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6章
58.逃走 01
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「助けて!!!」
レイラは叫ぶ。
誰に向かって?!
そんなことは本人にも分かっていない。 ただ願った。 自分が育った地を、育ててくれた人を助けたいと……。 その願いに光の精霊が応じ、身の内に大量の精霊が宿りだす。
精霊使いは、役立たずである。
それは世間の認識であるが、子供の魔力では大きな力が使えず、大人の身勝手さに精霊は愛想をつかす。 では大人の……それも王者のギフト所有者の愛情を受け最大限まで強化された魔力の持ち主が、精霊使いとして光の精霊に願い、その力を発揮したならどうなるだろうか?
レイラは、膨大な光の精霊を身に宿し、意識を失いそうになる。
だが、虚ろな意識の中でもレイラは、歌い続けその力を存分に発揮した。 落下してくる密度の濃いケガレを浄化し続ける行為は命の消耗に等しい。 今はまだ、ケガレが落ちきる前に浄化が出来ている。 ケガレが勝つか? レイラの浄化量が勝つか?
誰が見てもレイラに勝算などない。
「レイラ!! 村は諦めろ!!」
ジュリが叫ぶ。
ジュリにしてみれば、村よりもレイラが大切だった。 だが、強引に力を止めさせれば自分もレイラもケガレに囚われてしまう。
「レイラ、力をコントロールするんだ!!」
ジュリが、髪に身体に光を帯び、女神のように輝くレイラを抱きしめ止めようとした。 同時に、レイラの浄化を止めようとする存在が現れた。
「邪魔をするな!!」
悪鬼のような顔をして、レイラの元にやってきたのは、やせ細った貧相な身体を見せるソロスの生き残りの子供達。
「我が神の降臨を何故邪魔する!!」
分かりやすく弱り切った身体で、目だけが爛々と光っていた。
レイラから身を離し、ジュリが鞭をかまえる。
攻撃せずとも死に至りそうな子供達へと、その攻撃を仕掛けるのは本意ではない。 本意ではないが、商売人として優先順位を選びきるのは慣れた事と割り切った。 私が、守らなければ! そうジュリは子供を傷つける覚悟を決めた。
だが、倒れかけの子供と言えどその数は多く、力以前に精神がそがれる。 そして前に立ちふさがるのは、子供だけではなかった。 村人もまた浄化の光を止めるようにと訴えていた。
「我が神の降臨を邪魔するな……光を止めろ」
「ぉい! チビリュウ!!」
ジュリが呼びかけるが、リュウもまた呆然とした状態で空を見上げる。
「ぅぉ、おっ、ううぅううおっ……」
リュウは奇妙な声を上げ続け、役立つ様子はない。
村人と子供達が襲い掛かる。 その瞬間、レイラとジュリの身体をかかえ、屋根の上に飛び逃げる存在が現れた。
「まったく、どんくさい」
痩せた肉は未だ戻ってはいないが、2人を抱え飛んだのはラキだった。
「本当、なんで逃げないのよ」
ラキがそういう傍らではフィンが、村人達と……自分達を生み育てた人達と対峙していた。
「この子の意識がない。 何時まで浄化が持つか分からない……」
「すぐにこの場を離脱しましょう」
「ぁ、あのドラゴンも!」
地面に残されたままのリュウの姿に焦るジュリ。
「私が行く」
そう言ってラキの手を逃れようとした。 レイラの支えは自分であるとライバル視し、触れたこともなかったが放っておくことなど出来ようか? 屋根の上から降りようとしたが、直ぐに周囲を囲まれた。
囲んだ相手は村人だった。
「フィン!!」
「逃げろ!!」
アチコチ、置き去りにして女3人、それも一人は意識を失った状態。 どこまで逃げられると言うのだろうか?
「その子を渡しなさい」
そう告げたのは、村長夫婦。
「その子は、私達が買い受けた者です」
レイラは叫ぶ。
誰に向かって?!
そんなことは本人にも分かっていない。 ただ願った。 自分が育った地を、育ててくれた人を助けたいと……。 その願いに光の精霊が応じ、身の内に大量の精霊が宿りだす。
精霊使いは、役立たずである。
それは世間の認識であるが、子供の魔力では大きな力が使えず、大人の身勝手さに精霊は愛想をつかす。 では大人の……それも王者のギフト所有者の愛情を受け最大限まで強化された魔力の持ち主が、精霊使いとして光の精霊に願い、その力を発揮したならどうなるだろうか?
レイラは、膨大な光の精霊を身に宿し、意識を失いそうになる。
だが、虚ろな意識の中でもレイラは、歌い続けその力を存分に発揮した。 落下してくる密度の濃いケガレを浄化し続ける行為は命の消耗に等しい。 今はまだ、ケガレが落ちきる前に浄化が出来ている。 ケガレが勝つか? レイラの浄化量が勝つか?
誰が見てもレイラに勝算などない。
「レイラ!! 村は諦めろ!!」
ジュリが叫ぶ。
ジュリにしてみれば、村よりもレイラが大切だった。 だが、強引に力を止めさせれば自分もレイラもケガレに囚われてしまう。
「レイラ、力をコントロールするんだ!!」
ジュリが、髪に身体に光を帯び、女神のように輝くレイラを抱きしめ止めようとした。 同時に、レイラの浄化を止めようとする存在が現れた。
「邪魔をするな!!」
悪鬼のような顔をして、レイラの元にやってきたのは、やせ細った貧相な身体を見せるソロスの生き残りの子供達。
「我が神の降臨を何故邪魔する!!」
分かりやすく弱り切った身体で、目だけが爛々と光っていた。
レイラから身を離し、ジュリが鞭をかまえる。
攻撃せずとも死に至りそうな子供達へと、その攻撃を仕掛けるのは本意ではない。 本意ではないが、商売人として優先順位を選びきるのは慣れた事と割り切った。 私が、守らなければ! そうジュリは子供を傷つける覚悟を決めた。
だが、倒れかけの子供と言えどその数は多く、力以前に精神がそがれる。 そして前に立ちふさがるのは、子供だけではなかった。 村人もまた浄化の光を止めるようにと訴えていた。
「我が神の降臨を邪魔するな……光を止めろ」
「ぉい! チビリュウ!!」
ジュリが呼びかけるが、リュウもまた呆然とした状態で空を見上げる。
「ぅぉ、おっ、ううぅううおっ……」
リュウは奇妙な声を上げ続け、役立つ様子はない。
村人と子供達が襲い掛かる。 その瞬間、レイラとジュリの身体をかかえ、屋根の上に飛び逃げる存在が現れた。
「まったく、どんくさい」
痩せた肉は未だ戻ってはいないが、2人を抱え飛んだのはラキだった。
「本当、なんで逃げないのよ」
ラキがそういう傍らではフィンが、村人達と……自分達を生み育てた人達と対峙していた。
「この子の意識がない。 何時まで浄化が持つか分からない……」
「すぐにこの場を離脱しましょう」
「ぁ、あのドラゴンも!」
地面に残されたままのリュウの姿に焦るジュリ。
「私が行く」
そう言ってラキの手を逃れようとした。 レイラの支えは自分であるとライバル視し、触れたこともなかったが放っておくことなど出来ようか? 屋根の上から降りようとしたが、直ぐに周囲を囲まれた。
囲んだ相手は村人だった。
「フィン!!」
「逃げろ!!」
アチコチ、置き去りにして女3人、それも一人は意識を失った状態。 どこまで逃げられると言うのだろうか?
「その子を渡しなさい」
そう告げたのは、村長夫婦。
「その子は、私達が買い受けた者です」
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