31 / 33
3章 変革
31.理想とする未来
しおりを挟む
馬鹿にしたような視線が私に向けられ、掴まれていた胸倉が離された。
「馬鹿げている」
「他国との穀物売買契約が白紙となるなら、新しく王につく者はいると思いますか?」
「……そりゃぁ、他国との契約が無効となるなら……」
「なら、簡単じゃないですか。 今の王国を打倒し、新しい国を立ち上げればいい」
大笑いをされた。
食堂の椅子に座り、視線を背けられた。
「これだから、馬鹿は困る。 新しい後ろ盾のない王に、他国が無理強いをしてくる可能性だってある。 そうなるなら、いっそ他国の属国となる方がマシではないのか?」
ランスが言う。
「それでは、今までと一緒ではありませんか……与えられたものを食べるだけの駄馬が、頭を使わず人を馬鹿にしないでいただけるかしら?」
私は鼻で笑い、椅子に座り目線が下になったランスを見下す。
「なにを!!」
睨み合う私とランス。
そして、止めに入ったのは、いつの間にかその場にいたリンクとヨハンだった。
「まぁ、ランメルトが意味もなく、限界近くにある団長に彼女に会わせるとは思えません。 1度話を伺ってもいいでしょうか?」
「俺が、お茶を入れなおそう」
「いえ、調理場には、入らないでくださいませ」
お茶を淹れだせば、イライラした様子のランスが嫌味っぽく言ってくる。
「駄馬、にも分かるようご説明いただけますかな?」
険悪な様子の中、茶を淹れ終えた私は、食事の準備を魔術で行いながら、説明を始めた。
「重要なのは、今までの敵を作らない方法ではなく、味方となる国を作り、敵となる国を作る事です」
「なんでも思うままの国を誰が対等の国として扱う? それも、戦力もまともにない癖に、敵を作るような馬鹿な国に誰が味方する? 敵とされた国は、これ幸いと国を取りにくるだろう」
「年貢を納める事を拒否し、領主を殺してまで守った過剰な穀物ですが、保管場所を確保できず、雨風に晒されグチャグチャ(今までは領主が一括管理していたが内乱の折に破壊)。 売れないどころか食べても不味い。 住まいもボロボロ、新しい服も買えず生活困窮。 領主を殺して改善すべき点が、全て悪い方向に進み困窮した民」
私は、お茶を飲み一息ついて、言葉を続けた。
「今の、この国は戦争をする価値もありません。 既に疲弊した民を戦争で虐げ、彼等の仕事を妨げ、何もかも更地にして、実りを得られず、ソレを復興させるだけの力を持つ国はありませんよ」
呆気にとられる様子を横に私は説明する。
「問題点をあげましょう。 内乱の原因は、外交である。 ここは理解できますよね?」
「あぁ」
「では、現状と、私が考える改善を説明しますね」
現状
年貢 収穫量の6~7割。
売却 ABCDE各国へ1トンあたり30万で売却。
FGHの3か国は1トン当たり50万でDEから購入。
改善
年貢 収穫量の4割。
売却 ABCの各国に1トンあたり50万で売却。
「はぁ、突然に値上がりして誰が買うんですか!!」
「買いますよ、DEFGH国もバウスコールの穀物に依存しきっていますから」
改善
ABC国への売却量増加、DEFGHへの転売を許可。
年貢の売上の4割を領主へと返還し、領地復興に使用。
「利益をどれだけ得るかは、ABC国の手腕一つとなりますが、ABC国を全面的に味方に付けることで、面倒事の半分を請け負ってくれた挙句、自国資本が増えます」
「ソレをすると、DEFGHの民が、飢えるのではありませんか?」
「なりますね。 それに関しては商人に対して国が穀物買い付け許可証を与えます。 当然有料ですよ。 買付額、売却額は商人の手腕次第ってところですね。 これで、当面の国営はなんとかなるはずです」
「こんな机上の空論……上手くいく訳……」
「そこは外交的手腕になりますからねぇ……。 外交を詰め、貴族を手懐け、数年……その間に食糧難を避ける準備も必要となってきます」
「食糧難って簡単に言うが……」
「イモや豆の生産量を増やすんですよ。 年貢ではなく自分達が食べる分を、そうすれば国に気づかれません。 国は穀物を管理しますが、それ以外は日常用として管理しませんから。 余った分は、商人達に買い付けてもらい、彼等の生活を安定させます。 数年の準備期間を使い次期国王候補の名をこの時期に広めることも重要ですね」
「……飽きれた……」
ランスが、肩を竦めて見せる。
「アナタは、セーターを編むよりするべきことがあるのではありませんか?」
「……セーターは大事ですよ。 暖かいですし、こう編んでいると幸せな気分になれますから」
「シェリル……」
知らない声で古い名を呼ばれた。 何時もであれば振り返らないが、その日だけは特別だと私は振り返る。
「なんでしょうか? フェリクス様」
「馬鹿げている」
「他国との穀物売買契約が白紙となるなら、新しく王につく者はいると思いますか?」
「……そりゃぁ、他国との契約が無効となるなら……」
「なら、簡単じゃないですか。 今の王国を打倒し、新しい国を立ち上げればいい」
大笑いをされた。
食堂の椅子に座り、視線を背けられた。
