20 / 50
03.快楽都市『デショワ』
20.加護と呪い 02
ラシェルの叫びに、黒豹となってしまった黒髪の男はビクッと動きを止め飛びのいた。
怖がられたくない。
嫌われたくない。
強い思いが黒豹となった……ユーグの胸のうちに広がり……自分を恐れるラシェルに怯えた。
ラシェルが這うように逃げ出せば、シュンッと落ち込んだ黒豹は動かない。 動けなかったと言う方が正しいだろうか?
反して、茶髪の男の動きは速い。
全力の速さでラシェルを掴み、抱きすくめた。
様子がオカシかったから。
そんな状況をずっと見てきたから。
ダンベール一族に属する者の多くは、諜報、暗殺に特化しており、正面から戦をするのに向かない者が多い。 そんな中でも大将として指揮を執っていたユーグの開戦当初となれば、戦うには手足が短く、ソレを補うために槍を持てば筋力が足りないのだから、戦場に出られる訳もない。
「お荷物……」
「ラシェル殿の方が余程、使い物になっただろうに」
そんな声は少なくなかった。
ユーグ本人が未熟であるのも理由だが、先代であるユーグの父ブレソールの作り出した汚名が大き過ぎ、一族の者であっても良い風に見ない者は多かった。 そして、存在しない信頼関係を覆すほどの戦場での知識もないのだから、どうしてよい結果が出せるだろうか?
私兵を出してくれた貴族も、ミリヤの祖父エヴラール・コンベール元侯爵に助力を願われてであり、戦場に追従しても協力的とまでは言えなかった。
挙句、もの知らぬユーグを支配するように、同行してきた神官達は彼等の価値観による清く正しい戦争を求めた。 そんな様々なものに囚われた戦など勝てるはずもなく、ただ一方的に追い詰められただけ……。
だが、神は慈悲深い。
そして、時に気まぐれ。
何よりも、残酷だった。
月のない夜に、陣営を囲む敵兵。
絶体絶命を前に、神はユーグに語り掛けた。
力が欲しいか?
全滅の危機を前に加護を差し出されれば誰だって手にするだろう。 例えそれがどのような神であっても。
加護『死神』
暴走ともいえる加護の発動により敵軍は一瞬にして壊滅状態となった。 だが、次の瞬間ユーグは獣の姿に堕ち、そのまま正気を失ったユーグは一族の者の命を奪い、その血を貪り、やがて正気に戻った。
対価は、それ1度で消化される事は無かった。
この程度では足りぬ。
もっと、楽しませよ。
力を貸し与えた分だけ、多くの嘆きと苦しみを捧げよ。
対価の分割払いを許されたのは、幸運か不幸か?
加護の対価が、情を交わした者の体液だと言う事は、追従した神官によって分かったが、身近な人間を貪り食らったショックは大きく……そして贄として差し出されたものを拒否れば、獣に堕ちて、自ら人を貪り食らった。
ここで使ったのが対価の曲解だった。
情を交わす = 行為を交わした者の体液を得る。
ようするに常に幾人かとの情事を強要され、正気を失う前にその相手と関係性を持つ事で人の姿を取り戻していた。
情を交わす。
人を思い、人に思われる。
気持ちが無ければ、効果が薄い。
神が曲解を許したのは、その状況を神が楽しんだから。
せめて、ユーグの方か、相手の方のどちらかに情があればいいのだが、そう上手くいくハズもなく……結果として、相手をする女性側に薬を使い、疑似的な恋愛状態に落とす方法を取られた。
そんな状況の全てを見守り、嘆くユーグを慰め、嫌がり暴れる女性に薬を盛り捕らえ生贄として準備していたのが、サージュ……幼少時の呼び名サシャであった。
今、甘く見ていた事をサージュは後悔した。
ずっと主ユーグが愛していた相手だから……。
現実に獣に変化するまでにかかった時間は長く、今も正気を保っている事を考えれば、相手がラシェルである事の意味は大きいのだろう。
サージュはユーグ側からしか物を考えていなかった事を後悔し、そして……外に向かい走り出そうとしていたラシェルをサージュは捕らえた。 そのまま走り手すりを乗り越えてしまっては落下である。 治癒の加護を持つラシェルであれば死ぬことはないだろうが、ユーグの心にまたどれほどの傷を残すだろうかと思えば自然と怒鳴っていた。
「ここは2階ですよ!! な、にをするんですか!!」
「こ、わいよぉ……」
涙に濡れた顔は恐怖で歪み、ソレは今まで見た女性達となんら変わりなかった。 だが……未だ正気を手放せていないユーグの方は、ショックを明らかにしていた。
「べつの、人間を……用意してくれ……」
「無理ですよ。 情の無い相手では逆に対価が増すだけです」
そう言って右手で怯えるラシェルを抱えながら、左腕を差し出した。
