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03.快楽都市『デショワ』
19.加護と呪い 01
これから、客を取らせられると言うなら、最初は彼でいい。 彼がいい。 多分、他の誰よりも良いはず……だ……。 ただ、私の身体を貪るように食らう人よりも、少しでも私を知ってくれる、知ろうとしてくれる人がいい。
そんな事を思いながら、なら、なぜ、私は私を好きだと手紙を送り続けているユーグを無視してしまうのだろう? そんな自分の中の理不尽が脳裏を過れば、ジリジリと頭の中にノイズが過った。
不幸になれ……
頭痛が襲う……
なぜ、私だけが……幸福になれない……。
聞こえるようで、聞こえない声……。
覚えのある声……。
うすぼんやりした意識で、私は宙をあおぐ。
「ミリヤ様の声が聞こえた気が……」
私の頬に触れる手。 抱きしめ、背を撫で、足を撫で、熱を確認するように、私を抱きしめてくる。
「んっ?」
問いかける声が耳元で囁き。
「彼女は死んだ……もう、いい、解放されていいんだ……」
そう甘く言われれば、身体の力が甘く溶けるような気がして、身を寄せた……。 ボンヤリとしていた……。
「きもちいい……」
甘い溜息と共に訴えれば、
「そうか……」
黒髪の男は私を抱きしめ撫でる。 はぁ……と熱い溜息が、呼吸の熱が肌に熱く触れ、私もまた、甘い息をつく。 そっと、私は未だボロボロの砂交じりのローブを着ている男の身体に手を回した。
ローブの中に手を入れ、その肌に触れようとした……。 その感触は想像している者と違っていて、ローブを脱がせれば違和感の正体を知った。 男の身体は、獣のように毛だらけだった。
毛並みと言うには十分な毛量に指を埋めた。
毛深いね……って、言うのはちょっと違うよね? 違和感……頭の中で再びノイズが走った。
これはいい……獣と愛を交わすか……それは楽しい……みんな不幸になればいい……。
「んっ」
頭痛に顔を歪めた。
「どうした?」
そう言って頬を舐めてくる舌がザラリとしていた。
触れるだけの幼いキスはしたことはあるが、人の舌など触れた事はない……こういう事もあるのだろうか? それは妙に擽ったかった。
「舌……変わってるね……ざらざらしてて、くすぐったい」
「イヤ?」
耳元で熱のこもった声が囁いた。
「よく分からない……でも、優しく触れてくれるなら、それでいい」
「助かる」
その言葉の意味は分からなかった。
不幸になれ、不幸になれ、不幸になれ……。
私は、今……触れられているこの状態を不幸だと感じていない。 頭がぼんやりとしていた。 身体の力が抜けて熱に溺れそうだ……。 この感覚は幸福なのか不幸なのか? ココにいる事はどうだろう? ダンベール公爵家にいるよりはマシのように思えた。 理由があるにしても、ココの人達は私を不快にするような事はしない。
きっと、私は不幸ではないのだろう。
そう思いながら、そう考える私も何処かオカシイような気がした。
そんな風に思えば、心が一気に凪いだ。
あぁ、コレは幸福……。
何かがオカシイ。
オカシイのに、私は柔らかな毛並みを撫でて微笑んだ。 微笑む私に男の金色の瞳は戸惑っているように見えた。 それが妙に面白く思えた。
男の身体を軽く押し、私はソファから立ち上がる。
「どう、し、た?」
男の身体は毛におおわれ、男の顔もぞわぞわと毛におおわれて行くのをボンヤリと眺めながら、私は、私は、薄い布地で作られた寝巻風ドレスを脱ぎ、下着に手をかければ、その手が……ペシャリと柔らかく叩かれた。 ソレは、長くしなやかな黒い尻尾。
「何?」
ユックリと視線を上げた私は、黒髪の男だった存在へと視線を向けた。 理解できなかった。 私は何を見ているのだろう。
人の姿をしながら、顔がネコ科の肉食獣へと変化していた。
「変、だよ?」
「俺の加護は力が強い。 強、すぎて……対価は蓄積され……のろいの、ように。 だが、俺は、おれ、は……普通に、だきた……かった」
何が不満なのか分からないまま、私は下着も脱ぎ捨てた。
普通って、何だろう?