「これだから、馬鹿は困る。 新しい後ろ盾のない王に、他国が無理強いをしてくる可能性だってある。 そうなるなら、いっそ他国の属国となる方がマシではないのか?」
ランスが言う。
「それでは、今までと一緒ではありませんか……与えられたものを食べるだけの駄馬が、頭を使わず人を馬鹿にしないでいただけるかしら?」
私は鼻で笑い、椅子に座り目線が下になったランスを見下す。
「なにを!!」
睨み合う私とランス。
そして、止めに入ったのは、いつの間にかその場にいたリンクとヨハンだった。
「まぁ、ランメルトが意味もなく、限界近くにある団長に彼女に会わせるとは思えません。 1度話を伺ってもいいでしょうか?」
「俺が、お茶を入れなおそう」
「いえ、調理場には、入らないでくださいませ」
お茶を淹れだせば、イライラした様子のランスが嫌味っぽく言ってくる。
「駄馬、にも分かるようご説明いただけますかな?」
険悪な様子の中、茶を淹れ終えた私は、食事の準備を魔術で行いながら、説明を始めた。
「重要なのは、今までの敵を作らない方法ではなく、味方となる国を作り、敵となる国を作る事です」
「なんでも思うままの国を誰が対等の国として扱う? それも、戦力もまともにない癖に、敵を作るような馬鹿な国に誰が味方する? 敵とされた国は、これ幸いと国を取りにくるだろう」
「年貢を納める事を拒否し、領主を殺してまで守った過剰な穀物ですが、保管場所を確保できず、雨風に晒されグチャグチャ(今までは領主が一括管理していたが内乱の折に破壊)。 売れないどころか食べても不味い。 住まいもボロボロ、新しい服も買えず生活困窮。 領主を殺して改善すべき点が、全て悪い方向に進み困窮した民」
私は、お茶を飲み一息ついて、言葉を続けた。
「今の、この国は戦争をする価値もありません。 既に疲弊した民を戦争で虐げ、彼等の仕事を妨げ、何もかも更地にして、実りを得られず、ソレを復興させるだけの力を持つ国はありませんよ」
呆気にとられる様子を横に私は説明する。
「問題点をあげましょう。 内乱の原因は、外交である。 ここは理解できますよね?」
「あぁ」
「では、現状と、私が考える改善を説明しますね」
現状
年貢 収穫量の6~7割。
売却 ABCDE各国へ1トンあたり30万で売却。
FGHの3か国は1トン当たり50万でDEから購入。
改善
年貢 収穫量の4割。
売却 ABCの各国に1トンあたり50万で売却。
「はぁ、突然に値上がりして誰が買うんですか!!」
「買いますよ、DEFGH国もバウスコールの穀物に依存しきっていますから」
改善
ABC国への売却量増加、DEFGHへの転売を許可。
年貢の売上の4割を領主へと返還し、領地復興に使用。
「利益をどれだけ得るかは、ABC国の手腕一つとなりますが、ABC国を全面的に味方に付けることで、面倒事の半分を請け負ってくれた挙句、自国資本が増えます」
「ソレをすると、DEFGHの民が、飢えるのではありませんか?」
「なりますね。 それに関しては商人に対して国が穀物買い付け許可証を与えます。 当然有料ですよ。 買付額、売却額は商人の手腕次第ってところですね。 これで、当面の国営はなんとかなるはずです」
「こんな机上の空論……上手くいく訳……」
「そこは外交的手腕になりますからねぇ……。 外交を詰め、貴族を手懐け、数年……その間に食糧難を避ける準備も必要となってきます」
「食糧難って簡単に言うが……」
「イモや豆の生産量を増やすんですよ。 年貢ではなく自分達が食べる分を、そうすれば国に気づかれません。 国は穀物を管理しますが、それ以外は日常用として管理しませんから。 余った分は、商人達に買い付けてもらい、彼等の生活を安定させます。 数年の準備期間を使い次期国王候補の名をこの時期に広めることも重要ですね」
「……飽きれた……」
ランスが、肩を竦めて見せる。
「アナタは、セーターを編むよりするべきことがあるのではありませんか?」
「……セーターは大事ですよ。 暖かいですし、こう編んでいると幸せな気分になれますから」
「シェリル……」
知らない声で古い名を呼ばれた。 何時もであれば振り返らないが、その日だけは特別だと私は振り返る。
「なんでしょうか? フェリクス様」
12
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
雑草と呼ばれた令嬢は、氷の公爵の庭を咲かせる
もちもちほっぺ
恋愛
亡き母の形見の庭を守ることだけが、フェリシアの居場所だった。
継母に食卓での給仕を命じられ、義妹に母の形見の花を踏みにじられても、父は「仲良くしなさい」と言うだけだった。
植物魔法は「雑草いじり」と蔑まれ、フェリシアはルミナリス家の娘ではなく、使用人以下として生きてきた。
転機は突然訪れる。
「氷の魔王」と恐れられるギルバート・ウィンストン公爵との縁談。嵐の中、馬車も出してもらえず送り出されたフェリシアが辿り着いたのは、十年間何も育たなくなった荒廃した庭だった。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる