【R18】親の因果が子に報い【完結】

迷い人

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03.快楽都市『デショワ』

13.訳アリの2人

 夕暮れ時の屋台通りには、2人の男が立っていた。 2人とも薄汚れたローブを服の上から羽織ってはいるが、快楽都市にあっても極めて目立つ容貌をしている。

「ユベール。 食べすぎです」

「まだ、肉団子8つ、スープ3人前、焼き麺5人前、魚フライ8人前だろう」

「勘弁してくださいよ。 ここの都市は、ベルナール国でも最も物価が高いと言われる都市なんですからね!!」

「大きな報酬が入ったんだから、少しぐらい問題なかろう」

 そう言いながら、飲み物を注文する黒髪の男に、茶髪の従者は肩を落とした。

 ユベールと呼ばれた男は、黒髪、金瞳の男でかなり長身である。 延々と食べ物を食べ続ける様子にのんびりとした温和な印象を想像し近寄ってくる者もいたが、顔を見れば金色の瞳は飢えた獣のように獰猛な色をたたえており、今まで幾人もの人間が素通りしていった。

 茶髪の男はユベールと呼ばれた男の従者であり、穏やかな緑色の瞳をした、中性的な印象を持つ男だ。 名は未だ呼ばれてはいないがサージュと言う。

 2人は、数日前まで戦争をしていたベルナール国の王都から、馬で3日ほどの位置にある『デショワ』と呼ばれる快楽都市にきていた。



「で、どうするんですか? ユベール。 宿をとるんですか? 店を貸切るんですか?」

 甘い顔立ちのサージュが嫌味っぽく聞けば、ユベールはわずかに眉間を寄せた。

「宿の方で……」

「はぁ? 何しに来ているんですか!! どうせ、目的は女性でしょ? 女性ですよね? いい加減諦めてくださいよ。 神の加護を使い過ぎた対価なんです。 世間の目を何、気にしているんですか、旅の恥はかきすて、地元に戻る前に少しでも対価を支払って下さい。 突然に老若男女見境なしに襲いかかって警備兵の厄介になるような事になったら、置いて逃げますからね」

「お前は、俺を何だと思っているんだ」

「……とても素敵な神様に愛された、主様」

 にっこり笑って言うが、むかついたのだろうユベールは従者である男を殴った。



 日が沈むにつれ、都市は活気に満ちてくる。

 暖色系のライト、甘い香りが、性的な欲求を刺激すれば、ユベールは軽いめまいを覚え顔を顰めた。 ユベールの様子に慌てた様子のサージュは、主を近くの串焼き屋まで引っ張って行く。

 僅か数メートルの移動だと言うのに、

「いい子揃っているよ~」
「新入りが入ったよ~」

 そんな声が彼方此方からかけられ、サージュは往生際の悪い主の顔を見、そして主であるユベールはサージュを睨みつけた。

「初めて来たけど、流石ですねぇ……」

 会話を誤魔化すサージュ、そして誤魔化しを受け入れるユベール。

「あぁ、噂通りだな」

 性を商売とし、
 薬を商売とし、
 賭け事を商売とし、
 暴力を商売とする都市。

 余り表沙汰にできぬ人間も店を出してはいるが、一応、国営都市であり国の税収入の2割がココで賄われている。

「串焼きを5、いえ10本」

 従者の男サージュが言えば、15本の串焼きをオヤジはサージュに渡し、金を受け取り、そしてオヤジは2人にぬるい酒をふるまう。

「見ない顔だな。 どうせシバラクいるんだろ? サービスしてやるからここにいる間は他の串屋にいってくれるなよ」

 妙になれなれしいオヤジだった。

「いい加減、予定を決めますよ。 で、どうするんですか?」

「宿を決めて、明日は何か土産を買う」

 ボソリとユベールは呟くように言った。

「はぁ? マジで言っているですか? もうここに来て2時間ですよ!! 2時間。 土産モノを買いたいだけなら、もう買い終わっているでしょうが!! まったく……誰に恰好つけているんですか」

