モフモフ叔父との田舎暮らしがカオスすぎる

迷い人

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18.パンダ叔父と、手作りご飯

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静寂……嵐の予感。

明日から2日間、大雨の予報に学校は休校を決定していた。

大雨の気配を感じさせない穏やかな空を見上げて、私は庭掃除をしていた。落ち葉が水路を堰き止めないように、丁寧に取り除いていく。

パンダがソワソワと落ち着かない様子で庭掃除をしているのを見かねて、私が「庭掃除を代わる」と言うと、イソイソとした様子で出かけて行った。

『ご近所のおばちゃんたちが心配だから見て来る!!ついでに買い物もしてくる!!食料はあるが、何かあったら大変だからな!』

遅くなるのは間違いないだろう。

「よし、今日の夕飯は私が作るか!!」

そう言いながら、私は少しだけ表情を曇らせた。

幼い頃の記憶
別に料理ができないわけじゃない。

忙しい両親はなかなかマンションに戻らず、家事代行業者の人が定期的に作り置きを作ってくれていた。その人が現れる日だけは、パパかママのどちらかが早く帰ってきてくれていた。

いつの日からか、私は家事代行業者の人に料理を学ぶようになっていた。初めて一人で料理をしたのが、大雨の日だった。台所の作り置きもなくなり、代行業者の人が来る予定だったが、来ることができないと連絡が入った。そして、私は初めて料理を作った。小学5年生の時のことだ。

だけど大雨の影響で、パパもママもマンションに戻ることができず、結局一人でご飯を食べた。それから何度か、両親に食事を振る舞おうと代行業者の人と計画を立て、料理もした。誕生日、クリスマス、両親は帰ってこなかった。正月になって久しぶりに両親と食事をする機会があって、私が料理を手伝ったことを伝えたら。

「なら、もうあなたのために家事代行業者の人を呼ぶ必要はないわね」

そう言われた。その日から、私は料理を作ってはいない。

大雨の夜
久しぶりの台所。

「たぶん作れるよね?元々自炊をするつもりだったし」

大雨で停電になった時のことを考えて、炊き込みご飯にした。水煮だけれど、ちゃんとタケノコも入れた炊き込みご飯だ。魚の南蛮漬けと、煮卵風のだし漬け卵。ピクルスももうそろそろ作り置きがなくなっていたな。

慣れない料理は時間がかかる。1時間、2時間、3時間。

気づけばバタバタと雨が降り出し、窓を激しく打つ。

帰らないパンダ。恐怖の夜。

雨戸を打つ激しい音。風に混ざり壁に何かがぶつかってくる。屋根を何かが歩くような音。窓から逆さに見える顔のような影。そんな様子に、私は恐怖していた。

扉を打つ雨の音が怖くてたまらない。パンダのスマホに連絡を入れる――つながらない。雨が強くて、自転車で出て行ったから、きっとどこかに避難しているのだろう。

やがて電気も消え始めた。明かりといえば、軟体生物が発する淡い光だけ。雨が容赦なく降り続く。

家にどれだけいるのか、謎の軟体生物が私に寄り添っていた。中にはぬいぐるみの中に入って、くねくね踊りながら雨の音や暗闇を怖がる私を慰めようとするものもいる。

暗闇で余計に怖いから!!

濡れネズミパンダの帰還
屋根を踏みしめるような音が一段と大きくなる。ゴロゴロ。窓に映る影……が、パンダ??

私は思い切って風雨の中、窓を開ける。

そこにいたのは、濡れて一回り小さくなったパンダだった。

「サキ~!心配かけてごめん~!」

私は無茶苦茶怒った。

「どこ行ってたのよ!!雨で帰れないなら連絡ぐらいしなさいよ!!怖かったんだから!!」

涙ぐみ、鼻水も出てくる。これは甘えだ……。

パンダはすごく謝った。

「本当にごめん!おばちゃんたちの家を巡って、屋根を修理してまわってたら、スマホの電池が切れちゃったんだ!」

ハグしようと近寄ってくるパンダを、私は手で制止した。

「濡れてる身体で近づかないで!風邪ひくでしょ!」

初めて作った手作りのご飯。私なりのご馳走。

「とりあえず着替えて。ご飯食べよう。まあ、オジサンは竹でもいいんだろうけど!」

パンダが着替えを済ませて戻ってくる前にと、料理を食卓に並べる。炊き込みご飯、魚の南蛮漬け、だし漬け卵。久しぶりに作った手料理は、パンダが作ったものに比べると不格好きわまりない。

パンダは目を輝かせて料理を見つめ、一口食べると。

「うまい!!すっげぇうまいぞ、サキ!!いつの間にこんなに料理上手になったんだ!?」

喜んで食べる姿を見ていると、胸の奥が温かくなった。

「久しぶりに作ったんだけどね。思い出しながらだったから時間かかっちゃった。形も崩れちゃってるし」

「形なんて関係ない!愛情がこもってる!竹より断然うまいぞ!」

パンダが嬉しそうに箸を動かす様子を見て、私は小さく微笑んだ。

温かい思い出
嵐は続く。

「サキ、今度料理教えてくれよ。俺も作ってみたい」
「え?オジサンが?オジサンめっちゃ料理上手じゃない」
「サキが作ってくれたみたいな、温かい料理を作れるようになりたいんだ」

その言葉に、私は少しだけ驚いた。両親に料理を振る舞おうとした時とは、全然違う反応だったから。

「不格好をそんな風に言ってまで褒めなくても」

「本気だぞ?」

よくわからないけど、嬉しかった。

「……いいよ。今度一緒に作ろう」

軟体生物たちも、まるで料理を褒めるかのように、淡い光でキラキラと輝いていた。大雨の夜は、怖い思い出から温かい思い出へと変わっていった。パンダのモフモフした毛が乾いて、いつものふわふわに戻る頃、私はオジサンの毛並みに手を伸ばす。

風の音。

「毛、もう乾いたんだね」

「まあな」

そう言いながら、さあこいと両手を広げるパンダ。

「私、子どもじゃないよ?」

「そうしたい気分なんだ」

「仕方ないなぁ~」

モフリとした腕の中に身を落とす。

柔らかな毛が私を受け止め、大きな手が撫でてくれ、疲れた私はそのまま眠りについた。雨の中、恐怖を感じることもなく、ぐっすりと眠った。






私信



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