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1章
03.可哀そうな皇子様
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父と母は善人だった。
きっと、人が好きで、人に好かれる自分が好きだったのだと思う。
私は、そんな両親が嫌いだった。
両親は、自分達を犠牲にしても、領民に尽くすような人達だった。 よく働き、よく学び、贅沢をせず、貴族でありながら貴族らしいところは1つもなく、領民以上に土を耕し、糸を紡ぎ、機を織り、縫物や編物をし、領民たちに良く施した。
誕生日に家族で交換しあった手作りのプレゼントも、領民たちが望めば、与えたし、私もまた与えるようにと言われ、何度も泣き、泣けばその心の貧しさを叱られた。
「良い人であれ。 困っている人には手を差し伸べろ。 人に愛される人であれ」
両親は、私にも善人であるよう求めたのだ。
勝手に、自分の行為に酔っていればよいのに。
「善行を人に要求した時点で善人ではないわ!!」
幼い私が自分のために作った小さなお人形を奪われまいと泣きながら叫べば、両親に殴られ、人形は奪われ、私より年上の少女にプレゼントされた。
まぁ、数日後には飽きて捨てられていたのだけど。
「オマエのような卑しい奴は、家畜にも劣る。 自分の行いを反省するといい!!」
空腹と寒さに負けた私は、本音と建前、裏表を使い分けるようになった……5歳の時だったと思う。
毎日が苦痛だった。
そんな私を叔父が救ってくれた。
12歳になる年、叔父は私に王立学園に入ることを勧めたのだ。
両親は働き手が減ることを拒んだけれど、叔父は必死に賢い私を学園に通わせれば、より善行を行えるだろうと説得し、その賢さが奨学金を得るほどで、民に一切の負担をかけないなら認めようと、渋々であるが良心を説得してくれたのだ。
叔父には感謝しかない。
が……。
善人だった両親は死んだ。
借金をしてまで、人に施しを繰り返した結果……両親は貧しい恰好をしていたにも関わらず、金を溜め込んでいると思われたのだ。 両親は借金を重ねに重ねて既に金を借りられぬ程になっており、私に何とか金を準備できないかと手紙を送ってきていたくらい。
そこまでになれば、善行を行いたい両親とて、領民への施しは辞めてしまうと言うもの。 それに不満を持った領民に両親は殺され。 そして……私の不在中に叔父は子爵となった。
気の毒な叔父上……借金があるなど考えもしなかったのでしょうね。 叔父夫婦は行方不明となり、爵位は見ず知らずの者が子爵として社交会に出向いているそうだ。
万が一親の借金を返せと言う者の存在を考えれば、王都から離れるのが最善と言える。
それが私の日常だった。
だから、人が好きではない。
きっと、恋はしない。
だけど、恋を諦めると言う事と、興味は別。
何しろ年頃の乙女ですからね。
それに!!
