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55.それは真剣勝負だった
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アルフレットの言葉に走る沈黙。
その場にいる大半は、流石に自分の部下に対して噛みつきはしないだろうと考えてはいたが、最近のアルフレットは普通ではない事を配慮すれば……絶対とは言い切れないと言う不安もあった。
だが、施術を終えて休憩していた色騎士達が騒めきだす。 未だ回復しきっていない身体をおしてアルフレットの前に立ちふさがる者も現れた。
「下がれ」
大きな狼の足はローブを羽織った者の背を押さえながら言う。
「その人を解放してくれたなら、幾らでも下がりますよ」
ふらふらになりながら、色騎士達は次々とアルフレットを囲んだ。 ふるふると恐怖で声も手足も振るわせながら、ジリジリと距離を測り、顔を見合わせながら、誰がアルフレットを抑え込み、誰がわずかの隙にローブの人物を助けるか、目線で語り合っていた。
力が封じられているアルフレットではあるが、ロイとの攻防をみていれば自分達との差は一目瞭然。 勝てる要素など想像もつかずアルフレットと相対するのを押し付け合った。
アルフレットにこれほど恐れを抱きながら立ち上がったのは、身代わり人形を作る際の魔力的交流によるもの……アルフレットを牽制する色騎士同士が牽制して、背後から背を押しアルフレットの前に押し出す者が出始めた。
「ちょ、ナニするんだ!!」
バランスが崩れた瞬間である。
自分だけが逝ってたまるかと、手の届く範囲の騎士達を掴み、ソレが繰り返され、人間ドミノが出来上がる。
情けないとロイが天井を仰げば、ジュリは苦笑していた。
「あらぁ……」
狼は足元にしているローブ姿の人間を守るために、倒れ込む騎士を軽く頭で小突きながら排除していった。 抑え込んだ足は少しも外すようすはなく、最初に背を押した色騎士が舌打ちをする。
「コレは、訓練じゃないぞ」
アルフレットの厳しい言葉にジュリは挑発した。
「えぇ確かに訓練じゃないわ。 注射を嫌って暴れる坊やは大人しくなさい」
アルフレットはロイへと視線を向け、再び命じた。
「窓を開け」
「ふぅ」
溜息をつきジュリがロイを見れば、視線を受けて苦笑と共に肩を竦め窓へと歩き出すロイ。
「幾ら才能があっても、甘やかされた坊ちゃん達では庶民以下。 シッカリと鍛えないといけませんね。 スケジュールを組んでおきましょう」
床に座り込む騎士にチラリと視線を送りロイは言う。 上級貴族の尊厳から呪いによる獣化を避けていたとも言える3人は、ポンポンポンと連鎖獣化しはじめる(身代わり人形を作っただけで呪いには手をだしていなかったから)。
研究員たちはヒソヒソと話し出すが、パンっとジュリが手を打ち日常が戻った。
「はいはい、仕事を再開なさい」
ロイが窓を開ければ、流れ込む風が部屋の中の匂いを飛ばし、書類も飛ばす。
「ちょっと、止めてよ!!」
叫ぶジュリを無視して、アルフレットは動き出す。
「用事は済んだ。 オレは行く」
アンタの用事は身代わり人形の作成だろ!! 誰もが思ったが、狼はローブ姿の人物を咥え軽々と宙に放り投げる。 器用にその背に乗せ窓へ向かって走り出した。
「ぶつかりたくなければ、頭を下げる。 落とされたくなければ、シッカリ掴んでおけ」
その声は、鋭く……そして明るい。
外へ駆け出す。
青空の元、まるで空を飛ぶかのようにジャンプしながら、ボソリとアルフレットは囁くように言った。
「お願いだ……オレを掴んでおいてくれ……ティナ……」
その場にいる大半は、流石に自分の部下に対して噛みつきはしないだろうと考えてはいたが、最近のアルフレットは普通ではない事を配慮すれば……絶対とは言い切れないと言う不安もあった。
だが、施術を終えて休憩していた色騎士達が騒めきだす。 未だ回復しきっていない身体をおしてアルフレットの前に立ちふさがる者も現れた。
「下がれ」
大きな狼の足はローブを羽織った者の背を押さえながら言う。
「その人を解放してくれたなら、幾らでも下がりますよ」
ふらふらになりながら、色騎士達は次々とアルフレットを囲んだ。 ふるふると恐怖で声も手足も振るわせながら、ジリジリと距離を測り、顔を見合わせながら、誰がアルフレットを抑え込み、誰がわずかの隙にローブの人物を助けるか、目線で語り合っていた。
力が封じられているアルフレットではあるが、ロイとの攻防をみていれば自分達との差は一目瞭然。 勝てる要素など想像もつかずアルフレットと相対するのを押し付け合った。
アルフレットにこれほど恐れを抱きながら立ち上がったのは、身代わり人形を作る際の魔力的交流によるもの……アルフレットを牽制する色騎士同士が牽制して、背後から背を押しアルフレットの前に押し出す者が出始めた。
「ちょ、ナニするんだ!!」
バランスが崩れた瞬間である。
自分だけが逝ってたまるかと、手の届く範囲の騎士達を掴み、ソレが繰り返され、人間ドミノが出来上がる。
情けないとロイが天井を仰げば、ジュリは苦笑していた。
「あらぁ……」
狼は足元にしているローブ姿の人間を守るために、倒れ込む騎士を軽く頭で小突きながら排除していった。 抑え込んだ足は少しも外すようすはなく、最初に背を押した色騎士が舌打ちをする。
「コレは、訓練じゃないぞ」
アルフレットの厳しい言葉にジュリは挑発した。
「えぇ確かに訓練じゃないわ。 注射を嫌って暴れる坊やは大人しくなさい」
アルフレットはロイへと視線を向け、再び命じた。
「窓を開け」
「ふぅ」
溜息をつきジュリがロイを見れば、視線を受けて苦笑と共に肩を竦め窓へと歩き出すロイ。
「幾ら才能があっても、甘やかされた坊ちゃん達では庶民以下。 シッカリと鍛えないといけませんね。 スケジュールを組んでおきましょう」
床に座り込む騎士にチラリと視線を送りロイは言う。 上級貴族の尊厳から呪いによる獣化を避けていたとも言える3人は、ポンポンポンと連鎖獣化しはじめる(身代わり人形を作っただけで呪いには手をだしていなかったから)。
研究員たちはヒソヒソと話し出すが、パンっとジュリが手を打ち日常が戻った。
「はいはい、仕事を再開なさい」
ロイが窓を開ければ、流れ込む風が部屋の中の匂いを飛ばし、書類も飛ばす。
「ちょっと、止めてよ!!」
叫ぶジュリを無視して、アルフレットは動き出す。
「用事は済んだ。 オレは行く」
アンタの用事は身代わり人形の作成だろ!! 誰もが思ったが、狼はローブ姿の人物を咥え軽々と宙に放り投げる。 器用にその背に乗せ窓へ向かって走り出した。
「ぶつかりたくなければ、頭を下げる。 落とされたくなければ、シッカリ掴んでおけ」
その声は、鋭く……そして明るい。
外へ駆け出す。
青空の元、まるで空を飛ぶかのようにジャンプしながら、ボソリとアルフレットは囁くように言った。
「お願いだ……オレを掴んでおいてくれ……ティナ……」
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