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20.第一王子達の落としどころ
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王子とその相方とも言うべき女性達を巡る空気が静まり返った。
強い風が吹けば、女性達の騒めきがあがった。
木々を揺れれば、往年の戦士達が姿を現した。
風が……彼等を囲む人の気配を露わにさせたのだ。
彼等は多くの目に晒されていたが、彼等はその気配に気づいていなかった。
ソレは賢者の魔法の一つである。
弾けた風は、彼等だけを特別に包みこみ、彼等だけの空間だと誤解させていたのだ。
護衛にジルとラースが与えられた日。
改装を加えられた屋敷で、王様はこう言った。
「これから、国を乱します」
「乱れる。 では、なく?」
「そう、乱すのです。 獣だから、力が全てだから、それで済んでいた時代の終わりは明らか……新たな時代を迎えるにあたって……多くの者が……自らの立場を確保するために動き出すでしょう。 だからソレらが邪魔をしないよう、乱し、破壊し、捨てるのです」
「言い方はアレですけど……折角積み上げた物を壊し、停滞させるようなお馬鹿さん達では、文明を託すに値しません。 争いは嫌いだけど……仕方がないと言う事なのですね」
私が神の役割の元に賢者として言えば、王様は私の前に膝をつき、私の手をとって口づけた。
「アナタが積み重ねた国を乱す事を許して下さるなら、そして正す事に助力願えるなら、私は……天使殿、アナタの願いを何でも聞こう。 例えこの身であっても差しだすことを誓おう……」
そして……王様とジルが、予定していたかのように私の前に膝をついた。 ドーラもソレに続き……ラースだけは脇でソッポを向いていた。
「いいよ……」
どうせ、もう行く場所もないし……。
約束したから……。
だから、私シア・エムリスは見ている。
王子達とそして共にいる者達を……。
名前だけであったとは言え自分の夫の姿には……衝撃を覚え……そして、ドーラは今すぐドロテアを殺すと怒り……仕方がないので王妃様に預けてある。
現王妃様はセグのお母さんではあるけど、ヴィズとランディの母親ではないと言う話だ。 2人の母親は、ランディが生まれた時のショックで亡くなったのだと言う話だった。
それで、今の私達は、ジルとラースと共に、6人から少し離れた屋根の上にいる。 気配を隠す魔法と、水鏡と、通音の魔法を使って彼等の状況を見守っていた。
「周囲の状況気づかないなんて戦士って以外と鈍いのね」
私の言葉にジルは苦笑を浮かべる。
「チビちゃんが魔法を使っていたらだろう。 ラース伏せ」
イラっとした様子でラースがジルに言われた通り、屋根の上で伏せれば、私がその背に座らせられた。
「疲れるだろう?」
私は肩を竦め、もう1度水鏡へと視線を向けた。
眼下にいるヴィズが顔色を失っているのが水鏡から見える。
周囲に人が居る事に気づかないまま語り、アズ姉様に働いた無体を周囲に知られた事に動揺していた。
そして、ようやく気付いたのだろう……彼は……ヴィズは震えていた。
「ふ、ざけるなぁあ」
その声は小さく、握る拳は振り上げられない。 流石に、ここでセグに殴りかかる意味ぐらいは理解しているらしい。
僅かな間と共に……彼は脱力し、こうつぶやきだした。
「もう、おしまいだ……おしまいだ……おしまいだ」
戦乱の世がさり、力による支配が終わった先……。 そんな未来だからこそ、三兄弟の仲でも力の劣るヴィズが優位になると、どこか安穏としていた所があるのだろう。 そして……同時にアズ姉様の実家は、今、始まったばかりの文明の中で5本の指に入る商いを繰り広げている。 それもヴィズにとっての強みだった。
強みであったはずなのに忘れていたのだ。
アズが手にしていた力を……。
「ヴィズ様……」
アズが静かに言えば、ヴィズは縋るようにアズに手を伸べた。
「俺を……捨てないでくれ」
「アレは、愛なのかしら? 保身なのかしら?」
シアが聞けば、ジルが答えた。
「女人の目からすれば不快だろうが、少なくとも……2人の中に亀裂が入ってしまえば、アズが獲得した商家としての力、シアとの繋がりに群がる者達で面倒が起きる。 今は、ここが落としどころだろう」
アズは静かにヴィズに微笑んだ。
「分かっていただければいいのです。 今のアナタには何の力も無く……私の方が使える力が多いと言う事を」
かなり怒っていたようだ。
当然ですよね。
とは言え、幼い頃から面倒を見て来たと言う情はあるし、放置していても反文明派の連中に利用されるだけ。 後は、アズとヴィズの問題と言う事で……私シアは考える事を止めたのだった。
そう、ここで終わるはずだった。
収まるはずだった。
「次の時代は、力ではどうにもならない世界なんです。 ヴィズ兄さんは、もう少しアズ義姉様に感謝を……」
「そうね……でも、力も必要よ。 ここでアズ様が、ヴィズ様を立てる事が反文明派の連中を抑える事になると思うのだけど……ほら、感じませんか? 私達に向けられる視線を」
