モフモフ叔父との田舎暮らしがカオスすぎる

迷い人

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10.パンダ叔父は、支えたい

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 夜中の2時過ぎ。

 また、あの嫌な予感がした。喉の奥がじりじりと擦れるような咳が、小さく始まって、胸が重くなる。慌てて起き上がったけれど、やっぱり来た。コンコンと始まった咳は、だんだん激しくなっていく。

「げほっ、げほげほっ...」

 夜の喘息発作はつらい。昼間は大丈夫でも、夜になると急に苦しくなる。一人だと不安で、余計に息が詰まる気がして……。一人田舎に放り出した両親を恨んだこともあった。

「姪っ子ちゃん?」

 ノック音と共に聞こえる声。

「大丈夫かい? 入るからな? 入るぞ? 大丈夫だよな?」

 何を「大丈夫だよな?」と尋ねているのかツッコミたいが、そんな元気はなかった。

「だ、大丈夫...げほっ」

 ぽすぽすと、モフモフの足音らしい音と共にパンダは部屋に入ってきた。手にはグラスとペットボトルの水。

「無理すんなよ」

 優しいつぶらな瞳が、私以上に不安そうに見えた。

「吸入器、どこだ?」

「げほっ...机の上...」

 慌てることもなく、パンダ伯父さんは吸入器を持ってきてくれた。大きな手で背中をさすりながら、ゆっくりと話しかける。

「深呼吸だ。俺がついてるから、焦んなくていい」

 不思議と、パンダ伯父さんがいると安心できた。大きくて温かい存在感が、心を落ち着かせてくれる。

「水、飲むか?」

「...お願いします」

 冷たすぎず、温かすぎず、ちょうどいい温度の水がグラスに注がれ、口元に触れてきた。

「昔もよく夜中に咳き込んでいたよな」

 真面目に言うが……しんみり言うから「絆フェア」なのか、本気なのか分からない。

「その度に、俺がこうして背中さすってやったもんだ」

「覚えてない」

「小さい頃だったからなぁ」

 大きな手が、優しく背中を円を描くようにさすってくれる。そこにいるのは、本当に優しい伯父さんの顔だった。いや、彼はいつも彼なりに優しくあろうとはしてくれているのだろうけれど……。

「こほっ」

「怖いか?」

「...うん」

 正直に答えると、パンダ叔父さんは小さく頷いた。

「そりゃそうだ。一人だと余計に怖いよな」

 咳が少しずつ落ち着いてきた。吸入器と、この安心感のおかげだと思う。

「今夜は俺がここにいるよ。朝まで付き添ってやる」

「でも...迷惑じゃ...」

「家族が迷惑なわけないだろ」

 その言葉が、胸にじんわりと染みた。

 パンダは壁にもたれて座り直すと、膝を少し開いてくれた。

「こっち来な。今日は俺がベッドだ」

 最初は遠慮していたけれど、また小さく咳が出た時、パンダが強引に私を抱き上げた。背中に感じるモフモフは、微妙に涼しくて暑い日に最適で、ふわふわの毛並が心地よかった。

 毛で喘息が悪化しないかなぁ……なんて考えているうちに、胸が楽になってきた。

 胸の中で転がって、うとうとする私を撫でる大きな手。

「そうそう、それでいいんだ。明日、かかりつけの医者に連絡してみようか。夜間の発作を抑える薬があるかもしれない」

「ありがとう...オジサン」

「なに、当然だ」

 外では虫の声が聞こえている。パンダ伯父さんの体温と、規則正しい呼吸音が子守唄のようで、いつの間にか眠気が襲ってきた。

「寝ていいぞ。何かあったら起こしてやるから」
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