10000ゼニーで売られた伯爵令嬢、ネズミ騎士をお供に伯爵家に戻る

迷い人

文字の大きさ
17 / 35

17.ここの使用人はどうして態度がでかいのでしょうか?

しおりを挟む
 夕食はあたらなかったものの、翌朝の朝食に招かれました。

 とは言いましても、食べられるものを準備して頂いているかどうか別です。 私は今日も魔術師の服装のまま、テーブルを前に姿勢正しく座り視線を伏せ他の方の食事が終わるのを、時間が流れるに任せて待っていました。

『どうした? 食べないのか? 食事はしっかりと食べたほうがいい』

「どうしましたの、遠慮せずお食べなさい。 まったく、いったいどんな生活をしていたのか。 そんな鶏ガラのような姿で……、そんな痩せた姿で公爵様に気に入って頂けると思っているのですか」

 ルークと祖母に言われた私は、何処からともなく質素なグラスを出し、自分で準備した果実水をそそぐ。

「昔はもう少し他者に対する配慮というものがありましたのに、礼儀作法から教えなければいけないようですね。 全く、この年で野蛮な魔術師となった孫を躾なおすなんて……」

 溜息交じりに祖母には言われましたが、私にだって言い分があると言うものです。

「お手数をおかけします。 では、お婆様がこちらにお座りになって、私のその礼儀作法を教えてくださいませんか?」

 その瞬間警戒音にも近い魔力の音が響き渡った。 私は見覚えのない若い侍女へと視線を向ければ、侍女は青ざめた顔でこう叫んだのです。

「この、人殺し!!」

 そう言って両手で抱え持っている水の入った大きな陶器製のピッチャーを投げつけてきたので、ソレを空中で停止させ、手で掴みユックリとテーブルへと置き、祖母へと視線を向け、テーブルの上の料理を魔術空間へと全てしまいこみました。

「食事に何が入っているかは調査しない事にはわかりませんが、ここで食事をすると言うことは、私にとって害のあることと判断いたしました。 私は命がけで礼儀作法を学ぶほどの思いはございませんので……。 そうそうエミリー様、昨晩、私に何をしにここにきたのか……そのように問われましたが、私は呼ばれてコチラに参りました。 逆に質問させて頂きます。 貴方方は、私に害を与えるために何度も手紙を出し呼び寄せたのですか?」

 エミリーは、人との面識が少ない、対人面に未熟な私ですら分かりやすく表情をゆがめました。

「アナタ、何をなさいましたの?」

 エミリーは静かにだが、明らかに侍女を責める様子で問いかけたのです。 無関係というアピールでしょうか?

「わ、私は、その……そこの女が、人を殺しまくっていた魔術師だと。 そんなものを屋敷にあげては危険だから、十二分に見張る必要があると、だけど、料理には何もしておりません!!」

「だと言っておりますわ。 お姉様は昨晩から被害妄想が激しいようにお見受けいたします。 もう少し心を開いてくださいませんと、礼儀作法一つお教えすることはできませんわ」

「私は、余り言葉が上手い方ではありません。 ですが、この先、誰が、何を言って、何を言わなかったか、何を思っているか、ソレをシッカリと記憶しておきますわ」

 そう言って、侍女の真ん前に魔術的空間を開き、先ほどの水入りピッチャーを落下させた。 物凄い音と共に落ちたソレは、床の板を破壊し、屋敷の基礎部分を剥き出しにする。

「何もしておりません……ねっ?」

「……ですから、その敵対心を丸出しにするのを、お辞めなさいませと言っておりますのよ!! 優雅さの欠片もない、そのような意識だから、侍女達が戦場で命の奪いあいをしてきたと誤解をいたしますのよ!!」

 エミリーの叫び声の中、小食の祖母は食事を終えて口を拭い、ブツブツと文句を言い始める。

「まったく、迷惑をかけることしかできませんの? 屋敷を壊すなど言語道断ですよ」

「申し訳ございません。 後で修復しておきます」

「お姉様の立場は確かに気の毒だとは思いますが、そこにいたるまで十分に理由があったのでしょう。 でしたら、お姉様が敵意をコチラに向けるのは、お門違いと言うものですわ」