「とっとと噛みついて下さい。 正気を失ってしまえば、こっちの命が危なくなるんですから、遠慮は不要です」
現状、最も少ない血肉で効率よく呪いからユーグを解放される事ができるのがサージュだった。 深い溜息と共に、ユーグがサージュの腕に噛みつこうとした。
「ぇ?」
ラシェルの目に焦りが宿った。
恐怖から正気へと色を変え、衝動的に不意打ち的にサージュの腕から逃れ、今まさに噛みつこうとしていたユーグに抱き着いた。
「噛みつくのは痛いし、良くないと思います!!」
「これは仕方のない事なんですよ。 彼は桁外れの力を神から借り受けた。 その対価の支払いを促されている。 払いを拒めば……どうなるか想像つく世界で生きてきましたよね?」
正気を失い逃げようとしたラシェルへ向けられるサージュの視線は冷たい。
「対価は、血、肉?」
「情を持ち、持たれた相手の体液です」
「……」
「変な事は考えないで下さいよ」
「変な? とは?」
「……」
「いえ、体液なら涙でもいけるのかなって……玉ねぎ、そうだ玉ねぎを貰ってきます!!」
抱きしめていた黒豹の首元から手を離し、全裸のままで部屋の外へ向かおうとするラシェルの顔面をベロリと黒豹が舐めた。
「へっ?」
怖いと泣いて暴れて2階から飛び降りようとしたラシェルの顔面は、涙と鼻水でぐじゅぐじゅで……。 それがザラリとした舌でなめとられ、ラシェルはきょとんとした顔で停止し黒豹に顔面を舐められまくった。
「で、どうです?」
聞いたのはサージュ。
「人に戻るほどではないが、正気を保てるほどの利子ぐらいにはなっている」
「とは言え……利子程度では、長くは持ちませんよね……。 申し訳ございませんラシェル。 少し眠っていてもらえますか? その間に、事は済ませますから」
「ぇっと……ソレは、どういう……?」
狼狽えるラシェルの瞳には、再び涙は溢れ出て、ソレを見たユーグとサージュはなんだか……久々に笑った気がした。
「知らなかった。 こんなに泣き虫だったんだな」
そう笑ったように言いながら、黒豹は零れ落ちる涙を舐める。
「散々、人に泣き虫だと言っていたのにねぇ」
サージュもまた笑う。
「失礼しますね」
ラシェルの身体が軽く抱き上げられ、ベッドの上に下ろされた。
怖がられたくない。
嫌われたくない。
強い思いが黒豹となった……ユーグの胸のうちに広がり……自分を恐れるラシェルに怯えた。
ラシェルが這うように逃げ出せば、シュンッと落ち込んだ黒豹は動かない。 動けなかったと言う方が正しいだろうか?
反して、茶髪の男の動きは速い。
全力の速さでラシェルを掴み、抱きすくめた。
様子がオカシかったから。
そんな状況をずっと見てきたから。
ダンベール一族に属する者の多くは、諜報、暗殺に特化しており、正面から戦をするのに向かない者が多い。 そんな中でも大将として指揮を執っていたユーグの開戦当初となれば、戦うには手足が短く、ソレを補うために槍を持てば筋力が足りないのだから、戦場に出られる訳もない。
「お荷物……」
「ラシェル殿の方が余程、使い物になっただろうに」
そんな声は少なくなかった。
ユーグ本人が未熟であるのも理由だが、先代であるユーグの父ブレソールの作り出した汚名が大き過ぎ、一族の者であっても良い風に見ない者は多かった。 そして、存在しない信頼関係を覆すほどの戦場での知識もないのだから、どうしてよい結果が出せるだろうか?
私兵を出してくれた貴族も、ミリヤの祖父エヴラール・コンベール元侯爵に助力を願われてであり、戦場に追従しても協力的とまでは言えなかった。
挙句、もの知らぬユーグを支配するように、同行してきた神官達は彼等の価値観による清く正しい戦争を求めた。 そんな様々なものに囚われた戦など勝てるはずもなく、ただ一方的に追い詰められただけ……。
だが、神は慈悲深い。
そして、時に気まぐれ。
何よりも、残酷だった。
月のない夜に、陣営を囲む敵兵。
絶体絶命を前に、神はユーグに語り掛けた。
力が欲しいか?
全滅の危機を前に加護を差し出されれば誰だって手にするだろう。 例えそれがどのような神であっても。
加護『死神』
暴走ともいえる加護の発動により敵軍は一瞬にして壊滅状態となった。 だが、次の瞬間ユーグは獣の姿に堕ち、そのまま正気を失ったユーグは一族の者の命を奪い、その血を貪り、やがて正気に戻った。
対価は、それ1度で消化される事は無かった。
この程度では足りぬ。
もっと、楽しませよ。
力を貸し与えた分だけ、多くの嘆きと苦しみを捧げよ。
対価の分割払いを許されたのは、幸運か不幸か?