 馬鹿にしたように言いながら、サージュはユベールの串焼きを次々と食べていく。

「オヤジさん、串焼きあと3本もらえますか?」

「俺の分を追加で5本」

「あいよ……」

「オヤジ」

 声をかけたのは、黒髪のユベールの方だった。

「なんじゃい。 情報は肉よりも高いぞ?」

 ニヤニヤとした顔でオヤジは言い、ユベールは肩を竦めてサージュへと視線を向け、サージュは銀貨をオヤジに渡した。

「この国はつい数日前まで戦争をしていたって割に、賑わってるな」

「兄さん他所の人かい? 戦争って言ってもまぁ、ダンベール公爵家が他国と起こしたトラブルを始末していただけ、ダンベール公爵家の縁者でなければ、全く影響がない、平和なものさ」

「なるほど、そういう戦いだったのか……」

「なんだい、兄ちゃん達ダンベール公爵家で傭兵でもしていたのかい? いや……それとも、帰ってくる兵士の懐をあてにしている方かねぇ。 2人とも綺麗な顔をしているが、どっちだい?」

 ニヤニヤとした声で、オヤジは2人に尋ねて来た。

「どっち、とは?」

「身売りをする側か? 愛玩奴隷を購入する側か?」

 オヤジは、顎をしゃくるようにして、通りを歩いてくる人達を見ろと示していた。

 首輪をつけられた美しい男や女達が、主人と思われる金持ちたちと共に歩いていた。

「随分とオープンですね」

 サージュが驚きと共に問えば、オヤジは再び情報量をよこせと手を出した。 世間話程度で金をとるのはどうだろうか? そんな風に考えながらもサージュは銀貨を手渡す。

「ここでは、例え首輪をつけ、手錠をつけ、鎖をつけられていたとしても、外を歩き回っているとなれば奴隷の方が偉い。 何しろ、店に行って金を出せば抱ける相手を、大金を払ってまで自分だけの奴隷にするほどに惚れ切っていると言う事だからな」

「そういう事か……」

「兄ちゃん達なら、こぞって金を出そうってご婦人たちが出てくるだろうさ。 なんだったら店を案内してやるぞ?」

 へらへらと男は言うが、顔色は悪い……。

「どうしたんですか? 随分と顔が悪いようだが」

「ユベール。 そういう時は顔色が悪いと言うのが普通ですよ。 大方、私共の見た目に目をつけて、薬を使い昏倒したところで売り払おうって考えたのでしょう」

「警備兵は何をしているんだ?」

「お金が巡るってことは国に税金が入ると言う事ですからね。 結構無法地帯なんじゃないですか? とりあえず、このオヤジさんは、なかなかの人脈を持っているようだし、貸し切りをさせてくれる店を紹介してもらうのはどうですかねぇ? どうせ、ソレが目的でしょう」

 サージュが、ユベールに言えば嫌そうにユベールは顔を顰めた。

「身もふたもない……」

「今更、私相手に体裁を取り繕っても仕方がないでしょう。 オヤジ、この都市でも清潔で、健康的な女性を扱っている、少しばかりお高い店を、10日ほど貸切らせてくれる店を紹介してくれませんか?」

 そう言って今度は金貨を握らせた。

 へっへへっへへへ、と、愛想は良いが見ていると気分が悪くなるような笑みを浮かべたおやじは言う。

「貸し切り可能な上級向けの店は5件あるが、順番に見ていくかい?」

「そうですねぇ……銀色の髪をした儚げな少女がいたら最高ですね」

「人探しかい?」

「いいえ、この人の好みの問題ですよ。 銀髪の少女が大好きなんです」

 黒髪の男ユベールは従者を睨みつけるが、反論はしなかった。

 ユベールは別に物凄い女好きと言う訳ではなく、神に与えられた加護の副作用として、強い性的な衝動を抱えているのだ。 とは言え、大量の食べ物で代替えは効く。 代替えは効くが、最終的には女性を買った方が安くつくために、サージュは早々に色を売る店に主を放り込もうとしているのだった。

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