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02.今の私を作る過去
04.愛情と言う名の呪い
神は血統に加護を与える。
神は気まぐれに、悪戯に、思いつきで加護を与える。
時にソレは、人に不幸をもたらすのだと私は考えている。
私は、神の気まぐれで治癒の加護を得ていた。
国王陛下によって、私がダンベール小公爵の婚約者に指名されたのは、魔力量の多さもあるが、ダンベール公爵家の役割がそれだけ危険だと言う事もあるのだろう。
そして……私を育てたミリヤ・ダンベール公爵夫人は、愛情の加護を得ていた。 それが私に呪いとして働いたのだから、たまったものではない……。
2歳の時、私は公爵夫人に預けられた。
当時の公爵ブレソールが愛妾との間に跡取り息子であるユーグを授かった事で、ブレソールに向けられていたミリヤ様の愛情は狂気と化し、マロリーが身ごもった2人目の子を流産へと追い込んだ。
ブレソール公爵の怒りは、物凄いものだったと言うが、正気を失ったかのように狂気に走るミリヤ様の様子はブレソール公爵を超えていたと聞く。
子爵家が貧乏で公爵夫人の教育には不向きと言うのは、体裁の良い表向きの言葉。 実際はミリヤ様に子でも育てさせれば、愛情の行く先があれば、落ち着くだろうと言う下心あっての事だった。
迷惑な話だ。
公爵夫人は自らの全て以上の知識と教養、礼儀作法、魔法学、そして趣味を持つ事を私に徹底させながらも、優しくしてくれた……。
いえ、飴と鞭の使い方が上手だったのかしら?
『私の育てる子は、優秀でしょう』
ただ、公爵にそう訴えるためだけに。 それでも、抱きしめられれば、撫でられれば、褒められれば、美味しいご飯を食べ、綺麗な服に身を包めば、愛されていると思うものだ……。
その本心が、何処にあるなんて小さな子供に分かる訳がない。 幼かった頃の私はただ、美しくて優しい公爵夫人ミリヤ様に心酔していったのだ。
呪いの言葉と共に。
「ラシェル、貴方は公爵夫人の地位を手に入れる事が出来るけれど、未来の公爵の愛を得る事が出来ないわ。 希望を捨てなさい」
「ラシェル、公爵夫人の地位についてしまえば、愛し、支えてくれる男性なんて得る事は出来ない。 だから、自分を満たす何かを見つけるために、色んな事に挑戦しなさい」
「ラシェル、貴方は愛される事はありません。 だけど、愛する事はできるのだから、絶望してはだめよ」
繰り返される呪いは、日々言葉を変えて毎日のように紡がれる。
「ラシェル、希望を持ってはいけない。 あの子は次期ダンベール公爵でもあり、あの女の息子なのだから……」
公爵夫人の呪いの言葉は、彼女自身の身に起こった不幸であり、そんな不幸から語られる悲しい言葉だと知ったのは……私が5歳になった時、神殿で行われた婚約式の場だった。
ミリヤ様と2人神殿に向かえば、仲睦まじい家族のような公爵と愛妾とその息子の姿が目に飛び込んだ。 ミリヤ様の白い肌は青みを帯び、ピンク色の唇は紫色に染まってわなわなと震え、繋いだ私の手に力が入り痛かったけれど、止めてとは言えなかった。
私はその時理解してしまったのだ。
公爵は忙しくてミリヤ様に会いに来ないのではなく、愛妾との家庭を大切にするためミリヤ様を蔑ろにしていたのだと……。 幼い私にわかるのだから、その痛々しい光景を見せつけられる婚約式の招待客はたまったものではなかっただろう。
3人がいる側まで、私とミリヤ様は進んだ。
大勢の人が見つめる中、空気が張り詰めていた。
緊張を解いた……いえ、先に場を爆発させたのは愛妾マロリーだった。
「お久しぶり、大丈夫? 酷い顔をしているわ。 子育てに疲れたの? そうね、疲れるわよね。 子供を産んだ事もないのに他人の子を、未来の公爵夫人を育てるのだから。 当たり前よね。 大変ね公爵夫人というものも。 でもさ、もう少し気遣った方がいいんじゃない? そんな顔をしていちゃ公爵様に愛されないのも当然でしょう?」
マロリーの言葉に一層ミリヤ様は表情を強張らせる。
それでも言い返したのは、女の意地と言う奴かもしれない。
「ぽろぽろと子供を産む事は出来ても、育てる事には向いていないようね。 小公爵はラシェルよりも半年は先に生まれていると言うのに、随分と小さく顔色が悪いですわ。 意志に見てもらった方が良いのではありません? よろしければ治癒の加護を持つラシェルに見させても良いですわよ。 病弱でいつも寝込んでいると言うではありませんか。 公爵様も、子を産む資格を持たぬ女にいつまで……」
パンッ
頬を打つ音が神殿内に響いた。
「いい加減にしないか、公爵夫人としての品格を失ったお前に何の価値があると言うんだ。 子を産むことも出来ぬお前のために、マロリーが子を産んでくれたと言うのに、その性格の悪さ……私の子の妻にとなる者に真似をさせてくれるなよ」
「酷い……私は、私は、公爵様のため、公爵家のために、最高の公爵夫人を育てようと必死に……。 あぁ、違う、違うわ……ごめんなさい。 聞いてくださいませ、この子はとても賢いの。 魔力が多いだけではなく、加護を持つ治癒術、解毒術、回復術だけではなく、支援魔法、強化魔法も使えますのよ。 それに、難しい本も沢山読んで……」
縋りつきながら、私を褒めたたえていたが、私はミリヤ様の言葉が意味をなさないことを理解していた。 冷ややかな公爵の視線が痛かった。
不貞をしておいて、どうして……ミリヤ様を見下し、蔑ろにするのだと、私が公爵を睨みつければ、ミリヤ様に頬を打たれた。
「なんて目で、公爵様を見ているのですか!!」
「な、んで?」
厳しい人ではあったが、殴られたのは初めてだった。 ヒリヒリと頬が痛み熱を持ち、徐々に腫れ始めるのが分かった。
「ミリヤ様、帰りましょう!! こんなのオカシイもの!!」
私は叫びを、婚約式の招待客は顔を背けていた。 きっと、見て見ぬふりをし、何もなかった事にしようと必死だったのだろう。
「随分と元気な子だね」
そう言ったのは、生まれたばかりの私を公爵家に嫁がせるようにと定めた国王陛下だった。
「申し訳ございません!!」
公爵が慌てて頭を下げれば、ミリヤ様はますます癇癪を起して、私を責めた。 責めて、責めて責め立てて、婚約式等出来ないほどの大ケガを負った。
治そうと思えば治せたのだけど……治せば余計にミリヤ様を刺激するだろうと我慢したのだ。
「仕方がない……。 早めに神の前で誓いを立てさせてしまいたかったのだけど、今日はもう無理そうだよね。 君たちがもう少し、理性的な関係を築けるようになってから、改めて婚約式をした方がいいのかもしれないね」
そう言って国王陛下は場を治め……。
私はミリヤ様の祖父に保護された。
「ごめんなさい、ごめんなさい。 私が至らなくて、許してください」
そう言って泣き叫ぶミリヤ様は私を責める事でしか、公爵に許しを請う事ができず……その場を収めるために、国王陛下はこう付け加えた。
「ブレソール、君はミリヤに冷たすぎる。 君も反省すべき点は多いと僕は思うんだ。 たまには、ミリヤに優しくしてあげなよ」
婚約者として私はダンベール公爵家に招かれた。
未来の公爵夫人として、多くを学ばされた。
だからなのだろうか?
皆、私とユーグが神の前で婚約の誓いを立てていない事実を忘れてしまっているのは……。
神は気まぐれに、悪戯に、思いつきで加護を与える。
時にソレは、人に不幸をもたらすのだと私は考えている。
私は、神の気まぐれで治癒の加護を得ていた。
国王陛下によって、私がダンベール小公爵の婚約者に指名されたのは、魔力量の多さもあるが、ダンベール公爵家の役割がそれだけ危険だと言う事もあるのだろう。
そして……私を育てたミリヤ・ダンベール公爵夫人は、愛情の加護を得ていた。 それが私に呪いとして働いたのだから、たまったものではない……。
2歳の時、私は公爵夫人に預けられた。
当時の公爵ブレソールが愛妾との間に跡取り息子であるユーグを授かった事で、ブレソールに向けられていたミリヤ様の愛情は狂気と化し、マロリーが身ごもった2人目の子を流産へと追い込んだ。
ブレソール公爵の怒りは、物凄いものだったと言うが、正気を失ったかのように狂気に走るミリヤ様の様子はブレソール公爵を超えていたと聞く。
子爵家が貧乏で公爵夫人の教育には不向きと言うのは、体裁の良い表向きの言葉。 実際はミリヤ様に子でも育てさせれば、愛情の行く先があれば、落ち着くだろうと言う下心あっての事だった。
迷惑な話だ。
公爵夫人は自らの全て以上の知識と教養、礼儀作法、魔法学、そして趣味を持つ事を私に徹底させながらも、優しくしてくれた……。
いえ、飴と鞭の使い方が上手だったのかしら?
