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前編
11
椅子と共に宙を舞う。
足場のない不安定な感覚に眩暈が襲いかかり気を失いかけた。
色んな獣の叫びが、失いかける意識に殴りかかってきて……私は周囲を眺め、状況判断に勤める。
建物が建つ崖は高く、秋も深い海は荒れ
港へと向かう巨大な船が海面を揺らす。
冷静に、なるのよ!!
水は怖くない……。
僅か数秒の出来事。
レイダー公爵を初めとする公爵たちが、王の剣、王の盾、王の恵み、そんな二つ名を与えられ側に立つ事が許された。 それは各公爵領に存在する精霊の試練と語らいで得られた力のためである。
ホリーの紫の瞳が……青銀に淡い光を帯びた。
水がシャボン玉のように私の周りを覆い囲んだ。 それで、衝撃は避けられるはず……後は落ちてから考えっ……てっ!!
「ちょ、何をしているのよ!!」
私が落ちるのを見て、助けるタイミングをジッと見計らっていただろう獣達の中から数匹が海に飛び込みだしたのだ。
冷や汗が流れ落ちる。
ばっかですの!!
主思いなのはいいけれど、私は飛び込んだ獣達もシャボンの中に閉じ込め、水面に落ちる際の衝撃を緩和させ、荒れ狂う水から守りながら引き寄せ彼等と合流した。
「もう!! あなた達、泳げるから飛び込んだのですよね?」
なんて言ってみるけれど、巨大な黒虎が海を泳ぐ? 無理じゃないかしら。 アヒルはせ、セーフ? でもないわよね……。 カワウソは大丈夫? 波が荒すぎる気がします。
私は椅子と私を結ぶロープを外してもらいながら3匹の無謀に対して説教した。
『いや、悪かった。 悪かったが、放っておくこと等出来る訳がないだろう!!』
『そうですとも、そりゃぁ心配で心配で……肝が冷えるかと思いましたよ』
『泳ぎは得意なんでね!!』
「上は大丈夫なのかしら?」
『ブランを残してあるから、大丈夫だろう。 とは言え、待機と観察を命じてしまったから、助けは期待しない方がいい』
「助けに飛び込まれたら、私の苦労が増えるだけですわ。 だから、それでいいの」
権力者がいるようなら待機、情報収集を中心にと日頃から指示を出している。 私達の仇討ちなんて考えないでくれるといいのですが……。
『主様!! 向こうの方から人が!!』
ローズが叫ぶ。
「ぇっ?」
カミラの言動は決して賢いとは言えない。 だからと言って……自分で海に放り投げて置いて、拾ってこいとは言わないだろう。
振り返れば……知らない人?
この荒波で良く、よくこの海を泳ごうと言う酔狂なものがいるものですわ……と言うのではないのは、必死にコチラに近寄ろうとしているのからわかる。
男は、私達の方を見て笑って見せ、クビをしめるようなポーズを取り、去って行こうとした。 その男がどれほど泳ぎが得意でも、息止め大会(?)で優勝していても、陸まで安全に行けるとは限らない。
「仕方がありませんわね。 領内で死にかけの人を放置できませんわ……」
溜息をつきながら私は水を引き寄せ、男をシャボンの中に招き寄せた。
ごほごほと男はしゃぼんの中、四つん這いになりながら咳き込んでいた。
「こんな季節に泳ぐのは止めた方が良いですわよ?」
「いや、人が落ちて来るのを見たから」
ぜーぜーと荒れた息まで落ち着いた男はしゃがみこみながらも私に笑みを向けてきた。
人懐こい笑みだった。
何処かで見たことがあるような? そんな既視感を覚え……それは私の警戒を多少なりとも緩める事となった。
た、助けて良かったわ……。 私を助けようとして人が死ぬのは寝覚めが悪いもの。
「これは、その、精霊の加護と言うものか?」
「あなた……何者?」
と警戒のまま言葉にしたけれど、戦があれば当代の公爵家当主達が王のために力を振るうのだから、知っていたとしても不思議ではない。
「そうですね、自己紹介、自己紹介が必要ですね。 俺は商船の護衛をしている旅の者で、ヴィセと呼ばれています」
「護衛と言うからには腕は確かなんでしょうし……でも、どうしましょう?」
「どうかしたのか?」
「いえ、まずはあなただけでも、陸に戻すべきかと思いまして」
「君達はどうするんですか?」
「私達は……」
