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3章

30.お仕置き 03

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「さぁ、注射をしましょうね。 上司にはですねぇ~。 程々にと言われたんですよ。 ほら、僕って何事にも真面目なタイプじゃないですか。 どう、思います?」

 僅かな間を持つが返事はない。

「無視は良くないですねぇ~。 あいつ等と家族ごっこをし、保護者を気取っていた割に、礼儀と言うものをアナタは知らないようですね」

 そう言いながら、壁にかけてある乗馬用のレザー鞭から短い物を手にした。



 今の本庄は椅子に固定されている。

 固定されていると言っても椅子は骨組みだけで、彼方此方が剥き出しの状態である。 背もたれらしきものはなく、頭を固定するためのヘッドレストが天井からつるされている状態だ。

 骨組みで構成された椅子には、拘束用のベルトがつけられており、頭部、わき、胸下、腰部分がベルトで固定されていた。 そして四肢と言えば1度解放され、腕は手すりに、ふくらはぎは椅子の足に沿って固定されている。

 パシッと肉を叩く音が響く

「うぉお」

 余り可愛らしくない声が本庄の口元から漏れ出て、颯太は笑っていた。

 どこまでも普通に。
 小さな子供のように。

 椅子の隙間から、突き出すようにされた白く引き締まった尻を打てば変な音が鳴るオモチャだとでもいうように。

 実際には、そこまで無知で無邪気な訳ではなく、何を使って打っているかを分からせるように、ペシペシと赤く色づいた尻を軽く打ち、鞭で円を描くように撫でてみせた。

「もう少し可愛らしい声を出せないものですかねぇ~。 こういう場合、媚びを売るなり、好意を得ようとしたり、そういう事が大事だと僕は思うんですけど」

 茶番と分かっていても颯太は言葉を紡ぐ。
 返される言葉は、言葉を成していないが罵声に等しい。

 多分だが……あとで見ていろとかなんとか言っているのだろう。

 颯太は雫よりも2歳年上だが、殺された少年達同様に本庄エリィの教育を受けていたが、家族ごっこの対象ではなかったからだろうか? 颯太には随分と厳しい対応がとられていた。

 当時と今の関係は、全く逆と言って良いだろう。

「教官は、こういうの好きでしたよね?」

 鞭を使い、怒りと言う興奮に固くなっている乳首を捏ねるように弄った。

「こんなに興奮している訳なんですから、そんな事ないなんて当たり前のセリフを言う訳ありませんよね? それに、アナタはこういう事が大好きなんですから。 人を打ち、イジメながら……恍惚とした表情を見せていたのですから」

 颯太は薄く笑う。

「あぁ、そうだった。 つい懐かしくて。 本題を忘れるところでした。 僕と教官の思い出話は一旦横に置きましょう。 今、重要なのは、教官は何もしていない哀れな鳥を、切って、裂かれて、抉られて、ひっかきまわされて、引き抜かれればいい。 そう言った事なんですから。 自分の言った言葉の意味を理解し、反省し、懺悔してください」

 コトリと鞭を机の上に置く。

 少しだけ大げさに音を響かせるのは、捕獲された際に情報収集をするように音を良く聞くようにと言うものがあり、颯太はあえて音を響かせ、本庄の思考を刺激しようとしていた。

 木製の古い机。
 木と木が擦れ合う音。

 そして、中から取り出される薄い箱、テーブルに置けば軽い音を出す。

 金属の単純な鍵を開き、両開きのガラス扉を開く。
 中から1つの瓶を取り出せば、ガラスとガラスがぶつかる軽い音がした。

 薄い箱が開かれ、注射器が取り出され、薬品が注射器の中に吸い上げられる。

 本庄の呼吸は荒くなり、くつわの端から唾液が漏れ出る。 両足の間からピタピタと粘りのある液体が漏れ出ていた。

 颯太は小さく口元を歪め笑う。
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