがないと言われるのは想定内だったらしく、部屋いっぱいに美しいドレスを始め必要なものが幾種類も取り揃えてあった。
「物語の王子様なら、ピンチには助けにくるのに」
私はボソリと言い拗ねる。
「どうなさいました? リーリヤ様。 お好きなドレスをお選び下さい」
「こんな重そうな服を着て、あるけな~い。 だって私虚弱だもの」
王宮の衣装室、私は不貞腐れてソファに抱えつけば、鞭でペシャリと背が叩かれた。
「いたっ!!」
声を上げるが、実際はそこまで痛くは無かった。 どちらかと言うと脅し的効果を狙っているのだろう。
「お行儀が悪いですよ。 王太子殿下の婚約者として、王妃様から何を学んできたのですか」
そう告げるのは、王妃様と共に礼儀作法の講師として王太子妃候補教育に参加していたマーゴット・ロッソ伯爵夫人。
「だって、体調が悪いんですもの」
迷子の犬のように媚びを売ってやるぜ!! と、気合を入れたが3か月もの間、王妃様の招きを無視し続けたのはやりすぎだったようで、同情してくれそうにない。
「いつもいつもそのように王妃様の招きを……」
夫人が手を私に向けるから、ぎゅっと目を閉ざした。
また殴られるかと思い身体を強張らせたのだけど、熱が測られただけだった。 一応、熱があがるようの薬は飲んであるから、私の額に触れたドレスルームを任されたロッソ伯爵夫人は顔を顰め、王宮医を呼ぶようにと、そしてかなり熱が高い事実を陛下に告げるようにと侍女達に伝えた。
「それに、社交界デビューもまだなのに、こんなのオカシイです」
「公爵様に無理を強いているからこその、陛下からの親代わりとしての申し出、断るなどありえません!! 変わって欲しいと言う令嬢がどれだけいることか、光栄だと思いなさい!!」
無茶苦茶であるが、そのまま長い説教へと突入した。
「公爵令嬢として~」
このまま説教で豊穣祭を終えてくれないかなぁ~と、私はお説教を促すような合いの手を時折いれながら、大人しく(?)お説教を聞き続けた。
冷ややかな侍女達の視線が、馬鹿にしたようにクスクスと笑いだす。
「リーリヤ様は今日王太子殿下との婚約が正式なものとして発表されます。 あなた方の態度は自らの首を絞めることになる事を十分理解した上での態度でしょうね?」
私への説教が侍女達に飛び火すれば、侍女達は顔色悪く震えあがる。
「王太子殿下に恥をかかせないよう、貴方達が準備をしてさしあげるのですよ! 全く理解できているのかしら……」
と、溜息をつく……夫人。
「は、い?」
寝耳に水とはこのことだ。
「はぁ?! 私そんな話知らないわよ。 誰か他の方と勘違いしているのよ。 貴方達だって納得いかないでしょう!?」
王太子妃教育が行われる中で、侍女として嫌がらせをしてきた若い貴族の娘たちに、言って見せれば顔を背けられた。
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