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22.王妃の罠 02
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「その……国の危機を助けてくれる方を、罪人のように扱うのは如何なものでしょうか?」
ロイが恐る恐る王妃に進言すれば、王妃とは到底思えないやくざ顔負けのガンつけが向けられた。
「私相手に3度も逃げようとするのですもの。 仕方がない事ですわぁ~。 はい、わんちゃん、子猫ちゃん、お座りなさぁ~い」
口調こそ穏やかだが、目は座っている王妃……奇妙な威圧を発すれば、リーンはげんなり顔のティナとアルフレットに苦笑いで労った。
「うん、なんかご愁傷様」
だが、返事を返したのはニヤリ顔の王妃様。
「ねぎらい、ありがとうぅ。 それでぇ、アルとティナには少し特殊な契約を交わしてもらう事になったのぉ。 使う魔法アイテム自体かなり高価で珍しいものだけどぉ~、国のため、背に腹は代えられないものねぇ~?」
肩をすくめながら言うが、その表情は惜しむ様子はなく、どちらかと言えば自分の決断に満足したがゆえに結果をもったいぶっているように思われた。
王妃がテーブルへと歩みだせば、アルフレットは王妃のために椅子を引き、ロイは紅茶を入れる準備をする。
「その……特殊な契約とはどのようなものなのですか?」
当事者となるアルフレットは、王妃の右背後に立ちながらたずねた。 王妃の左背後には無言で表情なく外を眺めているティナ。
「昔、ズイブンと放浪癖のある英雄がいたのよぉ~。 王国に縛り付けるのも難しいならせめて首輪をと思い作ったものがあるの。 どちらか一方が必要に応じて、一方を召喚できるというアイテムね。 結局は使うことなく終わったんだけど、思い付きだろうと何だろうと作っておくものねぇ~。 世代を超えて役立つとは想像もしていなかったわぁ~」
そう言いながら王妃一人が満足そうに微笑んでいた。
王妃がしばりつけたかった英雄。 それは、筆頭騎士を辞退した英雄であり、王妃とアルフレットの間に存在していた唯一の英雄……ティナの父であるフラムだった。 王家に対して反意を見せた訳ではないが、思い通りにならなかった事への明らかな嫌味が含まれており、ティナの顔色は悪くなるばかり。
王妃に紅茶を差し出したロイは、ティナにミルク多めの紅茶を渡そうとした。 放心状態と言うべきか力ない弱々しい存在にしか見えず同情したロイは、優しい微笑みを向けた。
「お疲れのようですね。 お茶でも飲んで落ち着き下さい」
「そうだぞ、椅子に座って休むといい。 疲れただろう?」
「私と同じ席につくのは恐れ多いかもしれないけどぉ~。 私はこれでも寛容なの。 席に座りなさい」
アルフレットは、ティナのために王妃の隣の椅子を引いた。 ロイがそっと手を差し出せば、首をふるふると断って見せ、繋がれたロープをヒョイとテーブルの上に乗せ、王妃から対角線上に最も離れた位置の椅子を選んで座った。
流されっぱなしになる気も、負けっぱなしになる気もないティナ。
僅かでも抵抗・反発心を見せようとしているティナの様子に、リーンはとっさに後ろを向いて笑い出し、ロイは苦笑をうかべた。
「本当、親に良く似て生意気ねぇ~」
苦虫を噛み潰した表情を見せる王妃。 だが、王妃は不満を述べ舌打はするが、害を与えるような事はソレ以上しなかった。
静かに時間が流れる。
開かれる扉。
王宮警備兵が持ってきたのは、一枚の分厚い紙と2つの指輪。
「ご苦労」
王妃は特殊用紙を受け取り、契約書を書いていく。
ティナ・フォンクと、アルフレット・クライフは次の通り契約を執り行う。
1、ティナ・フォンクは、アルフレット・クライフが行う業務に対し支障が講じないように協力を行う。
2、契約の期間は、アルフレットの業務に支障が発生しなくなる。 どちらか一方が死亡する。 ティナ・フォンクに代わる人員が補強されるまでの間とする。
3、この契約期間の間、双方は呪いの解除を優先するため、第三者との恋愛行動を禁じる。
4、早急な支援が必要となる場合、あらゆる都合を配慮することなく、ティナ・フォンクはアルフレット・クライフの召喚に応じる。
5、この契約遂行において、ティナ・フォンクの時間と自由を奪うこととなるため、王家・ならびにアルフレット・クライフは、ティナ・フォンクに対する補償を誠心誠意行うものとする。
「さぁ、2人とも氏名を書き血判を押しなさ~い」
「コレ、すごく私に不利ですよね?」
「利用する気になればこれほど有利なものはないでしょう? 使わないのは貴方の自由。 こっちは国を守るために最大限の譲歩はしたつもりなのだけどぉ~、不満かしら? 納得してくれていなかったのなら もう1度最初から説明を行ってさしあげるわぁ」
「はいはい、分かりましたよ!!」
自棄になりティナはサインと血判を押し、何とも言えない表情でアルフレットが続いた。
そして、最後に王妃がもう一筆書き足し、王妃は書面に魔力を走らせ起動のための呪文を唱え、そして続くは神への契約承認願い。
「アルフレット・クライフとティナ・フォンクとの間における婚約契約を、アンシンク国王妃ウルスの名において、契約の神ミストラの承認を求める」
そう言い切った瞬間に契約書は燃え消えた。
「ちょっと待ってください!! 今のはどういうことですか!!」
ティナが自分を繋ぐロープを引っ張るが、王妃はびくりともせず、仕方なくティナは自らの足で王妃につめよっていった。
「どうって? 神の仲介による正式な契約だけどぉ?」
そう言って、前のめりになるティナの左手を掴んだ王妃は、ティナの薬指に契約と共に魔法の力を宿した指輪を強引に嵌めた。
「な、なんてことするんですか!!」
「ふっ……世の中は、力が全てなのぉ。 覚えておきなさいお嬢ちゃん」
ニヤリとした笑みを王妃はティナに向け、次に孫であるアルフレットにもう1つの指輪を放り渡した。
「アンタは呪いのせいで指にはめても落とすだろうから、鎖を通して首にでもかけておきなさい」
「ありがとうございます」
アルフレットは、丁寧に祖母であり自国の王妃に頭を下げた。
ロイが恐る恐る王妃に進言すれば、王妃とは到底思えないやくざ顔負けのガンつけが向けられた。
「私相手に3度も逃げようとするのですもの。 仕方がない事ですわぁ~。 はい、わんちゃん、子猫ちゃん、お座りなさぁ~い」
口調こそ穏やかだが、目は座っている王妃……奇妙な威圧を発すれば、リーンはげんなり顔のティナとアルフレットに苦笑いで労った。
「うん、なんかご愁傷様」
だが、返事を返したのはニヤリ顔の王妃様。
「ねぎらい、ありがとうぅ。 それでぇ、アルとティナには少し特殊な契約を交わしてもらう事になったのぉ。 使う魔法アイテム自体かなり高価で珍しいものだけどぉ~、国のため、背に腹は代えられないものねぇ~?」
肩をすくめながら言うが、その表情は惜しむ様子はなく、どちらかと言えば自分の決断に満足したがゆえに結果をもったいぶっているように思われた。
王妃がテーブルへと歩みだせば、アルフレットは王妃のために椅子を引き、ロイは紅茶を入れる準備をする。
「その……特殊な契約とはどのようなものなのですか?」
当事者となるアルフレットは、王妃の右背後に立ちながらたずねた。 王妃の左背後には無言で表情なく外を眺めているティナ。
「昔、ズイブンと放浪癖のある英雄がいたのよぉ~。 王国に縛り付けるのも難しいならせめて首輪をと思い作ったものがあるの。 どちらか一方が必要に応じて、一方を召喚できるというアイテムね。 結局は使うことなく終わったんだけど、思い付きだろうと何だろうと作っておくものねぇ~。 世代を超えて役立つとは想像もしていなかったわぁ~」
そう言いながら王妃一人が満足そうに微笑んでいた。
王妃がしばりつけたかった英雄。 それは、筆頭騎士を辞退した英雄であり、王妃とアルフレットの間に存在していた唯一の英雄……ティナの父であるフラムだった。 王家に対して反意を見せた訳ではないが、思い通りにならなかった事への明らかな嫌味が含まれており、ティナの顔色は悪くなるばかり。
