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03.快楽都市『デショワ』
30.これから 02
ラシェルとの再会の翌日も、俺達は快楽都市にい続けていた。
加護における対価として戦場に送り込まれてきた娼婦達はいったん横に置くとして、こういう場は初めて……の事。 依頼から1時間もせずに、作業用のデスクが持ち込まれ配置され、椅子の座り心地にユベールと偽名を使ったユーグは呟く。
「とても興味深い……」
ユーグ曰く、ダンベール公爵家当主、国王陛下が進める婚約者候補ではなく、1人の男として愛されたいと言う身勝手な理由から、ラシェルには偽名のまま通す事にしたのだ。
「思春期ですか?」
おっとりとした口調で、刺繍をしながらラシェルは言う。 ソレは、貴族の趣味ではなく、5年に渡ってダンベール領に住まう領民の生活を支えてくれた大切な魔法技術である。
「何を言っているんだ?」
ラシェルは無言のまま、デスクの上を指さした。 そこには手配可能な高級娼婦のリストが似顔絵付きで乗っていた。
「ち、違う!! ここに置いてあっただけで、俺は、あくまでデスクの使い心地をだなぁ。 それに……、こういう女性に興味を持つなら、結婚など申し込むかよ……」
顔を赤らめボソボソとした呟きは、残念ながらラシェルに通じていない。
「それで、これからどうされるつもりですか?」
「どう、とは?」
「王家に交渉を任せ、ダンベール一族の中でも信頼できる実力者は、合流に紛れて戦線から離脱し、他国との繋がりを持つ貴族の捜索に動いているとおっしゃっていましたよね?」
「あぁ」
「お仕事なさらなくて良いのですか?」
「仕事はしてるさ」
ユベールは説明する。
高級娼館が思っていた以上に都合が良い場所である事を。
ラシェルが預けられた高級娼館は、利用する人間は金持ちであり、そういう人間は素性を隠したいと言う者が多い。 そのため、機密性の高い部屋を貸し出し、その日の気分で女性を指名し招くと言うシステムを取っている。
密談には最適なのだ。
結果として、各地を巡らなくてもラシェルとサージュは、各国の要人と貴族の会合の事実を知り。 諜報に特化し技術を磨いた技を使い多くの情報を獲得していた。
ユベールはおいでおいでとラシェルを手招きする。
「どうかされましたか?」
刺繍をソファに置き席を立ち、傍まで行けば腕を引かれ膝の上に座らせられた。
「お仕事は?」
「してるよ」
見せつける大量の資料。 内容は、政治的に敵と思われる貴族と、他国の要人たちの会話一覧である。
「編集前だから見づらいだろうけどね……ここにいるだけで、これだけの情報が集まった。 なかなか良い場所だと思わないか? とは言え、ラシェルに暴力を振るい攫った挙句、客を取らせようとした罪は大きい。 例え店のものが実行に関わらず事情を知らなかったとしてもだ、ラシェルに身売りをさせようとした事実は重い。 一族斬首のもと晒し首は当然だな」
「ぇ?」
「何を驚く、どれほど高級だと言っても、商売人としては汚れ商売、そんな奴らが貴族女性を攫い店に出す。 それがどれほど罪深いか……」
ユベールは冷ややかにニヤリと笑って見せる。
「実は、かなり怒ってます?」
「怒ってるとも、タイミングが悪ければラシェルは他の男に抱かれていた……斬首刑? そんなもので許せる訳がないだろう。 身体の表面を薄く切り刻み、糞尿をぬりつけ、ウジの沸く死体処理場に放り入れたいぐらいだ」
「……」
眉間をよせ表情を歪ませ、紫色の瞳がキツクユベールを睨めば、そんな表情すら子供扱いされるより良いと楽しむユベール。 それでも言い訳? らしきものを次の瞬間にするのは、元々が小心者のユーグだからだろうか?
「結果的にはラシェルは俺の側に居る訳だし、情状酌量……チャンスぐらいはやろうと思っているがな。 ……誘拐犯を裏切りこちら側につき、王国直轄となって素直に情報を提供すると言うなら、命を助けるだけでなく、このまま店の経営を任せてもいいと考えている」
そして、国王陛下への報告と許可を得て、娼館を脅した結果、ユベールの予定通りで事が進み、そして私達は快楽都市を後にする事になった。
娼館で得た情報をもとに、他国との関連性が強いとされる貴族を重点的に調査を行うらしい。
「娼館との話し合いがついたなら、私は向こうにいた方が良いのではありませんか?」
私がいる事で、2人は流れの傭兵と言う身軽な立場から、馬車を引き連れた行商人へと身分を変えた。 機動性が悪くなるし、人目にもつくし、余り良い事がないように思える。
馬車の御者席と荷台に分かれ、サージュと私は話をする。
「そんな事はありません。 主のモチベーションが変わりますし、万が一の保険が同行してくれるのは心強いものです。 数日不便をおかけしますが、途中から世話役の者も合流しますので、それまで我慢なさってください」
そうサージュが告げる。
「そうではなくて、私と言う存在が情報収集にはリスクが多いと思うの」
「ほぼ使えなくなっていた腕を治していただけた。 世話役としても不十分、ただ贄として側に居るだけの私に力を与えて下さったのです。 お守りいたしますよ」
なんてにこやかに馬車を操作するサージュは言うのだ。
「でも……世話係はやり過ぎだと思うの。 自分の面倒は自分で見ます」
「余りお気になさらないで下さい」
「いえ、遠慮と言う意味ではなくてですね」
「遠慮ではなく?」
「……ユベールは、あぁ言う性格でしょう?」
「はぁ?」
なかなか伝わらずに……私は困ったなと苦笑し話を続けた。
「その、ユベールは女性に対して責任感が無責任に強いでしょ? 世話役の方にも、きっと……期待を持たせる行動をなさっていると思うの」
「あぁ、なるほど……、ラシェル様に嫉妬が向くと面倒だと」
「そこまではっきり言われると困りますが……その通りです」
私は余りにも正直すぎるサージュの言葉に、苦笑いと共に頷いた。
「一応、主の思い人が同行しているので配慮するよう伝えてはありますが、さて……問題がある場合には即対応しますので、余り心を痛めないで下さい」
なんて会話を馬車側の私とサージュが語っていれば、ユベールが馬を寄せて来た。
「ずるいぞ!! なぜ、サージュばかりがラシェルと仲良く話をしている!!」
私とサージュは、問題の元凶が何を呑気なとでもいうように、呆れ、そして苦笑いを浮かべるのだった。
加護における対価として戦場に送り込まれてきた娼婦達はいったん横に置くとして、こういう場は初めて……の事。 依頼から1時間もせずに、作業用のデスクが持ち込まれ配置され、椅子の座り心地にユベールと偽名を使ったユーグは呟く。
「とても興味深い……」
ユーグ曰く、ダンベール公爵家当主、国王陛下が進める婚約者候補ではなく、1人の男として愛されたいと言う身勝手な理由から、ラシェルには偽名のまま通す事にしたのだ。
「思春期ですか?」
おっとりとした口調で、刺繍をしながらラシェルは言う。 ソレは、貴族の趣味ではなく、5年に渡ってダンベール領に住まう領民の生活を支えてくれた大切な魔法技術である。
「何を言っているんだ?」
ラシェルは無言のまま、デスクの上を指さした。 そこには手配可能な高級娼婦のリストが似顔絵付きで乗っていた。
「ち、違う!! ここに置いてあっただけで、俺は、あくまでデスクの使い心地をだなぁ。 それに……、こういう女性に興味を持つなら、結婚など申し込むかよ……」
顔を赤らめボソボソとした呟きは、残念ながらラシェルに通じていない。
「それで、これからどうされるつもりですか?」
「どう、とは?」
「王家に交渉を任せ、ダンベール一族の中でも信頼できる実力者は、合流に紛れて戦線から離脱し、他国との繋がりを持つ貴族の捜索に動いているとおっしゃっていましたよね?」
「あぁ」
「お仕事なさらなくて良いのですか?」
「仕事はしてるさ」
ユベールは説明する。
高級娼館が思っていた以上に都合が良い場所である事を。
ラシェルが預けられた高級娼館は、利用する人間は金持ちであり、そういう人間は素性を隠したいと言う者が多い。 そのため、機密性の高い部屋を貸し出し、その日の気分で女性を指名し招くと言うシステムを取っている。
