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30.ソレを再開と呼んでよいものか?(☆?)

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 水中を歩くヒューバートを水の渦が襲いかかる。

 彼は交わす動作をすることもなく、水底を強く踏みしめ様子を見ていた。 渦自体にそれほど攻撃があるようには見えなかったのと、そして渦を目くらましに半人半魚の人間が、鋭い細身の穂先を持つ槍で突いてきた。

 反射的に身体を逸らそうとしたが、水圧がヒューバートの動きを阻害する。 逃げる事を予測した槍の攻撃が別方向からヒューバートを襲ってきた。

 乱暴だなぁ。

 ヒューバートの口元が笑っていれば、攻撃を仕掛けた側の表情には焦りが見えた。 貫いたと思った槍は、寸前で何かにとどめられ美しくすらある鋭利な槍が曲がっていた。

 キーキーと水の中でも、不快な音が聞こえる。

 なんか怒らせちまったようだが……。 一応。

 ヒューバートは両手を挙げて敵意がないことを見せつける。 だが、相手はソレを許容する気は無いようで、だからと言って現在のヒューバートは傷を負う事の方が難しい状態だ。 彼の力の根源はゼルであり、そのゼルが今はオルグレンの主神に憑依されている。 獣オチの兵士程度に傷がつけられるはずもない。

 攻撃を諦めない兵士たちの中から、ひときわ体格の良い(胸のデカい)女兵士に手を伸ばし捕獲した。

 オルグレンの獣オチとは違い、水の大国の獣オチは基本足と皮膚、呼吸器官の変化に思えた。 捕獲した相手はツルリとした肌に見えたが、手触り的にはザラリとしている。

 黒めのみの大きな瞳がヒューバートを睨みつけ、ギザギザの牙で噛みつこうとするが、周囲からの攻撃は避ける事ができた。

 キーキーと水音が聞こえれば、ヒューバートは理解できない音を勝手にこう解釈した『私に構わず攻撃しろ』だが、新たな攻撃はない。

 折角、盾に使ってみようとおもったのにな……。

 半魚の特徴はその尾にある。 人であれば足に当たる部分に触れれば、わずかに足の形の痕跡があるように思えた。 周囲は騒いでいたが、元々彼等の攻撃にさして効果がある訳ではないのだから、気にすることなく好奇心を満たしていく。

 足の上に肉を覆っていると言う状態か……。 半獣化の深度を浅くすれば陸上での生活も可能なのだろうか? 体をバンバンと叩いてきた感覚が失われれば、捕獲していた半魚が目をむいていた。

 ぁ? 皮膚に触れると失神でもするのか?

 なんて思ったが……どうやら海獣系の獣オチだったらしく、肺機能ならしいと気づくのは、他の半魚たちが両手で祈るように懇願しだす。

 突然に他国に出現して、その国の民を殺して歩く気はない。 ソレをヒューバートがすれば戦争宣言と同義である。

 ヒューバートは肩をすくめて体格の良い女兵士を開放し、同時に周囲一帯の他の半魚を闇でできた投網で一斉捕獲した。 何しろ今のヒューバートは完全チート状態。 主神の闇が何時もよりも使いやすくて、まぁ……遊んでいる状態である。

 とは言え、何時までも水の中にいる気もない。 動作も最小限、動揺もないが、それでも大きく息を吸う以外の準備はしていないのだから余り遊んでもいられない。

 ズリズリと十数人の半魚を網に捉えたヒューバートは、ソレを引きずりながら川縁を目指した。



「オマエ等、弱いな」

 引きずられているだけで、消耗しきっている半魚を見てヒューバートが呆れたように言えば、声を揃えて返された。

「「「オマエが異常なんだ!!」」」

 ヒューバートは笑う。

 水中でもヒューバートに敵わなかった者達が、陸上で勝てるわけもない事は本人たちも理解しているようだった。

「まぁ、自覚はある。 でだ、俺は人を探しに来た。 ここから一番近い水神殿を案内してもらおう。 うちの嫁が保護されたという噂を……神に聞いた」

 ソレを聞けば、覚えがあるらしく彼等の表情に緊張が走る。

「問い詰めたいが、実は俺は暴力が禁じられていてな……無事なのか?」

 そう言えば、ホッとた様子、そして、わずかな動揺。

 ふむ……まぁ、生きてはいるようだが、何かはあるらしいな。 ゼルを送ってこなくてよかった。 戦争は、うん戦争はなぁ……よく無い。 勝敗がどうこうとか、殺しがどうこうではなく、生き残った人間が面倒だ。

 そんな、風に考えながら、闇の網にヒューバートは手を伸ばしていた。

「まぁ……上手くできるかどうかわからんが……、とりあえず犯す。 情報を吐くまで犯す」

「はっ?」

「冷えた肌も、まぁ悪くはない」

 気付けば網の中から女性系の半魚が連れ出されていた。 比較的、胸よりも人の顔を残した女性を選んだのは、川底で触れた半魚からの判断。 色々と無理だなぁ……と思ったのだ。 わざとらしくいやらしく、ヒューバートの手が女性の胸の表面をそっと触れるか触れないかで撫でれば、人の女性と同様に半魚女性は反応した。

「ここは、人と変わらないんだな」

 ヒレのある大きな耳に甘い声で囁いて見せれば、青白い顔が朱色に染まる。

「辞めろ」

 薄い布地一枚おおっただけの胸は、乳首が固く膨らむ様子を周囲に見せつけた。 人に当たる股間部分は全て肉に覆われているが、強く触れれば先ほどの女性と同じで、中に人の形をなした肉の形がわかった。 とはいえ、できればしたくないというのが本音、足にあたる尾をいやらしく触りながら時間をかせぐ。

「ぁあっ、尾を触るな」

「へぇ、嫌なんだ、で、どこを触って欲しいって?」

 ニヤニヤしながら、尾を撫でまわして見せるが、正直……楽しくない……。 と言うのが、本音で、早く投降してくれないかなぁと思いながら、オートモードで撫でまわす。

 さかなぁ、さかなぁ、さかなぁあは塩焼きがいいよなぁ、本当……俺、何してんだ? 王様なのよ?

