16 / 36
改革
16.王家は色々面倒臭い 01
しおりを挟む
「今日の予定は、王妃との茶会。 その後、地域の税務担当者、土地改良課課長、魔法課課長との合同会議となっております」
髪を梳いてもらいながら私は爽やかな紅茶を片手に今日の予定に耳を傾けていた。 背後にあるクローゼットの前では、溢れかえっているドレスと侍女が戦っている。
今までは『惨めな娼婦の娘』と呼ばれているのを利用し、ドレスではなくドレスを模したワンピースで通してきた。
成長期に馬鹿みたいに高価なドレスを購入する理由がわからなかったし、使用人達のようにもう少し可愛らしい恰好をしてはどうですか? なんて事をディック様が言うことはなかったから。 好きなようにしていた。
だけど、王太子殿下の婚約者となれば別ならしく、王国の威信に関わる等と言われ、侍女達は楽しそうに私を着飾ろうとしていた。
「ですからぁ~。 ドレス、着ましょうね」
「なんか、ヤダ」
「それで笑われるのは貴方ではなく、この国なのですから」
「そんな面倒臭い事、話に聞いていなかったし」
「カワイイ恰好をするのも仕事の一環ですよ。 なによりせっかく可愛らしいのにオシャレをしないのが勿体ないですよ」
そんな事を言われながら私の髪は編まれ綺麗に纏められていく。 その手は、宥めるように、愛おしむように優しくて、起きたばかりなのに眠くなる。
「でも、どうして、殿下が私の世話をしているのかなぁ? 後、なんでそんなに器用なんですか? 王太子殿下ですよね? 次期国王ですよね?」
「お褒めに預かり光栄です」
そう言いながら彼は私の言葉をノラリクラリと微笑みと共に避けていく。 次期国王陛下のはずの彼はどんな人生を歩めばこんな器用な事ができるのか? 気にならないではないけれど。 そういうのは暇なときに聞くことにした。
幼少期から自分の世話は自分でしていたし、むしろ身体が不自由な曾祖母の面倒を見て来たけれど、おしゃれ等は私の人生には不必要だったから、私には出来ない芸当、頼るしかない。 だけど、殿下にしてもらうのはどうなの?
殿下は、私が陛下の国の民のために尽くす限り、私の奴隷だと余り面白くない状態をいうが、奴隷とまではいかないが、甘すぎる秘書か、もはや乳母レベルな気がする……。
「はい、出来ました。 流石、私です。 カワイイですよ。 それでドレスですが、ベージュのグラデーションに白の模様で縁取りは金糸のものを。 装飾品は金ベースに白い花等どうでしょう」
「そんな堅苦しい恰好、思考の邪魔」
「大丈夫です。 軽い素材で大き目に作ってありますし、ボタンで簡単に着脱できますから、下に薄地のワンピースを着ておけば問題はないでしょう。 必要のないところでは楽にしていても構いません。」
そこまで準備されれば、私が折れるしかない。
朝食の準備が出来たとやってきたのは侍女ではなく、何故か料理長で私ではなく殿下の方へと話しかける。 何事?
「殿下、こちらでよろしいでしょうか?」
焼いたリンゴと甘いパンの匂い。 切り分けられた、ケーキをフォークで切って殿下が私の口元に持ってくる。
「あ~ん」
馬鹿馬鹿しいと言いたいけれど、美味しそうな匂いが……、私は口を開ければケーキが入れられる。 薄切りリンゴが層のようになりながらきめ細かなパンが繋ぎとなりながらも、甘く似たリンゴの味がしみ込んでいる。 そして表面は砂糖が焼かれキャラメル状になっていて、ほろ苦くて、ぱりぱりの触感が面白い。
「美味しい……」
「では、私も味見を」
殿下も一口食べて、うんうんと頷いて見せる。
「良い料理人を使っているのですね」
そう言ってチラリと私を見るから、何? と、私は首を傾げる。
「いいえ。 これは、リーリヤが王妃と出会う際に謝罪として進呈するものです。 嫌でしょうけど、少しだけ我慢して可愛らしくごめんなさいしましょうね」
髪を梳いてもらいながら私は爽やかな紅茶を片手に今日の予定に耳を傾けていた。 背後にあるクローゼットの前では、溢れかえっているドレスと侍女が戦っている。
今までは『惨めな娼婦の娘』と呼ばれているのを利用し、ドレスではなくドレスを模したワンピースで通してきた。
成長期に馬鹿みたいに高価なドレスを購入する理由がわからなかったし、使用人達のようにもう少し可愛らしい恰好をしてはどうですか? なんて事をディック様が言うことはなかったから。 好きなようにしていた。
だけど、王太子殿下の婚約者となれば別ならしく、王国の威信に関わる等と言われ、侍女達は楽しそうに私を着飾ろうとしていた。
「ですからぁ~。 ドレス、着ましょうね」
「なんか、ヤダ」
「それで笑われるのは貴方ではなく、この国なのですから」
「そんな面倒臭い事、話に聞いていなかったし」
「カワイイ恰好をするのも仕事の一環ですよ。 なによりせっかく可愛らしいのにオシャレをしないのが勿体ないですよ」
そんな事を言われながら私の髪は編まれ綺麗に纏められていく。 その手は、宥めるように、愛おしむように優しくて、起きたばかりなのに眠くなる。
「でも、どうして、殿下が私の世話をしているのかなぁ? 後、なんでそんなに器用なんですか? 王太子殿下ですよね? 次期国王ですよね?」
「お褒めに預かり光栄です」
そう言いながら彼は私の言葉をノラリクラリと微笑みと共に避けていく。 次期国王陛下のはずの彼はどんな人生を歩めばこんな器用な事ができるのか? 気にならないではないけれど。 そういうのは暇なときに聞くことにした。
幼少期から自分の世話は自分でしていたし、むしろ身体が不自由な曾祖母の面倒を見て来たけれど、おしゃれ等は私の人生には不必要だったから、私には出来ない芸当、頼るしかない。 だけど、殿下にしてもらうのはどうなの?
