愛を語れない関係【完結】

迷い人

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前編

06

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 言った……。
 とうとう言ってやった。
 言ってやった!!
 言ってやった!!

 高まる感情にソフィラの頬は蒸気する。



 何時もなら必要のない外出を控えるソフィラだが、はしゃぎたい気分だった。

 酒場に出向くのもいい。
 信者と化している貴族に願って狩りに出るのも悪くないかも知れない。
 吟遊詩人を呼び、私だけのために歌わせるのも良いだろう。

 何時もなら我慢をする踊りだすような気分、今日は喜びを解放しよう!!

 ソフィラは歌を歌った。

「ぇっ、いややあああああああ!!」

 身に蔦が絡みむ。
 棘のある蔦。
 咲かせる花は薄暗い。

 一気に気分が沈んだ。

 自らを覆う花の薄暗い色と棘を見れば、自分の精神状態が良いものではないと理解できて戸惑う。



 なんで?
 なんでなの?

 これまで感じたことのないほどの幸福を感じていたのに。



 何が悪かったの?

 あの破滅の未来へと突き進むしかなかったの?



 言い訳のように、そう考えた私の脳裏からは……あの魔力風、自死を持って脅すウィル様、長く長く屋敷を我が物顔で荒らすメアリー、その記憶が薄くなっていた。

 言い訳が……、
 理由が……、

 夢のように薄らんでいた。



 気分が良かったのに!!
 頑張ったのに!!

 未来を切り開いた……つもりだったのに!!



 国一番の破壊の化身と呼ばれるウィル様と、その寵愛を得ているメアリーに反論した時……怖かった。 だけれど……言わなかったところで向かう未来は終わりでしかない。

 怖かった。
 怖かったけれど……。

 未来を変えたかった。

 鼓動は早くなり、手のひらに汗をかいた。
 私は怒っているのだと表情を作った。

 必死だった……。
 必死に隠していた本音をぶつけた。



 言ってしまえば、驚くほどスッキリした!!



 メアリーを非難し突き放した時のメアリーの唖然とした表情。 苛立ち、怒り、戸惑い……その表情を見てスッキリしたのだ。

 言ってやった!! と言う解放感。

 だけど……そんな自分の色は……濁っていた。
 白くて、汚れる事のない花の色が濁っていた。

 まるで、自分の心が穢れたのだと言われた気がして怖かった。

 だからと言って……自分を聖女のように扱う周囲の人々に嘆く訳にはいかない。 それに……もう二度とメアリーのために1鉄貨だって使いたくないと思い決意し、彼女を拒絶する事での爽快感とも言うべき思いを知った今……ただ従順に従う等出来るはずがない。

 私は深呼吸をし考える。

「彼女を拒絶する事は許された事だわ。 なら……何がダメだったの?」

 深く考える必要もない。 ソレを快楽とし喜んだ事が悪かったのだ。

「どうすればいいの?」

 魔力の扱いは幼い頃から訓練を続けて来た。

 私の魔力は特に感情に左右されてしまうから、気を付けないといけないと亡くなった両親は語っていた。

『幸せになりなさい あなたが幸せなら、周りの人も幸せになれるから。 あなたは幸せにならないといけないわ』

 それが別れを前にした両親の願いだと思っていた。 まさか、こんな弊害があるなんて……。

「幸せになりなさいって言ったじゃないの!! なのに、どうして……私は、自分の幸せを追求してはいけないの? 私には自分自身を大切にする権利すらないと言うの?!

 自己肯定を進めるたびに白かった髪に濁りが混じりだしたように思えた。

 次の一歩を歩みだすために、幸せを目指すために、どうすれば……。



 覚悟も何もない中で、人を落とす快楽を知ってしまったソフィラは、使用人達の声を聞く事を拒絶し部屋に閉じこもった。
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