『私の育てる子は、優秀でしょう』
ただ、公爵にそう訴えるためだけに。 それでも、抱きしめられれば、撫でられれば、褒められれば、美味しいご飯を食べ、綺麗な服に身を包めば、愛されていると思うものだ……。
その本心が、何処にあるなんて小さな子供に分かる訳がない。 幼かった頃の私はただ、美しくて優しい公爵夫人ミリヤ様に心酔していったのだ。
呪いの言葉と共に。
「ラシェル、貴方は公爵夫人の地位を手に入れる事が出来るけれど、未来の公爵の愛を得る事が出来ないわ。 希望を捨てなさい」
「ラシェル、公爵夫人の地位についてしまえば、愛し、支えてくれる男性なんて得る事は出来ない。 だから、自分を満たす何かを見つけるために、色んな事に挑戦しなさい」
「ラシェル、貴方は愛される事はありません。 だけど、愛する事はできるのだから、絶望してはだめよ」
繰り返される呪いは、日々言葉を変えて毎日のように紡がれる。
「ラシェル、希望を持ってはいけない。 あの子は次期ダンベール公爵でもあり、あの女の息子なのだから……」
公爵夫人の呪いの言葉は、彼女自身の身に起こった不幸であり、そんな不幸から語られる悲しい言葉だと知ったのは……私が5歳になった時、神殿で行われた婚約式の場だった。
ミリヤ様と2人神殿に向かえば、仲睦まじい家族のような公爵と愛妾とその息子の姿が目に飛び込んだ。 ミリヤ様の白い肌は青みを帯び、ピンク色の唇は紫色に染まってわなわなと震え、繋いだ私の手に力が入り痛かったけれど、止めてとは言えなかった。
私はその時理解してしまったのだ。
公爵は忙しくてミリヤ様に会いに来ないのではなく、愛妾との家庭を大切にするためミリヤ様を蔑ろにしていたのだと……。 幼い私にわかるのだから、その痛々しい光景を見せつけられる婚約式の招待客はたまったものではなかっただろう。
3人がいる側まで、私とミリヤ様は進んだ。
大勢の人が見つめる中、空気が張り詰めていた。
緊張を解いた……いえ、先に場を爆発させたのは愛妾マロリーだった。
「お久しぶり、大丈夫? 酷い顔をしているわ。 子育てに疲れたの? そうね、疲れるわよね。 子供を産んだ事もないのに他人の子を、未来の公爵夫人を育てるのだから。 当たり前よね。 大変ね公爵夫人というものも。 でもさ、もう少し気遣った方がいいんじゃない? そんな顔をしていちゃ公爵様に愛されないのも当然でしょう?」
マロリーの言葉に一層ミリヤ様は表情を強張らせる。
それでも言い返したのは、女の意地と言う奴かもしれない。
「ぽろぽろと子供を産む事は出来ても、育てる事には向いていないようね。 小公爵はラシェルよりも半年は先に生まれていると言うのに、随分と小さく顔色が悪いですわ。 意志に見てもらった方が良いのではありません? よろしければ治癒の加護を持つラシェルに見させても良いですわよ。 病弱でいつも寝込んでいると言うではありませんか。 公爵様も、子を産む資格を持たぬ女にいつまで……」
パンッ
頬を打つ音が神殿内に響いた。
「いい加減にしないか、公爵夫人としての品格を失ったお前に何の価値があると言うんだ。 子を産むことも出来ぬお前のために、マロリーが子を産んでくれたと言うのに、その性格の悪さ……私の子の妻にとなる者に真似をさせてくれるなよ」
「酷い……私は、私は、公爵様のため、公爵家のために、最高の公爵夫人を育てようと必死に……。 あぁ、違う、違うわ……ごめんなさい。 聞いてくださいませ、この子はとても賢いの。 魔力が多いだけではなく、加護を持つ治癒術、解毒術、回復術だけではなく、支援魔法、強化魔法も使えますのよ。 それに、難しい本も沢山読んで……」
縋りつきながら、私を褒めたたえていたが、私はミリヤ様の言葉が意味をなさないことを理解していた。 冷ややかな公爵の視線が痛かった。
不貞をしておいて、どうして……ミリヤ様を見下し、蔑ろにするのだと、私が公爵を睨みつければ、ミリヤ様に頬を打たれた。
「なんて目で、公爵様を見ているのですか!!」
「な、んで?」
厳しい人ではあったが、殴られたのは初めてだった。 ヒリヒリと頬が痛み熱を持ち、徐々に腫れ始めるのが分かった。
「ミリヤ様、帰りましょう!! こんなのオカシイもの!!」
私は叫びを、婚約式の招待客は顔を背けていた。 きっと、見て見ぬふりをし、何もなかった事にしようと必死だったのだろう。
「随分と元気な子だね」
そう言ったのは、生まれたばかりの私を公爵家に嫁がせるようにと定めた国王陛下だった。
「申し訳ございません!!」
公爵が慌てて頭を下げれば、ミリヤ様はますます癇癪を起して、私を責めた。 責めて、責めて責め立てて、婚約式等出来ないほどの大ケガを負った。
治そうと思えば治せたのだけど……治せば余計にミリヤ様を刺激するだろうと我慢したのだ。
「仕方がない……。 早めに神の前で誓いを立てさせてしまいたかったのだけど、今日はもう無理そうだよね。 君たちがもう少し、理性的な関係を築けるようになってから、改めて婚約式をした方がいいのかもしれないね」
そう言って国王陛下は場を治め……。
私はミリヤ様の祖父に保護された。
「ごめんなさい、ごめんなさい。 私が至らなくて、許してください」
そう言って泣き叫ぶミリヤ様は私を責める事でしか、公爵に許しを請う事ができず……その場を収めるために、国王陛下はこう付け加えた。
「ブレソール、君はミリヤに冷たすぎる。 君も反省すべき点は多いと僕は思うんだ。 たまには、ミリヤに優しくしてあげなよ」
婚約者として私はダンベール公爵家に招かれた。
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