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22.苛立ちと終わり
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「ぁああああああ!!」
ジェフリーは苛立ちで叫ぶ。
その日何度目かの叫び。
公爵家の使用人達は軽蔑するような視線を、ジェフリーのいるところに向け嘲笑う。
見つからない見つからない見つからない!!
イライラとした様子で屋敷を飛び出した。
「どうしたのですか?」
穏やかな様子でローマンが声をかけた。
屋敷から飛び出した足を止めた。
「ぇ、ぁ……」
冷静な素振り、戸惑いを必死に見せ足を止める。 綺麗な……ジェフリーの好きな顔に追いすがられるように見れば、ジェフリーは必死に冷静な素振りをしなければと深呼吸した。 だけど脳裏にグルグル巡るのはどうしようと言う言葉ばかり。
見つからないシーラを見つける手段が思い浮かばなかった。 見つからない等と済ませたくはなかった。
「シーラは……王宮に居ます。 私には手出しできない場所です」
そう言って項垂れた。
公爵とは言え王子が隠しているシーラを見つけ出すなんてことは出来ないだろう。
「私が戻っている事をなんとか伝える事が出来たなら……あの子はきっと戻って来るはずです」
「あんな姿にしておいて、本当に戻って来るのですか? 何か手段が?」
「あの姿になったのは、ヨハンが彼女の身体に刻んだ術式が失敗したためです。 私の責任ではありません。 それを語れば分かってくれるはずです。 私は、私はあの子を愛していますから。 父と子……であるため……いえ、ニーヴィは私があの子を可愛がることを良しとしなかったため、あの子には父親らしい愛情を注いでやる事を十分にしてやることは出来ませんでした。 けど、分かってくれるはずです」
「それは希望論でしょう。 実際に貴方がしたことは……この国にとって裏切りだったのでは?」
「違う!! 全てはヨハンが、ヨハンがやったんだ!! あの男は私の娘を2人とも誑かし奪い、私をアクロマティリから追い出した。 全てはヨハンが悪い」
全てをヨハンの責任にするのはどうだろう?? ローマンはそう考えたが、ジェフリーが語ったのは全てが想定内の事だった。
確証が欲しかったと言うよりも……王子達が隠す中見つけ出す事は難しいと思ったから。
「王宮に行けば見つけ出す事はできますか?」
まっすぐな視線をローマンはジェフリーに見せれば……ジェフリーの視線は僅かに泳ぐ。
「自信が無いのですね」
「あの方々のマナの強さを考えれば、あの子の色の無いマナを探し出す事はとても難しい。 なんとかして……殿下とあの子との接点が見つかれば……」
「殿下のマナの中に、姉上のマナが混ざっていれば……確実だと言う事ですね」
「無理ですよ……。 あの子が、殿下達に気を許す訳にはいきません」
「なぜ、そんな風に言えるんです」
「あの子は、人の子として育てましたからね。 竜の子ではなく、公爵家の子ではなく、ごくごく庶民の子として……殿下達が近寄れば逃げ出すでしょう。 それが当たり前の人の反応なのですから」
「なら、殿下達が監禁をしていると……」
「えぇ、そうでなければ……あの子が、例え魂だけでも自由なあの子が、ヨハンやヴィヴィアンを見捨てて居なくなるなんてあり得ませんから」
「……では、殿下の動向を調べましょう」
王族と名乗る事を許された者達にとって、ジェフリーは蟻のような存在だ。 例え目の前にいても気づかれる事がない、そんな空しい存在。
屈辱と共に、その屈辱を利用しジェフリーはシーラを探そうとした。
それでも
見つからない、見つからない、見つからない。
殿下にマナの枝をつけ動向を探ったが、シーラに会いに行く様子がない。 それでも、あえて様子がおかしいと思えるところを考えるなら、日々2人のマナが減り続けていると言う事だった。
ただ、他の王族達も減っており、王族の死……完全な竜に変化し迎える暴走が世界樹によって抑えられていた。 だから、その効果範囲ともいえる。 と ジェフリーは判断に迷っていた。
「まさか、これほどまで役立たずだとは思ってもいませんでしたよ……」
静かにローマンが語れば、ジェフリーは焦った。 だが、結果が出せない今、もう言い訳の言葉はつきかけたと言うのが現実。
「なら、貴方なら探せると言うのか?」
「探せるなら最初から頼ったりはしませんよ。 ただ、無駄な時間だったなぁ~って思っただけです。 えぇ、とても無駄でした……。 本当に申し訳ない事をしました。 貴方に頼らなければ、彼女はきっと貴方に殺される事は無かったのですからね」
ため込んだ情愛は歪み、絡み、深く、重く、痛々しく……マナと共にその力を増した怨念をネックレスから解放した。
「へっ……二―ヴィ?!」
[あなた……あなた、あいしている、愛しているわ……]
本人の意志とは関わらず、毒となったニーヴィの怨念は……一緒に居たいと言う願いをかなえる。 今度こそ。
うわぁあああああああああああああ
苛立ちだった。
何も思い通りにいかない。
そんな不満をただただぶつけた……。
僕に残されたのは……姉弟の絆に頼ることなく、ただ……静かに日々を過ごす事だけだった。
終わりだ……。
せめて……せめて、良い妻を迎えなければ……。
黒白クマは、ある日私にとんでもないことを言った。
「私達のお嫁さんになるなら、どっちを選びますか?」
[それは……くまった……]
黒に軽くこづかれた……。
ジェフリーは苛立ちで叫ぶ。
その日何度目かの叫び。
公爵家の使用人達は軽蔑するような視線を、ジェフリーのいるところに向け嘲笑う。
見つからない見つからない見つからない!!
