33 / 33
3章 変革
33.完結
しおりを挟む
大きな馬車が隠れ家へとやって来た。
警戒する大男達は、馬車へと視線を向ける。
フェリクス様は私に下がるように言うが、私はランメルト先輩がどんな馬車で旅だったか知っている訳だから、ソレをフェリクス様に伝えて共に外に出迎える。
馬車が停車しきる前に扉が開き、飛び出そうとする子供を先輩が抱きしめる。
「危ないでしょう!!」
「平気だもん」
「だもんじゃありません」
賑やかな声、揺らめく鮮やかな金色の髪。
「リック!!」
呼べば、緑色の瞳が私を見つめた。 もう少しで7歳を迎える息子は、どんな旅をしてきたのか分からないが、変わらぬ無邪気そうな瞳と声で私を呼ぶ。
「ルシェ!!」
しゃがんで両手を開いて見せれば、先輩はリックを捕まえる手を離し、リックは走り出す。
「ただいま!!」
「元気そうですね。 ケガや病気等しませんでしたか?」
「平気、いろんなものを見て来たよ」
そう告げる瞳は……奇妙に大人びて、そして子供のままだった。
「友達も出来た。 ルシェ、あの人達を救う事は出来ないの?」
私は、きっとうまく笑えてはいなかったでしょう。 声も苦々しいものだったでしょう。
「出来ますよ。 ただ、多くの人を助けるためには、多くの犠牲が必要となります。 アナタもその犠牲の1つとならなければなりません。 セーデルバリの皇子に振り回されて凹んでいた子が耐えられるのですか?」
「友達……になったんだ」
「そうですか」
私には、領地で友達を作るのは無理だった……。
ユックリと歩いてくるランメルト先輩を私は睨む。
「やってくれましたね……」
「申し訳ありません。 償いは一生をかけて」
断罪騎士団と名付けられた騎士団員達は、使命を帯び各地を旅する者や、家族の元で過ごす者と様々。 だけど戦う時には共にと誓いあい、必要とあらば再び集まるのだと言う。
結局、私はランメルト先輩に見つかったその瞬間から、先輩の罠にはまっていたのでしょう。 彼等がこの国の次の王にと選んだのは私だった。
数か月共に暮らした者達をむざむざ死地に送り出す気はない。
彼等は王と皇子の名の元で、断罪を行っていた。 どんな痛みにも耐えながら。 それが民の記憶にあるならば、現国王の剣なのではなく、彼等は国を治める『王』に仕えるのだと、認識を塗り替えればいい。
「これでは、計画を練り直さないとだめですね」
リックを抱き上げ、そう言いながら人々を振り返れば、全員が唖然とした顔でこっちを見ていた。 こうもっと感動的なシーンではないのかしら?
なんて、思っていれば、次に全員がフェリクス様へと視線を向ける。
「団長!! 生きてますか!!」
「……」
どうやら幽体離脱的な何かだと思われたらしい……。
「瞳の色が違うし、うちの子の方が可愛らしいわよ」
ボソリと言えば、近くにいた人間がマジマジと私とリックを見る。 余りマジマジ見られてリックが怖がりだす始末。
「ラン!!」
すっかり保護者と変化した先輩を呼ぶから、余計にヤヤコシイ。 汚れ仕事を引き受ける断罪騎士団。 騎士団と言うからには全員が貴族の生まれで、幼い頃のフェリクス様を知っている。
そしてフェリクス様も幼い頃は、リックのようにランメルト先輩を慕い「ラン」と幼く愛らしい声で呼んでいたそうだ。
「平気ですよ。 見た目は凶悪ですが、リックを虐めるような人はいませんから」
ランメルト先輩がリックに優しく微笑むが、その先輩をとんでもない形相で睨む男が一人いた。
「聞きたい事があるんだが……」
「あっははははははっははははは、子供の前で乱暴は良くありませんよ。 むしろ褒めて下さいよね」
「よし、褒めてやるから来い」
翌日まで、フェリクス様と先輩の姿を見る事は無かった。
どんな嫌がらせが行われていたか、私も知らない。
そして私は、セーデルバリ王国へと一旦戻り、国を取る宣言と共に後ろ盾となってもらいたいと願った。 魔術大国でありリックを可愛がってくれていた者が多いからこそ、情に訴えやすかった。 セーデルバリ王国には利益はあるが損はない。 せいぜい、皇子がリックを振り回す事が出来なくなる程度。
1国が後ろ盾となれば、後も苦労はない。 むしろバウスコール王国の貴族達の扱いの方が難しかったが、それに関しては貴族を身内に持つ断罪騎士団のメンバーが色々と手を打ってくれた。
吟遊詩人は歌う。
古き王に捕らわれた金の獣は、自分の使えるべき王を探すため逃げ出した。
美しい王を見つけた金の獣は駆け寄り、こういった。
「お会いしたかった我が王よ」
涙を流し、首を垂れれば、
悪辣たる古き王につけられし所有の傷は、癒される。
獣は再び戦いに身を投じるだろう。
正しき王のために。
自らの王のために。
美しき王のために。
やがて平和と言う微睡に眠るため。
おわり
警戒する大男達は、馬車へと視線を向ける。
フェリクス様は私に下がるように言うが、私はランメルト先輩がどんな馬車で旅だったか知っている訳だから、ソレをフェリクス様に伝えて共に外に出迎える。
馬車が停車しきる前に扉が開き、飛び出そうとする子供を先輩が抱きしめる。
「危ないでしょう!!」
「平気だもん」
「だもんじゃありません」