密談には最適なのだ。
結果として、各地を巡らなくてもラシェルとサージュは、各国の要人と貴族の会合の事実を知り。 諜報に特化し技術を磨いた技を使い多くの情報を獲得していた。
ユベールはおいでおいでとラシェルを手招きする。
「どうかされましたか?」
刺繍をソファに置き席を立ち、傍まで行けば腕を引かれ膝の上に座らせられた。
「お仕事は?」
「してるよ」
見せつける大量の資料。 内容は、政治的に敵と思われる貴族と、他国の要人たちの会話一覧である。
「編集前だから見づらいだろうけどね……ここにいるだけで、これだけの情報が集まった。 なかなか良い場所だと思わないか? とは言え、ラシェルに暴力を振るい攫った挙句、客を取らせようとした罪は大きい。 例え店のものが実行に関わらず事情を知らなかったとしてもだ、ラシェルに身売りをさせようとした事実は重い。 一族斬首のもと晒し首は当然だな」
「ぇ?」
「何を驚く、どれほど高級だと言っても、商売人としては汚れ商売、そんな奴らが貴族女性を攫い店に出す。 それがどれほど罪深いか……」
ユベールは冷ややかにニヤリと笑って見せる。
「実は、かなり怒ってます?」
「怒ってるとも、タイミングが悪ければラシェルは他の男に抱かれていた……斬首刑? そんなもので許せる訳がないだろう。 身体の表面を薄く切り刻み、糞尿をぬりつけ、ウジの沸く死体処理場に放り入れたいぐらいだ」
「……」
眉間をよせ表情を歪ませ、紫色の瞳がキツクユベールを睨めば、そんな表情すら子供扱いされるより良いと楽しむユベール。 それでも言い訳? らしきものを次の瞬間にするのは、元々が小心者のユーグだからだろうか?
「結果的にはラシェルは俺の側に居る訳だし、情状酌量……チャンスぐらいはやろうと思っているがな。 ……誘拐犯を裏切りこちら側につき、王国直轄となって素直に情報を提供すると言うなら、命を助けるだけでなく、このまま店の経営を任せてもいいと考えている」
そして、国王陛下への報告と許可を得て、娼館を脅した結果、ユベールの予定通りで事が進み、そして私達は快楽都市を後にする事になった。
娼館で得た情報をもとに、他国との関連性が強いとされる貴族を重点的に調査を行うらしい。
「娼館との話し合いがついたなら、私は向こうにいた方が良いのではありませんか?」
私がいる事で、2人は流れの傭兵と言う身軽な立場から、馬車を引き連れた行商人へと身分を変えた。 機動性が悪くなるし、人目にもつくし、余り良い事がないように思える。
馬車の御者席と荷台に分かれ、サージュと私は話をする。
「そんな事はありません。 主のモチベーションが変わりますし、万が一の保険が同行してくれるのは心強いものです。 数日不便をおかけしますが、途中から世話役の者も合流しますので、それまで我慢なさってください」
そうサージュが告げる。
「そうではなくて、私と言う存在が情報収集にはリスクが多いと思うの」
「ほぼ使えなくなっていた腕を治していただけた。 世話役としても不十分、ただ贄として側に居るだけの私に力を与えて下さったのです。 お守りいたしますよ」
なんてにこやかに馬車を操作するサージュは言うのだ。
「でも……世話係はやり過ぎだと思うの。 自分の面倒は自分で見ます」
「余りお気になさらないで下さい」
「いえ、遠慮と言う意味ではなくてですね」
「遠慮ではなく?」
「……ユベールは、あぁ言う性格でしょう?」
「はぁ?」
なかなか伝わらずに……私は困ったなと苦笑し話を続けた。
「その、ユベールは女性に対して責任感が無責任に強いでしょ? 世話役の方にも、きっと……期待を持たせる行動をなさっていると思うの」
「あぁ、なるほど……、ラシェル様に嫉妬が向くと面倒だと」
「そこまではっきり言われると困りますが……その通りです」
私は余りにも正直すぎるサージュの言葉に、苦笑いと共に頷いた。
「一応、主の思い人が同行しているので配慮するよう伝えてはありますが、さて……問題がある場合には即対応しますので、余り心を痛めないで下さい」
なんて会話を馬車側の私とサージュが語っていれば、ユベールが馬を寄せて来た。
「ずるいぞ!! なぜ、サージュばかりがラシェルと仲良く話をしている!!」
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