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1章 幼少期
17.市場調査 04
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王族・貴族、権力者の道楽。 そんな振りをして私達は市場調査を続けた。 いろんな店を回ってみれば、イルモ国の贅沢は、王城内のみならず王都民にまで行き渡っていた。
屋台に使われる調味料は贅沢だ。
南方に位置するイルモ国では、香辛料が豊富ならしくカレーっぽい匂いもする。
香ばしいソースの焦げる匂いは、お好み焼きか? 焼きそばか?
まぁ、味噌、醤油はないけどね。
甘味も多い。
ベビーカステラ、フルーツ飴、揚げバナナ、大学芋とか?
「砂糖消費量多いなぁ……」
貴族だけでなく、庶民もだからね。
こんなに砂糖作っていては、食料に困らないのかな?
巡れば巡るほど、こう思った。
歪だ。
セシル殿下の部屋。
風呂上りで清められた身体で彼のベッドの上に飛び込んだ。 フワンとした感触で身体を沈んで浮いた。 柔らかなベッドに横になり瞳を閉ざす。 そして考える。
違和感を覚えたのだ。
何だろう?
オカシイ……。
歪でキモチワルイ。
「どうしました?」
ピチャリっとした水滴が顔に落ちてきて、私は瞳を開けた。
「殿下?」
まるで、押し倒すような態勢で、セシル殿下が見下ろしてきた。 赤銅色の長い髪が落ち揺れ動き、冷えた髪が頬に触れる。 甘い香りが鼻腔をくすぐる。 緩くはだけたガウンから白い首筋と薄い筋肉に覆われた胸元が見えた。
この瞬間だけが見せる美しさがそこにあった。
吸い寄せられるように頬に触れようと手を伸ばしたけれど、私の短い腕ではセシル殿下の頬にも、青い色香を放つ首筋にも届かない。
セシル殿下は私に微笑んで見せ、私の背に腕を回し抱き上げ起こした。 ポムッとその薄いがしなやかな筋肉に覆われた胸元に身を預ける。 身を預けたまま視線を向けた。
濡れた赤い唇が笑う。
「何を、考えていたのですか?」
幾重にも重ねられた枕を背もたれに、セシル殿下は私を抱えたまま座った。
「聞かれて不味い事なら」
「いいえ、いえ……そうですね」
私は苦笑した。
別に、ショタ萌え属性なんてもっていなかったのになぁ……等と、奇妙なことを考えながら、それでも結界を求めれば、殿下は首から掛けられた結界魔術式の魔道具を起動させた。
「それで?」
セシル殿下の言葉は、数日前に私がケントに言った『それで』とは音が違っていた。 どこまでも甘い声色で、私の髪を指先でクルクルと絡め、口づける。
「一致していない。 そんな違和感を覚えたんです」
「一致?」
「文明と人?国?が一致していないと言うか……」
「それはどういう事です?」
「腹を膨らませるだけなら、大麦の粥が一番簡単だと思うわ。 次に簡単なのは、小麦粉を水で溶いて塩を少し入れて焼いた生地」
「肉やチーズを巻いて食べると美味しいですよね」
ニコニコとセシル殿下は相槌のように言う。
「次は、小麦粉にバター、砂糖、塩、酵母を入れて発酵させたパン。 最後は、卵を黄身と白身に分け、砂糖を混ぜた白身を泡立てふわふわにして、溶かしたバターと黄身と小麦粉と重曹をまぜてフワフワをキープしたまま白身を混ぜ、焼いたスポンジケーキ。 多分……そんな感じだったはず? 美味しいものほど、時間と金がかかるものです。 その金は何処から?」
「ようするに、同じ小麦を食べるにしても、自分達の懐事情に合わせた物を食べなければいけないと言うことですか?」
「そう。 麦粥で食べれば、早く安く腹が満たされるものでも、パンを焼けば、バター、砂糖、酵母、手間と時間が必要になる」
この世界の文明レベルでは、本来発生するはずもないものが、この国だけに多く存在している。 ソレは私同様に転生者がいるのでは? で解決するのだけど、流石にソレは突拍子もないので口にすることは止めた。
「確かに……、私は、実際に王都に訪れるまで、この国は貧しいと思っていました」
30年ほど前まで、この国は自給自足バランスの整った国で、ルンド国の略奪の標的とされていた。 その標的にならないほどに、国境沿いの村々が貧しくなり、略奪の標的から外され、商人達も足を踏み入れる事は無くなり何年も経っている……らしい。
商人達の組合からも、事前情報を得ることが出来なかった国なのだ。
「その、歪さがキモチワルイなぁ……って考えていたんです」
「確かに、危険なバランスですね……」
屋台に使われる調味料は贅沢だ。
南方に位置するイルモ国では、香辛料が豊富ならしくカレーっぽい匂いもする。
香ばしいソースの焦げる匂いは、お好み焼きか? 焼きそばか?
