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改革
22.接触事故 02
しおりを挟む殿下は複雑で神妙な表情を私に向け、次に魔法王子に向け、溜息をついた。
「おいでリーリヤ。 立っていたら危険ですよ」
そう言いながら殿下は、横に座るようにと座席をとんとんと叩き、私に微笑んで見せる……けど……それは、なんとまく、作り物めいた笑顔のように見えて……。
「何か、良く分からないけど、怒ってる?」
「怒って等いませんよ。 私の知っている子供の作り方と違うので、少し驚いただけです。 さぁ、おいで」
私は、殿下を見つめていたが、横眼でチラリと魔法王子を見た。 今、どっちが怖くないか? 私にとってどちらが味方となるかをはかる。
そして、私は魔法王子の横に座った。
だが!!
「な、ななんあなんだ、で、俺の横に、あっちいけよ」
そんな感じでプルプルと震えて言うから、大きな声だけど怖くはなかった。
女の人が怖いのかな? でも、でも、さっきは大丈夫だと私に言ってくれたし……。 なんて考えていたら、殿下の両手が私の方に伸ばされて、抱き上げられて膝の上に乗せられた。
「私、重いよ?」
「重くないですよ。 それで、誰に子供の作り方を習ったんですか? 叔父上ですか? 母上ですか?」
ニコニコしながら殿下が詰め寄ってくるから、私は自分の顔を背け両手で顔を押しのける。
「顔が、ち~か~い!! あっちいけ~!! もう、習ったって言うなら本だよ」
「本? ですか?」
そして私は説明した。
「だって、私の持っている本の中では、ハッピーエンドでキスをして、次のページでは恋人達は子供達と一緒に幸せに暮らしましたってなっているもの」
「……うん、なるほど、良くわかりました……。 色々と勘違いしているようですが、そこは戻ってから、教育係をつけましょう。 私との子供は禁止されていますが、貴方が好きな人を作り、子供を作る事を禁止する訳ではありません。 むしろ、私が幸せにして差し上げられない分応援をするつもりです」
何を言っているのかよく分からないと首を傾げれば、今度は本当の笑顔でおでこ同士をコツンってやって髪を解くように撫でられた。
「殿下の言っている事、良く分からない」
私は殿下の首に両手を回し抱き着いた。
「抱き着くのはいいのですか?」
殿下がそう聞いてくるから、おかしな人だと私は思う訳だ。
「ソレで子供が出来たら、親子でも兄弟でも子供が出来ちゃうじゃない。 そんな事もしらないの」
そんな私と殿下の会話を聞き、寄り添う殿下とを唖然として見つめるのは、娼婦の子供だ、薄汚い娘、破廉恥、そうやって言い続けてきた魔法王子だ。
「リーリヤは仕方がないとはしても……従兄殿は子供の作り方を知っていますよね?」
「ぇ、ぁ、そりゃぁ、当然だろう?」
そう言いながらチラチラと私を見てくる。
「だが、小娘の前で言っていいのか……」
「何よ、さっきは理解してくれたのに、その言い方だと私が馬鹿みたいじゃない」
「いや、そういう事を言う気は無い……ただ順序の問題だ。 きっききき、口づけをするのは、その、子供作ると決めた時だろう? 婚約をして結婚をして、神の前で誓いを立てて、口づけをして、一緒に生活を始め、神が子を持つにふさわしいと認めてくれたら子が与えられる。 んだよな?」
「あぁ、なるほど……本は、そういう過程が抜けていたってことですね」
私が納得すれば、殿下が微妙な表情をしながら溜息と共に呟いた。
「うん、魔法士はこういう生き物だと思う事にしますよ」
殿下はどこか自棄な感じで笑っていたけれど……目的地についてからも殿下は変わる事なく世話焼きで優しかったから、たぶん問題はないだろう。 私には特に問題はないし?
王都から馬車で半日の移動でついた先。
突然の大勢での来訪を受けて、お世話になる屋敷の人達は、忙しそうにするものの嫌な顔一つせず、部屋の割り振り、食事、お風呂まで、不自由なく世話をしてくれた。
「ここの領主様は凄い方ね。 突然の来訪にここまでしてくれるなんて」
私の世話役としてついてくれた少女に言えば、
「こちらは国王陛下の直轄地です。 領主様はいらっしゃいません」
5年前の魔力脈への干渉の時、莫大な魔力を手に入れた領主達の中には、その力に酔い王家への反逆意識を露わにした者達もいたらしい。 それらは制圧され、王国の直轄地となったのだと言う。
翌日、レックス国の魔法士達を豪華な朝食と、接待担当の外交課の人達に任せ、私達は実験場へと移動した。
□□□
□■□
□□□
「仮にですよ。 こんな風に9つの土地があるとしましょう。 私は中央の■部分の地中深くに魔力収集用の魔法を設置します。 そうする事で魔力脈から漏れ出る□部分の魔力が■に集まり、□部分の土地で作られる薬草は、5年前と同じように魔力0になります」
「永続的な魔力収集を可能とするための魔力はどうするのですか? 今、この国には魔法薬師もいなければ、魔法士としての才能を持つ者もいないのですよ!!」
「■で魔法を起動させれば魔力を集めるのですから、起動用の魔法は永続的に自己生産する訳です。 地中深くで収集した魔力は水へと変化させ畑に散水する。 そうする事で、魔力濃度が高い作物が出来るようになる。 それを自国で消費すれば魔法使いもそのうち出てくるんじゃないかな?」
「確かに過去の状況が出来ますが、それだけでこの国は立ち直れない!!」
そう不満を述べる者が居れば、殿下は冷ややかな視線を向けた。
「お前達が5年の間、なんの進展も無かった事を、1日で成し遂げた相手を褒める事はあっても、そんなものは使い物にならないと責めるなんて……頭、大丈夫ですか?」
殿下は自分の頭をとんとんと指先でつつきながら、嫌味っぽい口調で威嚇する。
「魔法使いが居なければ、意味が無い。 それをどうするつもりだ!」
「以前と同じような魔力属性の無い植物を作れても意味が無い……」
殿下は溜息と共に、これでもかと作り物の笑みを浮かべた。
「いえ、これでいけます。 レックス国に借りを返すのにちょうどいいでしょう。 ただ、それにはリーリヤに魔法知識の譲渡をお願いしなければいけない」
「物にもよるかなぁ? もう魔法薬師の血脈は途絶え、終わってしまったし……私一人が抱えていても意味がないから……たぶん、良いと思う。 うん、でも、公爵様に相談させて」
「良い答えをお待ちしております」
ちなみに殿下が考えた案はこういうものだった。
「魔法薬のレシピをレックス国に売却する。 そして属性を持たない魔力0の植物の売買契約を交わし、レックス国に独占させる。 十分な利益をレックス国に与える事で、過去の借りを返し、これからの同盟関係を確固たるものにします」
「我が国の利益を黙って提供しろと言うのですか!!」
「売却すると言ったはずですが?」
「永続的に得られる利益を、一時の金銭で与えると言うのですか!!」
「貴方がたの利益ではありませんがね。 そこは……リーリヤ次第と言うところでしょう。 たっぷりと出し惜しみしてもらいましょう」
私次第??
経済は余り得意ではない私は、首を傾げる。
王宮に戻った偉い人達。 そして陛下と王妃様が忙しそうにする中……、殿下は相変わらず私にべったりの甘々で……甘やかされる事に慣れた頃ディック様が戻ってきた。
むさ苦しいひげ面とボサボサの髪をしながらも、凄い形相で、怒りを露わに、玉座へと向かっていく様子には警備用の騎士達も逃げ出したそうだ……。
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