賑やかな声、揺らめく鮮やかな金色の髪。
「リック!!」
呼べば、緑色の瞳が私を見つめた。 もう少しで7歳を迎える息子は、どんな旅をしてきたのか分からないが、変わらぬ無邪気そうな瞳と声で私を呼ぶ。
「ルシェ!!」
しゃがんで両手を開いて見せれば、先輩はリックを捕まえる手を離し、リックは走り出す。
「ただいま!!」
「元気そうですね。 ケガや病気等しませんでしたか?」
「平気、いろんなものを見て来たよ」
そう告げる瞳は……奇妙に大人びて、そして子供のままだった。
「友達も出来た。 ルシェ、あの人達を救う事は出来ないの?」
私は、きっとうまく笑えてはいなかったでしょう。 声も苦々しいものだったでしょう。
「出来ますよ。 ただ、多くの人を助けるためには、多くの犠牲が必要となります。 アナタもその犠牲の1つとならなければなりません。 セーデルバリの皇子に振り回されて凹んでいた子が耐えられるのですか?」
「友達……になったんだ」
「そうですか」
私には、領地で友達を作るのは無理だった……。
ユックリと歩いてくるランメルト先輩を私は睨む。
「やってくれましたね……」
「申し訳ありません。 償いは一生をかけて」
断罪騎士団と名付けられた騎士団員達は、使命を帯び各地を旅する者や、家族の元で過ごす者と様々。 だけど戦う時には共にと誓いあい、必要とあらば再び集まるのだと言う。
結局、私はランメルト先輩に見つかったその瞬間から、先輩の罠にはまっていたのでしょう。 彼等がこの国の次の王にと選んだのは私だった。
数か月共に暮らした者達をむざむざ死地に送り出す気はない。
彼等は王と皇子の名の元で、断罪を行っていた。 どんな痛みにも耐えながら。 それが民の記憶にあるならば、現国王の剣なのではなく、彼等は国を治める『王』に仕えるのだと、認識を塗り替えればいい。
「これでは、計画を練り直さないとだめですね」
リックを抱き上げ、そう言いながら人々を振り返れば、全員が唖然とした顔でこっちを見ていた。 こうもっと感動的なシーンではないのかしら?
なんて、思っていれば、次に全員がフェリクス様へと視線を向ける。
「団長!! 生きてますか!!」
「……」
どうやら幽体離脱的な何かだと思われたらしい……。
「瞳の色が違うし、うちの子の方が可愛らしいわよ」
ボソリと言えば、近くにいた人間がマジマジと私とリックを見る。 余りマジマジ見られてリックが怖がりだす始末。
「ラン!!」
すっかり保護者と変化した先輩を呼ぶから、余計にヤヤコシイ。 汚れ仕事を引き受ける断罪騎士団。 騎士団と言うからには全員が貴族の生まれで、幼い頃のフェリクス様を知っている。
そしてフェリクス様も幼い頃は、リックのようにランメルト先輩を慕い「ラン」と幼く愛らしい声で呼んでいたそうだ。
「平気ですよ。 見た目は凶悪ですが、リックを虐めるような人はいませんから」
ランメルト先輩がリックに優しく微笑むが、その先輩をとんでもない形相で睨む男が一人いた。
「聞きたい事があるんだが……」
「あっははははははっははははは、子供の前で乱暴は良くありませんよ。 むしろ褒めて下さいよね」
「よし、褒めてやるから来い」
翌日まで、フェリクス様と先輩の姿を見る事は無かった。
どんな嫌がらせが行われていたか、私も知らない。
そして私は、セーデルバリ王国へと一旦戻り、国を取る宣言と共に後ろ盾となってもらいたいと願った。 魔術大国でありリックを可愛がってくれていた者が多いからこそ、情に訴えやすかった。 セーデルバリ王国には利益はあるが損はない。 せいぜい、皇子がリックを振り回す事が出来なくなる程度。
1国が後ろ盾となれば、後も苦労はない。 むしろバウスコール王国の貴族達の扱いの方が難しかったが、それに関しては貴族を身内に持つ断罪騎士団のメンバーが色々と手を打ってくれた。
吟遊詩人は歌う。
古き王に捕らわれた金の獣は、自分の使えるべき王を探すため逃げ出した。
美しい王を見つけた金の獣は駆け寄り、こういった。
「お会いしたかった我が王よ」
涙を流し、首を垂れれば、
悪辣たる古き王につけられし所有の傷は、癒される。
獣は再び戦いに身を投じるだろう。
正しき王のために。
自らの王のために。
美しき王のために。
やがて平和と言う微睡に眠るため。
おわり
11
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
雑草と呼ばれた令嬢は、氷の公爵の庭を咲かせる
もちもちほっぺ
恋愛
亡き母の形見の庭を守ることだけが、フェリシアの居場所だった。
継母に食卓での給仕を命じられ、義妹に母の形見の花を踏みにじられても、父は「仲良くしなさい」と言うだけだった。
植物魔法は「雑草いじり」と蔑まれ、フェリシアはルミナリス家の娘ではなく、使用人以下として生きてきた。
転機は突然訪れる。
「氷の魔王」と恐れられるギルバート・ウィンストン公爵との縁談。嵐の中、馬車も出してもらえず送り出されたフェリシアが辿り着いたのは、十年間何も育たなくなった荒廃した庭だった。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる