【R18】親の因果が子に報い【完結】

迷い人

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04.裏切者たちの叫び

35.お世話係 02

 サージュからユベールへ。 対応する相手が変われば、態度が変化するのは上下関係上仕方のないものかもしれない。カリナは女騎士のように凛々しい様子で片膝をつき、何処までも堅苦しく堂々とした様子でユベールに寵愛を求めていた。

「情緒不安定な方ですね」

 呆れたように言えば、横にいたメイリーが眉根を寄せた。

「ご不快な思いをさせ申し訳ござません……。 ですが!! 彼女には、いえ……私達には私達の思いがあるのです!! 彼女は、魔力が多くはありませんが、主に仕えるためその身体と技を磨いてきました。 努力の出来る人なんです!!」

 メイリーの声にはカリナに対する同情と言うか、尊敬と言うか、なんとも言えない思いをくみ取ることが出来た。

「そう、ですか……。 夕食の準備をしながらで良いので、話を聞かせてもらえますか?」

 私には関係のない事と、知らぬ、存ぜぬ、と、済ます事も出来るのだけれど……。 ユベールの女性関係が、気になったのだ……。

 う~ん。

「いえ、ラシェル様にお手伝いをしていただくなど」

「平気よ。 今の私は何処の誰でもないただの人ですから、それに万が一に備えて一人でも生きていけるように色々と教わっているのよ」

「そんな事ができずとも、ラシェル様なら引く手あまたですよね?」

「私が必要とする人と、私を必要とする人が同じとは限りませんわ。 とは言っても、旅と日常生活は違うでしょう? 色々と教えてくださいね」

「は、はぁ……」

 本当に大丈夫なのだろうか? と、瞳が語る。 意味合い的には、私に料理が手伝えるのか? 或いは、手伝わせたが良いが後で怒り出すのではないか? と言うところだろうなと考える。 私も散々気まぐれなミリヤ様の言動で不安を覚える側だった身だ。 面倒をかける気はない。

「メイリーは魚を捌ける?」

「出来ますが?」

「馬車の下に、砂を吐かせている魚がいるからお願いしていいかしら? 私、米を焚いてタレを作りますから」

 魚と言ったが、ウナギだ……。 途中休憩に立ち寄った所に立派なウナギを見つけて、ちょっと3人で子供みたいに大騒ぎをしながら取った奴。 タレで焼いてドンブリにしようと決めていたのですよね。

「ぇ? さ、魚? 魚??」

 とか言っているが、とりあえず気づかないふりを通す。

「ら、ラシェル様?! コレ、魚じゃないですよね!!」

「水の中にいたから、魚かなぁ~って」

「いやいや、ちょっと違いますから」

「えっと、美味しいご飯のたべに頑張って!! 異国の書籍には、頭に釘を刺して身体を固定し、三枚におろすってあったのだけど……いける? ダメだったら、ユベールを呼ぶわ。 あの子が一番器用だから」

「ぁ、え、はい……頑張ります」

 面倒をかける気はない……。

 流石に上司にはさせられないと考えるらしい。 身は蒸して、焼いてタレに付けて、焼いて、タレにつけるんですよね? うん、むか~し昔に呼んだ絵本だから曖昧だわぁ~。 とか言いながら、米を炊く準備をする。

「ラシェル様。 普通、旅行中はこんな面倒な事をしませんよ?」

「だって、獲れたんですもの。 獲れたんだから食べますよね?」

「旅の食事と言えば、全てをスープにぶち込むのが一般的ですよ」

「飽きるでしょう?」

「旅の食事は栄養をとるためで楽しむためではありませんから。 まったく貴族の人は……」

「普通の貴族はどうしているのかしら?」

「料理人を連れて歩いていますね」

「大丈夫、サージュには時間的な余裕がない時は、我慢してくださいと念を押されていますから」

 とは言え、唾液で柔らかくしながら食べるパンと干し肉はキツイので、日持ちのするフルーツとナッツを沢山入れたかなり甘めのパンを保存食として作ってあるので、いざとなればコーヒーとそれで済ますつもりだ。

「どちらにしても贅沢です……」

「メイリーは戦場に行っていたの?」

「はい」

「そう、大変だったでしょう? 不自由せずに済むよう頑張ってはいたのだけど……」

「存じております。 うちは公爵家ではなく旦那様に仕えている情報機関です。 ラシェル様のご苦労は耳にしておりましたから」

 ソレは私の知らない話で、諜報やら暗殺やら、そういうのは聞かない方がいいと本能が告げていて私は聞き流す事にした。

「と言う事は、その……戦闘に加わっていた訳ではないのね?」

 流石に、小さな女の子を戦場で戦わせるとあっては、責任者に文句を言いたくなると言うものだ。

「戦場は戦う人だけがいる訳ではありませんから」

 ウナギを捌かせているのが駄目だったのかな? 言葉尻が冷たい。

「それもそうね。 そう言えば、彼女も戦場に?」

「はい……」

 ユベールとは仲が良かったのかしら? なんて聞く気はなかった。 今、目にしている情景は明らかに、彼女はユベールの部下ではなく、あくまでもサージュとの関係者と見るべきだろう。 ただし、サージュに対しては身内めいた気安さと横暴さが見え隠れしている。

「そういえば、彼、初めて理性を飛ばした時、身近な人から襲い掛かったのよね? 貴方や彼女は無事でしたの?」


 そんな疑問を投げつければ。

「私は雑用係ですから……。 カリナ様は他の者達が襲われている隙に……。 凄惨な現場を目の当たりにしたカリナ様は、前線を離れ情報部へと移動し……身の回りの世話をする者を必要としているとしって汚名を返上しようと同行されたのです」

 ちなみに、サージュは初撃を交わした後に、取り押さえようと追い回したため逆にユベールの方が逃げて無事だったそうだ。

 そして、私は食事の準備が出来上がるまでの間、メイリーが何故カリナを悪く思わないかの理由を、そしてカリナと同じような考えの者が多くいる事を知る事となった。

「うん……そう、そうね」

 少女が語る内容に私もまた納得せざるを得なかった。

「娼婦達は、家族も無く、帰る家を持たぬ女達。 手に職も無く、技術も無く……いえ、男性を喜ばせる技術はあったかもしれませんが、戦場で、戦時に必要とされる事は何もできず、身の回りの自分の世話すら、清潔な身体を保つために、私共が手伝いをしていたくらいでした。 そんな中でも、旦那様担当と定められた者は特に特別な対応がなされていたんです」

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