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1章
04.雑談と思い出
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シャワーから出れば皇子が起きていた。
間違いを犯さずに済んだ……。
安堵、そして混乱。
この状況をどう言い逃れるかと考えるのだけど、止まった思考が動き出すまで少し時間が必要で、私が話し出す前に皇子が声を発する。
「俺も風呂……」
寝ぼけている?
ベッドから降りて、歩きだす皇子にエスコートとばかりに手を差し出してみせた。 少しだけ皇子の方が高い視線が合う。
「ぁ?」
眉間を寄せた怪訝な目が向けられれば、風呂に入って時間を置いて良かったと考える。 二度と会う事がないなら特別な思い出をと思ったけれど、強引に事をなして嫌われることまで考えて居なかった事に気づき、ぞっとしした。
「こんな格好で失礼します」
「いや、まぁ、風呂上りは大抵そんなもんだろう。 それより手?」
「酒を召し上がり、お眠りになっていらしたので気を付けてくださいませ」
いつもより仰々しく丁寧に言って見せる。
「いや、最近ちょっと寝不足だっただけだ。 酒はまぁ……慣れてる」
「慣れてる?」
「そう、騎士団に混ざって訓練しているとな。 こう、連帯感がどうこうって飲まされる」
酒を飲むことと連帯感の流れは理解できなかったが、綺麗な顔立ちの皇子が汗を流し、泥にまみれ、表情をころころ変えていたのを思い出せば、自分が思っていたよりも皇子を視線で追っていたのだと、自覚した。
ヤバイ……。
鼓動が早くなる。
差し出したままの私の手に、皇子の手が近寄る。
女性扱いしたと不機嫌そうに払いのけるためだと思っていたけれど、皇子は私の手をとり指先に口づけた。
「なっ……」
何を考えて居らっしゃるのですか! 等と言える私ではない。 立場も心も。
私が怒り出す前に浴室に急ぎ逃げ出してしまった殿下は、顔だけを私に向けて話しかけた。
「折角部屋を借りたんだ。 たまには二人でユックリと話そう」
こうさりげなく言って軽く手を振るところが、ズルイ……。 そう思えば、今日を最後に彼と会えなくなるのだと、醜く歪んだ私の顔がガラスに映っていた。
「あがった。 なんか飲み物ある?」
ヒタヒタと濡れたままの身体にガウンを着て皇子は歩いてくる。
「風邪を引きますよ。 ホットミルク?」
室内にミルクはないが、注文をすれば持ってきてもらえるだろう。 皇子の奢り(食事の時の飲酒でくたばった責任上)って事で、宿泊施設側も待遇がいいし。
「鍛えているから平気。 ガキじゃないんだからミルクを勧めんな」
昼と同じ返事に少し笑った。 今まで何度も繰り返した言葉も、今日で終わるのかと思えば、大切な言葉に思える。
「皇子、髪ぐらいは乾かしましょう?」
「じゃぁ、魔術でちゃちゃっと済ませて」
「贅沢ですね」
「贅沢が許される立場だからな。 それに、シェリルの魔力は好きだ。 俺達、人として相性が良いんだよ」
早くしろと、ソファに座りコッチを見てくる。
「皇子は……、言葉を選んで話してください。 勘違いをされますよ」
魔力に湿気を吸収させる性質を少しだけ持たせて、皇子の身体を巡らせる。 やりすぎると乾燥して痒くなるから加減は大事。
「勘違いって?」
ニッコリ人の好さそうな外交用の笑みを向けてくるから、分かってやっているのかと肩を竦めて見せた。
「質が悪い事で」
「勘違いしてくれていいけど」
皇子相手に庶民の娘が勘違いをしてどうすると言うのですか。
鼻歌交じりの皇子は、特別にテーブルに並べられたらしい、なんか良い感じのお酒の封をあけてグラスに少しそそいでいる、私は呆れたと言う意志を告げるための溜息をついで、
「まだ、飲むつもりですか」
「別に、酔わないって、さっきも眠かっただけだし」
そして、私も酒を勧められ……口にした酒は、私には少し苦かった。
間違いを犯さずに済んだ……。
安堵、そして混乱。
この状況をどう言い逃れるかと考えるのだけど、止まった思考が動き出すまで少し時間が必要で、私が話し出す前に皇子が声を発する。
「俺も風呂……」
寝ぼけている?
