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序章
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「あらノーラ様」
私に視線を向け微笑みかけるのは白色の柔らかなフワフワ髪をした女。
「どうされたの?」
甘い声色と、甘い視線を絡めて来る。
そんな彼女の背後に見えるのは燃え上がる炎。
比喩ではない、本当に燃えているのだ。
悲鳴と共に倒れそうになるのを堪えた。
「ど、どうって……」
僅かな停止。
燃え上がる炎を見れば当然の事だろう。
「ねぇ、とっても美しい炎でしょう? 炎っていいわね。 私、炎は好きよ。 ねぇ、私ってとても博識なの。 知ってる? 焼き畑農法ってね、こうやって焼いた灰が肥料にとても良い花が咲くのよ。 私がこの庭を美しく生まれ変わらせてみせるわ~」
褒めて褒めてと懐いてくる子犬のような視線と微笑みを見せつけて来る。
「どうって……なんてことをしてくれたの貴方……」
私が唖然とするのは当然な事だと思う。
畑を引っこ抜き、火に投げ入れる使用人がいる一方、火を消そうとする使用人も存在していて外に出て来た。 魔法と縁があるランドール侯爵家だ、水の魔法を使い次々と火を消そうと呪文を唱えていた。
「何をするの止めなさい!! やめないと貴方達ごと燃やすわよ!! ねぇ、カール様」
「止めなさい、カール!! こんな事をして許されると思っているの!!」
炎の元は、フワフワ甘い女ではなく、庭先でニヤニヤと炎を悦として眺めているカールが原因なのだ。 ……勢いと流れに流されて婚約の誓約を交わした男カール・シラキスの加護である。 簡単に消えるはずがない。
食料不足の対策として、何より毎日同じ生活を繰り返すのに必死な農民たちに、良い農業を伝えられたらと作り出した畑。
季節の野菜、果物、木の実。 それらは私の加護の力で季節を問わず実り、一族で経営している販売店、宿泊所、レストランに卸していた。 今日の収穫は? 配達は? どれぐらいの損失になるのか分かっているのだろうか?
その農園が……今、盛大に燃え上がっているのだ。
火を消すために庭に出れば、私の腕は掴まれ火から引き離される。
「何をするつもりだ!!」
怒声と共に腕をキリキリと締め上げるのは、婚約者である男カール・シラキス。
「何をって、火を消すのよ!!」
「貴方は姫の好意を理解できないのか?! あの田舎臭い庭がランドール侯爵家の庭だなんて、恥ずかしくて客を招けるはずがない。 それを姫は……彼女の類稀なセンスを持ってランドール侯爵家に相応しい庭園を造ろうと……彼女の好意を理解できないのか!!」
「出来る訳ないでしょう!!」
そう言いながら、嫌がらせのようにカールは植物全体に炎を走らせようとしたから、私は私の加護の力をぶつける事で、それを打ち消し相殺した。
「なんてことをするの!! お茶会までに美しく庭を作り替えないといけないのよ!!」
「ここは、私の や、し、き なのよ!!」
「私の事業を邪魔する気なの!! 酷いわ!!」
婚約者が姫と呼ぶ女性が語る彼女の目標は、庭、お茶、茶器、テーブル、椅子、花、装飾、菓子、料理、それを提供する社交界コンサルタントとして事業を始めると言うものだった。
「ノーラが、ノーラが酷いの……罪人の娘の癖に……ランドール女侯爵の資格がない癖に、私の邪魔をするのよ~!!」
ニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべる女性は、婚約者の胸に身を寄せ、婚約者はその胸に女性を抱きよせながら言うのだ。
「罪人の娘であることを秘密にしてほしければ、私達の言うとおりにするんだ」
私に視線を向け微笑みかけるのは白色の柔らかなフワフワ髪をした女。
「どうされたの?」
甘い声色と、甘い視線を絡めて来る。
そんな彼女の背後に見えるのは燃え上がる炎。
比喩ではない、本当に燃えているのだ。
悲鳴と共に倒れそうになるのを堪えた。
「ど、どうって……」
僅かな停止。
燃え上がる炎を見れば当然の事だろう。
「ねぇ、とっても美しい炎でしょう? 炎っていいわね。 私、炎は好きよ。 ねぇ、私ってとても博識なの。 知ってる? 焼き畑農法ってね、こうやって焼いた灰が肥料にとても良い花が咲くのよ。 私がこの庭を美しく生まれ変わらせてみせるわ~」
褒めて褒めてと懐いてくる子犬のような視線と微笑みを見せつけて来る。
「どうって……なんてことをしてくれたの貴方……」
私が唖然とするのは当然な事だと思う。
畑を引っこ抜き、火に投げ入れる使用人がいる一方、火を消そうとする使用人も存在していて外に出て来た。 魔法と縁があるランドール侯爵家だ、水の魔法を使い次々と火を消そうと呪文を唱えていた。
「何をするの止めなさい!! やめないと貴方達ごと燃やすわよ!! ねぇ、カール様」
「止めなさい、カール!! こんな事をして許されると思っているの!!」
炎の元は、フワフワ甘い女ではなく、庭先でニヤニヤと炎を悦として眺めているカールが原因なのだ。 ……勢いと流れに流されて婚約の誓約を交わした男カール・シラキスの加護である。 簡単に消えるはずがない。
食料不足の対策として、何より毎日同じ生活を繰り返すのに必死な農民たちに、良い農業を伝えられたらと作り出した畑。
季節の野菜、果物、木の実。 それらは私の加護の力で季節を問わず実り、一族で経営している販売店、宿泊所、レストランに卸していた。 今日の収穫は? 配達は? どれぐらいの損失になるのか分かっているのだろうか?
その農園が……今、盛大に燃え上がっているのだ。
火を消すために庭に出れば、私の腕は掴まれ火から引き離される。
「何をするつもりだ!!」
怒声と共に腕をキリキリと締め上げるのは、婚約者である男カール・シラキス。
「何をって、火を消すのよ!!」
「貴方は姫の好意を理解できないのか?! あの田舎臭い庭がランドール侯爵家の庭だなんて、恥ずかしくて客を招けるはずがない。 それを姫は……彼女の類稀なセンスを持ってランドール侯爵家に相応しい庭園を造ろうと……彼女の好意を理解できないのか!!」
「出来る訳ないでしょう!!」
そう言いながら、嫌がらせのようにカールは植物全体に炎を走らせようとしたから、私は私の加護の力をぶつける事で、それを打ち消し相殺した。
「なんてことをするの!! お茶会までに美しく庭を作り替えないといけないのよ!!」
「ここは、私の や、し、き なのよ!!」
「私の事業を邪魔する気なの!! 酷いわ!!」
婚約者が姫と呼ぶ女性が語る彼女の目標は、庭、お茶、茶器、テーブル、椅子、花、装飾、菓子、料理、それを提供する社交界コンサルタントとして事業を始めると言うものだった。
「ノーラが、ノーラが酷いの……罪人の娘の癖に……ランドール女侯爵の資格がない癖に、私の邪魔をするのよ~!!」
ニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべる女性は、婚約者の胸に身を寄せ、婚約者はその胸に女性を抱きよせながら言うのだ。
「罪人の娘であることを秘密にしてほしければ、私達の言うとおりにするんだ」
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