18 / 35
18.敵中にいるのか? ただ嫌われているだけなのか?
しおりを挟む
そして、礼儀作法の訓練と言いながらも、使用人達の私に向けられる敵意が、私に害を与えるものだと認めはしているエミリーは、私に部屋に戻るようにと言いました。
私を公爵様の婚約者に仕立て上げようとしているエミリーや祖母にとっては、私の今の状況は頭の痛いものでしょう。
私にある問題を正すために叱る。 それは私を躾るためにも、嫌味を言う事でしか人と交流を持てない祖母の心を満たすにも、都合の良い事だったはずですから。 ですが、使用人が私に嫌がらせをする責任を、私が悪いと言うのは道理が通らないと言うものです。
それは塔に戻っても良いと言うことになりますよね?
そんな思いがひしひしと伝わったのかもしれません。
祖母様はと言えば、食事の作法を教える筈が、その妨害をされてしまったのですから。 エミリーに使用人の躾は私の役割ではありませんよ。 アナタが言い聞かせなさいと部屋へと戻って行ってしまいました。
私が部屋へと戻れば、部屋の清掃をしていたらしい使用人が慌てて逃げていきます。
その魔力の音は、憎悪、嫌悪、恐怖、恐怖、恐怖、侮蔑、不満。
『私は、大量殺戮者として恐れられているようですわね』
『違うと正せば良いだろう』
『それには、会話が必要になってしまうでしょう?』
掃除を終えた後の部屋の中をもう一度チェックすれば、壊された術式は撤去されている。 入念に探りを入れてみましたが、新しい術式はなし、ついでに状態異常アイテムの探知もしてみれば、浴室にある石鹸に僅かばかりだけれど肌がただれる成分のものが塗り込められていた。
表面だけの毒であり、表面を削り水で洗い使うものですから、私の肌がただれてから調べても原因は分からないと言うものらしい。
『ルーク』
『どうした?』
石鹸の罠を伝えればルークは小さな身体で腕組みをし、ちちっちと呻くように音をだした。
『いや、そもそも前提が色々と間違っていたらしい。 ツライ思いをさせてしまってすまない』
『魔術師なんて、何処へいってもこんなものです。 それに、ここでは、幼い頃に私自身が色々とやらかしているので、まぁ、当時の使用人が残っていないので、因果関係も分かりませんが、私の中では自業自得と割り切っている面もあり問題はありません。 ただ、自分がこうされるのは、理解できますが、ソレを甘んじて受ける気はありませんが、構いませんよね?』
『あぁ、自衛は基本だな』
そうルークと脳内で語りながら、部屋に改めて、ウォッシュレスの術を施してからソファに腰を下ろし、林檎を何処からともなく取り出し皮をむき切り分け、ルークに勧めながら食べ始めた。
手についた果汁を舐めれば、
『行儀が悪い』
『私に同情して、もっと甘やかしてくれると思ってました』
『それと、これは別だ。 本当、礼儀作法は身に着けておいた方が得だぞ』
脳に響く声が呆れている。
『わかりました。 祖母が作法の訓練をと言っていたので、真面目に受けてきます。 その間、さっきの侍女を調べておいてください』
『そこまで言うってのは、何かあるのか? いや、あるんだろうな……』
私達は周囲に人はいないと確認はしていながら、脳内での会話を続けました。
『フレッグ様の行動は、戦場麻薬の摂取過剰によるものと考える事ができます。 戦場から麻薬中毒により戦線離脱した者の治療に同行したことがあります』
『なるほどな』
『フレッグ様に関してはソレで私の中で納得がいきます。 では、フリーダ様は? と言われれば、何故そんな薬を服用したのか? どこからそんな薬を手に入れたのか?』
『薬事態は、昔から貴族の中で使われてはいた。 政治的な婚姻が多い中で、性的な行為を義務化するよりは、少しでも楽しめた方が良いだろうと言う考えがあるそうだ』
『それも、存じております。 極秘での治療依頼はありますからね。 ですが、姉のようになるまでには、かなりの服用量が必要となります。 そもそも、魔力量が多い者同士であれば、その行為は自然と媚薬を活用した状態になると学びました。 公爵様とフリーダ様が薬に頼る必要等ないはずですよね?』
『先に正させてもらうなら、公爵とフリーダはそんな関係にまで至っていない』
『では、余計にです。 私の知っているフリーダ様は正しい人でした。 私に日々正しさを求めるほどに正しい人でした。 では、なぜ、そのような薬を? そして、なぜ、わざわざ……公爵様にはフリーダ様の他に婚約者候補はいらっしゃらなかったのですか?』
『いるなら27になるまで未婚と言う事はないだろう』
『それもそうですわね……』
全てが、私の知るフリーダ・ノルダンの行動とは思えなかった。 ましてや公爵家の名を使い人を集め、麻薬を使った乱交パーティを開く等とは考えられなかった。
『フリーダ様が……公爵様を裏切り、乱交パーティを開いていた。 というのが事実でなければ、今一度フリーダ様と公爵様の婚約は成立するのかしら?』
『政治的には可能ではあるだろうが、公爵の心情的には難しいのではないだろうか?』
『そこは、広い心でフリーダ様を受け入れて欲しいものですけど、何はともかく……フリーダ様の治療を施すことが先決……するべきかしら?』
私を公爵様の婚約者に仕立て上げようとしているエミリーや祖母にとっては、私の今の状況は頭の痛いものでしょう。
私にある問題を正すために叱る。 それは私を躾るためにも、嫌味を言う事でしか人と交流を持てない祖母の心を満たすにも、都合の良い事だったはずですから。 ですが、使用人が私に嫌がらせをする責任を、私が悪いと言うのは道理が通らないと言うものです。
それは塔に戻っても良いと言うことになりますよね?