 ぁ、はん、んっふんんん、ぁああ。

 甘い喘ぎ声にはぎりぎりという音が混ざっている。 ソレを聞けば、ゾワリと鳥肌がたった。 俺、魚は無理だなぁ……モフモフならまだいけるんだろうが……。

 ぁああん、んんふんん、あぁあぁ

「や、辞めろ、話す、話すから彼女を放してくれ!!」

 甘い喘ぎ、恍惚とした表情、赤い頬は、ヒューバートが与える快楽を甘受しているとしか見えないが、ヒューバートは周囲の訴えに感謝を示し、その愛撫を辞めた。

「ソレは、助かる。 で、うちの嫁は何処だ?」

「神殿に案内しよう」

「や、辞めろ!!」

 そう訴えるのは、陸上で水揚げされた魚のようになっている女性半魚だった。 そして、そんな彼女を支える他の女性半魚は、羨ましそうな視線とダラリとした口元で、快楽を帯びた身体を見つめている。

 羨ましい。

 獣オチは獣化したからと言って、感覚的なものは人と変わらないのだ。 ようするに、恋愛対象は人であり、そして人は半魚を相手になどしない……くわえてヒューバートは見目がよかった。 そういうことだ。

 ヒューバートは苦笑しながら、先導する半魚男の後をついて歩いた。

「アンタ強いな」

 牽制、様子伺い、先導する男の背を眺めヒューバートは安心させるように言う。

「まぁな。 だが強いからと言って暴力を振るう訳にはいかない、いや違うな……強いから無責任に暴力を振るえない。 で、うちの嫁はどうしている」

「……ソレは、命に別状はない……オマエの目には少しばかり危険に映るだろうが、一切害していないし、むしろ溺れかけていたところを助けたくらいなんだ!!」

「はいはい、命に問題がなく、大きなケガをしていない。 あと、貞操も問題ないならオールオッケー」

「ソレは大丈夫だ」

「おや、アレはいい女だぞ? 可愛らしいのに、ちゃんと女だ」

「何が言いたい!!」

 半魚兵士は頬を赤らめ叫んでくるから、ヒューバートはけらけらと笑って見せた。

「俺達はオマエのようなことはしない」

「すりゃぁいいじゃん。 お仲間だろう?」

 彼等の心理的事情を知りながら、すっとぼけながらヒューバートは言う。

「……言っておくが、彼女は公爵令嬢だぞ」

「本人は嬉しそうだったし、ギリセーフだろう」

「アウトだ、アウト!!」

 ずいぶんと義理堅いというか、忠誠心に熱い男らしい。

「でも、以外だな……この国は王族に近しいものが獣オチするのか?」

 そう問えば黙りこみ、わずかの間を置きボソリと呟く。

「色々あるんだ」

「ふぅん、まぁ、俺は嫁が無事なら問題ない」

 30分ほど湿地帯を歩いただろうか? 半魚男は言う。

「水の中を行くんだが?」

「まぁ、準備さえしていけば、1時間でも2時間でも」

「やっぱ、あんたオカシイよ」

 言われて、ヒューバートは笑った。



 だが、その笑みもリエルの姿を見た瞬間には氷つくことになるのだが……。



 湿地帯の中に広がる巨大な水の大穴にたどりつくまで30分ほど歩いた。

「神殿は、この中だ」

 そこに飛び込めば光届かぬ、底の見えぬ永遠の水。 上下が分からなく感覚に捕らわれながら半魚の後をついていけば、空気泡に包まれ淡く光る神殿が見えた。

 中に入れば普通に呼吸が出来る。 死はないが、それでも呼吸できることに安堵した。 神殿内部には水の神力が充満しており、神力に抵抗の無い者であれば数日で人の姿を動かすような代物。

 ようするに、対処を行う前のオルグレン城のような状態だ。

 神力との付き合い方、浸食、気になることは多々あるが、先を歩く半魚兵士の背が余りにも緊張しているため、声をかけることを控えた。 半魚兵士は数人の半魚侍女と話をし、少し偉そうに見える衣類を着た男性と思われる者と会話を交わす。

「許可が出たぞ」

「嫁に会うのに許可が必要とはね」

 軽くいえば、偉そうな半魚が睨みつけてきた。

 そして、ヒューバートは案内された。
 中は、光の無い暗い部屋。

 だが、闇はヒューバートの味方であり、その瞳はすぐにリエルをとらえた。

「あの子に何をした……」

 巨大な筒の中の中に満たされた液体、その中にリエルはゆらゆらと揺らめいていた。 ソレは、美しい水死体のように見え、ヒューバートの額にヒヤリとした汗が流れ落ちる。
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