「食事のたびにこのような問題を起こすなら、食事を作るのはお辞めなさい。 まったく……夫の残してくれた遺族報奨金で今はこの屋敷を何とか維持していると言うのに……これ以上、ムダ金を使わせないで頂戴」

 延々と紡がれる声を流れるように聞いていた。

 エミリーの感情の音は、相変わらず風の囁き程にも聞こえません。 ですが、愚痴を言う事でお婆様の乾いた心は満たされ、潤いに満たされる心が、心地よい音を響かせるのです。

 悪い言葉を口にしているから、悪い音が聞こえると言うものではないのですよね。 ドヤっている侍女達の方もまた、充実、満足を超えて快楽にすら至っているのが怖いところです。

 そんな中で1人だけ、不安、不穏、動揺、そんな心の響きが聞こえる者がいました。

『ルーク、あの茶色の髪を肩まで切りそろえた、他の侍女の影に隠れている侍女を調べてもらえるかしら?』

『分かった……だが、その、君は一人で大丈夫なのか?』

『なんとかなりますよ……』

『人を殺したことなどない、そう訴えないのか?』

『どうでもいいですわ……』

 私には帰るべき場所があるのですから、ここで何と思われようと本当にどうでもよかったのです。

『どうでも良くはないだろう。 いや、確かに君の居場所は魔術師の塔で、そのほかの事に興味が無いのかもしれない。 だが、そういう風に考えないでくれ、もっと怒っていい。 いや、自分の尊厳が傷つけられたのだから、怒るべきだろう!!』

『なにを、怒っているのですか? 突然に、怒りださないでよ。 私、何かしました? 伯爵家の望む子を演じなかったから怒ってしまったの?』

『違う、そうじゃない……。 あぁ、もう、俺が、悪かった……』

 大きな溜息が脳裏に響いた。

『ごめんなさい』

『そういうんじゃない。 心配しているだけだ』

 そんなやり取りは、外には聞こえないものの、ドンドン落ち込む私の様子だけは他の人の目に留まっており、侍女達は自分達の正義を勝ち誇り、エミリーと祖母を困らせる事となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「お前の代わりはいくらでもいる」と笑った婚約者が、翌日から報告書一枚書けなくなった件

歩人
ファンタジー
子爵令嬢リーゼロッテの取り柄は、文章を書くことだけ。 華やかさのかけらもない彼女は、婚約者アルベルトの政務報告、外交書簡、 演説原稿——その全てを代筆していた。 「お前の代わりはいくらでもいる」 社交界の花形令嬢に乗り換えたアルベルトは、笑ってそう言った。 翌日から、彼の机の上には白紙の報告書だけが積み上がっていく。 ——代わりは、いなかった。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

公爵家の侍女見習い、王宮の帳簿を黙らせます―

鍛高譚
恋愛
没落寸前の子爵家に生まれたキャル・キュレイションは、公爵家で侍女見習いとして働くことになる。 高位貴族から見れば、子爵令嬢など平民と大差ない。そんな弱い立場の彼女には、ただひとつ、とんでもない才能があった。 それは――暗算。 市場の会計をごまかす商人を見抜き、屋敷の帳簿の乱れを整え、誰も気づかなかった数字の歪みを拾い上げる。 その力はやがて公爵家の中だけに留まらず、領地経営、王宮財務局、そして国そのものを動かす大きな数字へと繋がっていく。 「魔法? ただの暗算です」 けれど、数字が見えるということは、見なくていいものまで見えてしまうということでもあった。 貴族社会の冷たい現実、王宮に渦巻く思惑、そしてなぜか彼女を放っておかない王太子。 立場は弱い。権力もない。 それでもキャルは、数字を武器に、自分の居場所を切り開いていく。 これは、公爵家の侍女見習いから始まった子爵令嬢が、暗算ひとつで王宮の帳簿を読み解き、成り上がっていくお仕事成長ファンタジーです。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

処理中です...