初めてが綺麗な皇子様であれば、ソレは人に語らずとも、私の自慢となり、尊厳となり、価値となる……そんな気がしたのです。
「可哀そうな皇子様。 ただ、綺麗だと言うだけの理由で、慰み者になるのだから」
美しい黄金色の髪のリボンをほどけば、サラリと零れ落ちた。 手で受け止めようとすれば心地よい手触りに嫉妬し、悲しくなり、申し訳なさに胸が痛んだ。
「私に思い出をください」
小さな小さな声で呟き願う。
無遠慮に顔を寄せたが、口づけなどできるはずもない。 ただ、目元を彩る睫毛が長いなぁ……なんて眺めた。 そっと指先で頬に触れてみれば、その肌は男性としては美しいが、女性の柔らかい肌とは違っていた。
「可哀そうな皇子様」
くだらない理由で、今から私に襲われるのだから、なんて可哀そうな人でしょう。 そう思えば気持ちが揺れた。
今なら引き返せる。
良く働いたご褒美をもらって何が悪い。
ほんの少しの時間、私の自由にさせてもらうだけよ。
引き返すなら……。
ぐらぐら揺れる思い。
考える時間を自分に与えるように、私は浴室へと向かった。
きっと、人が好きで、人に好かれる自分が好きだったのだと思う。
私は、そんな両親が嫌いだった。
両親は、自分達を犠牲にしても、領民に尽くすような人達だった。 よく働き、よく学び、贅沢をせず、貴族でありながら貴族らしいところは1つもなく、領民以上に土を耕し、糸を紡ぎ、機を織り、縫物や編物をし、領民たちに良く施した。
誕生日に家族で交換しあった手作りのプレゼントも、領民たちが望めば、与えたし、私もまた与えるようにと言われ、何度も泣き、泣けばその心の貧しさを叱られた。
「良い人であれ。 困っている人には手を差し伸べろ。 人に愛される人であれ」
両親は、私にも善人であるよう求めたのだ。
勝手に、自分の行為に酔っていればよいのに。
「善行を人に要求した時点で善人ではないわ!!」
幼い私が自分のために作った小さなお人形を奪われまいと泣きながら叫べば、両親に殴られ、人形は奪われ、私より年上の少女にプレゼントされた。
まぁ、数日後には飽きて捨てられていたのだけど。
「オマエのような卑しい奴は、家畜にも劣る。 自分の行いを反省するといい!!」
空腹と寒さに負けた私は、本音と建前、裏表を使い分けるようになった……5歳の時だったと思う。
毎日が苦痛だった。
そんな私を叔父が救ってくれた。
12歳になる年、叔父は私に王立学園に入ることを勧めたのだ。
両親は働き手が減ることを拒んだけれど、叔父は必死に賢い私を学園に通わせれば、より善行を行えるだろうと説得し、その賢さが奨学金を得るほどで、民に一切の負担をかけないなら認めようと、渋々であるが良心を説得してくれたのだ。
叔父には感謝しかない。
が……。
善人だった両親は死んだ。
借金をしてまで、人に施しを繰り返した結果……両親は貧しい恰好をしていたにも関わらず、金を溜め込んでいると思われたのだ。 両親は借金を重ねに重ねて既に金を借りられぬ程になっており、私に何とか金を準備できないかと手紙を送ってきていたくらい。
そこまでになれば、善行を行いたい両親とて、領民への施しは辞めてしまうと言うもの。 それに不満を持った領民に両親は殺され。 そして……私の不在中に叔父は子爵となった。
気の毒な叔父上……借金があるなど考えもしなかったのでしょうね。 叔父夫婦は行方不明となり、爵位は見ず知らずの者が子爵として社交会に出向いているそうだ。
万が一親の借金を返せと言う者の存在を考えれば、王都から離れるのが最善と言える。
それが私の日常だった。
だから、人が好きではない。
きっと、恋はしない。
だけど、恋を諦めると言う事と、興味は別。
何しろ年頃の乙女ですからね。
それに!!
初めてが綺麗な皇子様であれば、ソレは人に語らずとも、私の自慢となり、尊厳となり、価値となる……そんな気がしたのです。
「可哀そうな皇子様。 ただ、綺麗だと言うだけの理由で、慰み者になるのだから」
美しい黄金色の髪のリボンをほどけば、サラリと零れ落ちた。 手で受け止めようとすれば心地よい手触りに嫉妬し、悲しくなり、申し訳なさに胸が痛んだ。
「私に思い出をください」
小さな小さな声で呟き願う。
無遠慮に顔を寄せたが、口づけなどできるはずもない。 ただ、目元を彩る睫毛が長いなぁ……なんて眺めた。 そっと指先で頬に触れてみれば、その肌は男性としては美しいが、女性の柔らかい肌とは違っていた。
「可哀そうな皇子様」
くだらない理由で、今から私に襲われるのだから、なんて可哀そうな人でしょう。 そう思えば気持ちが揺れた。
今なら引き返せる。
良く働いたご褒美をもらって何が悪い。
ほんの少しの時間、私の自由にさせてもらうだけよ。
引き返すなら……。
ぐらぐら揺れる思い。
考える時間を自分に与えるように、私は浴室へと向かった。
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