モフモフ叔父との田舎暮らしがカオスすぎる

迷い人

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09.パンダ叔父、カピバラ君と対決する

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 今日も聞こえないパンダソング。
 リビングにも台所にもいないパンダ。

「庭かな?」

 でも庭をのぞかな~い。 今のうち今のうち。 ご近所さんに配った緑の謎パンダエキス(違)のお礼だって果物を持って来てくれたのを堪能しちゃうから。 ザクザク切ったフルーツにヨーグルトに……。

 手に持ったパックを開けて、冷蔵庫に返し、未開封のものを取り出した。 パックの中にまで培養してたし……。 文句を言おうと私はパンダを探すために徘徊する。 田舎の古い住宅は家も庭も無駄に広い。

「まぁ、草むしりや掃除を考えると、オジサンが居てくれてよかったよね。 本人には言えないけど」

 ぷくっと言う音、激しい勢いで振り向けば、helloと声かけニヤリと笑う……もうすでにスライムな奴が、物凄い早さでパンダに向かう。

「ちょ、余計な事言わないでよね!!」

 追いかけようとしても無駄で、育った軟体生物相手にシャドウボクシングを庭でやっているパンダが、嬉しそうに私を見てブンブンとモフモフした手を振って来る。

「おはよう!! 学校いってくるから!!」

「おぅ! 姪っ子ちゃんの愛は受け取ったぜ!」

 ウインク背中に私は学校へ向かう。



 何しているんだろう?? と言うのは通学途中の商店街の看板で分かった「パンダさん vs カピバラ君 アイドル対決決定戦!」 なるものを日曜日に繰り広げられるらしい……。

 学校の友達には、アレと家族なのは秘密にしたいなぁ……。



 日曜日の商店街。
 そこはいつも以上に輝いていた。

 看板には「第1回商店街癒しアイドル決定戦!」とデカデカ書かれ、LEDライトがピカピカ光ってる。

 …って、なんで商店街がこんな本格的なイベントやってるんだ!? しかも、メインステージの周りには、おばちゃん軍団に加えて、子供からおじいちゃんまで大集合! 屋台のたこ焼きや綿菓子すら、パンダ柄やカピバラ柄になってる!

「姪っ子ちゃん! 今日こそ俺の愛の輝き、商店街中に見せつけるぜ!」

 パンダが「I♡Bamboo」Tシャツの上に、なぜかキラキラのスパンコール付きベストを着込んで登場! 竹スティックをマイク代わりに握り、モフモフの耳をピクピクさせながらポーズを決める。…って、待て、そのベスト、めっちゃ目がチカチカするんだけど!?

「オジサン、アイドルって…何する気!? まさか、宇宙パンダ体操をステージで!?」
「ハハ、鋭いな、姪っ子ちゃん! だが、それだけじゃねえ! 俺の新作『パンダ癒しダンス』を披露して、商店街の心をガッチリ掴むぜ! ほら、姪っ子ちゃんもバックダンサーで参加だ!」

 差し出されるパンダの手。

 ゴメン被る!!

 パンダがサングラスをクイッと上げ、ニヤリと牙を見せる。 動かない私を出迎えるために、ステージから降りて背中を押すパンダパワーに呆気なく舞台に。

「いやいや、無理! 絶対無理! 私、ダンスとかやったことないし、てか、そのダンス、緑汁絡んでるでしょ!?」

 そこへ、カピバラがぬるっと登場! なぜかハワイアンシャツに麦わら帽子、首にはレイ(もちろん草で編んだやつ)。

「パンダさん、癒しは俺の得意分野だぜ。今日は俺の『カピバラ温泉リズム』で、商店街を癒しの楽園に変えるからな!」

 カピバラが草のウクレレをジャカジャカ鳴らし、ゆる~い笑顔で観客を煽る。

 おばちゃん軍団が「カピバラくぅ~ん! 癒して~!」と大絶叫!

