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婚約
15.良い子にはご褒美を、悪い子には罰を 03
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殿下は私に何も求めない。 求めなかった。
「何が?」
私の短い質問に殿下は、本当に分からないとでもいうように質問で返した。
何日も何日も何日も殿下は陛下の要求を代弁するなど無かった。 ただ私と無駄話を続けていて、私は少し楽しいと思うようになっていた。 曾祖母を、仲間たちを殺した一族と仲良くするだけでなく、一緒にいる事が心地よくて甘えた気分になってきていて……罪悪感に胸が痛い……。
「オークランス領の技術説明を報告にいかなくて……」
「あぁ、その件ですか……」
それが目的の割に、殿下は何も言わなかった。 そして、少しだけ考え込んで言葉を続ける。
「他の領地が今どうなっているか、リーリヤは知っていますか?」
「えっと、魔力枯渇による影響からの不作?」
首を傾げたら、頭を撫でられた。
「何よ」
「いや、可愛いなって思って」
「私は可愛いよ!! でも、今、少し馬鹿にしたでしょう!!」
「いやいや、王宮での勉強会に出ていたのだから知らなくて当然です。 気にしないでください。 それでですねぇ……今、ノッカラの6割の領地は、少しばかりオカシイ事になっているんですよ」
「もともとオカシイよ?」
「うん、お話の邪魔しない」
両頬を両手で挟むように触れ、むにむにとされた。
「リーリヤは、5年前に起こった薬師魔法協会の者達の死に纏わる話を知っていますか」
「ぇ?」
知らない訳がない……。
それがきっかけで、私はディック様の子になったのだから。 私は視線を伏せながら語る。
「陛下が、貴族・庶民の言葉に惑わされ、魔法薬師協会の者達を惨殺したと」
「そういう話になっているのですね」
そう言った殿下の声は、優しい微笑みとは別に、怨嗟めいたものが籠っているように思えた。 私が聞いたのはディック様で……、
ぁ、コレ、まずかった? と思った訳だ。
殿下の説明ではこうだった。
ノッカラ国は、魔力を持ち生まれる者は少ない。 魔力を持ち魔法に関わる者の大半が血統により行われる。 貴族はその健康を守るため魔力対策はされるが、魔法使いほどの魔力を持つ事はない。
この時点で魔法使いの家系は妬まれる。
幼少期、可愛がられた記憶も多いが、嫌味や嫌がらせも同様に多かった。
だからディック様の言葉を疑った事は無かった。
「陛下は、国を支えてくれる魔法薬師達に多大な対価を払っていましたし、魔法薬師達に貴族と同等の地位を与えようとしていたんです。 そんな陛下が惨殺をする等と思いますか?」
「ぇ、でも、そんな話知らない」
「階級に関しては議会に取り上げられた程度。 政務に関わらない叔父上が知らなくても仕方がありません」
貴族達は自らの立場を守るために、魔法薬師と同等の力を得ようとし他国で生まれた魔法使いを招き頼りとした。 ただし……彼等が雇ったのは、他国で必要とされない相手にされない、能力が劣り、品格が劣る三流、四流と呼ばれる魔法使い達。 特別でも何でもないその日の食事にも困る程度の力しかない魔法使い達。
そんな者達を貴族達は、王家や魔法薬師に秘密で雇ったのだ。 いや、三流、四流の魔法使い達に狙われ食い物にされたと言っても過言ではないだろう。
他国の三流以下の魔法使い達は、大地深くを通る魔力脈との道を通した。 最初はそれでも良かったのだ。 大地に魔力が染み渡り、水に魔力が溶け込み、風に魔力が流れ、ノッカラは豊かになったかのように見えた。
だが、やがてすくすくと育った植物は、想像を超える大きさとなり枯れ溶け、高濃度の魔力は毒となった。 枯れるものはまだ良い、内側から弾けた物等は側にいた者達を攻撃してしまった。
やがて、その異常は、動物、人間にまで影響を与えだす。
「そこで、陛下はその理由を貴族達ではなく、魔法薬師達に聞いたのです。 この国の魔法に関するものの大半は彼等が管理していたからね。 返された言葉は、無理やり魔力脈まで穴をあけたのではないか? と言うもので、陛下は異常の見られた領地を治める貴族達に、何か異変はなかったのか? そうたずねたのです」
「まぁ、知らないって答えるでしょうね」
「えぇ、それどころか、この国で魔力異常が起こるなら、それは魔法薬師に違いない。 自ら自白をするなら、お前とその家族の罪は見逃そう。 と領内の魔法薬師を集めて言ったそうです。 そして……魔法薬師は家族や弟子を守るため、罪を認めてしまった」
「貴族が約束を破ったの?」