私はチラリと黒豹のルカを見て、そしてルカは頷いた。
「試練の場に裏口から入ります。 私はレイダー公爵家、現当主ホリー・レイダーですわ。 そしてコチラは従者のルカ、ローズ、オッズ」
「そうか、よろしくしてくれると嬉しい。 ところで、俺も一緒していいでしょうか? 楽しそうだ」
ヘラリと緩い笑みを浮かべた。
「そうね……構わないわ」
『良いのですか!! 主様!!』
『主?! こんな胡散臭い奴を』
「あら、あなた達が居れば平気でしょう?」
試練の場に入る事が出来るのは、試練を突破した者だけ。 もし、精霊の加護を得たものが途絶えた場合は、別の公爵家の者達が入口を開く。 仮に彼が試練の場の秘密を知ったとしても何も出来ない。
「ありがとう」
「構いませんわ。 精霊の試練は他人にとって意味のないものですもの。 それに、ここは寒いし寂しいわ。 護衛が仕事と言うなら足手まといにはならないでしょうし」
「頑張ります」
『俺達がいるだろう』
「そうね、でも、海に飛び込む虎は不安だわ」
私はルカの忠誠に感謝しつつも笑って見せた。
「仲がいいんだね。 彼等は獣人なのに」
反射的にイラっとして睨みつければ、男は……ヴィセと名乗った男は両手を挙げる。
「悪かった。 悪気は無かったんですよ。 ただ、珍しいなと思っただけ。 これでも商船の護衛には獣人も多くいて仲良くしていたんで……だから、余計に珍しいなと思ったんです」
注意を……私はルカに視線で語れば、頷きながらルカは私を守るように身体を寄せて来た。
海の中にあるトンネルをくぐり抜け、私達は洞窟の中を進み……少しずつ薄くなる呼吸に私はシャボンの移動を急いだ。
やがて広い空間が現れ、私達は降り立つ。
精霊の光が私を優しく迎え、視界が効く。
「ところで、あなた達は何を持ってきています?」
確認をすれば、黒虎のルカはサバイバルセット、アヒルのローズがお茶会セット、カワウソのオッズはパチンコに毛布そして……魚?
「魚?」
『ソレは僕のオヤツ』
「私は、ピクニックセットね」
獣人の秘密の一つに【人←→獣】の変化の際の空間に色々と物を仕舞う事が出来る。 これは個人の能力に寄る所が多い。 そして、私は彼等からその技を習っていた。
「……随分と場違いですね……」
驚いた様子を見せるヴィセに私は笑って見せた。
「だって、遭難する予定なんてなかったんですもの」
「俺は、まぁ……普通の旅の道具だね。 それで、これからどうするんですか?」
「そうね、まずはヴィセを乾かす事にするわ。 でも、火を焚く事は出来ないから寒さ対策はオッズでも抱っこしていてちょうだい」
オッズは嫌な顔をして見せるが、気づかないふりを決めこみ、私はヴィセの体温を奪っているだろう水分を蒸発させる。 塩分は残るから、気持ち悪くはあるでしょうけれど、そこは我慢し慣れてもらうしかない。
「休憩が必要なら休むけれど、どうかしら?」
「そうだね……出来るなら。 少し身体を休めて食事をご馳走してもらいたいかな」
情けなさそうに彼は笑う。
そしてお茶会セットが広げられ、場違いのケーキ、軽食が並べ飾られた。
『軟弱者が……。 主をこのような場に長時間置くつもりか』
「俺は彼女を助けるために泳いできたからね。 直ぐに彼女に助けられた君達と違うの。 それより、こんな場所で、こんなに良い食事が出来るとは思っても居なかった。 ところで、どうして……この洞窟は光っているんだい?」
「そうね……精霊の導きと言うものかしら? ここの精霊とは友達なの」
準備したお茶会セットは人数分よりも1セット多く、それは何時の間にかからになっていた。
私達が行方不明の間……ラスティは、カミラはどう動くか……。
「みんな大人しく観察していてくれればよいのですが……」
私はボソリと呟きながら、場違いな場所で優雅にお茶会をするのだった。
『皆さん、お茶のお代わりは如何ですか?』
ローズが問えば、皆が頷き……そして、心地よい水の流れる音も奏でられた。
足場のない不安定な感覚に眩暈が襲いかかり気を失いかけた。
色んな獣の叫びが、失いかける意識に殴りかかってきて……私は周囲を眺め、状況判断に勤める。
建物が建つ崖は高く、秋も深い海は荒れ
港へと向かう巨大な船が海面を揺らす。
冷静に、なるのよ!!
水は怖くない……。
僅か数秒の出来事。
レイダー公爵を初めとする公爵たちが、王の剣、王の盾、王の恵み、そんな二つ名を与えられ側に立つ事が許された。 それは各公爵領に存在する精霊の試練と語らいで得られた力のためである。
ホリーの紫の瞳が……青銀に淡い光を帯びた。
水がシャボン玉のように私の周りを覆い囲んだ。 それで、衝撃は避けられるはず……後は落ちてから考えっ……てっ!!
「ちょ、何をしているのよ!!」
私が落ちるのを見て、助けるタイミングをジッと見計らっていただろう獣達の中から数匹が海に飛び込みだしたのだ。
冷や汗が流れ落ちる。
ばっかですの!!
主思いなのはいいけれど、私は飛び込んだ獣達もシャボンの中に閉じ込め、水面に落ちる際の衝撃を緩和させ、荒れ狂う水から守りながら引き寄せ彼等と合流した。
「もう!! あなた達、泳げるから飛び込んだのですよね?」
なんて言ってみるけれど、巨大な黒虎が海を泳ぐ? 無理じゃないかしら。 アヒルはせ、セーフ? でもないわよね……。 カワウソは大丈夫? 波が荒すぎる気がします。
私は椅子と私を結ぶロープを外してもらいながら3匹の無謀に対して説教した。
『いや、悪かった。 悪かったが、放っておくこと等出来る訳がないだろう!!』
『そうですとも、そりゃぁ心配で心配で……肝が冷えるかと思いましたよ』
『泳ぎは得意なんでね!!』
「上は大丈夫なのかしら?」
『ブランを残してあるから、大丈夫だろう。 とは言え、待機と観察を命じてしまったから、助けは期待しない方がいい』
「助けに飛び込まれたら、私の苦労が増えるだけですわ。 だから、それでいいの」
権力者がいるようなら待機、情報収集を中心にと日頃から指示を出している。 私達の仇討ちなんて考えないでくれるといいのですが……。
『主様!! 向こうの方から人が!!』
ローズが叫ぶ。
「ぇっ?」
カミラの言動は決して賢いとは言えない。 だからと言って……自分で海に放り投げて置いて、拾ってこいとは言わないだろう。
振り返れば……知らない人?
この荒波で良く、よくこの海を泳ごうと言う酔狂なものがいるものですわ……と言うのではないのは、必死にコチラに近寄ろうとしているのからわかる。
男は、私達の方を見て笑って見せ、クビをしめるようなポーズを取り、去って行こうとした。 その男がどれほど泳ぎが得意でも、息止め大会(?)で優勝していても、陸まで安全に行けるとは限らない。
「仕方がありませんわね。 領内で死にかけの人を放置できませんわ……」
溜息をつきながら私は水を引き寄せ、男をシャボンの中に招き寄せた。
ごほごほと男はしゃぼんの中、四つん這いになりながら咳き込んでいた。
「こんな季節に泳ぐのは止めた方が良いですわよ?」
「いや、人が落ちて来るのを見たから」
ぜーぜーと荒れた息まで落ち着いた男はしゃがみこみながらも私に笑みを向けてきた。
人懐こい笑みだった。
何処かで見たことがあるような? そんな既視感を覚え……それは私の警戒を多少なりとも緩める事となった。
た、助けて良かったわ……。 私を助けようとして人が死ぬのは寝覚めが悪いもの。
「これは、その、精霊の加護と言うものか?」
「あなた……何者?」
と警戒のまま言葉にしたけれど、戦があれば当代の公爵家当主達が王のために力を振るうのだから、知っていたとしても不思議ではない。
「そうですね、自己紹介、自己紹介が必要ですね。 俺は商船の護衛をしている旅の者で、ヴィセと呼ばれています」
「護衛と言うからには腕は確かなんでしょうし……でも、どうしましょう?」
「どうかしたのか?」
「いえ、まずはあなただけでも、陸に戻すべきかと思いまして」
「君達はどうするんですか?」
「私達は……」
私はチラリと黒豹のルカを見て、そしてルカは頷いた。
「試練の場に裏口から入ります。 私はレイダー公爵家、現当主ホリー・レイダーですわ。 そしてコチラは従者のルカ、ローズ、オッズ」
