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35.フレンドリーな破壊を好む『闇神』
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若い娘に甘えるなど何をしているのか……。 途中から正気に戻ったようになったヒューバートだが、自分から招きよせた相手を払いのける等できず困っていれば、リエルもまた困ったように聞いてきた。
「元気になった?」
「あぁ、ありがとう。 本当に助かったよ」
わしわしとリエルの頭を撫でたヒューバートは思う。 どれほど感謝をすればよいのだろう……借りばかりが増えていく。 今回の件は、アナイス王女との間の感傷だけで終えることが出来る話ではない。 あのような特異な状況は水の国アクアースに限定したものだと考えていいのか? と言うことだ……。
空白期とは、神々の勢力図の書き換えである。
神の影響なくとも信仰を保つ事ができるか? 勢力図のポイントとなる。 だからこそ、オルグレンの神は自らの影響を残そうと、神力に強い耐性を持つゼルに全てを託した。
オルグレンもそうだが、聖女を抱える『エスティ国』炎と鍛冶神を信仰する『華国』薬師の育成・薬草の生育をなりわいとする『スレープ国』などは、国を挙げて神をまつっているため、主神が入れ替わる事がない。
水の国アクアースは、先代女王であるアナイスの力が強くはあったが、争いを嫌う人柄だった。 そのため、水の神と言う大神を主神としてはいたが水の国の領土はそれほど広くはない。
神がどこまで人の世に介入し、どのような状況が起こりえるのか? いくら一人考えても仕方がない。
「よし!! リエル。 神様に会いに行くか?」
物凄く嫌そうな顔をされてヒューバートは笑った。
「うちの神は、破壊系の神ではあるが、それなりに話は分かる神だ。 それに神は信仰があって存在が確定し、人の願いで力を行使するのが一般的。 そうそう自分勝手に暴れるもんじゃない。 ソレに付き合い方さえ覚えておけば、何かと融通を計ってくれる。 戦う力を持たないリエルだからこそ、俺はうちの神と仲良くしてほしいと思っているんだが?」
シバラク考え込み、不安そうな表情で見上げてきた。
「イジメる?」
「まぁ、どうだろう? 俺やゼルには多少は意地悪をするが、他の民には意地悪はしないな。 それに俺とゼルがいる。 だから大丈夫」
意地悪をするほどまで、一般人が神に接触する事がないからという言葉をヒューバートは隠した。
「でも、ゼルは他の女性と!」
「それは誤解だ」
きっぱりと言い切ったヒューバートは、ゼルに恋する狼女と、そんな彼女をペットとして認識していたゼルとの隔絶の瞬間を語って聞かせた。
真顔で考え込むリエル。
「どうした?」
「凄く微妙な気分……ゼルは、私の事をどう思っているのかな?」
予測していた返しだ。
「人として好意を持っているから抱くのだろう……って、何を赤くなっている」
「……まだ、そういうのに余り免疫が……」
「人に散々、チューしようとか言っていたのにか?」
真っ赤な顔でポカポカとヒューバートを叩けば、彼は笑いながら荷物のようにリエルを肩に担ぎ乗せ運ぶ。
「背が高いと、地面まで遠くて怖いね」
「……それは、考えたこと無いなぁ~」
「どこ行くの?」
「ん~~~食堂?」
「疑問?」
「今は神がゼルに憑依していてな。 その場合の行動は、本を読む、食べ物を食べる、街を散策する、音楽を聴く。 で、まぁ、時間的に食堂かと」
担いでいても神と言う存在に怯え身体が硬直するのは分かった。
「そう怖がる必要はない。 ただ人間を真似して楽しむだけで、どこかの国のように神自らが、勧誘活動をすることはない」
「むぅ」
「こら、頬を引っ張るな」
多少の抵抗はあったが、最終的には逃げさせてもらえないのだからと、リエルは腹をくくったようだ。
夕食時が過ぎた食堂で、ゼルに憑依した神は酒を飲みながら、ユックリと料理を堪能していた。
「よぉ、人の王と、異界の娘、オマエ達もココに来て飯を食え、飯を。 1人では色々と食べる事ができなくてつまらんからな」
声はゼルのものなのに、鷹揚な物言いでリエルは首を傾げる。
「王様が2人いるみたい」
その言葉に、神もヒューバートも渋い顔をして見せた。
「まぁ、ソレは横において、相談があります」