そんな思いがひしひしと伝わったのかもしれません。
祖母様はと言えば、食事の作法を教える筈が、その妨害をされてしまったのですから。 エミリーに使用人の躾は私の役割ではありませんよ。 アナタが言い聞かせなさいと部屋へと戻って行ってしまいました。
私が部屋へと戻れば、部屋の清掃をしていたらしい使用人が慌てて逃げていきます。
その魔力の音は、憎悪、嫌悪、恐怖、恐怖、恐怖、侮蔑、不満。
『私は、大量殺戮者として恐れられているようですわね』
『違うと正せば良いだろう』
『それには、会話が必要になってしまうでしょう?』
掃除を終えた後の部屋の中をもう一度チェックすれば、壊された術式は撤去されている。 入念に探りを入れてみましたが、新しい術式はなし、ついでに状態異常アイテムの探知もしてみれば、浴室にある石鹸に僅かばかりだけれど肌がただれる成分のものが塗り込められていた。
表面だけの毒であり、表面を削り水で洗い使うものですから、私の肌がただれてから調べても原因は分からないと言うものらしい。
『ルーク』
『どうした?』
石鹸の罠を伝えればルークは小さな身体で腕組みをし、ちちっちと呻くように音をだした。
『いや、そもそも前提が色々と間違っていたらしい。 ツライ思いをさせてしまってすまない』
『魔術師なんて、何処へいってもこんなものです。 それに、ここでは、幼い頃に私自身が色々とやらかしているので、まぁ、当時の使用人が残っていないので、因果関係も分かりませんが、私の中では自業自得と割り切っている面もあり問題はありません。 ただ、自分がこうされるのは、理解できますが、ソレを甘んじて受ける気はありませんが、構いませんよね?』
『あぁ、自衛は基本だな』
そうルークと脳内で語りながら、部屋に改めて、ウォッシュレスの術を施してからソファに腰を下ろし、林檎を何処からともなく取り出し皮をむき切り分け、ルークに勧めながら食べ始めた。
手についた果汁を舐めれば、
『行儀が悪い』
『私に同情して、もっと甘やかしてくれると思ってました』
『それと、これは別だ。 本当、礼儀作法は身に着けておいた方が得だぞ』
脳に響く声が呆れている。
『わかりました。 祖母が作法の訓練をと言っていたので、真面目に受けてきます。 その間、さっきの侍女を調べておいてください』
『そこまで言うってのは、何かあるのか? いや、あるんだろうな……』
私達は周囲に人はいないと確認はしていながら、脳内での会話を続けました。
『フレッグ様の行動は、戦場麻薬の摂取過剰によるものと考える事ができます。 戦場から麻薬中毒により戦線離脱した者の治療に同行したことがあります』
『なるほどな』
『フレッグ様に関してはソレで私の中で納得がいきます。 では、フリーダ様は? と言われれば、何故そんな薬を服用したのか? どこからそんな薬を手に入れたのか?』
『薬事態は、昔から貴族の中で使われてはいた。 政治的な婚姻が多い中で、性的な行為を義務化するよりは、少しでも楽しめた方が良いだろうと言う考えがあるそうだ』
『それも、存じております。 極秘での治療依頼はありますからね。 ですが、姉のようになるまでには、かなりの服用量が必要となります。 そもそも、魔力量が多い者同士であれば、その行為は自然と媚薬を活用した状態になると学びました。 公爵様とフリーダ様が薬に頼る必要等ないはずですよね?』
『先に正させてもらうなら、公爵とフリーダはそんな関係にまで至っていない』
『では、余計にです。 私の知っているフリーダ様は正しい人でした。 私に日々正しさを求めるほどに正しい人でした。 では、なぜ、そのような薬を? そして、なぜ、わざわざ……公爵様にはフリーダ様の他に婚約者候補はいらっしゃらなかったのですか?』
『いるなら27になるまで未婚と言う事はないだろう』
『それもそうですわね……』
全てが、私の知るフリーダ・ノルダンの行動とは思えなかった。 ましてや公爵家の名を使い人を集め、麻薬を使った乱交パーティを開く等とは考えられなかった。
『フリーダ様が……公爵様を裏切り、乱交パーティを開いていた。 というのが事実でなければ、今一度フリーダ様と公爵様の婚約は成立するのかしら?』
『政治的には可能ではあるだろうが、公爵の心情的には難しいのではないだろうか?』
『そこは、広い心でフリーダ様を受け入れて欲しいものですけど、何はともかく……フリーダ様の治療を施すことが先決……するべきかしら?』
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
375
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる