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04.裏切者たちの叫び
34.お世話係 01
何時の間に眠ったのだろう?
肉の疲労と、肌に触れる熱が心地よく抱きしめる腕に、眠ったふりをしながら身体を任せる。 頬に愛おしそうに触れる手が気持ちよく、このまま眠っていたいと思ってしまう。
旅を始めてから数日。
当たり前が当たり前でなくなった日常。
……だからこそ、緊張した日常が解きほぐされ、素直になれるような気がしていた。
縋るようにシャツを握れば、腰を支える手にわずかに力がこもる。 顔を覗き込む気配を無視して眠ったふりを続けようとしたのだけど……ソレは難しかった。
「聞いてないわ!! どういうことよ!! 旦那様が世話役を必要としているっていうからわざわざ来たのに!!」
甲高い女性の声が騒々しく、対するサージュの声は冷ややかだった。
「貴方を呼び寄せた覚えなどありません」
私は苦笑と共に瞳をあけた。
時間は夕刻時を少し回ったくらいだろうか? 吹き込む風が冷えていて身震いをすれば、毛布でぐるぐる巻きにされそうになった。
「服を着るわ」
「そりゃぁ、残念だ」
チュッと頬に口づけられる。
眠っていた私は、大きな男物のシャツを着せられていて、肌の多くが剥き出しのままだった。 立ち上がろうとしたが、腰を抱く手に力が入り、頬に触れてきた大きな手が顔を上向かせ軽く口づける。 金の瞳で優しく見つめられれば、何故か胸が痛くて、ソレをかきけすように黒いユベールの髪を撫でながら、啄むような口づけを2人で繰り返す。
雰囲気にのまれるとは、きっとこういう事を言うのだろう。
するりと大きな手が太ももを撫でた時、女性の声が響いた。
「不謹慎ですわ!!」
明るい茶色の髪が夕日を受けて金色めいて波うっていた。 キツイ大きな釣り目がちな瞳が敵意を露わに見つめてくるが、強い意志をたたえたその姿は美しくもある。
「モテる男はつらいわね」
クスッと笑いながら言えるのは、私を抱きしめる手にためらいがなく、堂々とそれを見せつけているからの余裕。
私って以外と性格が悪いのね。 そんな事を実感しながら、私はユベールの膝の上から立ちあがれば、大きな男物のシャツの隙間から見える白い肌につけた赤い痕を隠すことはなく、茶髪の女性にみせつけてしまい……悲鳴にも似た声があげられた。
「汚らわしい!! 婚約破棄を了承し大勢の貴族からの求婚を受けておきながら!! 破廉恥な!!」
私は何の話かとユベールへと視線を向ければ、ユベールは肩を竦める。
「競売はあくまでも状況を適切に表した言葉で、表では子爵令嬢に大勢の男性が求婚を申し込み、男としての度量をアピールしていると言う事になっているそうだ」
「そうなの? 知りませんでした」
「愛しているよ」
引き寄せられ、抱き寄せられ、口づけられる。
「何?」
「アピール競争に乗ってみた」
私は腕でユベールの顔を退かして、今度こそ身を離した。
「身支度をするので、場を開けてもらえますか?」
「俺の事は気にするな」
言われて軽く睨むが、抱きしめる手の力は変わらない。
小さくコラッと小さな子を叱るように言いコメカミに口づければ、頬が撫でられ喉元に口づけられた。 蕩けそうだなぁ……ユックリと進む甘い空気と時間に、自然と微笑んでいれば……。
「ちょっと!! いい加減に離れなさい!! 貧乏子爵の娘風情が、アンタはね。 爺共のペットにされ……ぐふぅ」
遠慮なく左右に立っていたサージュと、幼さの残るメイド服姿の少女が、女性の腹を裏拳で殴っており、女性はその場で蹲った。
「えっと……?」
驚き戸惑う私を無視して、サージュは側に居るメイド服の少女に言う。 少女は2人よりも濃い茶色髪をしているが癖の感じや、緑の瞳は、2人の親族であると告げていた。
「メイリー、手伝って差し上げて下さい」
サージュが告げれば、メイド服の少女が、肩を大きく揺らして頷いた。
「はい!!」
幼さの残る少女に情事の痕が露わな肌を見せるのはためらわれたが、少女は全く気にした様子なく温かい湯で湿り気をおびさせた布地で私の身体を拭いて行く。
