【R18】親の因果が子に報い【完結】

迷い人

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01.序章

 戦争を……終わらせよう。



 血と肉が飛び散った敵陣のテント。 佇むのは、戦場とは思えない軽装に身を包んだ背の高い細身の男。 手にしているのは、男の身長を超える槍で、その穂先は赤く染まり血肉がこびり付いていた。

「コレはお前達が始めた戦争だ。 責任の取り方ぐらい分かっているだろうな?」

 戦争を終えるまで5年もの間、無駄に睨みあっていたのは戦争と共に身を隠し厳戒態勢を敷いた敵国の王位継承権を持つ存在を引っ張り出すため。

 悲鳴を上げる事すら許さず、男は配下の者に王子達を拘束させ、敵陣営を渡り歩き殲滅し王子達を捕獲していく。 1人として残してはダメだった、誰かの王位継承を優位にするような中途半端な終わらせ方をしては、王位継承の喧嘩にまたゲーム感覚で巻き込まれてしまうだろう。

 神から与えられた権力に溺れ、無責任に他者を貶める王族は多いから……。


 長かった……。



 密偵を送り、王位継承の裏側を仕切る貴族を唆し、戦争を娯楽として肥え太った醜い王の頭の中を麻痺させ、自らの子供達を王位簒奪者と疑心を抱かせるまで想定していた以上に時間がかかった。

『より多くの敵将の首を取った者に王位を継がせよう』

 その言葉を引き出すまで5年も必要となるなど考えても居なかった。


 8人の王子達が連れてこられたテントには、その伴侶、婚約者が、娘が、全裸に剥かれ、淫靡を強調するような拘束を受け、その肌に薄く傷を受けながらも恍惚に喘ぎ、その肌を舐め、傷を広げながらも慰めあい、喘ぐ女達の姿があった。

 王子達は、怒りも、焦燥も、悲嘆も、絶望も、塞がれていた。

 まともな神経を持っているなら耐えられない。
 これを喜ぶような者は殺してしまえ……。
 恐怖をより心に植え付けよ……。

 国を背負う責任の重さ。
 それを耐えるために必要なのは、狂気、或いは依存。

 未だ、王位継承者である王子達には傷一つついていない。 その分の罪を伴侶、婚約者、娘に負ってもらっている。 恍惚とした表情は、薬漬けにし、抑えきれぬ欲情に理性を失くしているため。 女達は、快楽を痛みを求め続ける。 はしたない言葉を口にしながら、薬を求め、下半身を埋める玩具を求めていた。

 王家の貴婦人。

「狂った親を持つ者は辛いなぁ~。 王族の理性、善性、品格、在り方を預けられた、美しく品位に満ちた貞節と清純の乙女たち。 王国の聖なる母たち。 国の象徴が狂うさまを見るのは、自分が拷問を受けるよりもくるものがあるだろう?」

 そう言って男は木箱の上に椅子代わりに座った。

「この女達が快楽に狂い死ぬまで耐える事ができたなら……。 無傷で解放してやろう」

 男は薄く笑う。

 無傷とは言ったが生かしてとは言っていない。



 男は、残虐を手にしながら、親の失態を何処まで背負わなければいけないのか? と、悲劇に嘆いていた。 目の前の王子、王子の大切な者達には同情を禁じ得ない。

 この行為が楽しいかと問われれば、そんな訳がないと心の中で叫ぶだろう。 拷問等、自分がされて嫌な事をするのが効果的だから……。

 もし、自分の愛する人が……こんなことをされたら。

 殺すな……俺なら……。

 睨みつける王子達を見ながら、男は考える。

 俺を殺すにはどうすればいいだろう? と……。



 色に落ち狂った父親が、謀反の報告に耳を塞ぎ、むざむざと敵軍に戦争準備を許し、初撃で国土の5分の1をあっけなく奪われた。 諜報と暗殺、その役割があってこそダンベール家が公爵家としての恩恵を受ける事が出来ると言うのに……。

 本人は、あっけなく暗殺を受け終わった。

 残されたのは、国賊としての後始末。

 愛する人が、その責務の半分を背負うと思えば、負債を超える利益を獲得する必要があった。

「さて、どうしてやろうか? どうすれば……お前達の心は折れる?」

 残虐な笑みを浮かべ男は笑った。



 戦争を終えよう。
 あの人の元に帰ろう。

 あぁ、そうだ……手紙を書こう……。
 もうすぐ帰れると……。

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