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04.偽りの過去を責める声 02
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「皆さんは、ご存じないかしら? ミラドール子爵家の商売を」
「知っておりますわ。 ミラドール子爵家と言えば広大な農耕地を持ち加工食品を作っていると伺っていますわ。 貴族であっても力仕事をしているなんて」
クスクス笑いが広まる。
「学も無く、魔法も使えない貴方の事です苦労しているのでしょう? お気の毒」
「皆さん、ミラドール子爵令嬢の活躍に嫉妬するのは良くありませんわ。 いくら、自らの背丈にあった相応しい仕事をしているからと言って羨む事はありませんのよ、皆さん」
「そうね……えぇ、私には耐えられそうにありません。 とても素晴らしい事ですわ」
「これからも質の良い加工品を期待しておりますわ」
子爵家の娘として顔を出している以上、私にできるのは礼を述べることぐらい。
「寛大なお言葉に感謝いたします」
私は微笑みを向けた。
「皆さん、ミラドール子爵令嬢は、その身分にも拘らず勇気を出して公爵家のお茶会にいらしているのですから、商売の方を応援してさしあげましょう。 なんの成果もなかったのでは余りにも気の毒ですもの」
「では、私はジャムの詰め合わせを50セットほど注文いたしますわ」
「あら、では私はフルーツティと、砂糖漬けを20セット」
「お花の砂糖漬けも美しくて良かったわ、あれを80セットお願いできるかしら?」
「申し訳ありませんが、年内生産分は既に販売が決定しておりますし、来年の分ももう注文が埋まっている状態ですのよ」
と言うのは、ランドール侯爵家の贈り物として使う分だけでも足りないほどなのだ。 誰とも分からない、嫌がらせをしてくる者達に我が家の利用分を分けてあげる気等さらさらないというものだ。
まさか断られる等とは思っていなかったのだろう。 令嬢達はイラっとした表情を隠すことなく嫌味を再開し始める。
「ミルドール子爵家の小さな領地では、多くは生産出来ないという事ね」
「もしかして、不器用過ぎて商品にならなくしているのではないかしら?」
「食料難からは脱出出来たとは言え、食べ物を無駄に出来るだけの余裕はこの国にはまだありませんからね。 どうしてもというなら、消費を手伝って差し上げてもよろしくてよ?」
「ご心配していただきありがとうございます。 そのような品も問題なく消費できております。 お気遣いありがとうございます。 そうですわ手土産に新商品をお持ちしましたの。 どうか皆さんでお試しいただけないでしょうか?」
乾燥フルーツ、花、ハーブ、ナッツ等の香りを引き立つように乾燥させたものを、茶葉にまぜ、お茶として香りを楽しむというものだ。
「自らの働きを認めて貰いたいのですね。 是非、いただきましょう」
手土産でお茶を淹れるようにと、お茶会の主催者であるカールが侍女達に命じた。
「例え魔法が使えなくとも、自分のできる事を頑張っている貴方は素敵ですよ」
学生時代とは違い、過剰なほどに愛想笑いを向けて、それだけに収まらず褒めたりするものだから、その不気味な様子に鳥肌がたってしまう。
「あら、魔法が使えませんの? ランドール侯爵家の縁者ですわよね?」
「ランドール侯爵家と言えば、先代のご子息が魔法開発の一人者と言う話ではありませんか。 その息子さんも魔法の才能がお有りだと言うのに、騎士の道を歩みになる多彩な方と聞いておりますわ」
「恥ずかしくありませんの?」
「恥ずかしくとも血を残すためには、男性に媚びを売り、良い殿方の子を産む必要があると言う事ですのね。 だから、身の程も知らず、最新のドレスを身に着けて……飢えた女丸出しで見苦しくてよ」
いや、貴方も同じようなドレスを着ているでしょう?
突然に子爵令嬢として出てこいと言われてもドレスの準備が出来ず、ランドール女侯爵として所有する中から最も地味なドレスを選んできたのだ。
「私の気をひこうと努力をなさったのですね。 確かに美しい肢体を見せつけるのにふさわしいドレスです。 滑らかな女性らしい身体の曲線。 形の良い胸、抱き寄せたくなる腰から尻のラインも美しく表現されて、とても魅力的だと思いますよ」
等と言う言葉と共に向けられる下品な視線は耐えがたいものだった。
「そろそろ失礼さえていただきます」
「そう言わず、もう少し交流をかわしましょう」
腰を抱き寄せられそうになって、真剣に逃げた。 触れられるなんて嫌に決まっている。
「カール様、からかいになるのもほどほどにされてはいかがです?」
「そうですわ、公爵家の子息、それも加護をお持ちであらせられるカール様が気に掛けるような者ではありませんもの」
「物好きだと笑われるのはカール様ですわよ」
「ですが……私には彼女はとても魅力的に見えるのですよ」
腕に腕を絡められ身体を押し付けられ止められれば、それ以上学園を逃げだした子爵令嬢を追いかける事等出来る訳が無かった。
「身体は良いんだよな」
「まだガキなのに物好きな」
「将来的にも兼ねてさ」
「俺は今でも1度や2度、慈悲を与えてやっても良いぐらいにはな」
等と品の無い事を口にする者がいれば、令嬢達に冷ややかな視線を向けられ、それもまたミラドール子爵令嬢のせいだと言われるのだった。
