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03.パンダ叔父、生み出す?
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朝、キッチンに足を踏み入れた瞬間、目に入ったのは白黒の生き物。
その感情をどう整理していいか分からない。
大きな両腕に大量の竹を抱え、足音も立てずに動く巨大なモフモフ。ドサッとキッチンカウンターの上に竹の山が重ねられていく。昨日の「伯父だ」と語るパンダを受け入れた私にとって、目の前の景色は、もはや当たり前のこととして許容できた。
パンダ=竹
この図式に、どんな違和感があるだろうか?
「おはよう」
鼻歌交じりのパンダの低音ボイスに、私は応える。
「おはようございます」
「美味しいご飯を作ってやるから楽しみにしてな~」
そうは言うが、さっきから竹を割る音しか聞こえてこない。私は冷蔵庫を開け、食パンにケチャップとマヨネーズを混ぜて、チーズを乗せる。
ひょいっと振り向いたパンダが笹の葉を乗せようとしてくるので、その大きな手をぴしゃりと叩いた。
「竹スープや竹サラダは食べないからね」
「まさかまさか」
そう言って指差された大きめの鍋からは、確かにチキンスープっぽい匂いが香っている。
「コーヒーは淹れてあるから」
その言葉に振り返った瞬間、パンダの身体の影に隠れていたシンクが見えた。
「うえっ?」
そこには、ドロッとした、まるで深海の藻のような不気味な緑色の汁が溜まっている。しかも、微妙に泡立っている? いや、泡というより、時々ピクピク動いている気がするんだけど!?
「なんじゃこの汁!?」
私は思わず声を上げた。だって、朝からキッチンがパンダと謎の緑汁に支配されてるって、恐怖でしかない。
「どうした? 姪っ子!」
低音ボイスが妙に穏やかで、余計に不気味さを引き立てる。
「それは、私のセリフだから!!」
「いやぁ、朝はさっぱりしたものがいいかなって」
頬がひきつっているのが、自分でも分かる。
「さっぱり!? この緑汁、めっちゃ不穏なんですけど!? なんですか、このピクピク動く感じ! 生きてる!? そんなもの絶対食べないからね!!」
「ハハ、違う違う! これは俺の保存食だから」
ガリッ!
でっかい口で竹をバキバキと齧り始め、キッチンに破壊音が響く。そして、噛み砕いた竹から滴る緑色の汁が、シンクの怪しい液体にポタポタと落ちて……。
……って、落ちた瞬間、シンクの汁が一瞬ググッと蠢いた!?
いやいやあり得ないでしょう! 竹から青汁が出るなんて聞いたことないし! 一応、蠢いたのは目の錯覚にしようと努力はした。
ガリッ! ポタッ、うぬっ。
「ちょっと待って! 竹齧るのやめて! その汁、なんか反応してるよ! ホラー映画のスライムみたいになってるよ!?」
叫びながらも、コーヒーをカップに入れ、焼けたチーズトーストを確保する。
「てか、なんでキッチンで食べてるの!? 庭でやればいいじゃん! この汁、絶対ヤバいやつでしょ!?」
パンダは竹をガリガリ齧りながら、超マイペースに答える。
「姪っ子ちゃんは朝から元気だなぁ。 うんうん良いことだ。 これな、キッチンの方が雰囲気あるだろ? ほら、家族っぽい感じでさ! 兄も義姉も姪っ子ちゃんが寂しく一人で食事しているんじゃないかって気にしていたからなぁ~。 それに、この汁、ただの竹のエキスだぞ? ピュアな自然の恵み!」
「実家でもパパとママは滅多に食卓にいなかったわよ!! じゃなくて、そんな事より、自然の恵みがピクピク動くわけないでしょ! なんか呪いの沼みたいになってるじゃん! シンク詰まるよ!」
そんな風に叫びながら、私はリビングへと移動した。が、奇妙なものを確かめたいと思うのは、本能……ではないかな……(言い訳)。私はチラチラと、パンダの背中の向こうにある緑の景色を見てしまうのだ。
視界の隅で、パンダがもう一本竹を取り出し、器用に皮を剥き始めた。剥いた皮が床にポイッと落ち、シンクの緑汁がまたグニャッと波打つ。
……って、汁が動くたびに、なんか低いうめき声みたいな音が聞こえた気がするんだけど!?
