婚姻の日に浮気ですか? でも本当のツガイと出会えたので気にしません。 だから、さようなら

迷い人

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01.アナタは誰? 01

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 婚姻契約を交わした翌朝。

 初夜を終えた少女が目を覚ませば、白い肌は熱っぽく赤味を帯びていた。 夜の出来事を思い出せば、顔が真っ赤になるのが分かる。 純白だった髪はうっすらと朝陽を思わせる色へと変化していた。

「はぁふぅ……」

 甘い吐息を漏らした少女は、その手にツガイが残した美しい紙に書かれたメッセージを眺めてウットリと微笑んだ。

『愛している
 君を手離す事はない
 待っていて欲しい
 必ず迎えに行く』

 大切そうに両手で包み込み、ふぅっと息を吹きかければ、メッセージが書かれた紙が溶けたように消えた。 少女は、そのメッセージを難しく考えて等いなかった。 ただ目を覚ました時に共に居なかった事への謝罪なのだと思っていた。

「奥様、準備をいたしましょうか?」

「はい」

 ツガイが交われば、その身に進化が訪れる事は、獣人であれば誰もが知っており、侍女は言葉にはしなかったが、めでたい事だと喜び、当主の妻となった女の身支度を手伝う。




 本当の意味での夫婦となった2人。 そんな2人を祝福するため、人々は二日酔いや眠気を堪えてでも朝食の場に集まる。

「おめでとうございます」

 少女は祝いの言葉に頭を下げた。

 ツガイの夫婦は、お互いの欲情を抑制できるようになるまで、ベールで顔を隠すのがルールとなっており、性的な事情が周囲に筒抜けだと思えば恥ずかしくて消え入りそうだけど、ツガイに出会えた、ツガイと結ばれた喜びを祝福されていると思えば嬉しくもあった。

「おめでとう」
「おめでとうございます」

 大勢の人が祝辞を述べる。

 ツガイ同士の婚姻は、力が約束されている。
 国からの支援が約束されている。
 身分と財が約束される。

 だから、貴族達が縁を結ぶために必死となる。

 集まった祝いの品が倉庫から荷があふれ出しており、ツガイの婚姻を始めて見た若い護衛兵が声を失くすほどであった。

 祝いの返礼は、三日三晩の宴席が慣習となっている。 三日三晩その身を交わらせ、ツガイにもたらされる変化を国の安泰と人々に見せるのだ。

「あの、私のツガイ様は、ドチラでしょうか? まだ、コチラにいらしてはいないのですか?」

 オズオズとした声で少女が侍女に問えば、ニッコリと愛想の良い笑みが返された。

「きっと準備に手間取っていらっしゃるのでしょう」

 侍女は疑うことなくそう思った。 花嫁が淡くその身に進化の色を宿しているなら、そのツガイと子を守る役目を帯びる花婿はどれほどの進化を身に宿しただろうかと、想像しただけでも誇らしく思っていたのだ。

 そう侍女が答えるや否や、人々が騒めきだす。

 少女と侍女が入って来た入口とは逆の方向から花婿がやってきたらしく、おめでとうございますと言う声が繰り返される。 同時に、先ほど挨拶を済ませた者達が、いっせいに少女を振り返っていた。

 何かしら?

 少女は小首をかしげ悩んだが、それ以上にツガイ様が恋しく、そして腕の中で甘えたかった。

「ツガイ様!! ツガイ様!!」

 甘えた声が響けば、少女に視線が集まり、道が開かれる。 転ぶように進んだ先に、華やかな揃いの婚姻衣装に身を包み、ベールをかぶった花婿と……花嫁を見つけた。

「ぇ……」

 私のツガイ様の側に別の女が? と、ショックを受けた声ではなく、どこまでも状況を理解できないと言うもの。

「何者だ!!」
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