イライラとした様子で屋敷を飛び出した。
「どうしたのですか?」
穏やかな様子でローマンが声をかけた。
屋敷から飛び出した足を止めた。
「ぇ、ぁ……」
冷静な素振り、戸惑いを必死に見せ足を止める。 綺麗な……ジェフリーの好きな顔に追いすがられるように見れば、ジェフリーは必死に冷静な素振りをしなければと深呼吸した。 だけど脳裏にグルグル巡るのはどうしようと言う言葉ばかり。
見つからないシーラを見つける手段が思い浮かばなかった。 見つからない等と済ませたくはなかった。
「シーラは……王宮に居ます。 私には手出しできない場所です」
そう言って項垂れた。
公爵とは言え王子が隠しているシーラを見つけ出すなんてことは出来ないだろう。
「私が戻っている事をなんとか伝える事が出来たなら……あの子はきっと戻って来るはずです」
「あんな姿にしておいて、本当に戻って来るのですか? 何か手段が?」
「あの姿になったのは、ヨハンが彼女の身体に刻んだ術式が失敗したためです。 私の責任ではありません。 それを語れば分かってくれるはずです。 私は、私はあの子を愛していますから。 父と子……であるため……いえ、ニーヴィは私があの子を可愛がることを良しとしなかったため、あの子には父親らしい愛情を注いでやる事を十分にしてやることは出来ませんでした。 けど、分かってくれるはずです」
「それは希望論でしょう。 実際に貴方がしたことは……この国にとって裏切りだったのでは?」
「違う!! 全てはヨハンが、ヨハンがやったんだ!! あの男は私の娘を2人とも誑かし奪い、私をアクロマティリから追い出した。 全てはヨハンが悪い」
全てをヨハンの責任にするのはどうだろう?? ローマンはそう考えたが、ジェフリーが語ったのは全てが想定内の事だった。
確証が欲しかったと言うよりも……王子達が隠す中見つけ出す事は難しいと思ったから。
「王宮に行けば見つけ出す事はできますか?」
まっすぐな視線をローマンはジェフリーに見せれば……ジェフリーの視線は僅かに泳ぐ。
「自信が無いのですね」
「あの方々のマナの強さを考えれば、あの子の色の無いマナを探し出す事はとても難しい。 なんとかして……殿下とあの子との接点が見つかれば……」
「殿下のマナの中に、姉上のマナが混ざっていれば……確実だと言う事ですね」
「無理ですよ……。 あの子が、殿下達に気を許す訳にはいきません」
「なぜ、そんな風に言えるんです」
「あの子は、人の子として育てましたからね。 竜の子ではなく、公爵家の子ではなく、ごくごく庶民の子として……殿下達が近寄れば逃げ出すでしょう。 それが当たり前の人の反応なのですから」
「なら、殿下達が監禁をしていると……」
「えぇ、そうでなければ……あの子が、例え魂だけでも自由なあの子が、ヨハンやヴィヴィアンを見捨てて居なくなるなんてあり得ませんから」
「……では、殿下の動向を調べましょう」
王族と名乗る事を許された者達にとって、ジェフリーは蟻のような存在だ。 例え目の前にいても気づかれる事がない、そんな空しい存在。
屈辱と共に、その屈辱を利用しジェフリーはシーラを探そうとした。
それでも
見つからない、見つからない、見つからない。
殿下にマナの枝をつけ動向を探ったが、シーラに会いに行く様子がない。 それでも、あえて様子がおかしいと思えるところを考えるなら、日々2人のマナが減り続けていると言う事だった。
ただ、他の王族達も減っており、王族の死……完全な竜に変化し迎える暴走が世界樹によって抑えられていた。 だから、その効果範囲ともいえる。 と ジェフリーは判断に迷っていた。
「まさか、これほどまで役立たずだとは思ってもいませんでしたよ……」
静かにローマンが語れば、ジェフリーは焦った。 だが、結果が出せない今、もう言い訳の言葉はつきかけたと言うのが現実。
「なら、貴方なら探せると言うのか?」
「探せるなら最初から頼ったりはしませんよ。 ただ、無駄な時間だったなぁ~って思っただけです。 えぇ、とても無駄でした……。 本当に申し訳ない事をしました。 貴方に頼らなければ、彼女はきっと貴方に殺される事は無かったのですからね」
ため込んだ情愛は歪み、絡み、深く、重く、痛々しく……マナと共にその力を増した怨念をネックレスから解放した。
「へっ……二―ヴィ?!」
[あなた……あなた、あいしている、愛しているわ……]
本人の意志とは関わらず、毒となったニーヴィの怨念は……一緒に居たいと言う願いをかなえる。 今度こそ。
うわぁあああああああああああああ
苛立ちだった。
何も思い通りにいかない。
そんな不満をただただぶつけた……。
僕に残されたのは……姉弟の絆に頼ることなく、ただ……静かに日々を過ごす事だけだった。
終わりだ……。
せめて……せめて、良い妻を迎えなければ……。
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