殿下は、私が陛下の国の民のために尽くす限り、私の奴隷だと余り面白くない状態をいうが、奴隷とまではいかないが、甘すぎる秘書か、もはや乳母レベルな気がする……。
「はい、出来ました。 流石、私です。 カワイイですよ。 それでドレスですが、ベージュのグラデーションに白の模様で縁取りは金糸のものを。 装飾品は金ベースに白い花等どうでしょう」
「そんな堅苦しい恰好、思考の邪魔」
「大丈夫です。 軽い素材で大き目に作ってありますし、ボタンで簡単に着脱できますから、下に薄地のワンピースを着ておけば問題はないでしょう。 必要のないところでは楽にしていても構いません。」
そこまで準備されれば、私が折れるしかない。
朝食の準備が出来たとやってきたのは侍女ではなく、何故か料理長で私ではなく殿下の方へと話しかける。 何事?
「殿下、こちらでよろしいでしょうか?」
焼いたリンゴと甘いパンの匂い。 切り分けられた、ケーキをフォークで切って殿下が私の口元に持ってくる。
「あ~ん」
馬鹿馬鹿しいと言いたいけれど、美味しそうな匂いが……、私は口を開ければケーキが入れられる。 薄切りリンゴが層のようになりながらきめ細かなパンが繋ぎとなりながらも、甘く似たリンゴの味がしみ込んでいる。 そして表面は砂糖が焼かれキャラメル状になっていて、ほろ苦くて、ぱりぱりの触感が面白い。
「美味しい……」
「では、私も味見を」
殿下も一口食べて、うんうんと頷いて見せる。
「良い料理人を使っているのですね」
そう言ってチラリと私を見るから、何? と、私は首を傾げる。
「いいえ。 これは、リーリヤが王妃と出会う際に謝罪として進呈するものです。 嫌でしょうけど、少しだけ我慢して可愛らしくごめんなさいしましょうね」
0
あなたにおすすめの小説
離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない
柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。
バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。
カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。
そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。
愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
「二年だけの公爵夫人~奪い合う愛と偽りの契約~」二年間の花嫁 パラレルワールド
柴田はつみ
恋愛
二年だけの契約結婚――
その相手は、幼い頃から密かに想い続けた公爵アラン。
だが、彼には将来を誓い合った相手がいる。
私はただの“かりそめの妻”にすぎず、期限が来れば静かに去る運命。
それでもいい。ただ、少しの間だけでも彼のそばにいたい――そう思っていた。
けれど、現実は甘くなかった。
社交界では意地悪な貴婦人たちが舞踏会やお茶会で私を嘲笑い、
アランを狙う身分の低い令嬢が巧妙な罠を仕掛けてくる。
さらに――アランが密かに想っていると噂される未亡人。
彼女はアランの親友の妻でありながら、彼を誘惑することをやめない。
優雅な微笑みの裏で仕掛けられる、巧みな誘惑作戦。
そしてもう一人。
血のつながらない義兄が、私を愛していると告げてきた。
その視線は、兄としてではなく、一人の男としての熱を帯びて――。
知らぬ間に始まった、アランと義兄による“奪い合い”。
だが誰も知らない。アランは、かつて街で私が貧しい子にパンを差し出す姿を見て、一目惚れしていたことを。
この結婚も、その出会いから始まった彼の策略だったことを。
愛と誤解、嫉妬と執着が交錯する二年間。
契約の終わりに待つのは別れか、それとも――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
イシュタル
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる