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04.裏切者たちの叫び
42.ただいま待機中
愛している……と、思う。
それでも、私が公爵家の花嫁らしい華々しさを求めず、婚姻と言う神の契約を求めたのは……私と言う存在は、保護してくれる者が居なければ、余りにも無力だと知ったから。
とは言え、バルゲリー公爵が治めるバルゲリー領に入ってからと言うもの、いくつもの村々が閉鎖されていた。 人の多い町にたどり着けば、肌が硬化すると言う病が流行っており、多くの人々は神殿に助けを求めている状態らしい。
らしい……まぁ、直接見た訳ではないのですけどね。
加護持ち同士の婚姻となれば、神からの祝福と言う奇跡が起こりかねない。 特に私は治癒の加護なため、スッゴイ目立つだろうし、神殿に捕獲されかねない。
ユーグが与えられた仕事は、バルゲリー公爵とその側近が国王陛下に付き添い、オルガ国との戦後交渉に出向いている中で、王国への謀反に関わる資料を探し出す事を目的としている私達が目立つわけにはいかず、婚姻は諦めるしかない状況だった。
そして、私達はダンベール一族が諜報のために使っている屋敷の1つにいた。
「ラシェル様は、目立つので外出は控えて下さいね」
「バルゲリーの治安は決して良いものではありませんから」
「ぁ、暇だったら、資料を複製したものの確認をお願いします」
そう言われ閉じ込められていた。
「せっかくの旅なのに、観光も出来ないなんて……」
「今は、見て楽しいものもございませんよ。 欲しいものがあれば取り寄せますから、ソレで我慢してください。」
そして私は、パンフレット共に書類を渡された。 仕事しろってことね……。
バルゲリー領では、7年前から鉱石、宝石の発掘がなされなくなり、それを庶民に発掘権を売る事で得た金で、他国から鉱石、宝石を仕入れ国に対する体裁を保ってきていた。
誰かが一攫千金を手に入れたと耳にすれば、次に幸運が巡ってくるのは自分だと、しばらくの間は発掘権の販売で上手くやってきたらしい。
「こういう、鉱石、宝石の埋蔵も神の奇跡ですよね?」
ちょっと年配のバルゲリー支部長が、今日の私の護衛であり表向きの商売は彫金、宝石加工、装飾品の制作、買い取り等を仕事としている。 まぁ、バルゲリー領主町の2割がそんな感じの商売を営んでいるため決して珍しい訳ではない。
「そうですね。 ダンベール公爵家の当主が情報に関する加護を他者に分け与える事が出来るように、バルゲリー公爵家の当主は土地に付与する採掘物を操作できると聞いております」
「そんな事が出来るんだ」
「それゆえのご当主様でございますから」
「と、言う事は……当主、直系の血が途絶えたかって事かな? うちもユーグが居なくなれば、直系は消えるから、公爵家自体は分家で維持できるだろうけど、血統加護は維持できないってことだね」
公爵家を守れと言っていたミリヤ様の言葉には意味はあったと言う事か……。 彼女の叫びはもう聞こえないが、彼女から教わった事を思い出す事は増えていた。
「そう、なりますね。 お嬢様、お茶でもいかがですか?」
「うん、頂こうかな。 でも、血統加護の罰が領地で発生している以上、どこかで加護の乱用がされている可能性もあるんだよね。 例えば、どこかに隠し子が居た的な?」
少し、モヤッとした。
「お茶はやっぱりいいです。 ユーグが戻ってきたら、教えて下さい」
「お嬢様はドチラへ?」
明らかに不安そうな顔をしなくても、私は護衛から逃げるようなおてんばではありませんから。 と、苦笑する訳だ。
「なんか、モヤモヤするから料理してくる」
「と、言うことは、パンですかな?」
「そう」
こう、パンを捏ねる時、モヤモヤをぶつけ八つ当たりをするのだ。 生前、公爵夫人だからと言ってなんでも与えられると思うな、教育の機会は与えるから有意義な趣味を持て。 そう言ってくれたミリヤ様に感謝していたりする。
あの方も、オカシクならなければ……と、思うが……エヴラール様が人を裏切るような人なだけに、何が原因でオカシクなったのか今となっては分からない……。 とりあえず、大事なのは私自身が正気を保つ事だ。
と、言う訳で……パンを焼く、いや、捏ねる? 叩きつける? 後は、チキンとカブのスープもいいよなぁ~。
ちなみに支部には料理人とかはおらず、料理は持ち回り当番制だった。 国内を彼方此方調査して回るダンベール一族内ではそういうものらしい。 ちなみにこの一族は、当主が力を分け与えた者と言う意味で血統とは関係ないそうだ。
16年、公爵家に住んでいながら実は、彼等の本来の姿を全く私は知らなかった訳なのだから、これもなんだかなぁ~って感じ。
「お嬢様、旦那様がお戻りですよ」
伝えに来た支部長と共に、ユーグもついてきた。
「その言い方だと、俺がラシェルの父親みたいじゃないか」
「細かな事をいちいち気にしないで下さい。 面倒です」
一緒に帰ってきたサージュが言う。
「丁度いいわ。 甘いパンも焼いたからお茶にしましょう。 お二人に聞きたい事があるの」
綺麗な笑みを作り微笑んで見せれば、顔を見合わせるユーグとサージュ。
「うん? 嫌な予感しかしないんだけど……」
「あら、失礼ね」
と言う訳で、リンゴ煮をタップリと使い、砂糖とバターと牛乳で作ったアイシングをかけた甘いパン。
「コーヒーでも淹れましょうねぇ~」
「私が淹れますので、お話をどうぞ」
「あら、私がするのに」
「せっかくの美味しそうなパンを、美味しくない話と一緒に食べたくありませんのね」
「正直者なんだからぁ~」
「美味しくない話と言う所は、否定しないんだ」
肩を竦めるユーグに、私は無言で笑ってみせた。
「で? 何を聞きたい?」
「うん、隠し子って、何人ほどいる?」
「……イナイヨ」
「へ~? でも専属娼婦が居た訳でしょう?」
「ラシェルが、俺にそんなに興味をもってくれるなんてウレシイナァ~」
なんて、フザケタ言い方をするから、ソファの上に飾りのように置かれていたクッションを立て続けに投げつけた。 簡単に受け止められたクッションは、反対側に座るユーグの側に並べられる。
「まぁ、冗談は横に置き。 いない。 流石に敵対反応が出ている相手に子供を孕ませるような事はしない。 対価を払わせているふりをするのに入れる必要もないだろう? そもそも、対価の利子自体が噛みついて血をすすって済ませていたんだから」
「まぁ、ソレはそうですけど……」
「俺が子供を産んで欲しいと思うのは、ラシェルだけだ。 と、言う事で、余り仕事に熱中して体力を使いきらないでね。 寝てるラシェルを襲っても面白くないし」
そう、お茶目に言われた。
「仕事が忙しい癖に」
「ラシェルとの時間を犠牲にするつもりはないよ」
金色の瞳がニッコリと笑って見せる。 昔のように……こういう時は大抵面倒ごとの最中にある事を覚えた。
「仕事をしてなさいよ」
「愛が欲しい……」
そう言って、正面のソファから横に移動してくる。
「甘えん坊さんか」
「なんとでもどうぞ」
そういいながら私の服の襟元を緩め、首筋に顔を埋め、ザラリとした舌で肌を舐めてくるのを見れば……対価が必要な行為を行ってきたと言う事だろう。
「ユーグ」
「ん~、何?」
「私の事、愛している?」
「愛してますよ~。 食べちゃいたいくらいに」
クスッと笑ったユーグは、私の肌に軽く歯を当てるのだ……。
それでも、私が公爵家の花嫁らしい華々しさを求めず、婚姻と言う神の契約を求めたのは……私と言う存在は、保護してくれる者が居なければ、余りにも無力だと知ったから。
とは言え、バルゲリー公爵が治めるバルゲリー領に入ってからと言うもの、いくつもの村々が閉鎖されていた。 人の多い町にたどり着けば、肌が硬化すると言う病が流行っており、多くの人々は神殿に助けを求めている状態らしい。
らしい……まぁ、直接見た訳ではないのですけどね。
加護持ち同士の婚姻となれば、神からの祝福と言う奇跡が起こりかねない。 特に私は治癒の加護なため、スッゴイ目立つだろうし、神殿に捕獲されかねない。
ユーグが与えられた仕事は、バルゲリー公爵とその側近が国王陛下に付き添い、オルガ国との戦後交渉に出向いている中で、王国への謀反に関わる資料を探し出す事を目的としている私達が目立つわけにはいかず、婚姻は諦めるしかない状況だった。
そして、私達はダンベール一族が諜報のために使っている屋敷の1つにいた。
「ラシェル様は、目立つので外出は控えて下さいね」
「バルゲリーの治安は決して良いものではありませんから」
「ぁ、暇だったら、資料を複製したものの確認をお願いします」
そう言われ閉じ込められていた。
「せっかくの旅なのに、観光も出来ないなんて……」
「今は、見て楽しいものもございませんよ。 欲しいものがあれば取り寄せますから、ソレで我慢してください。」
そして私は、パンフレット共に書類を渡された。 仕事しろってことね……。
バルゲリー領では、7年前から鉱石、宝石の発掘がなされなくなり、それを庶民に発掘権を売る事で得た金で、他国から鉱石、宝石を仕入れ国に対する体裁を保ってきていた。
誰かが一攫千金を手に入れたと耳にすれば、次に幸運が巡ってくるのは自分だと、しばらくの間は発掘権の販売で上手くやってきたらしい。
「こういう、鉱石、宝石の埋蔵も神の奇跡ですよね?」
ちょっと年配のバルゲリー支部長が、今日の私の護衛であり表向きの商売は彫金、宝石加工、装飾品の制作、買い取り等を仕事としている。 まぁ、バルゲリー領主町の2割がそんな感じの商売を営んでいるため決して珍しい訳ではない。
「そうですね。 ダンベール公爵家の当主が情報に関する加護を他者に分け与える事が出来るように、バルゲリー公爵家の当主は土地に付与する採掘物を操作できると聞いております」