加護の対価が、情を交わした者の体液だと言う事は、追従した神官によって分かったが、身近な人間を貪り食らったショックは大きく……そして贄として差し出されたものを拒否れば、獣に堕ちて、自ら人を貪り食らった。
ここで使ったのが対価の曲解だった。
情を交わす = 行為を交わした者の体液を得る。
ようするに常に幾人かとの情事を強要され、正気を失う前にその相手と関係性を持つ事で人の姿を取り戻していた。
情を交わす。
人を思い、人に思われる。
気持ちが無ければ、効果が薄い。
神が曲解を許したのは、その状況を神が楽しんだから。
せめて、ユーグの方か、相手の方のどちらかに情があればいいのだが、そう上手くいくハズもなく……結果として、相手をする女性側に薬を使い、疑似的な恋愛状態に落とす方法を取られた。
そんな状況の全てを見守り、嘆くユーグを慰め、嫌がり暴れる女性に薬を盛り捕らえ生贄として準備していたのが、サージュ……幼少時の呼び名サシャであった。
今、甘く見ていた事をサージュは後悔した。
ずっと主ユーグが愛していた相手だから……。
現実に獣に変化するまでにかかった時間は長く、今も正気を保っている事を考えれば、相手がラシェルである事の意味は大きいのだろう。
サージュはユーグ側からしか物を考えていなかった事を後悔し、そして……外に向かい走り出そうとしていたラシェルをサージュは捕らえた。 そのまま走り手すりを乗り越えてしまっては落下である。 治癒の加護を持つラシェルであれば死ぬことはないだろうが、ユーグの心にまたどれほどの傷を残すだろうかと思えば自然と怒鳴っていた。
「ここは2階ですよ!! な、にをするんですか!!」
「こ、わいよぉ……」
涙に濡れた顔は恐怖で歪み、ソレは今まで見た女性達となんら変わりなかった。 だが……未だ正気を手放せていないユーグの方は、ショックを明らかにしていた。
「べつの、人間を……用意してくれ……」
「無理ですよ。 情の無い相手では逆に対価が増すだけです」
そう言って右手で怯えるラシェルを抱えながら、左腕を差し出した。
「とっとと噛みついて下さい。 正気を失ってしまえば、こっちの命が危なくなるんですから、遠慮は不要です」
現状、最も少ない血肉で効率よく呪いからユーグを解放される事ができるのがサージュだった。 深い溜息と共に、ユーグがサージュの腕に噛みつこうとした。
「ぇ?」
ラシェルの目に焦りが宿った。
恐怖から正気へと色を変え、衝動的に不意打ち的にサージュの腕から逃れ、今まさに噛みつこうとしていたユーグに抱き着いた。
「噛みつくのは痛いし、良くないと思います!!」
「これは仕方のない事なんですよ。 彼は桁外れの力を神から借り受けた。 その対価の支払いを促されている。 払いを拒めば……どうなるか想像つく世界で生きてきましたよね?」
正気を失い逃げようとしたラシェルへ向けられるサージュの視線は冷たい。
「対価は、血、肉?」
「情を持ち、持たれた相手の体液です」
「……」
「変な事は考えないで下さいよ」
「変な? とは?」
「……」
「いえ、体液なら涙でもいけるのかなって……玉ねぎ、そうだ玉ねぎを貰ってきます!!」
抱きしめていた黒豹の首元から手を離し、全裸のままで部屋の外へ向かおうとするラシェルの顔面をベロリと黒豹が舐めた。
「へっ?」
怖いと泣いて暴れて2階から飛び降りようとしたラシェルの顔面は、涙と鼻水でぐじゅぐじゅで……。 それがザラリとした舌でなめとられ、ラシェルはきょとんとした顔で停止し黒豹に顔面を舐められまくった。
「で、どうです?」
聞いたのはサージュ。
「人に戻るほどではないが、正気を保てるほどの利子ぐらいにはなっている」
「とは言え……利子程度では、長くは持ちませんよね……。 申し訳ございませんラシェル。 少し眠っていてもらえますか? その間に、事は済ませますから」
「ぇっと……ソレは、どういう……?」
狼狽えるラシェルの瞳には、再び涙は溢れ出て、ソレを見たユーグとサージュはなんだか……久々に笑った気がした。
「知らなかった。 こんなに泣き虫だったんだな」
そう笑ったように言いながら、黒豹は零れ落ちる涙を舐める。
「散々、人に泣き虫だと言っていたのにねぇ」
サージュもまた笑う。
「失礼しますね」
ラシェルの身体が軽く抱き上げられ、ベッドの上に下ろされた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛を知った私は、もう二度と跪きません
阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。
家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。
「呪われた男にでも喰われてこい」
そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。
彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。
その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。
「エカテリーナ様、どうかお助けを!」
かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!