ベッドから降りて、歩きだす皇子にエスコートとばかりに手を差し出してみせた。 少しだけ皇子の方が高い視線が合う。
「ぁ?」
眉間を寄せた怪訝な目が向けられれば、風呂に入って時間を置いて良かったと考える。 二度と会う事がないなら特別な思い出をと思ったけれど、強引に事をなして嫌われることまで考えて居なかった事に気づき、ぞっとしした。
「こんな格好で失礼します」
「いや、まぁ、風呂上りは大抵そんなもんだろう。 それより手?」
「酒を召し上がり、お眠りになっていらしたので気を付けてくださいませ」
いつもより仰々しく丁寧に言って見せる。
「いや、最近ちょっと寝不足だっただけだ。 酒はまぁ……慣れてる」
「慣れてる?」
「そう、騎士団に混ざって訓練しているとな。 こう、連帯感がどうこうって飲まされる」
酒を飲むことと連帯感の流れは理解できなかったが、綺麗な顔立ちの皇子が汗を流し、泥にまみれ、表情をころころ変えていたのを思い出せば、自分が思っていたよりも皇子を視線で追っていたのだと、自覚した。
ヤバイ……。
鼓動が早くなる。
差し出したままの私の手に、皇子の手が近寄る。
女性扱いしたと不機嫌そうに払いのけるためだと思っていたけれど、皇子は私の手をとり指先に口づけた。
「なっ……」
何を考えて居らっしゃるのですか! 等と言える私ではない。 立場も心も。
私が怒り出す前に浴室に急ぎ逃げ出してしまった殿下は、顔だけを私に向けて話しかけた。
「折角部屋を借りたんだ。 たまには二人でユックリと話そう」
こうさりげなく言って軽く手を振るところが、ズルイ……。 そう思えば、今日を最後に彼と会えなくなるのだと、醜く歪んだ私の顔がガラスに映っていた。
「あがった。 なんか飲み物ある?」
ヒタヒタと濡れたままの身体にガウンを着て皇子は歩いてくる。
「風邪を引きますよ。 ホットミルク?」
室内にミルクはないが、注文をすれば持ってきてもらえるだろう。 皇子の奢り(食事の時の飲酒でくたばった責任上)って事で、宿泊施設側も待遇がいいし。
「鍛えているから平気。 ガキじゃないんだからミルクを勧めんな」
昼と同じ返事に少し笑った。 今まで何度も繰り返した言葉も、今日で終わるのかと思えば、大切な言葉に思える。
「皇子、髪ぐらいは乾かしましょう?」
「じゃぁ、魔術でちゃちゃっと済ませて」
「贅沢ですね」
「贅沢が許される立場だからな。 それに、シェリルの魔力は好きだ。 俺達、人として相性が良いんだよ」
早くしろと、ソファに座りコッチを見てくる。
「皇子は……、言葉を選んで話してください。 勘違いをされますよ」
魔力に湿気を吸収させる性質を少しだけ持たせて、皇子の身体を巡らせる。 やりすぎると乾燥して痒くなるから加減は大事。
「勘違いって?」
ニッコリ人の好さそうな外交用の笑みを向けてくるから、分かってやっているのかと肩を竦めて見せた。
「質が悪い事で」
「勘違いしてくれていいけど」
皇子相手に庶民の娘が勘違いをしてどうすると言うのですか。
鼻歌交じりの皇子は、特別にテーブルに並べられたらしい、なんか良い感じのお酒の封をあけてグラスに少しそそいでいる、私は呆れたと言う意志を告げるための溜息をついで、
「まだ、飲むつもりですか」
「別に、酔わないって、さっきも眠かっただけだし」
そして、私も酒を勧められ……口にした酒は、私には少し苦かった。
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