ヒューバートは水の国での出来事を話したうえで尋ねる。
「神があそこまで干渉することはあるのですか?」
「……出来ない訳ではないが、認められてはいない。 この場合は、信仰する民の数は少ないが、神に依存するほどの信仰がどう影響するかと言うことになるな……過去に幾つか前例がある」
その言葉に、神々は何らかの共通ルールを所有している事を知り、ヒューバートは強く心にとどめておくことにした。
「それは?」
ヒューバートが問う。
「神が人の影響を受ける」
「ソレは常に受けているのでは?」
「基本は、神から人への特性変化によって、多少の人格変化が起こる。 この国でいうなら戦闘に対して高い適正を持つと言う事だな。 ソレは力を持っていると言う自信につながる。 他国の一般人とオルグレンの一般人が、魔物に遭遇した場合を比べれば分かりやすく神の影響による性格の変化がみられるだろう」
「あぁ、そういうことですか」
「これが濃い歪んだ信仰心が神に捧げられるとしよう。 例えるなら人を殺しその内臓を食らう趣味を持つ者がいるとしよう」
「趣味?」
「仮にだ」
イヤな顔をするリエルをヒューバートがたしなめる。
「その場合、ソレが強い信仰と共に生贄とされた場合、神は信仰の贄として生贄をもとめ、その性質が変化する」
「小国の地母神などで、そのような慣習をききますよね」
「まぁ、細かな事は伏せるが、神は変質し強さを増し、強い神は信者に土地に住む者に新たな力を性質を与え、そして要求を始める」
「……その調査をですね。 ゼルに行ってもらいたいんですが、ご協力いただけませんか?」
「それは、同行しろと言っているのか?」
「……それは、考えていませんでした!」
良い考えだ! とばかりにヒューバートが言えば、呆れたようにゼルIn神は苦笑する。
「格下か、コチラを気にもしない格上ならともかく同等の神格を持つ土地へは入れんぞ」
「では、身体をゼルに返してもらうには、どうすればよろしいでしょうか?」
「3日ではなかったのか?」
「緊急を要すると判断したので、ご理解いただけますよね」
水神の行動が明らかに神々のルールを破っていると知った上でヒューバートは強気な態度を取った。
「ふむ……まぁ、仕方がない。 条件だが……」
ゼルIn神はリエルを見る。
「私?」
「あぁ、異界の料理を食べてみたい」
「元気になった?」
「あぁ、ありがとう。 本当に助かったよ」
わしわしとリエルの頭を撫でたヒューバートは思う。 どれほど感謝をすればよいのだろう……借りばかりが増えていく。 今回の件は、アナイス王女との間の感傷だけで終えることが出来る話ではない。 あのような特異な状況は水の国アクアースに限定したものだと考えていいのか? と言うことだ……。
空白期とは、神々の勢力図の書き換えである。
神の影響なくとも信仰を保つ事ができるか? 勢力図のポイントとなる。 だからこそ、オルグレンの神は自らの影響を残そうと、神力に強い耐性を持つゼルに全てを託した。
オルグレンもそうだが、聖女を抱える『エスティ国』炎と鍛冶神を信仰する『華国』薬師の育成・薬草の生育をなりわいとする『スレープ国』などは、国を挙げて神をまつっているため、主神が入れ替わる事がない。
水の国アクアースは、先代女王であるアナイスの力が強くはあったが、争いを嫌う人柄だった。 そのため、水の神と言う大神を主神としてはいたが水の国の領土はそれほど広くはない。
神がどこまで人の世に介入し、どのような状況が起こりえるのか? いくら一人考えても仕方がない。
「よし!! リエル。 神様に会いに行くか?」
物凄く嫌そうな顔をされてヒューバートは笑った。
「うちの神は、破壊系の神ではあるが、それなりに話は分かる神だ。 それに神は信仰があって存在が確定し、人の願いで力を行使するのが一般的。 そうそう自分勝手に暴れるもんじゃない。 ソレに付き合い方さえ覚えておけば、何かと融通を計ってくれる。 戦う力を持たないリエルだからこそ、俺はうちの神と仲良くしてほしいと思っているんだが?」
シバラク考え込み、不安そうな表情で見上げてきた。
「イジメる?」
「まぁ、どうだろう? 俺やゼルには多少は意地悪をするが、他の民には意地悪はしないな。 それに俺とゼルがいる。 だから大丈夫」
