【R18】私は運命の相手ではありません【完結】

迷い人

文字の大きさ
9 / 36
前編

09

しおりを挟む
 気づかないふり等……出来なかった。
 フォークを持つ手が震える。

「昔の話だ。 今はもう、母親がどうこう言う年ではない」

 慌てた様子で肩る声は、私に向けられたのか? カミラに向けられたのか?

 視線があげられなかった。

 だから、このまま去ってくれればいいのに、そう願った。

「ホリー様、あなたはラスティ様が受けるべき愛情を奪い、与えられるべき知識を奪ったのですよ。 ソレを心に刻みラスティ様に仕えるべきなのです。 試練などフザケタことは抜きに当主の座を彼に譲りなさい。 彼に悪いと思うのなら」

「いい加減にしないか!! それではまるで私がいつまででも、母上、母上と嘆く子供のようじゃないか」

「そんな事を言ってはいませんわ。 ただ、あなたが何故試練などという面倒なものを受けなければいけないのかとっているのです。 だって奪ったものは返すべきですわ。 ラスティ様に全てを捧げなさい」

「止めないか!! 私には当主の試練によって得られる対価が欲しいのだから」

「ラスティ様!! 甘いですわ!! あなたは何時だって甘い……そして、強さばかりを求めていて、公爵家の当主が勤まると思いですの? ラスティ様がそうだから……私がホリー様と話をつけると申しておりますのに、なぜ、邪魔をするのですか!! 彼女は離縁すれば自由となれるのです。 ですが、その後残されたラスティ様がどれほどの苦労を背負われるか……。 私はソレを案じているのです」

 そんな事を、私の前で言ってしまうの?

 自分の罪に俯いていた私だけれど、カミラの言葉に唖然としながら頭を上げた。

 私が離縁したのちに、カミラ男爵令嬢が妻となられるのなら、私ではなくあなたが公爵領のために勤めるべきではないのかしら? そう言いたかったけれど、あえて沈黙した。 この勢いならそれが良いと思ったから。

「何を黙っているの? 私が言っているのは、あくまでもあなたの罪の話だと言うのに」

「止めないか!! 私だって何も学んでこなかった訳ではない!! 余計な事はするな!!」

 そう言ってカミラは抱えあげられ連れ去られていった。



 私の心の中の天秤が……乱れ、揺れる……。





「どうすれば、いいのかしら?」

 私の呟きに答えたのは、食後のお茶を差し出したポーラだった。

「堂々となさいませ。 あなたが経験されてきた事は男爵令嬢が語るような甘い日々ではなかったのですから。 彼女だってソレを理解しているからこそ、奥様の心を乱し支配しようとなさっているのではありませんか? 私は、そのように感じました。 堂々となさいませ。 試練を終えればラスティ様も全てを理解されるでしょうから」

「そうね……。 えぇ、余計な心配よね」

「そうですとも。 そんな事よりも私は椅子に座ってばかりの奥様の体調の方が心配です。少し気晴らしに散歩などされてはいかがですか? 市場に出向くのも良いでしょう。 大奥様が亡くなられてから町には出向いていませんでしたでしょう?」

 そう語るポーラは、随分と穏やかな笑みを向けて来て……あぁ、やばいなぁ……と、思う訳なのですよ……最近、感情が揺れ過ぎてすぐに泣きそうになってしまう……。

 皆が優しい。

 同情されている。
 可哀そうだと思われている。

 それが情けなくて……泣けない。



 なんて感情的になっていましたが、山積みの仕事は勝手に消えてくれる訳等ありません。 私は今日もデスクに向かうつもりでした。

『主殿。 町に、奴隷商人が出入りしているとの報告があったのですが、いかがいたしましょう』

 そんな理由があるなら出かけないといけませんね。

「私が管理する領内では、許さないわ」






 そう……恰好つけ町に出かけたものの、全ては罠。
 私は護衛の獣人と引き離され、小さな獣人達を人質に取られ、そして囚われた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

能力持ちの若き夫人は、冷遇夫から去る

基本二度寝
恋愛
「婚姻は王命だ。私に愛されようなんて思うな」 若き宰相次官のボルスターは、薄い夜着を纏って寝台に腰掛けている今日妻になったばかりのクエッカに向かって言い放った。 実力でその立場までのし上がったボルスターには敵が多かった。 一目惚れをしたクエッカに想いを伝えたかったが、政敵から彼女がボルスターの弱点になる事を悟られるわけには行かない。 巻き込みたくない気持ちとそれでも一緒にいたいという欲望が鬩ぎ合っていた。 ボルスターは国王陛下に願い、その令嬢との婚姻を王命という形にしてもらうことで、彼女との婚姻はあくまで命令で、本意ではないという態度を取ることで、ボルスターはめでたく彼女を手中に収めた。 けれど。 「旦那様。お久しぶりです。離縁してください」 結婚から半年後に、ボルスターは離縁を突きつけられたのだった。 ※復縁、元サヤ無しです。 ※時系列と視点がコロコロゴロゴロ変わるのでタイトル入れました ※えろありです ※ボルスター主人公のつもりが、端役になってます(どうしてだ) ※タイトル変更→旧題:黒い結婚

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

処理中です...