王妃に紅茶を差し出したロイは、ティナにミルク多めの紅茶を渡そうとした。 放心状態と言うべきか力ない弱々しい存在にしか見えず同情したロイは、優しい微笑みを向けた。
「お疲れのようですね。 お茶でも飲んで落ち着き下さい」
「そうだぞ、椅子に座って休むといい。 疲れただろう?」
「私と同じ席につくのは恐れ多いかもしれないけどぉ~。 私はこれでも寛容なの。 席に座りなさい」
アルフレットは、ティナのために王妃の隣の椅子を引いた。 ロイがそっと手を差し出せば、首をふるふると断って見せ、繋がれたロープをヒョイとテーブルの上に乗せ、王妃から対角線上に最も離れた位置の椅子を選んで座った。
流されっぱなしになる気も、負けっぱなしになる気もないティナ。
僅かでも抵抗・反発心を見せようとしているティナの様子に、リーンはとっさに後ろを向いて笑い出し、ロイは苦笑をうかべた。
「本当、親に良く似て生意気ねぇ~」
苦虫を噛み潰した表情を見せる王妃。 だが、王妃は不満を述べ舌打はするが、害を与えるような事はソレ以上しなかった。
静かに時間が流れる。
開かれる扉。
王宮警備兵が持ってきたのは、一枚の分厚い紙と2つの指輪。
「ご苦労」
王妃は特殊用紙を受け取り、契約書を書いていく。
ティナ・フォンクと、アルフレット・クライフは次の通り契約を執り行う。
1、ティナ・フォンクは、アルフレット・クライフが行う業務に対し支障が講じないように協力を行う。
2、契約の期間は、アルフレットの業務に支障が発生しなくなる。 どちらか一方が死亡する。 ティナ・フォンクに代わる人員が補強されるまでの間とする。
3、この契約期間の間、双方は呪いの解除を優先するため、第三者との恋愛行動を禁じる。
4、早急な支援が必要となる場合、あらゆる都合を配慮することなく、ティナ・フォンクはアルフレット・クライフの召喚に応じる。
5、この契約遂行において、ティナ・フォンクの時間と自由を奪うこととなるため、王家・ならびにアルフレット・クライフは、ティナ・フォンクに対する補償を誠心誠意行うものとする。
「さぁ、2人とも氏名を書き血判を押しなさ~い」
「コレ、すごく私に不利ですよね?」
「利用する気になればこれほど有利なものはないでしょう? 使わないのは貴方の自由。 こっちは国を守るために最大限の譲歩はしたつもりなのだけどぉ~、不満かしら? 納得してくれていなかったのなら もう1度最初から説明を行ってさしあげるわぁ」
「はいはい、分かりましたよ!!」
自棄になりティナはサインと血判を押し、何とも言えない表情でアルフレットが続いた。
そして、最後に王妃がもう一筆書き足し、王妃は書面に魔力を走らせ起動のための呪文を唱え、そして続くは神への契約承認願い。
「アルフレット・クライフとティナ・フォンクとの間における婚約契約を、アンシンク国王妃ウルスの名において、契約の神ミストラの承認を求める」
そう言い切った瞬間に契約書は燃え消えた。
「ちょっと待ってください!! 今のはどういうことですか!!」
ティナが自分を繋ぐロープを引っ張るが、王妃はびくりともせず、仕方なくティナは自らの足で王妃につめよっていった。
「どうって? 神の仲介による正式な契約だけどぉ?」
そう言って、前のめりになるティナの左手を掴んだ王妃は、ティナの薬指に契約と共に魔法の力を宿した指輪を強引に嵌めた。
「な、なんてことするんですか!!」
「ふっ……世の中は、力が全てなのぉ。 覚えておきなさいお嬢ちゃん」
ニヤリとした笑みを王妃はティナに向け、次に孫であるアルフレットにもう1つの指輪を放り渡した。
「アンタは呪いのせいで指にはめても落とすだろうから、鎖を通して首にでもかけておきなさい」
「ありがとうございます」
アルフレットは、丁寧に祖母であり自国の王妃に頭を下げた。
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