「そんな事が出来るんだ」
「それゆえのご当主様でございますから」
「と、言う事は……当主、直系の血が途絶えたかって事かな? うちもユーグが居なくなれば、直系は消えるから、公爵家自体は分家で維持できるだろうけど、血統加護は維持できないってことだね」
公爵家を守れと言っていたミリヤ様の言葉には意味はあったと言う事か……。 彼女の叫びはもう聞こえないが、彼女から教わった事を思い出す事は増えていた。
「そう、なりますね。 お嬢様、お茶でもいかがですか?」
「うん、頂こうかな。 でも、血統加護の罰が領地で発生している以上、どこかで加護の乱用がされている可能性もあるんだよね。 例えば、どこかに隠し子が居た的な?」
少し、モヤッとした。
「お茶はやっぱりいいです。 ユーグが戻ってきたら、教えて下さい」
「お嬢様はドチラへ?」
明らかに不安そうな顔をしなくても、私は護衛から逃げるようなおてんばではありませんから。 と、苦笑する訳だ。
「なんか、モヤモヤするから料理してくる」
「と、言うことは、パンですかな?」
「そう」
こう、パンを捏ねる時、モヤモヤをぶつけ八つ当たりをするのだ。 生前、公爵夫人だからと言ってなんでも与えられると思うな、教育の機会は与えるから有意義な趣味を持て。 そう言ってくれたミリヤ様に感謝していたりする。
あの方も、オカシクならなければ……と、思うが……エヴラール様が人を裏切るような人なだけに、何が原因でオカシクなったのか今となっては分からない……。 とりあえず、大事なのは私自身が正気を保つ事だ。
と、言う訳で……パンを焼く、いや、捏ねる? 叩きつける? 後は、チキンとカブのスープもいいよなぁ~。
ちなみに支部には料理人とかはおらず、料理は持ち回り当番制だった。 国内を彼方此方調査して回るダンベール一族内ではそういうものらしい。 ちなみにこの一族は、当主が力を分け与えた者と言う意味で血統とは関係ないそうだ。
16年、公爵家に住んでいながら実は、彼等の本来の姿を全く私は知らなかった訳なのだから、これもなんだかなぁ~って感じ。
「お嬢様、旦那様がお戻りですよ」
伝えに来た支部長と共に、ユーグもついてきた。
「その言い方だと、俺がラシェルの父親みたいじゃないか」
「細かな事をいちいち気にしないで下さい。 面倒です」
一緒に帰ってきたサージュが言う。
「丁度いいわ。 甘いパンも焼いたからお茶にしましょう。 お二人に聞きたい事があるの」
綺麗な笑みを作り微笑んで見せれば、顔を見合わせるユーグとサージュ。
「うん? 嫌な予感しかしないんだけど……」
「あら、失礼ね」
と言う訳で、リンゴ煮をタップリと使い、砂糖とバターと牛乳で作ったアイシングをかけた甘いパン。
「コーヒーでも淹れましょうねぇ~」
「私が淹れますので、お話をどうぞ」
「あら、私がするのに」
「せっかくの美味しそうなパンを、美味しくない話と一緒に食べたくありませんのね」
「正直者なんだからぁ~」
「美味しくない話と言う所は、否定しないんだ」
肩を竦めるユーグに、私は無言で笑ってみせた。
「で? 何を聞きたい?」
「うん、隠し子って、何人ほどいる?」
「……イナイヨ」
「へ~? でも専属娼婦が居た訳でしょう?」
「ラシェルが、俺にそんなに興味をもってくれるなんてウレシイナァ~」
なんて、フザケタ言い方をするから、ソファの上に飾りのように置かれていたクッションを立て続けに投げつけた。 簡単に受け止められたクッションは、反対側に座るユーグの側に並べられる。
「まぁ、冗談は横に置き。 いない。 流石に敵対反応が出ている相手に子供を孕ませるような事はしない。 対価を払わせているふりをするのに入れる必要もないだろう? そもそも、対価の利子自体が噛みついて血をすすって済ませていたんだから」
「まぁ、ソレはそうですけど……」
「俺が子供を産んで欲しいと思うのは、ラシェルだけだ。 と、言う事で、余り仕事に熱中して体力を使いきらないでね。 寝てるラシェルを襲っても面白くないし」
そう、お茶目に言われた。
「仕事が忙しい癖に」
「ラシェルとの時間を犠牲にするつもりはないよ」
金色の瞳がニッコリと笑って見せる。 昔のように……こういう時は大抵面倒ごとの最中にある事を覚えた。
「仕事をしてなさいよ」
「愛が欲しい……」
そう言って、正面のソファから横に移動してくる。
「甘えん坊さんか」
「なんとでもどうぞ」
そういいながら私の服の襟元を緩め、首筋に顔を埋め、ザラリとした舌で肌を舐めてくるのを見れば……対価が必要な行為を行ってきたと言う事だろう。
「ユーグ」
「ん~、何?」
「私の事、愛している?」
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