意地悪をするほどまで、一般人が神に接触する事がないからという言葉をヒューバートは隠した。
「でも、ゼルは他の女性と!」
「それは誤解だ」
きっぱりと言い切ったヒューバートは、ゼルに恋する狼女と、そんな彼女をペットとして認識していたゼルとの隔絶の瞬間を語って聞かせた。
真顔で考え込むリエル。
「どうした?」
「凄く微妙な気分……ゼルは、私の事をどう思っているのかな?」
予測していた返しだ。
「人として好意を持っているから抱くのだろう……って、何を赤くなっている」
「……まだ、そういうのに余り免疫が……」
「人に散々、チューしようとか言っていたのにか?」
真っ赤な顔でポカポカとヒューバートを叩けば、彼は笑いながら荷物のようにリエルを肩に担ぎ乗せ運ぶ。
「背が高いと、地面まで遠くて怖いね」
「……それは、考えたこと無いなぁ~」
「どこ行くの?」
「ん~~~食堂?」
「疑問?」
「今は神がゼルに憑依していてな。 その場合の行動は、本を読む、食べ物を食べる、街を散策する、音楽を聴く。 で、まぁ、時間的に食堂かと」
担いでいても神と言う存在に怯え身体が硬直するのは分かった。
「そう怖がる必要はない。 ただ人間を真似して楽しむだけで、どこかの国のように神自らが、勧誘活動をすることはない」
「むぅ」
「こら、頬を引っ張るな」
多少の抵抗はあったが、最終的には逃げさせてもらえないのだからと、リエルは腹をくくったようだ。
夕食時が過ぎた食堂で、ゼルに憑依した神は酒を飲みながら、ユックリと料理を堪能していた。
「よぉ、人の王と、異界の娘、オマエ達もココに来て飯を食え、飯を。 1人では色々と食べる事ができなくてつまらんからな」
声はゼルのものなのに、鷹揚な物言いでリエルは首を傾げる。
「王様が2人いるみたい」
その言葉に、神もヒューバートも渋い顔をして見せた。
「まぁ、ソレは横において、相談があります」
ヒューバートは水の国での出来事を話したうえで尋ねる。
「神があそこまで干渉することはあるのですか?」
「……出来ない訳ではないが、認められてはいない。 この場合は、信仰する民の数は少ないが、神に依存するほどの信仰がどう影響するかと言うことになるな……過去に幾つか前例がある」
その言葉に、神々は何らかの共通ルールを所有している事を知り、ヒューバートは強く心にとどめておくことにした。
「それは?」
ヒューバートが問う。
「神が人の影響を受ける」
「ソレは常に受けているのでは?」
「基本は、神から人への特性変化によって、多少の人格変化が起こる。 この国でいうなら戦闘に対して高い適正を持つと言う事だな。 ソレは力を持っていると言う自信につながる。 他国の一般人とオルグレンの一般人が、魔物に遭遇した場合を比べれば分かりやすく神の影響による性格の変化がみられるだろう」
「あぁ、そういうことですか」
「これが濃い歪んだ信仰心が神に捧げられるとしよう。 例えるなら人を殺しその内臓を食らう趣味を持つ者がいるとしよう」
「趣味?」
「仮にだ」
イヤな顔をするリエルをヒューバートがたしなめる。
「その場合、ソレが強い信仰と共に生贄とされた場合、神は信仰の贄として生贄をもとめ、その性質が変化する」
「小国の地母神などで、そのような慣習をききますよね」
「まぁ、細かな事は伏せるが、神は変質し強さを増し、強い神は信者に土地に住む者に新たな力を性質を与え、そして要求を始める」
「……その調査をですね。 ゼルに行ってもらいたいんですが、ご協力いただけませんか?」
「それは、同行しろと言っているのか?」
「……それは、考えていませんでした!」
良い考えだ! とばかりにヒューバートが言えば、呆れたようにゼルIn神は苦笑する。
「格下か、コチラを気にもしない格上ならともかく同等の神格を持つ土地へは入れんぞ」
「では、身体をゼルに返してもらうには、どうすればよろしいでしょうか?」
「3日ではなかったのか?」
「緊急を要すると判断したので、ご理解いただけますよね」
水神の行動が明らかに神々のルールを破っていると知った上でヒューバートは強気な態度を取った。
「ふむ……まぁ、仕方がない。 条件だが……」
ゼルIn神はリエルを見る。
「私?」
「あぁ、異界の料理を食べてみたい」
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