直接耳にした言葉ではないのだけど……隠れていた護衛に子爵令嬢ようのドレスを常備したほうが良いのではと言われたのだった。
「知っておりますわ。 ミラドール子爵家と言えば広大な農耕地を持ち加工食品を作っていると伺っていますわ。 貴族であっても力仕事をしているなんて」
クスクス笑いが広まる。
「学も無く、魔法も使えない貴方の事です苦労しているのでしょう? お気の毒」
「皆さん、ミラドール子爵令嬢の活躍に嫉妬するのは良くありませんわ。 いくら、自らの背丈にあった相応しい仕事をしているからと言って羨む事はありませんのよ、皆さん」
「そうね……えぇ、私には耐えられそうにありません。 とても素晴らしい事ですわ」
「これからも質の良い加工品を期待しておりますわ」
子爵家の娘として顔を出している以上、私にできるのは礼を述べることぐらい。
「寛大なお言葉に感謝いたします」
私は微笑みを向けた。
「皆さん、ミラドール子爵令嬢は、その身分にも拘らず勇気を出して公爵家のお茶会にいらしているのですから、商売の方を応援してさしあげましょう。 なんの成果もなかったのでは余りにも気の毒ですもの」
「では、私はジャムの詰め合わせを50セットほど注文いたしますわ」
「あら、では私はフルーツティと、砂糖漬けを20セット」
「お花の砂糖漬けも美しくて良かったわ、あれを80セットお願いできるかしら?」
「申し訳ありませんが、年内生産分は既に販売が決定しておりますし、来年の分ももう注文が埋まっている状態ですのよ」
と言うのは、ランドール侯爵家の贈り物として使う分だけでも足りないほどなのだ。 誰とも分からない、嫌がらせをしてくる者達に我が家の利用分を分けてあげる気等さらさらないというものだ。
まさか断られる等とは思っていなかったのだろう。 令嬢達はイラっとした表情を隠すことなく嫌味を再開し始める。
「ミルドール子爵家の小さな領地では、多くは生産出来ないという事ね」
「もしかして、不器用過ぎて商品にならなくしているのではないかしら?」
「食料難からは脱出出来たとは言え、食べ物を無駄に出来るだけの余裕はこの国にはまだありませんからね。 どうしてもというなら、消費を手伝って差し上げてもよろしくてよ?」
「ご心配していただきありがとうございます。 そのような品も問題なく消費できております。 お気遣いありがとうございます。 そうですわ手土産に新商品をお持ちしましたの。 どうか皆さんでお試しいただけないでしょうか?」
乾燥フルーツ、花、ハーブ、ナッツ等の香りを引き立つように乾燥させたものを、茶葉にまぜ、お茶として香りを楽しむというものだ。
「自らの働きを認めて貰いたいのですね。 是非、いただきましょう」
手土産でお茶を淹れるようにと、お茶会の主催者であるカールが侍女達に命じた。
「例え魔法が使えなくとも、自分のできる事を頑張っている貴方は素敵ですよ」
学生時代とは違い、過剰なほどに愛想笑いを向けて、それだけに収まらず褒めたりするものだから、その不気味な様子に鳥肌がたってしまう。
「あら、魔法が使えませんの? ランドール侯爵家の縁者ですわよね?」
「ランドール侯爵家と言えば、先代のご子息が魔法開発の一人者と言う話ではありませんか。 その息子さんも魔法の才能がお有りだと言うのに、騎士の道を歩みになる多彩な方と聞いておりますわ」
「恥ずかしくありませんの?」
「恥ずかしくとも血を残すためには、男性に媚びを売り、良い殿方の子を産む必要があると言う事ですのね。 だから、身の程も知らず、最新のドレスを身に着けて……飢えた女丸出しで見苦しくてよ」
いや、貴方も同じようなドレスを着ているでしょう?
突然に子爵令嬢として出てこいと言われてもドレスの準備が出来ず、ランドール女侯爵として所有する中から最も地味なドレスを選んできたのだ。
「私の気をひこうと努力をなさったのですね。 確かに美しい肢体を見せつけるのにふさわしいドレスです。 滑らかな女性らしい身体の曲線。 形の良い胸、抱き寄せたくなる腰から尻のラインも美しく表現されて、とても魅力的だと思いますよ」
等と言う言葉と共に向けられる下品な視線は耐えがたいものだった。
「そろそろ失礼さえていただきます」
「そう言わず、もう少し交流をかわしましょう」
腰を抱き寄せられそうになって、真剣に逃げた。 触れられるなんて嫌に決まっている。
「カール様、からかいになるのもほどほどにされてはいかがです?」
「そうですわ、公爵家の子息、それも加護をお持ちであらせられるカール様が気に掛けるような者ではありませんもの」
「物好きだと笑われるのはカール様ですわよ」
「ですが……私には彼女はとても魅力的に見えるのですよ」
腕に腕を絡められ身体を押し付けられ止められれば、それ以上学園を逃げだした子爵令嬢を追いかける事等出来る訳が無かった。
「身体は良いんだよな」
「まだガキなのに物好きな」
「将来的にも兼ねてさ」
「俺は今でも1度や2度、慈悲を与えてやっても良いぐらいにはな」
等と品の無い事を口にする者がいれば、令嬢達に冷ややかな視線を向けられ、それもまたミラドール子爵令嬢のせいだと言われるのだった。
直接耳にした言葉ではないのだけど……隠れていた護衛に子爵令嬢ようのドレスを常備したほうが良いのではと言われたのだった。
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