「いいえ、被害は人にまで及んだって言ったよね。 魔力耐性も身体も出来ていない幼子から死んでいったのです。 貴族達は確かに何も言わず、約束を守りました。 だけどね、子供を亡くした者達は、こんなことをできるのは魔法薬師だけだと思ったのです。 他国の魔法使いが入り込んでいるなんて考えもしませんでしたから。 そして無実の相手に復讐が決行されました。 ここまでで質問はありますか?」
「平気、なんとなくだけど、想像はつくから」
「庶民にとっては、魔力、魔法=魔法薬師でした。 貴族達は裏切ってなんかいないって言うのがポイントです。 だから、魔法薬師は貴族に保護を求めてしまったのです。 彼等は自ら捕まりに、責任を負いに領主の元に訪れました。 違うと言っても他国の魔法使いの存在が出てこない限り、その罪は誰もが魔法薬師にあると誰もが考えるでしょう。 貴族達は泥沼の争いを避けるため、真実にたどり着かないようにするため、魔法薬師に罪を着せ、そして……魔力脈に魔法薬師を生贄として与える事で、騒動を収めたのです。 まぁ、そんな方法で収まったのは知識があったからではなく偶然だったようですけど。 だけど、収まり切れなかった魔力脈が幾つも存在しました。 既に多くの魔法薬師が子を老いた親を病人を亡くした家族に殺されていましたから」
ここで、殿下は一度言葉を切り。 私が知る事実がようやく伝えられた。
「そして陛下は……国のため危機を乗り切るため魔法薬師達の命を求め、この国は辛うじて崩壊を免れたのです。 その後、陛下は叔父上に調査をさせ、貴族達の悪行を暴き……未だ怒りが収まらず、あのような事をなされるのです」
この言葉を聞いて、陛下への不審は軽減された。
その事情が本当なら、魔法薬師としての技術を使ったからと言って、私が殺される事は無いだろう。
私は安堵した。
まだ、安堵には早いかもと思いつつ、毎日私のためだけに通ってきてくれた殿下を信用してしまったのだ。 だけど、安堵はしたけど……真実を中途半端に語ったディック様に対する気持ちが、少しだけ揺らいだのが、私にとっても不安となった。
それはまるで、自分が自分でなくなるかのような不安。
「どうしたのですか? 可愛い顔が台無しですよ」
殿下が私の頬に触れ撫で、私は殿下を見る。
「そんな事はないもの。 私は可愛い!!」
「うん、可愛いですよ」
真正面から言われれば恥ずかしくなった。
「よ~しよしよし」
「それはなんか違う!!」
翌日、私は王宮へと向かい、オークランス領が豊かになった秘密を語る。
「何が?」
私の短い質問に殿下は、本当に分からないとでもいうように質問で返した。
何日も何日も何日も殿下は陛下の要求を代弁するなど無かった。 ただ私と無駄話を続けていて、私は少し楽しいと思うようになっていた。 曾祖母を、仲間たちを殺した一族と仲良くするだけでなく、一緒にいる事が心地よくて甘えた気分になってきていて……罪悪感に胸が痛い……。
「オークランス領の技術説明を報告にいかなくて……」
「あぁ、その件ですか……」
それが目的の割に、殿下は何も言わなかった。 そして、少しだけ考え込んで言葉を続ける。
「他の領地が今どうなっているか、リーリヤは知っていますか?」
「えっと、魔力枯渇による影響からの不作?」
首を傾げたら、頭を撫でられた。
「何よ」
「いや、可愛いなって思って」
「私は可愛いよ!! でも、今、少し馬鹿にしたでしょう!!」
「いやいや、王宮での勉強会に出ていたのだから知らなくて当然です。 気にしないでください。 それでですねぇ……今、ノッカラの6割の領地は、少しばかりオカシイ事になっているんですよ」
「もともとオカシイよ?」
「うん、お話の邪魔しない」
両頬を両手で挟むように触れ、むにむにとされた。
「リーリヤは、5年前に起こった薬師魔法協会の者達の死に纏わる話を知っていますか」
「ぇ?」
知らない訳がない……。
それがきっかけで、私はディック様の子になったのだから。 私は視線を伏せながら語る。
「陛下が、貴族・庶民の言葉に惑わされ、魔法薬師協会の者達を惨殺したと」
「そういう話になっているのですね」
そう言った殿下の声は、優しい微笑みとは別に、怨嗟めいたものが籠っているように思えた。 私が聞いたのはディック様で……、
ぁ、コレ、まずかった? と思った訳だ。
殿下の説明ではこうだった。
ノッカラ国は、魔力を持ち生まれる者は少ない。 魔力を持ち魔法に関わる者の大半が血統により行われる。 貴族はその健康を守るため魔力対策はされるが、魔法使いほどの魔力を持つ事はない。
この時点で魔法使いの家系は妬まれる。
幼少期、可愛がられた記憶も多いが、嫌味や嫌がらせも同様に多かった。