男女の快楽を求める行為、私が見た事があるのは、知識として知っているのはマロリーだけだった。 だけなのに、私はその行為に強い嫌悪感しか抱いていなかった。
気持ち悪い……。
恍惚とする男女の顔が、脳裏に過った。
気持ち悪い。
私も、あんな気持ち悪くなるのか? と、不安に思った。
「ぁ……、私は、私は……やっぱり、嫌だ!! イヤ、嫌だ、嫌だ、あの人のようになりたくない。 あんな、あんなのは嫌だ!!」
私は、自分が全裸である事に思い出し、ベッドの上からシーツを掴みとり身体に巻きつけ……そして、
「お、ちつ、け……」
男はもう人の姿をしていなかった。
その姿は黒い獣だった。
混乱する。
コレなら、この存在なら、別にいいのでは? と、脳裏を過る。
えぇ……お似合いですよ。
そんな声が、許しとして囁いた気がした……。
両手を、黒豹へと差し出せば、それは私の周りを尻尾で足を撫でながらぐるりとまわった。
「こわ、く、ない……のか?」
「こわ、い?」
じっと私は男だった存在を見つめた。 面倒臭いなぁ……と思うが、目の前の男はまかり間違っても金を払っている客だ。 拒否する権利は私にあるのだろうか?
「どう、すればいいの?」
私はしゃがんだ……頭が、ボンヤリとしていた。
「私は、経験がないから……」
もし、この時正気であったなら、誰がこんな獣との情事経験等あるだろうか? と、突っ込みの一つぐらい入れただろう。 だから、この時の私は、どこまでもおかしかったのだ。
「しん、ぱいするな……横になっていれば、いい……」
少し毛並みが長い首筋を撫でれば、黒豹は私の手にすりよってきた。 だから、そういうものだ、それでいいんだと……疑う事無くベッドへと私は向かい、その縁に座った。
座る私の足元に毛並みを寄せてきた。
ふわりとした毛並みが、柔らかく……獣はシーツをめくりはごうとした。
あっはははははっはははははは、堕ちろ……。
そんな声が脳裏に響き、
そして、私は正気を取り戻した。
「いやぁあああああああ!!」
そんな事を思いながら、なら、なぜ、私は私を好きだと手紙を送り続けているユーグを無視してしまうのだろう? そんな自分の中の理不尽が脳裏を過れば、ジリジリと頭の中にノイズが過った。
不幸になれ……
頭痛が襲う……
なぜ、私だけが……幸福になれない……。
聞こえるようで、聞こえない声……。
覚えのある声……。
うすぼんやりした意識で、私は宙をあおぐ。
「ミリヤ様の声が聞こえた気が……」
私の頬に触れる手。 抱きしめ、背を撫で、足を撫で、熱を確認するように、私を抱きしめてくる。
「んっ?」
問いかける声が耳元で囁き。
「彼女は死んだ……もう、いい、解放されていいんだ……」
そう甘く言われれば、身体の力が甘く溶けるような気がして、身を寄せた……。 ボンヤリとしていた……。
「きもちいい……」
甘い溜息と共に訴えれば、
「そうか……」
黒髪の男は私を抱きしめ撫でる。 はぁ……と熱い溜息が、呼吸の熱が肌に熱く触れ、私もまた、甘い息をつく。 そっと、私は未だボロボロの砂交じりのローブを着ている男の身体に手を回した。
ローブの中に手を入れ、その肌に触れようとした……。 その感触は想像している者と違っていて、ローブを脱がせれば違和感の正体を知った。 男の身体は、獣のように毛だらけだった。
毛並みと言うには十分な毛量に指を埋めた。
毛深いね……って、言うのはちょっと違うよね? 違和感……頭の中で再びノイズが走った。
これはいい……獣と愛を交わすか……それは楽しい……みんな不幸になればいい……。
「んっ」
頭痛に顔を歪めた。
「どうした?」
そう言って頬を舐めてくる舌がザラリとしていた。
触れるだけの幼いキスはしたことはあるが、人の舌など触れた事はない……こういう事もあるのだろうか? それは妙に擽ったかった。
「舌……変わってるね……ざらざらしてて、くすぐったい」
「イヤ?」
