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2章
25.救助 02
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「何をしているんですか!!」
叫ぶ新見と、おーー等と言いながら無責任な歓声と共に手を叩く颯太少年。
コンクリートの粉が舞い、視界を塞ぐ中に晃は突入し、ぎょっとしたのち逃げ出そうと身を浮かせた本庄エリィの腕を掴み、腹にパンチを一発入れた。
「うぐっふぅ」
本庄の整った顔が歪むが、雫の血を舐めていた効果か気を失うまでは行かなかった。 想定外の効果の薄さに晃は顔をしかめ、それでも準備していた防犯用に作られた結束バンドで腕を止め、親指同士を止め、両足を止めた。
そして女性に対する気遣い0の状態で、晃がいるだろう方向に向かってその背を押す。 バランス悪く倒れそうになる本庄を、新見は受け止めた。
晃自身はと言えば、目に涙を浮かべ、乱れた着物で肌を露わにする雫を布団でくるみ、抱きしめ、頭を撫で、背を撫で宥める。
「やり過ぎではありませんか?」
そう告げる新見に、横合いから顔を出してマジマジと苦悶に表情を歪める本庄を楽しそうに眺める颯太少年は言う。
「平気ですよ。 教官、雫さんの血を舐めていたようですから」
ペロリと舌を出して見せる颯太少年は続ける。
「そりゃぁ~、もう、執拗に舐めていましたから、再生力はシバラク残るでしょうね。 もう少し入念に拘束したほうが良いかもしれません。 僕、拘束具を持ってきますね。 ぁ、余計な介入を避けるために部屋の鍵を貸してもらえますか?」
そう言って颯太少年が晃に近寄れば、唖然としながらも晃はポケットに入れた鍵を渡すのだった。
颯太少年が持ってきたのは、ベルト状の首輪から背中に延びたベルトと繋がれた3つのベルト。 腕2か所、両手をしまう袋を絞めるもの。 袋の中では親指同士が結束バンドで結ばれたままで固定し。 両足には小幅でしか移動できない足かせをつけていた。
「割とまともな物を持ってきましたね」
そう問うのは新見
「一応、うら若き女性がいるのに、僕だって気遣いの1つや2つしますよ~」
照れ照れしながら颯太少年は身をくねらせ、新見は肩を竦め、そして晃は見て見ないふりをした。
「じゃぁ、教官のお仕置きは僕が引き受けるのでいいんですよね?」
「いつ、そう決まったのですか?」
ウキウキする颯太少年に苦笑いで新見は返す。
「だって、ご褒美をくれるって言ったじゃないですか。 今まで散々しごいてくれた美しき教官……僕頑張っちゃいますよ?」
可愛らしい様子を作り首を傾げる颯太少年。
そして、大きな溜息をつく新見。
怯える雫を抱きしめたまま晃は、颯太少年が去る前にと少しばかり早口で言いだした。
「確認させてくれ、盗聴器の内容を何処まで聞いた」
「殆ど聞いていませんよ。 だって、エッチな声が聞こえたら遠慮するしかないじゃないですか。 でも、まぁ、執拗に雫さんの背中を見たがっていたのは聞きましたね」
後半部分は颯太少年も真面目に答えた。
そして、晃は会話ん内容を暴露する。
「その女はこう言っていた。 これを知れば研究者の爺様達はさぞかし喜び、この肌に触れて、裂いて、腹の中まで、念入りにその力を確認したがるでしょうねと」
「ソレは……雫ちゃん、背中を見せてくれますか?」
言えば震えた様子でプルプルと首を横に振るい、涙ながらに訴える。
「いや……」
「大丈夫、私は雫ちゃんの味方ですよ」
穏やかな声で新見が言い含める。
そして全員の視線が颯太少年に向けられた。
「僕ですか? 僕はそうですねぇ……研究所の爺様達とは趣味が合わないので大丈夫ですよ。 密告したりしません」
「その言葉のどこを信用しろと……?」
晃が睨みつければ、
「いやだいやだ怖いなぁ~。 僕は興味の範囲が非常に狭いですし、楽しみを他者と共有しようと言う爺さんたちみたいな悪趣味ではありません。 ソレに秘密は、秘密のままってのが好きなんです」
「その言葉は信頼に値できるのか?」
「出来ますよ。 僕は、カラスの怖さもちゃんと理解していますからね」
怖いと言いながらも、颯太と呼ばれた少年はニマリと笑った。
三輪 颯太(みわ そうた)
叫ぶ新見と、おーー等と言いながら無責任な歓声と共に手を叩く颯太少年。
コンクリートの粉が舞い、視界を塞ぐ中に晃は突入し、ぎょっとしたのち逃げ出そうと身を浮かせた本庄エリィの腕を掴み、腹にパンチを一発入れた。
「うぐっふぅ」
本庄の整った顔が歪むが、雫の血を舐めていた効果か気を失うまでは行かなかった。 想定外の効果の薄さに晃は顔をしかめ、それでも準備していた防犯用に作られた結束バンドで腕を止め、親指同士を止め、両足を止めた。
そして女性に対する気遣い0の状態で、晃がいるだろう方向に向かってその背を押す。 バランス悪く倒れそうになる本庄を、新見は受け止めた。
晃自身はと言えば、目に涙を浮かべ、乱れた着物で肌を露わにする雫を布団でくるみ、抱きしめ、頭を撫で、背を撫で宥める。
「やり過ぎではありませんか?」
そう告げる新見に、横合いから顔を出してマジマジと苦悶に表情を歪める本庄を楽しそうに眺める颯太少年は言う。
「平気ですよ。 教官、雫さんの血を舐めていたようですから」
ペロリと舌を出して見せる颯太少年は続ける。
「そりゃぁ~、もう、執拗に舐めていましたから、再生力はシバラク残るでしょうね。 もう少し入念に拘束したほうが良いかもしれません。 僕、拘束具を持ってきますね。 ぁ、余計な介入を避けるために部屋の鍵を貸してもらえますか?」
そう言って颯太少年が晃に近寄れば、唖然としながらも晃はポケットに入れた鍵を渡すのだった。
颯太少年が持ってきたのは、ベルト状の首輪から背中に延びたベルトと繋がれた3つのベルト。 腕2か所、両手をしまう袋を絞めるもの。 袋の中では親指同士が結束バンドで結ばれたままで固定し。 両足には小幅でしか移動できない足かせをつけていた。
「割とまともな物を持ってきましたね」
そう問うのは新見
「一応、うら若き女性がいるのに、僕だって気遣いの1つや2つしますよ~」
照れ照れしながら颯太少年は身をくねらせ、新見は肩を竦め、そして晃は見て見ないふりをした。
「じゃぁ、教官のお仕置きは僕が引き受けるのでいいんですよね?」
「いつ、そう決まったのですか?」
ウキウキする颯太少年に苦笑いで新見は返す。
「だって、ご褒美をくれるって言ったじゃないですか。 今まで散々しごいてくれた美しき教官……僕頑張っちゃいますよ?」
可愛らしい様子を作り首を傾げる颯太少年。
そして、大きな溜息をつく新見。
怯える雫を抱きしめたまま晃は、颯太少年が去る前にと少しばかり早口で言いだした。
「確認させてくれ、盗聴器の内容を何処まで聞いた」
「殆ど聞いていませんよ。 だって、エッチな声が聞こえたら遠慮するしかないじゃないですか。 でも、まぁ、執拗に雫さんの背中を見たがっていたのは聞きましたね」
後半部分は颯太少年も真面目に答えた。
そして、晃は会話ん内容を暴露する。
「その女はこう言っていた。 これを知れば研究者の爺様達はさぞかし喜び、この肌に触れて、裂いて、腹の中まで、念入りにその力を確認したがるでしょうねと」
「ソレは……雫ちゃん、背中を見せてくれますか?」
言えば震えた様子でプルプルと首を横に振るい、涙ながらに訴える。
「いや……」
「大丈夫、私は雫ちゃんの味方ですよ」
穏やかな声で新見が言い含める。
そして全員の視線が颯太少年に向けられた。
「僕ですか? 僕はそうですねぇ……研究所の爺様達とは趣味が合わないので大丈夫ですよ。 密告したりしません」
「その言葉のどこを信用しろと……?」
晃が睨みつければ、
「いやだいやだ怖いなぁ~。 僕は興味の範囲が非常に狭いですし、楽しみを他者と共有しようと言う爺さんたちみたいな悪趣味ではありません。 ソレに秘密は、秘密のままってのが好きなんです」
「その言葉は信頼に値できるのか?」
「出来ますよ。 僕は、カラスの怖さもちゃんと理解していますからね」
怖いと言いながらも、颯太と呼ばれた少年はニマリと笑った。
三輪 颯太(みわ そうた)
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