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28.おわり
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部屋は温かで、出された紅茶は美味しい。
ホッと息をつく。
もし、逃げ出さなかったら? 今日の私はどうなっていただろう? 何時も通りの時間に店は閉められ、作っていた夕食のスープはなべ底に少し残る程度を残して持ち変えられ、鎖に繋がれ、夕刻時の明かりが灯る頃に宰相さん所の侍女さんがパンを取りに来て、店主の息子は店を閉ざす。
思いだすのは執拗に絡みつく視線。
『高く売れるかもしれない。 手を出すな』
ヒソヒソとした店主の声。
「イジメない?」
「イジメたりしませんよ。 貴方が受け入れてくれたなら、その瞬間から貴方を守るのが役目になりますから」
ほわほわとした微笑みに釣られて笑う。
正面のソファから立ち上がり横に座ってニッコリ笑う。 なんか流されているなぁ~~って気分だけど、悪い感じがしないから……でも、パン屋だって最初は悪くはなかった。
「お勤めと言う形の契約結婚も不安だと言うなら、それも含めてお試し期間にしませんか?」
そう言いながら唇近くにひんやりとした手が触れる。 落ち着いて見れば、そのひんやりとした感触には覚えがあった……。
「白?」
クスリと笑い頷かれた。
「最初から見張っていた?」
「見張っていたのではなく、見守っていたんですよ」
「あと、私が記憶している王子様はもっと大きかった気がする」
「威圧的になるかと思いまして……」
そう言ったかと思うと、手が差し出された。 反射的にその手に手を重ねれば、グイッと引っ張られ抱き上げられ、トンッと軽い感じで部屋の片隅に移動する。
「ぇ?」
「来ます」
何が? と思えば……、黒クマが窓ガラスを破り突進してきた。
凄い音を立てガラスが割れる。
「危ないから玄関から普通に入ってきてください兄さん」
入って来たのは見覚えのある黒クマ。
「なんで、なんで、オマエは何時も!! 抜け駆けをするんだ!!」
「貴方が大雑把で適当なのが問題なんでしょう? 私だって心配だからずっと探していたんですよ。 ただ、それが兄さんよりも効率的だったと言うだけです。 それと、兄さん……私は正体をばらしてしまったので、兄さんも何時までもクマの恰好でいるのをお止めになられてはどうですか?」
「本体は、ゴーレム退治に出ているんだよ!! だから抜け駆けすんなって言ってるんだ!!」
どういう事?? と言う顔をする私に……セザール様……いえ、白は説明をしてくれた。
本体とは別にマナを押し固めて、クマの形を作り動かしているそうだ。 で、本体は本体でマナの塊なので、本質さえ変えなければ年齢は割と自由になるらしい。 王族・上級貴族でもマナの多い者達だけが使える技なのだそうだ。
「ですが、あの状態でシーラを放っておくなんて出来る訳ないでしょう?」
「誰かを手配するとか……?」
なぜか急に自信を失くすような黒。
「嫌ですよ。 それでまたややこしい話になるのは……。 そうでなくても、偶然彼女を見つけたらしい侯爵家の次男がご執心だったんですから」
抱き上げたままの私をそのまま別の部屋に連れて行く白……そして後をついてくる黒クマ。
「で、何時から……知っていたんだ? シーラの居場所」
「さぁ、何時からでしょう。 それより兄さん、シーラが作ったパン持って来てください」
「えっと、自分で歩きます」
黒の質問も、私の訴えも白には無視された。
「おぃ!」
「一度逃げられちゃってますから慎重にしないとって考えれば、兄さんに知らせる訳がないじゃないですか。 短絡的なんですから」
ガラスの割れる音で走り寄ってきた使用人の人達に、白は部屋の片付けを命じて隣の部屋へと移動し、ソファに座らせる。
「まったく、兄さんのせいでお茶を淹れなおさないとですよ。 お湯、沸かしてください」
そう言ってポットの一つを黒に渡す白。
「まぁ、いい……。 勝負は改めてこれからという事でいいな」
そう言いながら黒は白にお湯の入ったポットを渡した。
「そうですね……。 出来るなら仮でも契約でも婚姻まで持って行きたかったのですが、出来なかったのですから私の力不足は認めましょう」
「えっと??」
「以前、どちらかを夫として選んで下さいと言いましたよね? それの続きです」
横に座った白は正面から私を見据えてニッコリと笑う。
「覚悟してください。 大切にしますから」
チュッと頬に軽い口づけがされ……黒が抜け駆け厳禁と怒り出す。
そして私達の生活は振り出しに戻った。
翌日、白の元に一通の報告書が届いた事を私は知らない。
騎士となった侯爵家次男によってパン屋一家が惨殺されたと言う悲劇を……。
そうして……私は、穏やかな閉鎖された世界に改めて身を置くのだ。 夢のような幸福の中。 そして私は、何かと忙しい王子様2人を王宮に送り出す中、森の中で王子の分離体である2匹のクマさんを従えて畑を作りスローライフを開始する。
ホッと息をつく。