セグの言葉に割って入ったのはドロテアだった。
強い風が吹けば、女性達の騒めきがあがった。
木々を揺れれば、往年の戦士達が姿を現した。
風が……彼等を囲む人の気配を露わにさせたのだ。
彼等は多くの目に晒されていたが、彼等はその気配に気づいていなかった。
ソレは賢者の魔法の一つである。
弾けた風は、彼等だけを特別に包みこみ、彼等だけの空間だと誤解させていたのだ。
護衛にジルとラースが与えられた日。
改装を加えられた屋敷で、王様はこう言った。
「これから、国を乱します」
「乱れる。 では、なく?」
「そう、乱すのです。 獣だから、力が全てだから、それで済んでいた時代の終わりは明らか……新たな時代を迎えるにあたって……多くの者が……自らの立場を確保するために動き出すでしょう。 だからソレらが邪魔をしないよう、乱し、破壊し、捨てるのです」
「言い方はアレですけど……折角積み上げた物を壊し、停滞させるようなお馬鹿さん達では、文明を託すに値しません。 争いは嫌いだけど……仕方がないと言う事なのですね」
私が神の役割の元に賢者として言えば、王様は私の前に膝をつき、私の手をとって口づけた。
「アナタが積み重ねた国を乱す事を許して下さるなら、そして正す事に助力願えるなら、私は……天使殿、アナタの願いを何でも聞こう。 例えこの身であっても差しだすことを誓おう……」
そして……王様とジルが、予定していたかのように私の前に膝をついた。 ドーラもソレに続き……ラースだけは脇でソッポを向いていた。
「いいよ……」
どうせ、もう行く場所もないし……。
約束したから……。
だから、私シア・エムリスは見ている。
王子達とそして共にいる者達を……。
名前だけであったとは言え自分の夫の姿には……衝撃を覚え……そして、ドーラは今すぐドロテアを殺すと怒り……仕方がないので王妃様に預けてある。
現王妃様はセグのお母さんではあるけど、ヴィズとランディの母親ではないと言う話だ。 2人の母親は、ランディが生まれた時のショックで亡くなったのだと言う話だった。
それで、今の私達は、ジルとラースと共に、6人から少し離れた屋根の上にいる。 気配を隠す魔法と、水鏡と、通音の魔法を使って彼等の状況を見守っていた。
「周囲の状況気づかないなんて戦士って以外と鈍いのね」
私の言葉にジルは苦笑を浮かべる。
「チビちゃんが魔法を使っていたらだろう。 ラース伏せ」
イラっとした様子でラースがジルに言われた通り、屋根の上で伏せれば、私がその背に座らせられた。
「疲れるだろう?」
私は肩を竦め、もう1度水鏡へと視線を向けた。
眼下にいるヴィズが顔色を失っているのが水鏡から見える。
周囲に人が居る事に気づかないまま語り、アズ姉様に働いた無体を周囲に知られた事に動揺していた。
そして、ようやく気付いたのだろう……彼は……ヴィズは震えていた。
「ふ、ざけるなぁあ」
その声は小さく、握る拳は振り上げられない。 流石に、ここでセグに殴りかかる意味ぐらいは理解しているらしい。
僅かな間と共に……彼は脱力し、こうつぶやきだした。
「もう、おしまいだ……おしまいだ……おしまいだ」
戦乱の世がさり、力による支配が終わった先……。 そんな未来だからこそ、三兄弟の仲でも力の劣るヴィズが優位になると、どこか安穏としていた所があるのだろう。 そして……同時にアズ姉様の実家は、今、始まったばかりの文明の中で5本の指に入る商いを繰り広げている。 それもヴィズにとっての強みだった。
強みであったはずなのに忘れていたのだ。
アズが手にしていた力を……。
「ヴィズ様……」
アズが静かに言えば、ヴィズは縋るようにアズに手を伸べた。
「俺を……捨てないでくれ」
「アレは、愛なのかしら? 保身なのかしら?」
シアが聞けば、ジルが答えた。
「女人の目からすれば不快だろうが、少なくとも……2人の中に亀裂が入ってしまえば、アズが獲得した商家としての力、シアとの繋がりに群がる者達で面倒が起きる。 今は、ここが落としどころだろう」
アズは静かにヴィズに微笑んだ。
「分かっていただければいいのです。 今のアナタには何の力も無く……私の方が使える力が多いと言う事を」
かなり怒っていたようだ。
当然ですよね。
とは言え、幼い頃から面倒を見て来たと言う情はあるし、放置していても反文明派の連中に利用されるだけ。 後は、アズとヴィズの問題と言う事で……私シアは考える事を止めたのだった。
そう、ここで終わるはずだった。
収まるはずだった。
「次の時代は、力ではどうにもならない世界なんです。 ヴィズ兄さんは、もう少しアズ義姉様に感謝を……」
「そうね……でも、力も必要よ。 ここでアズ様が、ヴィズ様を立てる事が反文明派の連中を抑える事になると思うのだけど……ほら、感じませんか? 私達に向けられる視線を」
セグの言葉に割って入ったのはドロテアだった。
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