【R18】親の因果が子に報い【完結】

迷い人

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02.今の私を作る過去

10.子供の時間の終わり 01

 暗殺者は、ダンベール公爵、公爵夫人。 そして、サシャの父を始めとする数名の一族の者達の命を奪った。 ダンベールの一族の者は暗殺者の情報を得て、ソレを止めようとしていたらしく、それが仇となり本来殺される必要ない者達が殺されたと聞いた。

 そして、残された一族の大人達はどこまでも無責任だった。

 情報収集の失敗。
 失われた領地。

 それらに対する責任追及を恐れ、まだ幼く未熟なユーグを当主につかせようとしたのだ。



 夜会に招待されていた一族の者達は、その日、そのまま、公爵家の広間に集まった。

「既に戦争は始まり、領地が奪われた」
「この責任をどうするつもりだ!!」
「情報収集の指揮にミスがあったでは済まないぞ!!」

 責任を取るべき公爵は既にこの世にはいないと言うのに、まるでその責任の全てがユーグにあるように人々は責めた。



 公爵ブレソール、公爵夫人ミリヤ、愛妾マロリー、この3人の乗った馬車の中、酒に酔い潰れたマロリーはドレスを脱ぎ、ブレソールの上にまたがり、ミリヤ様の前で情事を繰り広げていたと言う。 にも、関わらず……暗殺者に襲われた時……、公爵と公爵夫人は2人はお互いを庇いあい満足そうに死んでいたと後に聞くわけだが……、ソレを美談だと感じるだけの何かが私には無かった。

 そして、全裸で死体にまたがっていたマロリーは、殺す価値もないと放置され……今はもう公爵屋敷に戻って来ているが、当然一族が集まる場にはいない。



 ユーグが責められる声に、大人達に混ざり隠れるようにその場にいる私の鼓動は何処までも早くなっていた。

「どう責任を取るつもりだ!!」

 狼狽え、困惑し、今にも泣きだしそうな小さなユーグの姿を見て、私もまた狼狽え泣きそうになっていた。

 私に何ができるだろうか?
 何も出来るはず等ない。

 きっと……逃げ出したとしてもユーグは、ユーグなら怒らないだろう。

 そう、甘い気持ちを持っていた。

 誰も信用できない!! なんて、少し前に思ったばかりなのに、私は私にとって都合の良いユーグを求め信用したのだ……。 そんなのは絶対に信用ではないのに。

 逃げよう。

 私は、ダンベール公爵家の人間ではない。

 思い浮かぶ両親兄弟。 自分を見て笑う彼等が最悪だと思ったが、目の前の状況に比べればマシだ。 この時の私の思考は麻痺していたのだろうと思う。 こんな状況下にいる私を子爵たちは受け入れるはずもないだろうに……。

 逃げよう。
 そうだ、逃げてしまおう。
 私は一族の者じゃない。
 私はまだ子供なのだから。

 だから、許されるはずだ。



 だけど、私は逃げ出さなかった。
 いえ、逃げられなかった。



 私の恐怖と困惑とは別に、足は一歩前に進んでいた。
 そしてキツク握られた傷ついたユーグの手を取っていた。

「ユーグ、私がいるよ。 私が何とかする。 私は公爵家のための人間だから……」

 逃げようとしていた私がいう言葉ではない。
 そんな事、欠片も思ってはいない。

 勝手に私の口が言葉を紡ぎだすのだ。

 私は私だ!! 公爵家なんて知らない! ずっとそう思っていたのに……なのに、私は小さなユーグを抱きしめた。

 腕の中のユーグは震え、見つめあうように交わされた視線は……恐怖や困惑から解放され、なのに、なぜか絶望に彩られていた。

 ユーグは抱きしめる私の腕から逃れ、傷ついた手で私の頬に触れ、泣きそうな顔で聞いてきた。

「公爵家のため?」

「はい、だから安心してください。 私が、なんとか、してみせます」

 そう言葉にするが、戦争なんて私は知らないし、私は憎しみをもって人を傷つければ失われると言う加護を持つ。 戦争で何が出来ると言うんだ……。 いや、戦う人間を延々と回復させるぐらいは出来るかもしれない……。

「まぁ、なんとかなりますよ。 皆さんが協力してくれれば。 ブレソール様の責任だと言うけれど……結局は、ここにいる皆が無能だったのでしょう? 貴方達が無能で、役立たずだったから、必要な情報を集められなかった。 ブレソール様を殺した」

 訳も分からず心が乱れていた。
 理由もなく、大嫌いなブレソールのために怒っていた。

 後に、それはミリヤ様の加護による『愛情呪い』だろう。 そう語ったエヴラール様は、必死に謝り私に最大限の協力を約束してくれた。

 私は私の心を無視して話し続ける。

「オカシクありませんか? 半人前で未熟で小さなユーグに責任を追及するのは……。 自分達の背負うべき責任を取りなさい。 武器を手にしなさい。 人を集めなさい。 死なない限り、私が回復してあげますから。 安心して戦うと……ぇ?」

 腕の中のユーグが……泣きそうな、辛そうな表情で、口づけしてきて私の言葉は止まるのだった。

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