だからディック様の言葉を疑った事は無かった。
「陛下は、国を支えてくれる魔法薬師達に多大な対価を払っていましたし、魔法薬師達に貴族と同等の地位を与えようとしていたんです。 そんな陛下が惨殺をする等と思いますか?」
「ぇ、でも、そんな話知らない」
「階級に関しては議会に取り上げられた程度。 政務に関わらない叔父上が知らなくても仕方がありません」
貴族達は自らの立場を守るために、魔法薬師と同等の力を得ようとし他国で生まれた魔法使いを招き頼りとした。 ただし……彼等が雇ったのは、他国で必要とされない相手にされない、能力が劣り、品格が劣る三流、四流と呼ばれる魔法使い達。 特別でも何でもないその日の食事にも困る程度の力しかない魔法使い達。
そんな者達を貴族達は、王家や魔法薬師に秘密で雇ったのだ。 いや、三流、四流の魔法使い達に狙われ食い物にされたと言っても過言ではないだろう。
他国の三流以下の魔法使い達は、大地深くを通る魔力脈との道を通した。 最初はそれでも良かったのだ。 大地に魔力が染み渡り、水に魔力が溶け込み、風に魔力が流れ、ノッカラは豊かになったかのように見えた。
だが、やがてすくすくと育った植物は、想像を超える大きさとなり枯れ溶け、高濃度の魔力は毒となった。 枯れるものはまだ良い、内側から弾けた物等は側にいた者達を攻撃してしまった。
やがて、その異常は、動物、人間にまで影響を与えだす。
「そこで、陛下はその理由を貴族達ではなく、魔法薬師達に聞いたのです。 この国の魔法に関するものの大半は彼等が管理していたからね。 返された言葉は、無理やり魔力脈まで穴をあけたのではないか? と言うもので、陛下は異常の見られた領地を治める貴族達に、何か異変はなかったのか? そうたずねたのです」
「まぁ、知らないって答えるでしょうね」
「えぇ、それどころか、この国で魔力異常が起こるなら、それは魔法薬師に違いない。 自ら自白をするなら、お前とその家族の罪は見逃そう。 と領内の魔法薬師を集めて言ったそうです。 そして……魔法薬師は家族や弟子を守るため、罪を認めてしまった」
「貴族が約束を破ったの?」
「いいえ、被害は人にまで及んだって言ったよね。 魔力耐性も身体も出来ていない幼子から死んでいったのです。 貴族達は確かに何も言わず、約束を守りました。 だけどね、子供を亡くした者達は、こんなことをできるのは魔法薬師だけだと思ったのです。 他国の魔法使いが入り込んでいるなんて考えもしませんでしたから。 そして無実の相手に復讐が決行されました。 ここまでで質問はありますか?」
「平気、なんとなくだけど、想像はつくから」
「庶民にとっては、魔力、魔法=魔法薬師でした。 貴族達は裏切ってなんかいないって言うのがポイントです。 だから、魔法薬師は貴族に保護を求めてしまったのです。 彼等は自ら捕まりに、責任を負いに領主の元に訪れました。 違うと言っても他国の魔法使いの存在が出てこない限り、その罪は誰もが魔法薬師にあると誰もが考えるでしょう。 貴族達は泥沼の争いを避けるため、真実にたどり着かないようにするため、魔法薬師に罪を着せ、そして……魔力脈に魔法薬師を生贄として与える事で、騒動を収めたのです。 まぁ、そんな方法で収まったのは知識があったからではなく偶然だったようですけど。 だけど、収まり切れなかった魔力脈が幾つも存在しました。 既に多くの魔法薬師が子を老いた親を病人を亡くした家族に殺されていましたから」
ここで、殿下は一度言葉を切り。 私が知る事実がようやく伝えられた。
「そして陛下は……国のため危機を乗り切るため魔法薬師達の命を求め、この国は辛うじて崩壊を免れたのです。 その後、陛下は叔父上に調査をさせ、貴族達の悪行を暴き……未だ怒りが収まらず、あのような事をなされるのです」
この言葉を聞いて、陛下への不審は軽減された。
その事情が本当なら、魔法薬師としての技術を使ったからと言って、私が殺される事は無いだろう。
私は安堵した。
まだ、安堵には早いかもと思いつつ、毎日私のためだけに通ってきてくれた殿下を信用してしまったのだ。 だけど、安堵はしたけど……真実を中途半端に語ったディック様に対する気持ちが、少しだけ揺らいだのが、私にとっても不安となった。
それはまるで、自分が自分でなくなるかのような不安。
「どうしたのですか? 可愛い顔が台無しですよ」
殿下が私の頬に触れ撫で、私は殿下を見る。
「そんな事はないもの。 私は可愛い!!」
「うん、可愛いですよ」
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