まぁ、味噌、醤油はないけどね。
甘味も多い。
ベビーカステラ、フルーツ飴、揚げバナナ、大学芋とか?
「砂糖消費量多いなぁ……」
貴族だけでなく、庶民もだからね。
こんなに砂糖作っていては、食料に困らないのかな?
巡れば巡るほど、こう思った。
歪だ。
セシル殿下の部屋。
風呂上りで清められた身体で彼のベッドの上に飛び込んだ。 フワンとした感触で身体を沈んで浮いた。 柔らかなベッドに横になり瞳を閉ざす。 そして考える。
違和感を覚えたのだ。
何だろう?
オカシイ……。
歪でキモチワルイ。
「どうしました?」
ピチャリっとした水滴が顔に落ちてきて、私は瞳を開けた。
「殿下?」
まるで、押し倒すような態勢で、セシル殿下が見下ろしてきた。 赤銅色の長い髪が落ち揺れ動き、冷えた髪が頬に触れる。 甘い香りが鼻腔をくすぐる。 緩くはだけたガウンから白い首筋と薄い筋肉に覆われた胸元が見えた。
この瞬間だけが見せる美しさがそこにあった。
吸い寄せられるように頬に触れようと手を伸ばしたけれど、私の短い腕ではセシル殿下の頬にも、青い色香を放つ首筋にも届かない。
セシル殿下は私に微笑んで見せ、私の背に腕を回し抱き上げ起こした。 ポムッとその薄いがしなやかな筋肉に覆われた胸元に身を預ける。 身を預けたまま視線を向けた。
濡れた赤い唇が笑う。
「何を、考えていたのですか?」
幾重にも重ねられた枕を背もたれに、セシル殿下は私を抱えたまま座った。
「聞かれて不味い事なら」
「いいえ、いえ……そうですね」
私は苦笑した。
別に、ショタ萌え属性なんてもっていなかったのになぁ……等と、奇妙なことを考えながら、それでも結界を求めれば、殿下は首から掛けられた結界魔術式の魔道具を起動させた。
「それで?」
セシル殿下の言葉は、数日前に私がケントに言った『それで』とは音が違っていた。 どこまでも甘い声色で、私の髪を指先でクルクルと絡め、口づける。
「一致していない。 そんな違和感を覚えたんです」
「一致?」
「文明と人?国?が一致していないと言うか……」
「それはどういう事です?」
「腹を膨らませるだけなら、大麦の粥が一番簡単だと思うわ。 次に簡単なのは、小麦粉を水で溶いて塩を少し入れて焼いた生地」
「肉やチーズを巻いて食べると美味しいですよね」
ニコニコとセシル殿下は相槌のように言う。
「次は、小麦粉にバター、砂糖、塩、酵母を入れて発酵させたパン。 最後は、卵を黄身と白身に分け、砂糖を混ぜた白身を泡立てふわふわにして、溶かしたバターと黄身と小麦粉と重曹をまぜてフワフワをキープしたまま白身を混ぜ、焼いたスポンジケーキ。 多分……そんな感じだったはず? 美味しいものほど、時間と金がかかるものです。 その金は何処から?」
「ようするに、同じ小麦を食べるにしても、自分達の懐事情に合わせた物を食べなければいけないと言うことですか?」
「そう。 麦粥で食べれば、早く安く腹が満たされるものでも、パンを焼けば、バター、砂糖、酵母、手間と時間が必要になる」
この世界の文明レベルでは、本来発生するはずもないものが、この国だけに多く存在している。 ソレは私同様に転生者がいるのでは? で解決するのだけど、流石にソレは突拍子もないので口にすることは止めた。
「確かに……、私は、実際に王都に訪れるまで、この国は貧しいと思っていました」
30年ほど前まで、この国は自給自足バランスの整った国で、ルンド国の略奪の標的とされていた。 その標的にならないほどに、国境沿いの村々が貧しくなり、略奪の標的から外され、商人達も足を踏み入れる事は無くなり何年も経っている……らしい。
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「その、歪さがキモチワルイなぁ……って考えていたんです」
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