「ねえ! その汁、鳴いてない!? 絶対生きてるよね!? パンダ、説明してよ!」
「細かいこと気にするなよ、姪っ子ちゃん。 つまらないようにちゃんと自分で動くからさ。 ほら」
「Hello.」
緑の液体が挨拶をしてきて、私は引きつった顔で返すのだった。
「は、ハロー」
その感情をどう整理していいか分からない。
大きな両腕に大量の竹を抱え、足音も立てずに動く巨大なモフモフ。ドサッとキッチンカウンターの上に竹の山が重ねられていく。昨日の「伯父だ」と語るパンダを受け入れた私にとって、目の前の景色は、もはや当たり前のこととして許容できた。
パンダ=竹
この図式に、どんな違和感があるだろうか?
「おはよう」
鼻歌交じりのパンダの低音ボイスに、私は応える。
「おはようございます」
「美味しいご飯を作ってやるから楽しみにしてな~」
そうは言うが、さっきから竹を割る音しか聞こえてこない。私は冷蔵庫を開け、食パンにケチャップとマヨネーズを混ぜて、チーズを乗せる。
ひょいっと振り向いたパンダが笹の葉を乗せようとしてくるので、その大きな手をぴしゃりと叩いた。
「竹スープや竹サラダは食べないからね」
「まさかまさか」
そう言って指差された大きめの鍋からは、確かにチキンスープっぽい匂いが香っている。
「コーヒーは淹れてあるから」
その言葉に振り返った瞬間、パンダの身体の影に隠れていたシンクが見えた。
「うえっ?」
そこには、ドロッとした、まるで深海の藻のような不気味な緑色の汁が溜まっている。しかも、微妙に泡立っている? いや、泡というより、時々ピクピク動いている気がするんだけど!?
「なんじゃこの汁!?」
私は思わず声を上げた。だって、朝からキッチンがパンダと謎の緑汁に支配されてるって、恐怖でしかない。
「どうした? 姪っ子!」
低音ボイスが妙に穏やかで、余計に不気味さを引き立てる。
「それは、私のセリフだから!!」
「いやぁ、朝はさっぱりしたものがいいかなって」
頬がひきつっているのが、自分でも分かる。
「さっぱり!? この緑汁、めっちゃ不穏なんですけど!? なんですか、このピクピク動く感じ! 生きてる!? そんなもの絶対食べないからね!!」
「ハハ、違う違う! これは俺の保存食だから」
ガリッ!
でっかい口で竹をバキバキと齧り始め、キッチンに破壊音が響く。そして、噛み砕いた竹から滴る緑色の汁が、シンクの怪しい液体にポタポタと落ちて……。
……って、落ちた瞬間、シンクの汁が一瞬ググッと蠢いた!?
いやいやあり得ないでしょう! 竹から青汁が出るなんて聞いたことないし! 一応、蠢いたのは目の錯覚にしようと努力はした。
ガリッ! ポタッ、うぬっ。
「ちょっと待って! 竹齧るのやめて! その汁、なんか反応してるよ! ホラー映画のスライムみたいになってるよ!?」
叫びながらも、コーヒーをカップに入れ、焼けたチーズトーストを確保する。
「てか、なんでキッチンで食べてるの!? 庭でやればいいじゃん! この汁、絶対ヤバいやつでしょ!?」
パンダは竹をガリガリ齧りながら、超マイペースに答える。
「姪っ子ちゃんは朝から元気だなぁ。 うんうん良いことだ。 これな、キッチンの方が雰囲気あるだろ? ほら、家族っぽい感じでさ! 兄も義姉も姪っ子ちゃんが寂しく一人で食事しているんじゃないかって気にしていたからなぁ~。 それに、この汁、ただの竹のエキスだぞ? ピュアな自然の恵み!」
「実家でもパパとママは滅多に食卓にいなかったわよ!! じゃなくて、そんな事より、自然の恵みがピクピク動くわけないでしょ! なんか呪いの沼みたいになってるじゃん! シンク詰まるよ!」
そんな風に叫びながら、私はリビングへと移動した。が、奇妙なものを確かめたいと思うのは、本能……ではないかな……(言い訳)。私はチラチラと、パンダの背中の向こうにある緑の景色を見てしまうのだ。
視界の隅で、パンダがもう一本竹を取り出し、器用に皮を剥き始めた。剥いた皮が床にポイッと落ち、シンクの緑汁がまたグニャッと波打つ。
……って、汁が動くたびに、なんか低いうめき声みたいな音が聞こえた気がするんだけど!?
「ねえ! その汁、鳴いてない!? 絶対生きてるよね!? パンダ、説明してよ!」
「細かいこと気にするなよ、姪っ子ちゃん。 つまらないようにちゃんと自分で動くからさ。 ほら」
「Hello.」
緑の液体が挨拶をしてきて、私は引きつった顔で返すのだった。
「は、ハロー」
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