「そうか、よろしくしてくれると嬉しい。 ところで、俺も一緒していいでしょうか? 楽しそうだ」
ヘラリと緩い笑みを浮かべた。
「そうね……構わないわ」
『良いのですか!! 主様!!』
『主?! こんな胡散臭い奴を』
「あら、あなた達が居れば平気でしょう?」
試練の場に入る事が出来るのは、試練を突破した者だけ。 もし、精霊の加護を得たものが途絶えた場合は、別の公爵家の者達が入口を開く。 仮に彼が試練の場の秘密を知ったとしても何も出来ない。
「ありがとう」
「構いませんわ。 精霊の試練は他人にとって意味のないものですもの。 それに、ここは寒いし寂しいわ。 護衛が仕事と言うなら足手まといにはならないでしょうし」
「頑張ります」
『俺達がいるだろう』
「そうね、でも、海に飛び込む虎は不安だわ」
私はルカの忠誠に感謝しつつも笑って見せた。
「仲がいいんだね。 彼等は獣人なのに」
反射的にイラっとして睨みつければ、男は……ヴィセと名乗った男は両手を挙げる。
「悪かった。 悪気は無かったんですよ。 ただ、珍しいなと思っただけ。 これでも商船の護衛には獣人も多くいて仲良くしていたんで……だから、余計に珍しいなと思ったんです」
注意を……私はルカに視線で語れば、頷きながらルカは私を守るように身体を寄せて来た。
海の中にあるトンネルをくぐり抜け、私達は洞窟の中を進み……少しずつ薄くなる呼吸に私はシャボンの移動を急いだ。
やがて広い空間が現れ、私達は降り立つ。
精霊の光が私を優しく迎え、視界が効く。
「ところで、あなた達は何を持ってきています?」
確認をすれば、黒虎のルカはサバイバルセット、アヒルのローズがお茶会セット、カワウソのオッズはパチンコに毛布そして……魚?
「魚?」
『ソレは僕のオヤツ』
「私は、ピクニックセットね」
獣人の秘密の一つに【人←→獣】の変化の際の空間に色々と物を仕舞う事が出来る。 これは個人の能力に寄る所が多い。 そして、私は彼等からその技を習っていた。
「……随分と場違いですね……」
驚いた様子を見せるヴィセに私は笑って見せた。
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「俺は、まぁ……普通の旅の道具だね。 それで、これからどうするんですか?」
「そうね、まずはヴィセを乾かす事にするわ。 でも、火を焚く事は出来ないから寒さ対策はオッズでも抱っこしていてちょうだい」
オッズは嫌な顔をして見せるが、気づかないふりを決めこみ、私はヴィセの体温を奪っているだろう水分を蒸発させる。 塩分は残るから、気持ち悪くはあるでしょうけれど、そこは我慢し慣れてもらうしかない。
「休憩が必要なら休むけれど、どうかしら?」
「そうだね……出来るなら。 少し身体を休めて食事をご馳走してもらいたいかな」
情けなさそうに彼は笑う。
そしてお茶会セットが広げられ、場違いのケーキ、軽食が並べ飾られた。
『軟弱者が……。 主をこのような場に長時間置くつもりか』
「俺は彼女を助けるために泳いできたからね。 直ぐに彼女に助けられた君達と違うの。 それより、こんな場所で、こんなに良い食事が出来るとは思っても居なかった。 ところで、どうして……この洞窟は光っているんだい?」
「そうね……精霊の導きと言うものかしら? ここの精霊とは友達なの」
準備したお茶会セットは人数分よりも1セット多く、それは何時の間にかからになっていた。
私達が行方不明の間……ラスティは、カミラはどう動くか……。
「みんな大人しく観察していてくれればよいのですが……」
私はボソリと呟きながら、場違いな場所で優雅にお茶会をするのだった。
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