布地には浄化の紋章が縫ってあり、人拭きごとに肌についた汚れが消え、美容液で手入れしたように肌が潤っていく。 旅の不自由さに作った繍呪布だ。
「ラシェル様、コレ、凄いですね」
「贅沢をしてこなかったと思っていたのですが、旅に出ると色々と不便を感じるものですよね」
すぐに抱き締め、匂いを嗅ぐ人がいなければ、ここまで気にする事も無かったかもしれないが……と、なんとなく言い訳めいた事を考えながら、自嘲気味に少女メイリーに告げた。
「戦争を終え、豊かな時代が来れば、必要とされる繍呪布の種類も変わるはず。 この旅は、きっとラシェル様にとって得難いものとなりますよ」
そう言って元気づけてくれた。
「……みんな、貴方のように考えているの?」
「どうでしょう。 両親にはお前のような変わり者は貰い手もないだろうから、職を手に付けろって言われていますからねぇ~」
てへへと屈託なく少女は笑った。
他愛ない会話だが、世の中の誰もが彼女のような考えを持つなら、私は私を手に入れようと競売に参加する相手への警戒心を高める必要がある……私自身は無力だと言うのにだ……。
「苦労していますのね。 私も変わり者だから、理解できますわ」
「ラシェル様と私は全然違いますよ。 だって……こんなに美しいのですから……。 髪も拭わせて頂きますね」
他愛ない会話を交わすたびに、少女は赤らみもぞもぞとした様子を見せていた。 敵意と言うものはない。 過去少女と同じような反応を見たのは、スラムや娼館の幼い子達だった。 まぁ、敵意を向ける子は向けるんだけどね……。 そこはきっと、私との相性を吟味したうえでサージュが呼び寄せてくれたのだろう。
「お手伝いしてくれてありがとう」
私は少しお姉さんぶって微笑んで見せれば、嬉しそうに満面の笑みを返された。
「ラシェル様のお世話が出来て光栄です!!」
夢を見る少女は可愛らしくて、ほほえましい。 だけれど、彼女のような子の理想を壊すまいとすれば、折角解けかけた何かが、私を律していくのが分かった。
その頃、馬車の外では騒々しさが増していた。
「旦那様の全てを受け止める覚悟で参りました。 旦那様の苦悩、このカリナが全て受け止めさせていただきます!! どうか、御側においてくださいませ」
肉の疲労と、肌に触れる熱が心地よく抱きしめる腕に、眠ったふりをしながら身体を任せる。 頬に愛おしそうに触れる手が気持ちよく、このまま眠っていたいと思ってしまう。
旅を始めてから数日。
当たり前が当たり前でなくなった日常。
……だからこそ、緊張した日常が解きほぐされ、素直になれるような気がしていた。
縋るようにシャツを握れば、腰を支える手にわずかに力がこもる。 顔を覗き込む気配を無視して眠ったふりを続けようとしたのだけど……ソレは難しかった。
「聞いてないわ!! どういうことよ!! 旦那様が世話役を必要としているっていうからわざわざ来たのに!!」
甲高い女性の声が騒々しく、対するサージュの声は冷ややかだった。
「貴方を呼び寄せた覚えなどありません」
私は苦笑と共に瞳をあけた。
時間は夕刻時を少し回ったくらいだろうか? 吹き込む風が冷えていて身震いをすれば、毛布でぐるぐる巻きにされそうになった。
「服を着るわ」
「そりゃぁ、残念だ」
チュッと頬に口づけられる。
眠っていた私は、大きな男物のシャツを着せられていて、肌の多くが剥き出しのままだった。 立ち上がろうとしたが、腰を抱く手に力が入り、頬に触れてきた大きな手が顔を上向かせ軽く口づける。 金の瞳で優しく見つめられれば、何故か胸が痛くて、ソレをかきけすように黒いユベールの髪を撫でながら、啄むような口づけを2人で繰り返す。
雰囲気にのまれるとは、きっとこういう事を言うのだろう。
するりと大きな手が太ももを撫でた時、女性の声が響いた。
「不謹慎ですわ!!」
明るい茶色の髪が夕日を受けて金色めいて波うっていた。 キツイ大きな釣り目がちな瞳が敵意を露わに見つめてくるが、強い意志をたたえたその姿は美しくもある。
「モテる男はつらいわね」
クスッと笑いながら言えるのは、私を抱きしめる手にためらいがなく、堂々とそれを見せつけているからの余裕。