もし、逃げ出さなかったら? 今日の私はどうなっていただろう? 何時も通りの時間に店は閉められ、作っていた夕食のスープはなべ底に少し残る程度を残して持ち変えられ、鎖に繋がれ、夕刻時の明かりが灯る頃に宰相さん所の侍女さんがパンを取りに来て、店主の息子は店を閉ざす。
思いだすのは執拗に絡みつく視線。
『高く売れるかもしれない。 手を出すな』
ヒソヒソとした店主の声。
「イジメない?」
「イジメたりしませんよ。 貴方が受け入れてくれたなら、その瞬間から貴方を守るのが役目になりますから」
ほわほわとした微笑みに釣られて笑う。
正面のソファから立ち上がり横に座ってニッコリ笑う。 なんか流されているなぁ~~って気分だけど、悪い感じがしないから……でも、パン屋だって最初は悪くはなかった。
「お勤めと言う形の契約結婚も不安だと言うなら、それも含めてお試し期間にしませんか?」
そう言いながら唇近くにひんやりとした手が触れる。 落ち着いて見れば、そのひんやりとした感触には覚えがあった……。
「白?」
クスリと笑い頷かれた。
「最初から見張っていた?」
「見張っていたのではなく、見守っていたんですよ」
「あと、私が記憶している王子様はもっと大きかった気がする」
「威圧的になるかと思いまして……」
そう言ったかと思うと、手が差し出された。 反射的にその手に手を重ねれば、グイッと引っ張られ抱き上げられ、トンッと軽い感じで部屋の片隅に移動する。
「ぇ?」
「来ます」
何が? と思えば……、黒クマが窓ガラスを破り突進してきた。
凄い音を立てガラスが割れる。
「危ないから玄関から普通に入ってきてください兄さん」
入って来たのは見覚えのある黒クマ。
「なんで、なんで、オマエは何時も!! 抜け駆けをするんだ!!」
「貴方が大雑把で適当なのが問題なんでしょう? 私だって心配だからずっと探していたんですよ。 ただ、それが兄さんよりも効率的だったと言うだけです。 それと、兄さん……私は正体をばらしてしまったので、兄さんも何時までもクマの恰好でいるのをお止めになられてはどうですか?」
「本体は、ゴーレム退治に出ているんだよ!! だから抜け駆けすんなって言ってるんだ!!」
どういう事?? と言う顔をする私に……セザール様……いえ、白は説明をしてくれた。
本体とは別にマナを押し固めて、クマの形を作り動かしているそうだ。 で、本体は本体でマナの塊なので、本質さえ変えなければ年齢は割と自由になるらしい。 王族・上級貴族でもマナの多い者達だけが使える技なのだそうだ。
「ですが、あの状態でシーラを放っておくなんて出来る訳ないでしょう?」
「誰かを手配するとか……?」
なぜか急に自信を失くすような黒。
「嫌ですよ。 それでまたややこしい話になるのは……。 そうでなくても、偶然彼女を見つけたらしい侯爵家の次男がご執心だったんですから」
抱き上げたままの私をそのまま別の部屋に連れて行く白……そして後をついてくる黒クマ。
「で、何時から……知っていたんだ? シーラの居場所」
「さぁ、何時からでしょう。 それより兄さん、シーラが作ったパン持って来てください」
「えっと、自分で歩きます」
黒の質問も、私の訴えも白には無視された。
「おぃ!」
「一度逃げられちゃってますから慎重にしないとって考えれば、兄さんに知らせる訳がないじゃないですか。 短絡的なんですから」
ガラスの割れる音で走り寄ってきた使用人の人達に、白は部屋の片付けを命じて隣の部屋へと移動し、ソファに座らせる。
「まったく、兄さんのせいでお茶を淹れなおさないとですよ。 お湯、沸かしてください」
そう言ってポットの一つを黒に渡す白。
「まぁ、いい……。 勝負は改めてこれからという事でいいな」
そう言いながら黒は白にお湯の入ったポットを渡した。
「そうですね……。 出来るなら仮でも契約でも婚姻まで持って行きたかったのですが、出来なかったのですから私の力不足は認めましょう」
「えっと??」
「以前、どちらかを夫として選んで下さいと言いましたよね? それの続きです」
横に座った白は正面から私を見据えてニッコリと笑う。
「覚悟してください。 大切にしますから」
チュッと頬に軽い口づけがされ……黒が抜け駆け厳禁と怒り出す。
そして私達の生活は振り出しに戻った。
翌日、白の元に一通の報告書が届いた事を私は知らない。
騎士となった侯爵家次男によってパン屋一家が惨殺されたと言う悲劇を……。
そうして……私は、穏やかな閉鎖された世界に改めて身を置くのだ。 夢のような幸福の中。 そして私は、何かと忙しい王子様2人を王宮に送り出す中、森の中で王子の分離体である2匹のクマさんを従えて畑を作りスローライフを開始する。
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おはようございます。
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最後まで、読んで頂きありがとうございました~!!
ですです。
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突っ込みありがとうございました~ \(^_^)/