「ふっ、カピバラ、癒しの本気度で負ける気はねえ! 姪っ子ちゃん、俺の愛のダンス、見ててくれよ!」

 パンダが竹ミキサー(なぜかステージに持ち込み済み)をガガッと起動! 中から「プク…ククク、Hello…」と怪しい音が響き、飛び散る緑の粘液。 ヒンヤリ会場を冷やした。

「待って、オジサン! ソレ!! 撒き散らすのやめて! ステージが緑汁まみれになるじゃん!」

「ハハ、細かいこと気にするなよ! これは俺の癒しエキス、観客に届けるんだぜ!」 

 パンダがモフモフの手で(自称)スムージーをカップに注ぎ、おばちゃん軍団に配り始める。…って、みんな「美味しい!」「肌ピチピチ!」って飲みまくってる!? なんで!?

 ステージが始まると、パンダの「パンダ癒しダンス」は…予想以上のカオス! 宇宙パンダ体操のメロディに合わせて、竹スティックを振り回し、モフモフの尻をフリフリ。LEDライトがパンダのスパンコールベストをキラキラ照らし、

 観客が「パンダさぁ~ん!」と大熱狂! だが、よく見ると、バックで緑の軟体生物(!?)がウネウネ踊ってる!

「オジサン! あれ、緑汁が進化したやつだよね!? なんで踊ってるの!?」

「ハハ、姪っ子ちゃん、心の目で見な! あいつは俺の癒しパートナーだぜ! 絆のダンス、感じてくれよ!」

 パンダがウインクしながら、緑の軟体生物とシンクロダンスをキメる。…って、ちょっとカッコいい!? いや、怪しいんだけど!?

 対するカピバラは、ゆる~いウクレレの音色に乗せて、温泉をイメージしたスローテンポなダンス。

 観客が「ほぉ~、癒される~」と目を細める中、カピバラが

「姪っ子ちゃん、俺のダンスにも癒されに来なよ!」

 とニコニコ。…え、なんで私まで巻き込まれてるの!? ってか、カピバラに姪っ子ちゃん呼びされる理由がわからないんだけど!! アレも叔父さんな訳?! パパ、どういうこと!?

 困惑を横に、ステージから逃げ出した私をおばちゃん軍団が煽って来る。

「サキちゃん、ステージ上がっちゃいな!」
「パンダさんとカピバラ君、どっちも応援よ!」

 でも、友達も混じってる観客の笑顔と、パンダの期待に満ちたキラキラした目(サングラスの奥で!)を見たら、なんか…断れなく……いや、脱兎のごとく逃げた。 ここでニコニコと一緒に踊ったら、戻れないような気がしたから。

 だが、友達がひょいっと伸ばした手で私を捕まえ言うのだ。

「せっかくだから、一緒に見ようよ!!」

 コイツ洗脳されている?? 私の顔をニマニマしている様子を見る限りは無事らしく、ホッと……できるかぁあああああ!!

 ステージ上では、パンダとカピバラが競い合いながらも、なぜか息ピッタリのダンスコラボが始まる!

 パンダのキレッキレな竹スティック振り回しと、カピバラのゆるゆる温泉リズムが融合し、観客が総立ち!

「姪っ子ちゃん、最高だぜ! 俺たちの絆、商店街中に響き渡ってるな!」 パンダがモフモフの耳をピクピクさせ、牙を見せてニヤリと笑いアピールしてきて、大爆笑の友達は私の手を取り手を振っていた。

 カピバラも

「サキちゃん、癒しパワー全開だね!」

 ウクレレをジャカジャカ。観客の拍手が鳴り止まない。



 訳の分からない争いに勝負なんてつくわけなくて、商品券はカピバラ君と半分こになった。

「オジサン! 商品券でアレ専用冷蔵庫買って帰るわよ!!」
「ハハ、姪っ子ちゃんも楽しんでくれたようで嬉しいよ」



 まぁ、楽しくなかったとは言わないけれど……ね。
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