私って以外と性格が悪いのね。 そんな事を実感しながら、私はユベールの膝の上から立ちあがれば、大きな男物のシャツの隙間から見える白い肌につけた赤い痕を隠すことはなく、茶髪の女性にみせつけてしまい……悲鳴にも似た声があげられた。
「汚らわしい!! 婚約破棄を了承し大勢の貴族からの求婚を受けておきながら!! 破廉恥な!!」
私は何の話かとユベールへと視線を向ければ、ユベールは肩を竦める。
「競売はあくまでも状況を適切に表した言葉で、表では子爵令嬢に大勢の男性が求婚を申し込み、男としての度量をアピールしていると言う事になっているそうだ」
「そうなの? 知りませんでした」
「愛しているよ」
引き寄せられ、抱き寄せられ、口づけられる。
「何?」
「アピール競争に乗ってみた」
私は腕でユベールの顔を退かして、今度こそ身を離した。
「身支度をするので、場を開けてもらえますか?」
「俺の事は気にするな」
言われて軽く睨むが、抱きしめる手の力は変わらない。
小さくコラッと小さな子を叱るように言いコメカミに口づければ、頬が撫でられ喉元に口づけられた。 蕩けそうだなぁ……ユックリと進む甘い空気と時間に、自然と微笑んでいれば……。
「ちょっと!! いい加減に離れなさい!! 貧乏子爵の娘風情が、アンタはね。 爺共のペットにされ……ぐふぅ」
遠慮なく左右に立っていたサージュと、幼さの残るメイド服姿の少女が、女性の腹を裏拳で殴っており、女性はその場で蹲った。
「えっと……?」
驚き戸惑う私を無視して、サージュは側に居るメイド服の少女に言う。 少女は2人よりも濃い茶色髪をしているが癖の感じや、緑の瞳は、2人の親族であると告げていた。
「メイリー、手伝って差し上げて下さい」
サージュが告げれば、メイド服の少女が、肩を大きく揺らして頷いた。
「はい!!」
幼さの残る少女に情事の痕が露わな肌を見せるのはためらわれたが、少女は全く気にした様子なく温かい湯で湿り気をおびさせた布地で私の身体を拭いて行く。
布地には浄化の紋章が縫ってあり、人拭きごとに肌についた汚れが消え、美容液で手入れしたように肌が潤っていく。 旅の不自由さに作った繍呪布だ。
「ラシェル様、コレ、凄いですね」
「贅沢をしてこなかったと思っていたのですが、旅に出ると色々と不便を感じるものですよね」
すぐに抱き締め、匂いを嗅ぐ人がいなければ、ここまで気にする事も無かったかもしれないが……と、なんとなく言い訳めいた事を考えながら、自嘲気味に少女メイリーに告げた。
「戦争を終え、豊かな時代が来れば、必要とされる繍呪布の種類も変わるはず。 この旅は、きっとラシェル様にとって得難いものとなりますよ」
そう言って元気づけてくれた。
「……みんな、貴方のように考えているの?」
「どうでしょう。 両親にはお前のような変わり者は貰い手もないだろうから、職を手に付けろって言われていますからねぇ~」
てへへと屈託なく少女は笑った。
他愛ない会話だが、世の中の誰もが彼女のような考えを持つなら、私は私を手に入れようと競売に参加する相手への警戒心を高める必要がある……私自身は無力だと言うのにだ……。
「苦労していますのね。 私も変わり者だから、理解できますわ」
「ラシェル様と私は全然違いますよ。 だって……こんなに美しいのですから……。 髪も拭わせて頂きますね」
他愛ない会話を交わすたびに、少女は赤らみもぞもぞとした様子を見せていた。 敵意と言うものはない。 過去少女と同じような反応を見たのは、スラムや娼館の幼い子達だった。 まぁ、敵意を向ける子は向けるんだけどね……。 そこはきっと、私との相性を吟味したうえでサージュが呼び寄せてくれたのだろう。
「お手伝いしてくれてありがとう」
私は少しお姉さんぶって微笑んで見せれば、嬉しそうに満面の笑みを返された。
「ラシェル様のお世話が出来て光栄です!!」
夢を見る少女は可愛らしくて、ほほえましい。 だけれど、彼女のような子の理想を壊すまいとすれば、折角解けかけた何かが、私を律していくのが分かった。
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