耳元で熱のこもった声が囁いた。
「よく分からない……でも、優しく触れてくれるなら、それでいい」
「助かる」
その言葉の意味は分からなかった。
不幸になれ、不幸になれ、不幸になれ……。
私は、今……触れられているこの状態を不幸だと感じていない。 頭がぼんやりとしていた。 身体の力が抜けて熱に溺れそうだ……。 この感覚は幸福なのか不幸なのか? ココにいる事はどうだろう? ダンベール公爵家にいるよりはマシのように思えた。 理由があるにしても、ココの人達は私を不快にするような事はしない。
きっと、私は不幸ではないのだろう。
そう思いながら、そう考える私も何処かオカシイような気がした。
そんな風に思えば、心が一気に凪いだ。
あぁ、コレは幸福……。
何かがオカシイ。
オカシイのに、私は柔らかな毛並みを撫でて微笑んだ。 微笑む私に男の金色の瞳は戸惑っているように見えた。 それが妙に面白く思えた。
男の身体を軽く押し、私はソファから立ち上がる。
「どう、し、た?」
男の身体は毛におおわれ、男の顔もぞわぞわと毛におおわれて行くのをボンヤリと眺めながら、私は、私は、薄い布地で作られた寝巻風ドレスを脱ぎ、下着に手をかければ、その手が……ペシャリと柔らかく叩かれた。 ソレは、長くしなやかな黒い尻尾。
「何?」
ユックリと視線を上げた私は、黒髪の男だった存在へと視線を向けた。 理解できなかった。 私は何を見ているのだろう。
人の姿をしながら、顔がネコ科の肉食獣へと変化していた。
「変、だよ?」
「俺の加護は力が強い。 強、すぎて……対価は蓄積され……のろいの、ように。 だが、俺は、おれ、は……普通に、だきた……かった」
何が不満なのか分からないまま、私は下着も脱ぎ捨てた。
普通って、何だろう?
男女の快楽を求める行為、私が見た事があるのは、知識として知っているのはマロリーだけだった。 だけなのに、私はその行為に強い嫌悪感しか抱いていなかった。
気持ち悪い……。
恍惚とする男女の顔が、脳裏に過った。
気持ち悪い。
私も、あんな気持ち悪くなるのか? と、不安に思った。
「ぁ……、私は、私は……やっぱり、嫌だ!! イヤ、嫌だ、嫌だ、あの人のようになりたくない。 あんな、あんなのは嫌だ!!」
私は、自分が全裸である事に思い出し、ベッドの上からシーツを掴みとり身体に巻きつけ……そして、
「お、ちつ、け……」
男はもう人の姿をしていなかった。
その姿は黒い獣だった。
混乱する。
コレなら、この存在なら、別にいいのでは? と、脳裏を過る。
えぇ……お似合いですよ。
そんな声が、許しとして囁いた気がした……。
両手を、黒豹へと差し出せば、それは私の周りを尻尾で足を撫でながらぐるりとまわった。
「こわ、く、ない……のか?」
「こわ、い?」
じっと私は男だった存在を見つめた。 面倒臭いなぁ……と思うが、目の前の男はまかり間違っても金を払っている客だ。 拒否する権利は私にあるのだろうか?
「どう、すればいいの?」
私はしゃがんだ……頭が、ボンヤリとしていた。
「私は、経験がないから……」
もし、この時正気であったなら、誰がこんな獣との情事経験等あるだろうか? と、突っ込みの一つぐらい入れただろう。 だから、この時の私は、どこまでもおかしかったのだ。
「しん、ぱいするな……横になっていれば、いい……」
少し毛並みが長い首筋を撫でれば、黒豹は私の手にすりよってきた。 だから、そういうものだ、それでいいんだと……疑う事無くベッドへと私は向かい、その縁に座った。
座る私の足元に毛並みを寄せてきた。
ふわりとした毛並みが、柔らかく……獣はシーツをめくりはごうとした。
あっはははははっはははははは、堕ちろ……。
そんな声が脳裏に響き、
そして、私は正気を取り戻した。
「いやぁあああああああ!!」
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